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優しく読みやすい文体で書かれている。講演をもとにした本らしい。
"生きる"と"生きのびる"の対比がなるほどと思った。
対比と言っても、相反するものの二項対立ではないことを覚えておきたい。画家、作家、芸人などの生きるためにやってることで生きのびている人もいる。自分で企業する人もそうだと思う。
自分にはええかっこしいな部分がある。これは生きのびるためのスタンスだと思う。これで得した部分もあると思うが、反面、どうも素直になれない自分もいる。素直になることは、この本で述べられている、生きるということでもあるような気がする。紹介されている短歌はその人がどう思ったかが、ありのまま伝わって来るようだった。良い短歌は素直な短歌でもあると思った。
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非常に読みやすく分かりやすい。
「生き延びる」ではなく「生きる」ほうの言葉を選ぶと。短歌に限らず表現というものは「生きる」のほうから(「生き延びる」が上手くないほうから)異議申し立てする手段のように感じている。
共感というが、普遍的にすると「生き延びる」テキストに寄る。固有性を大事にするほうが共感に繋がる。「生きる」に寄った要素を拾う。
大事なことをわざと書かなかったり、三十一文字は意識するけど崩すところに意を込めたりするのもアリとわかって良いなと思った。
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良い方向に添削するのではなく、
悪い方向に添削?したら、みたいな設定もあって、
なかなか面白い。読みやすい。
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「文学ってなんの役に立つの?」
に対する答えがちりばめられている。
よく聞くこの質問、相手を説得できる自信がなく、長年説明できずにいた。実際に私も高校生の時、先生に聞いたことがある。そうしたら、「その質問はナンセンスだ」とだけ返されて、いじけた。
今の私としては、「日常に結び付けるのが楽しい」なのだが、相手からしちゃ、お高くとまりやがってとか、くだらないといった印象を与える気がしていて。
読後、質問するほうの立場に立って考えてみた。
これは、まず、社会生活を前提にした質問じゃないかと思う。
文学が直接、受験に、ビジネスに役立つ実践的な部分は何かということを問うてるのだろう。
穂村さんが言うように、短歌をはじめとした文学は、
「生きのびる」ためではなく、「生きる」ために表現する。
サバイバルより、エンジョイみたいな。…ちょっと違うか。
社会的文脈に置かれることのない、生物学に近いもっと大きなもの。人間臭さを遊ぶかんじ、なんじゃないかな。本能的に持っている心のゆとりを再獲得していく感覚がある。
まあ、生きるに純化するのって難しいよなっていうのが本音。
だって働いてお金を稼ぎ続けないと生活が成り立たないし。そのためには、建前やマナーを重んじる世界を渡り歩くわけだし。今はクリエイターとか自由な働き方があるけど、それはそれでオープンすぎて拒んだりして。
私含め、文学を享受する人間は自意識高くて面倒くさい人が多いから、実はそこも完全な自由ではない気がしちゃうんだろうな。
でも生きる世界は用意されている。
しかも実は制約の中から見つける人間らしさってのは格段に面白い。
ありがとう世界。
だから、二重の世界で生きることもできる。社会と自分の言語体系に合わせて言葉のチューニングを切り替えながら、まあバランスよくいきたいですよね。
死ぬ日に覚えている思い出が一個でも多い人生でありますように。
違和感は記憶に残る。
だから、非効率で無意味なものにスポットライトを当てる。
短歌は人生を彩るのにぴったりだ。
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「煤」「スイス」「スターバックス」「すりガラス」「すぐむきになるきみがすきです」
社会的な尺度の裏側に佇んでいた、
もうひとつの自由で愉快な人間生活の世界に丁寧に気付かせてくれた。
普段見過ごしがちなその人その人の感性を愉しむことだったりや経験に想いを馳せることの豊かさがあった。
だから、社会という枠組みを取っ払った中での、
その人固有の人間性だったり、
身の回りのひとときの記憶に
近づいてみて、大切に見つめていければなぁと思えた。
また、二重の世界で生きることを、ただ息苦しく感じるんじゃなくて、その間で揺れる心があることが人間生活の贅沢だったりするのかも。
そう考えると、日々なんとなく気が抜けてほんの少し前向きになれる。
あと、「生き延びる」・「生きる」という考え方のように自分の身の回りにおける立ち位置を言語化して意識下におくことや積極的にスタンスを立てるようなことは、
ほかのたくさんのものに応用できることだと思うし、
新しい視点を授けてくれる頭のつかい方だとも思った。
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一度も読んだことがない現代短歌。ニューウェーブ短歌の騎手による入門書。「雨だから迎えに来てって言ったのに傘も差さず裸足で来やがって」「目をさめて日のさすカーテン開けたとき歩いていたのは太郎君なり」ほか。社会的な価値に結びつかない非効率、無意味、お金にならない社会的にマイナスなもの程短歌の評価が高いらしい。人生に短歌がどう役立つかどうかはよく分からなかったが。
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2020/12/22 読了
生きのびるためではなく、生きるために生まれてきた。
素敵な言葉だなーと思った。
