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最先端研究者と小説家による,最新の宇宙論。最新なのに素人にわかりやすいって,奇跡みたいな話。「宇宙の年齢は138億年」てのが,研究者による主張の違いで137とか138なんだと思っていたら全然違う話だっ たというのが1番衝撃的だった。それまで100億年のオーダーだろうっていうかなりアバウトな推定しかできていなかったのが,137億年(誤差1億年くらい)とわかり,さらに138億年(誤差ももうちょっと小さくなる でもたぶんン十百万年とかの単位)に「修正」されたのだと。そんなに精度が上がったというところもそうだけど,それだけ精度が上がっても億単位というスケールの大きさに驚いた。
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現在ドイツのマックスプランク宇宙物理研究所の所長を務める小松さん。宇宙論の更新に大きな貢献をした観測衛星によるマイクロ波探査計画WMAPの主要メンバーの一人である。WMAPは、2007年、2009年、2011年と3度も「その年に最も多く引用された科学論文」になっており、小松さんはそのうちの二本で筆頭著者になっている。その小松さんに対して小説家のさんが取材をしてまとめたのが本書である。
著者である川端さんは小説家なので、もちろんその道の専門家ではないのだが、精力的なインタビューもあり、またおそらくは相当に勉強もしたのだと思うが、非常にわかりやすくまとめてくれている。さらに小松さんの想いについても、こちらは文筆業のプロでもあるので、活き活きと伝わってくる。書かれている科学的な内容は他の書籍でも紹介されているものもあるが、それらとは一味違う風味を出していて面白く楽しめる。あとがきで小松さんが書く「現場のリアリティ」が伝わってくる本に仕上がっている。
タイトルの「宇宙の始まり」はインフレーションを「そして終わり」は暗黒物質・暗黒エネルギーの探究のことを示している。インフレーション理論と暗黒物質・暗黒エネルギーは、現時点での宇宙理論最大の課題である。小松さん参画したWMAPの宇宙論に対する最大の貢献が、宇宙年齢の算定と宇宙の組成(物質、エネルギー、暗黒物質、暗黒エネルギー)の解明だと言われているが、小松さんはさらにビッグバン以前のインフレーションの証拠を、インフレーションのときに生まれた原始重力波のBモード偏光を捉えることで探ろうとして新たな研究テーマに取り組んでいる。また、インフレーションの解明が、暗黒エネルギーがもたらす加速膨張と関係があるとも踏んでいる。具体的には、日本から多くの研究者が参画するLiteBIRDプロジェクトにドイツから参加している。重力波Bモード偏光によるインフレーションの証拠探しについては、合わせて『宇宙背景放射──「ビッグバン以前」の痕跡を探る』を読んでもらいたい。その著者の羽澄さんは、小松さんと同じLiteBIRDプロジェクトにも参画しつつ、米国チームと共同で南米チリで地上での観測を行うPolarBearプロジェクトも同時に進めている。最先端において国際的にお互いに協力をしながらも、宝探しの競争が行われている様子がよくわかる。また、現代宇宙論の課題に関して、小松さんらが行う実験に期待されている役割についてもいさらによく実感できることと思う。
まえがきにも書くように、小松さんが取り組むプロジェクトでは、「超ひも理論もM理論も出てこない。多元宇宙理論もホログラフィック原理も出てこない」ー そのような場ではない「理論と実験・観測がかみ合って、新たな知識を積み重ねていく現場」であることに誇りと知的興奮を持って研究者人生をささげているということが伝わってくる。
重力波については先日、2016年2月、米の研究チームによる観測装置LIGOによってブラックホール連星によって生じる波を検出したと報じられた。原始重力波のBモード偏光はこれとは異なるものだが、同様に期待が持てる結果である。小松さんは、今後10年で、インフレーションの課題も暗黒エネルギーによる加速膨張の課題に対す��解明が大きく進展すると予測する。ニュートリノもヒッグス場も重力波も最近、大掛かりな実験装置とともに明らかにされた物理現象だ。暗黒物質だって、昔はそんなものの存在は知られていなかった。それを思うと自分が生きている間にもまた大きく宇宙論が書き換わることがあるんだろうなと思う。課題が残っていることは悪いことではないな。そんなことを思いながら読んでいた。
『宇宙背景放射──「ビッグバン以前」の痕跡を探る』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4087208079
LiteBIRDプロジェクトホームページ
http://litebird.jp/
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正直、自分には難しく理解できない所も多かったが、
結果だけでなくどうやって宇宙を調べているかなど
プロセスをみせられると改めて奥が深い学問なんだなと思う。
光を通じて138億年前の宇宙誕生に思いを馳せたり、
ほとんど解明されていない暗黒エネルギーなど未知なる魅力の宇宙はやっぱり面白い。
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インフレーションで宇宙が始まった。その後ビックバン。晴れ渡る宇宙。加速する膨張。普通の物質4%。残りは暗黒物質と暗黒エネルギー。膨張を加速させてるのは暗黒エネルギー。我々の存在はインフレーション中に起きた量子のゆらぎ、角砂糖1個分にビックバン時の光子が140個。ホワイトノイズ5%だっけ?が宇宙背景放射のなんかだっけ?9割くらいわからなかったけどとにかくすごいなとおもったす。
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宇宙論の現状を皮相的に概観する.どうして,の部分も大事だし説明もできるのだけれど(というより,説明できるようになったので,現状の結論が説明できる),その説明は当然数学によるので,端折りますよ,という姿勢で書き下されている.これまで判ったことが理解できるので,今後知りたいと思っていることを理解できるし,それを知るための方法論の規模も実感できる.スケールの大きさにはついていけない.やはり人を突き動かすモチベーションは知的好奇心である.
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科学者と小説家をタッグを組む、本書の企画、良いじゃない!
宇宙マイクロ波背景放射について、更に深く知れたし、小松先生の研究時の興奮が伝わってくるようだった。