電子書籍
骨仏で知られた一心寺は入っていません
2022/03/31 23:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
仏閣を巡って語り且つ書く
著者は関西に到来します。
紹介するのは、高野山から四天王寺迄の
10のお寺。
百名山を踏破する、というテレビ番組を、
ふと思い出してしまいました。
投稿元:
レビューを見る
文春文庫の浅田次郎が選んだ短編集に「見上げれば 星は天に満ちて」というのがあって、そこに載っている井上靖の「補陀落渡海記」はかつて和歌山県の補陀落山寺で行われていた観音菩薩信仰の一つの儀式をモチーフにした物語で、とてもインパクトがあるお話だった。
百寺巡礼の旅は四たび関西に戻って、熊野は青岸渡寺の項に補陀落山寺も登場し、しばしそこに描かれた高僧の心の葛藤を思い起こす。
しかし同じ関西とは言っても高野山から熊野から、京都や奈良へもよう行かん身にはとても遠いよねぇ。
相変わらず四方八方に広がる話。道成寺の名は聞いててもそれ以上は知らない安珍・清姫の絵解きの楽しみ。
鶴林寺の太子像の凛々しさに驚き、そこかしこに顔を出す役行者の大らかさに癒される。
大念佛寺や四天王寺の懐の深さにはさすが大阪というところを感じ、西国三十三所の観音様が勢揃いする粉河寺や四国八十八箇所のお砂を集めた観心寺に至ってはサービス精神もここまでと微笑ましく。
投稿元:
レビューを見る
本巻に限らず、シリーズ全体を通じていえることですが、「民間信仰」に対する著者の敬意のこもった目線が印象的です。
投稿元:
レビューを見る
著者の同タイトルの本はたくさん出ており、装丁も似ているため、意識して読まないと、どの本だったかわからなくなりそう。
この巻は関西編。手広い範囲に渡り、見どころの多い寺を紹介しています。
まずは空海の寺として名高い東寺と高野山。都心にあるものと人里離れた場所にあるものという対照的な2つの寺を主として真言宗を広めていった空海についての考察が語られます。
オーガナイザーとしての空海の仕事に注目する著者。
たしかに、彼が信仰のみにいそしむ聖職者だったら、ここまで密教を広められなかったことでしょう。
また、熊野三山の聖地は、廃藩置県が行われた時にマークされ、三重・奈良・和歌山の三県に分断されたとのこと。
宗教の力を削ぐ目的で県が置かれたのですね。
その後の神仏分離令による廃仏毀釈で、熊野三山は徹底的に破壊され、さらに神社の合祀により、和歌山県は六分の一、三重県は七分の一にまで神社が減少したと知りました。
神社合祀に、南紀出身の南方熊楠が反対運動を起こしたことは知っていましたが、これほどまでにすさまじい状況だったとは。
あまり語られないものの、確実に明治の過渡期に繰り広げられた宗教上の激しい闘いが想像されました。
また、神武天皇が八咫烏に導かれて熊野越えをした話は、単なる伝説だと思っていましたが、南九州から来た大和政権が熊野で先住民と激烈な戦いを展開した場所だからだと著者は推測しており、伝説は事実に根ざしているやもとの可能性を知りました。
大阪の四天王寺は千四百年の古い歴史の中で七度焼け、そのたびに再建されてきました。
特記すべきは、国や大企業の援助ではなく、大阪の庶民の手によって毎回復興されてきたとのこと。
庶民の強い信仰心を感じます。
空海と親鸞を祀る堂があるとのこと。
至便な場所にあるものの、逆に訪れたことがないので、今度じっくり参拝したいと興味がわきました。
それにしても、著者が役行者のファンだったとは意外。
時々目にすることはありますが、特段気にせずに過ごしていました。
これからは、伽藍の隅にいる役行者に注目することになりそうです。
投稿元:
レビューを見る
第六巻では、和歌山・大阪・兵庫など関西の寺がとりあげられています。
高野山をおとずれた著者は、空海がこの地に道場を開く前から、山岳信仰の聖地であったことに注目し、仏教が在来の神と融和し、それをとり込みながら信仰のかたちがつくられてきたことに触れています。これまでも著者がさまざまな機会に語ってきた、日本の仏教に見られる「寛容」さですが、空海という人物には、たしかにさまざまな信仰のありかたを包み込んで総合するような広さを感じます。
また融通念仏宗の総本山である大念仏寺では、開祖である了忍の像を、すばらしい美声で声明をとなえるシンガーにたとえるなど、著者らしい表現が見られて、おもしろく読みました。