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穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸とともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。エッセイスト、絵本の翻訳家等としても活動している。
本書は、2013年度の慶應丸の内シティキャンパスにおける短歌の入門講座(全6回)をもとに編集され、2014年に出版、2016年に文庫化されたもの。
私は、アラ還が近づき、仲の良い友人グループの何人かがSNSで歌のやりとりを楽しんでいるのを見て、本書を手に取ったのだが(現代短歌といえば、これまで俵万智しか知らなかったが、数ヶ月前のNHK番組「趣味どきっ! 本の道しるべ」に出ていた著者に共感を覚えていたこともあった)、とても興味深く、また、著者の軽妙な語り口にしばしば笑いを誘われる、楽しい本であった。
他の短歌入門書がどのように書かれているのかはわからないが、本書はいわゆるハウツー的な書き方はされておらず、短歌とは「生き方」に結びついたものであること、それ故にどのように詠まれるべきかが自ずと導かれること、が繰り返し述べられている。そのポイントは、概ね次のようなものである。
◆いつ誰がどんな順番で死ぬかわからない世界で、人間は、替わりの効くシステムが用意されている人生(会社における課長「代理」のような)と、一人ひとりにかけがえのない絶対的価値のある人生(家族のような)の二種類の生を二重に生きている。前者の生き方は「生きのびる」、後者の生き方は「生きる」、とも表現できる。
◆上記を言葉で文章を書くという行為に置き換えると、前者は「新聞記事」を書くようなもの、後者は「詩・短歌」を書くようなものと言え、よって、詩や短歌は、唯一無二の言葉で表現することをめざす。
◆短歌においては(シンプルに言うと)、社会的に価値のあるもの、正しいもの、値段の付くもの、名前のあるもの、強いもの、大きいものはNGであり、社会的に価値のないもの、換金できないもの、名前のないもの、しょうもないもの、ヘンなもの、弱いものの方がいい。
◆「生きる」ために大事なものを測る尺度は、「忘れられないかどうか」であり、良い人生か否かを決める尺度は、死ぬ日に覚えている思い出が多いか少ないかである。
短歌の詠み方を語りながら、人の生き方をも説いた、出色の一冊と思う。(著者のエッセイもぜひ読んでみたい)
(2021年2月了)
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「はじめての短歌」というが、ただの入門書ではない。
穂村弘先生講師のビジネスマン向け短歌教室ってきっと面白いに違いない。
「世界と<私>を考える短歌ワークショップ」ネーミングも絶妙♪
ふつうはこうやったらもっと良くなりますよ、的な例示が多いのに、これまた改悪例とは。元々の短歌がいかに良いかということをなるほど!と思わず頷いてしまう。
非効率、無意味、お金にならないもの、つまり「生きる」ということに貼りつく言葉を短歌にできるようになりたい。
共感にはある特殊性、脅威から共感ですって。凄い! ぐっときちゃう言葉。
「大事なことをわざと書かない」これは私の短歌教室の先生にも良く言われる。難しいし、奥深い。
なかなか上手く詠めませんが。短歌を作るのが楽しみになってくる。
短歌が手渡すのは、例えば何か、きらきらしたもの
愛の告白も短歌も、欠点を愛することが大切
たったひとつの言葉が世界を背負う
現実では奇妙なことが起きるそのリアル感
いいオノマトペは心に上書きされる
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短歌の本だと思って読んだら、哲学書でした。
穂村さんのエッセイは好きなんですが、歌人穂村弘はよくわかっていなくて、だからこの本は短歌の入門書だろうと手を出さずにいたことを後悔。もっと早くに読んどけばよかった。
読みながらにやにやしてしまう瞬間はありつつ、でもかなり過激でアツイ内容でした。「生きる」と「生きのびる」の考察とか。
もちろん、短歌の本としても素晴らしい本でした。添削ではなく改悪例ってのがとてもわかりやすかったです。
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短歌での言葉の使われ方について、ものすごく噛み砕いてわかりやすく説明してくれている本。筆者がえらぶ秀歌に、わざと改悪例を示して、その比較から短歌の特徴を浮かび上がらせている。短歌の持ちうる切実感というのが端的に示されていて、短歌だけでなく文学や芸術全般にもあてはまるだろうなと思った。
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なんとなくで感じていた詩歌の良さが分かりやすい言葉で説明されていて、とても良かった。
生きのびることと生きることは別物で、私が時折感じる社会に馴染めない感覚は私の中で大切にしていて良いんだ。
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生きのびるため、ではなく、生きるため。「くびれ」の概念など、
"なんとなく"とか"感覚"で判断しがちな短歌の良さを、ここまで短歌の読者以外にもわかりやすく論理的にすっきり短く説明してる本ないと思います。
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仕事ができるとか効率的に生活するとか、そういうものを排除した先に詩情は宿る
この本は短歌指南の本だが、実は人生について述べている。いかにうまく生きるかではなく、いかに良く生きるかという意味で。
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読みやすくて2時間で一冊全て読んでしまった。『短歌』の書き方というよりも、『短歌』とはなにか?がわかる本。新聞記者と詩人の違いみたいなものも面白かった。ユーモアたっぷりで著者の人柄まで伝わる一冊。