紙の本
国名ではなく……家名で語られる
2017/12/27 17:29
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投稿者:くろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
400頁超えの厚さで量、内容ともに読み応えのある一冊でした。
ハプスブルク君主国の勃興から消滅までを、政治、文化、社会を関連づけた俯瞰的な視点でとらえた通史。
ハプスブルクのイメージにつきまとう王朝ロマン風な華やかさを排し、
検証と考究を重ねた歴史学の書として叙述してありますが、
引き込まれてどんどんハプスブルク家に感情移入していってしまいました。
フランス憎し、イギリスへは不信感、フリードリヒ大王ひどい!
最近の研究成果に基づく新知見も多く取り入れられていて、
従来の人物像とは違った側面を知ったり、
いままでの評価を覆すものもあったりして、興味深く読みました。
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高校時代は日本史選択。
世界史の基礎が無いもんで知識を得ようと
”ローマ帝国”・”ハプスブルク家”といったような
新書本が本棚に何冊も・・・
・・・読まねばw
追記:読み終わりました。かなり読みやすかったのですが
如何せんハマダの世界史知識がなさ過ぎて辛いw
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===qte===
ハプスブルク帝国 岩崎周一著 再考迫られる「連邦国家」像
2017/9/23付日本経済新聞 朝刊
10世紀ごろ歴史に姿を現すハプスブルク家。1273年にルードルフ4世がドイツ王に選定された後、同家は有力諸侯との婚姻を活用して勢力を広げ、最盛期にはドイツからスペイン、中南米、アジアまで「日の沈むことなき」一大帝国を築いた。
滅びたのは第1次世界大戦さなかの1918年のこと。その千年近い歴史を語ることは、中世以降のヨーロッパ史を見渡すのとほぼ同義で簡単ではない。難題に挑んだ本書は帝国の勃興から崩壊まで、国内外の豊富な先行研究に基づいて易しく説き起こす。政治・経済から文化まで幅広く目配りし、帝国を知る格好の入門書になっている。
興味深いのはいまだに揺れ動く帝国への評価だ。崩壊後から旧支配地域にはファシズムや社会主義が吹き荒れた。「東欧革命」後も同地域の歩みは決して平たんではなかったため、帝国を懐かしむ風潮が生まれた。
特にユーゴ内戦での凄惨な民族浄化の経験はナショナリズムの問題を浮き彫りにした。その反省から、帝国を過度なナショナリズムを抑え、多様な国・民族を包含した「連邦国家」の先進事例とみる研究が盛んになった。欧州連合(EU)の足並みが乱れ、緩やかな統合というその理念が危機にさらされている今は、そうした歴史像は再考を迫られる可能性があるという。(講談社現代新書・1000円)
===unqte===
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これはおもしろい。ハプスブルク家というと、美術史に名を連ねるパトロンという拙い知識しかなかったが、1000年もの長きにわたって帝国を統治してきたヨーロッパ史そのもの。啓蒙主義や市民革命後もなお国家としてあるポジションを取り続け、世界大戦前後のナショナリズム、ソーシャリズムの台頭なるべくしての現状ともいえるが、歴史の分岐は紙一重だと感じた。
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ハプスブルク家に関する本は既に数多あり、そこに新たに切り込むには何らかの新奇性が必要なのだろう。本書にも「新たなハプスブルク家」像を描き出す様々な試みが散見される。例えば、王国の支配には中世ヨーロッパ封建制を支えた「諸身分」の支持が不可欠であったことを根拠に、当家が政略結婚で伸長した勢力であるとのステロタイプを否定しようとしている。曰く、政略結婚は世の常でありひとりハプスブルク家に限ったことではない、と。
では、ハプスブルク家がヨーロッパの大勢力になるべくしてなったというその理由は、本書ではどこにあるとされているのだろうか。強いて一言でいえばそれは、カール5世の治世で確立された「複合君主政国家」的性格が他国家よりも顕著であったということなのだろう。本書では、普遍主義に基づく宗教的統合の試みの挫折や、30年戦争やスペイン承継戦争を経て、ハプスブルク帝国が複数の主権国家よりなる寛容な「帝国らしからぬ帝国」となっていく過程が描かれており、後のEU構想の原型が透けて見えるようで興味深い。
