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2014/11/8 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2023/12/19〜12/23
3年半ぶりの伊藤作品は早逝した伊藤計劃氏の第3長編で、亡くなったため中断してしまった作品を円城塔氏が完成させたもの。
屍者を生み出し、活用した社会を通じて、現代の人間社会を風刺的に描くSF。ホームズの相棒ワトソン博士や、チャールズ・ダーウィンなど有名なキャラクターや人物も登場。
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伊藤計劃の遺稿を円城塔が書き継いで完結させた作品。
単行本を持っているので文庫化のついでに再読……のつもりが、暫く放置していた(その間に何故かイラストカバー? 帯? になっていたw)。
単行本のメモにも書いたような気がするが、文体の変化はさほど顕著ではないが、特に終盤になってからは、円城塔作品ではお馴染みのモチーフである『言語』の存在感が大きく、そういう意味でこれは矢張り『円城塔』の作品なのだろうと感じる。
反面、『屍者が労働力である世界』という想像力は伊藤計劃的。個人的には上手く絡み合って読み応えがある作品に仕上がっていると思う。
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屍者化の技術が全世界に拡散した19世紀末、英国秘密諜報員ジョン・H・ワトソンの冒険がいま始まる。天才・伊藤計劃の未完の絶筆を盟友・円城塔が完成させた超話題作。日本SF大賞特別賞、星雲賞受賞。
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死者を動かしたものが屍者であり、屍者の王国を作ろうとするカラマーゾフ。それを追うワトソンたち。
これらの関係で屍者についての技術や存在についての話が進んでいくと思えば、あっさりとカラマーゾフに追い付いてしまう。予想外の展開だった。
死者を動かした存在というとバイオハザードのようなゾンビを思い浮かべるが、そういうのとは異なっていた。死者にソフトウェアを書きこみ動かすというのは面白い発想だと思った。
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この物語の始まりも衝撃的だが、終わりはさらに衝撃的。
19世紀のサブカルチャーのオンパレードの今作。
歴史に残るのは当然なんだろうな。
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歴史改変奇想天外冒険スペクタクル活劇。伊藤計劃の進化を見た。あとがきでは円城が「伊藤ならどう書くか、などといったことはナンセンスだ」みたいなことを言ってたけど、実際この作品は「虐殺器官」「ハーモニー」の系譜、さらにその先に位置すると思う。かっこよくて面白くてハマる。上質なエンタメを「ありがとう」と言いたい。
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時は19世紀のロンドン。死体にあるソフトウェアをアップロードすることで「屍者」として動かし、労働力として活用することが一般的になっているこの世界において、優秀な医学生ジョン・ワトソンは諜報機関の大物「M」の誘いを受け、大英帝国の諜報員として英領インドに旅立つ。目的は、「屍者の帝国」を作ろうとした男の秘密を探り出すこと。次々と現れる謎の協力者たちやライバルたちや美女との権謀術数をくぐり抜けながら、戦乱のアフガニスタンへ、開国直後の日本へ、興隆著しいアメリカへ・・・世界各地を転々とするワトソンは、やがてある書物が全ての謎を解明する鍵となることを知る。その書物は今どこに?そして、書物と屍者をめぐる壮大な可能性とは?
夭折したワン・アンド・オンリーなSF作家・伊藤計劃が書き遺したプロローグとプロットとを基に、円城塔が完結させた合作。
伊藤計劃も円城塔も、どちらも読んだことがある鴨としては、全くテイストの異なるこの二人の作家がどのように融合あるいは化学反応を見せているのか、その点を楽しみに手に取ってみました。伊藤計劃のプロットに忠実に書き進めたとはいえ、伊藤計劃自身が手がけたのはプロローグの30ページ程度のみ。たぶん相当に円城塔寄りの作品になっているのでは、と予想してたんですが、読了後の感想は「思ったよりも伊藤計劃」でした。
といっても、他の伊藤計劃作品とはかーなり違います。ジャンルとしては歴史改変もの、更に絞ればスチームパンク。これまでの伊藤計劃作品は現実社会と地続きの世界観の中、やたらと内省的な登場人物たちが個人の内面でいろいろと葛藤しつつ社会との軋轢にも苦しむというダークでクールなイメージで統一されていますが、この「屍者の帝国」はもぅ登場人物からしてパロディそのものですし、キャラの立ちまくった漫画的な脇役たち、スラップスティックな場面展開とド派手な戦闘シーン、ファンタスティックで絵画的なクライマックスと、何ともまぁ賑やかなこと賑やかなこと。正直なところ、少々とっ散らかって収拾がついていない印象も無きにしも非ずです。
が、そんなおもちゃ箱のようなストーリー展開の底辺を重低音のように貫いているテーマ、「言葉と認識」「言葉と人間」の関係性というテーマが実に伊藤計劃的なんですね。「虐殺器官」も「ハーモニー」も、同様のテーマあるいは問題意識から書かれた作品だと鴨は理解しています。そういう意味で、この作品はまぎれもなく伊藤計劃の作品と言えますし、そこを最大限尊重してラストまで書き切った円城塔の力もたいへんなものだと鴨は思います。まぁ、クライマックスに至るまでのファンタスティックな突っ走りぶりは、伊藤計劃のプロットに従ったとはいえ思いっきり円城塔ワールドになっちゃってますがヽ( ´ー`)ノ
ただ、鴨的には残念ながらストーリー全体のとっ散らかりぶりが目についてしまい、かつSFというより幻想小説だろコレといった印象もあって、面白かった!と言い切るには至らないところ。どちらかというと、円城塔慣れしている人にお勧めかもしれません。伊藤計劃しか読んだことのない人がコレを読むと、相当ビビると思います(笑)
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何とも難解と言うか入り組んでると言うか。
有名な人名がたくさん出ていて、もっとゆっくりこれはあれであの作品で、みたいに読めたらもっと面白いのかなぁ??
最後ハダリーがあの人になったのがちょっと胸アツでした。
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虚・実、様々な登場人物(オールスターキャスト)が
生者、死者、屍者の存在を追って
『虐殺器官』ってどんなはなしだったっけ
『ハーモニー』って(以下同文)
あとがきの潔さをみても、
詮なきことと思いながらも、思わざるを得ない。
でも、ひとこと「ありがとう」
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伊藤計劃が遺したプロローグから円城塔が作り上げた、伊藤計劃と円城塔の合作歴史改変オールスターSFアクション小説。とにかく史実上の人物や作品がてんこ盛りで、いちいち元ネタを調べていたら読むのに恐ろしく時間がかかった。しかし、そんな読み方も楽しかったりするのが、この小説の面白さでもあるのではないかと感じる。
伊藤計劃と円城塔は文体が違いすぎて(という以前に円城塔の小説は何を言っているのか理解できない)、どんな小説になるのか疑問だった。しかし、読み終えての感想は「円城塔も普通の小説書けるんだ。」だった。しかも面白い…
作品の世界は、死者を蘇らせて利用している19世紀が舞台。医学生のジョン・H・ワトソンがヴァン・ヘルシング誘われ、ウォルシンガム機関のエージェントとなり、屍者の一団を率いてアフガニスタンに潜伏しているとされる、カラマーゾフを追う。
その後、カラマーゾフからの依頼を受け、フランケンシュタイン博士により作られた「最初の屍者、ザ・ワン」を追い求めて日本・アメリカから最後は大英帝国へと旅をしていく。
序盤はアクションっぽい要素も多くてワトソンと一緒に旅をするバーナビー達との掛け合いもコミカルで面白い。中盤から、話は複雑になっていき、最後の展開はいろいろ複雑すぎて、正直良くわからなかったけど…
テーマは「魂」。作中でワトソンや様々な史実上の人物から「魂の出自は」「死とは」等について多種多様な見解が述べられる。
難しいことを考えながら読まなくても、アクションものとしても読めるし、じっくり考察しながら読んだり、作中に出てくる人物・出来事・物の元ネタを調べるのもよし。いろんな要素が詰まった素晴らしい小説だとおもう。
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本書は若くしてこの世を去った伊藤計劃が遺したプロットを元に、同世代のSF作家円城塔が書き下ろした本である。
SF小説はそんなによく読むわけではないけれど、伊藤の独特すぎる世界観と、円城のエンタテインメント性は気に入っていたので、かなり期待して読む。
プロットがすごい。主人公は若き日のワトソン。世界一有名な探偵小説のあのワトソン博士である。登場するのはフランケンシュタイン博士のモンスター、吸血鬼退治のヴァン・ヘルシング、チャールズ・ダーウィン、トルーマン大統領、カラマーゾフの兄弟のドミトリー、そして海底二万哩のノーチラス号…
そして舞台は19世紀末、大英帝国がロシアや新興国アメリカと鎬を削り、しかも蘇った屍者を労働力として使うという異常な世界。ゾンビ小説と歴史小説、そして名作文学のモチーフという豪華絢爛無責任大風呂敷広げまくりの設定。こんなプロットで書けと言われた円城がどんな気持ちでこの作品を紡いでいったのか。
読書好きにはネタ探しも面白いし、アクションと謎解きにも事欠かない、徹底したエンタテインメントである。
山田風太郎の「魔界転生」を世界を舞台にして電脳とインターネットを組み合わせたような、といえば少しはイメージ出来るだろうか?
人物にさほど感情移入がしずらいのは、彼らの世代の特徴かも知れない。
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タイトルの淀んだ重さから受ける印象に反してエンタメな内容で楽しかった。
様々な文学作品の登場人物や歴史上の偉人が出てきて、分かるときは反応したり分からないときは検索して感心したり。
最後のフライデーが文庫あとがきの円城塔さんに重なった。
この物語が終わったあともワトソンはホームズと冒険するかと思うと楽しい。
エピローグのハダリーには「お前かー!」と、してやられた感。
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さすが伊藤計劃、というような奇抜なSF的設定。とても面白い。2000年代必読のSF古典じゃないでしょうか。
伊藤計劃らしい設定と文章のカッコ良さ、ストーリーの意外性に加えて、円城塔による深みと難解さが加わっている気がする。(円城塔の作品を読んだことはないけど)
主人公がシャーロック・ホームズに出てくるジョン・ワトソンだったり、ドラキュラの研究者としてヴァン・ヘルシングという教授が出てきたり、イギリス諜報機関のM、アレクセイ・カラマーゾフなどなど別の作品にちなんだ登場人物や設定、さらに実在した人物などがごちゃまぜで登場する。
そんな遊びが散りばめられていて、ついていけないところもたくさんあったものの、知らない部分は調べながら読むのも楽しかった。
(もろもろ勉強し直して、もう一度読みたくなる)
ハリウッド映画のようなスケールの大きさと、ストーリー展開で最後までとても楽しめた。
—
memo:
267
複雑でかつ欠陥のないものは存在しないもの。統計的な性質として常に欠陥は存在する。
298
人間は物事を物語として理解する。
412
「地上で行われる最も大規模で不毛な戦いは、人間によって引き起こされるものではないかね。」
428
人間は矛盾に満ちるが、その矛盾こそが本質だ。
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2014/12/02 購入。伊藤計劃の遺作になった作品だが、遺作と言っても本人はプロローグの30ページ分を書き残しただけで、よく円城塔はこの仕事を引き受けたものだ。まあ日本SF大賞と星雲賞を受賞した時にかなり話題になってたっけ。プロローグだけ読んだけど、かなり面白そうな予感。
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ヴィクターの書の解釈に関する可能性を議論する辺りで、強烈に円城塔が匂い立つ。
だけど、全体的には円城塔らしからず、何が起こっているのか、どこにむかって話が進んでいるのか分かりやすい。
頻繁に交わされる議論は簡単でないが、論理的で緻密。さすが
肉体、意識を工学するのはサイバーパンクのアイディア。
だけど、弄られる側を徹底的に第三者として描く作品はあまり無い。
弄られるのが死者ということもあり、得体の知れなさ、不気味さが醸成されている。
アリョーシャはそれでいいのか?
円城塔の描くガンアクション、真剣の立会いなんかが読めるレア作
爽快感は得られない。にやりとする場面や、可能性の組み合わせの追求なんかのSF的面白さが楽しめる