しかし一時は19世紀以降の民主主義国家を先取りしたとも見えるこの進取性も、当家が神に選ばれし王権であるという根強い「選良意識」「神権的君主理念」から生ずるパターナリズムにより、その発現を阻まれることになる。啓蒙主義も自由主義も、当家においてはエリートの体制維持が保証される範囲内で称揚されたに過ぎなかった。19世紀のヨーロッパを席捲したナショナリズムでさえハプスブルク君主国の枠組の中で各国民の自主性の獲得を目的とするものに限定され、君主制の権威主義を護持する範囲での社会の改良が志向された。そのため代議制や立憲制への移行が遅れ、国内マイノリティたるスラヴ系民族の扱いを誤った挙句サライェヴォ事件の遠因を作り、さらに国内調整の遅滞から経済停滞を招き富国強兵でも他国にも後れを取ることとなる。
全編を通じて、民族的多様性から多くの文化的果実を得つつも、その錯雑さに翻弄される君主国の苦悩が描かれているが、これこそが著者が本書で浮かび上がらせたかったハプスブルク君主国の本質なのではないかと思った。ハプスブルク君主国が、「帝国」の概念を多様性さえも抱合するより上位の概念に昇華させた、とする終章での著者の指摘が、悲劇の国家として扱われることの多いこの国にとってはせめてもの救いといえるだろう。
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良いも悪いもない。ハプスブルク家の歴史を知る書物なので星3,。
学校の勉強ではわからなかった詳細がわかったことかよかった。
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20171128〜20180104 一千年以上に渡る一族の興亡を新書にまとめるのは大変な作業だったろうな、と感嘆します。自分もハプスブルク家と言うと華やかな女帝や王妃のイメージが強いのだけど、それだけではない本質を分析している好著だと思う。
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ハプスブルクの歴史はヨーロッパの特徴を実に分かりやすく示してくれる。特に中世から近代に至るまでの欧州のあり方を知る上では不可欠の知識であることが本書を読むことによって確認できた。
多民族国家、多宗教他宗派、立場の異なる権力者たちの連合と敵対、それらに折り合いをつけるための巧妙なシステムとその制度疲労と崩壊、それらの繰り返しが同時多発的に起きるのが欧州史の特徴だ。
本書は通史的にそれを把握できる入門書だ。ウイーンに関係する芸術に対する見方はこれで大きく変わった。
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気になっていたハプスブルク家について知っておこうと思い手に取った一冊。研究者が一般向けに書いた新書なので、多少堅い感じもしますが、それなりに読みやすかった。ハプスブルク家の1000年を通じて、馴染みの薄い中欧・西欧の歴史と地理が少し身近に感じられ、機会があれば訪問したい気分になります。高校時代、現代の国民国家の知識で世界史・西洋史をざっと学んだときは、神聖ローマ帝だとかオーストリア・ハンガリー帝国なんて言われても全く分からなかったが、本書を通じて雰囲気をつかめた。日本の歴史との比較、特に明治維新から世界大戦までのあたりを比較するとより楽しめそう。中欧・東欧という内陸の多民族における君主制の歴史から、日本という島国での天皇制というものを客観視することができそう。戦後のヨーロッパの統合(EU)を経て再びナショナリズムの高まる昨今、第一次世界大戦によるハプスブルク君主国の崩壊に重なり、歴史の繰り返を見ている気がしてきます。と言うことは、また戦争の足音が近付いているのかもしれない。もう始まっているのかもしれない。
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『「ハプスブルク史には、手頃な通史がない」……一般の人々に伝わる形でもっと紹介する必要があるのではないか。』その著者の思いが結実した格別の一冊。ハプスブルクの始まりから君主国の成立、展開、君主国崩壊後のハプスブルク家の動向を現代に至るまで、その千年を最新の研究成果を反映して描く。政治史に留まらず社会や文化も取り上げる。著者が伝えたいという『「学問としての歴史」がもつ独自の魅力』が十分に伝わる内容で文章も読みやすい。この本を入口に次は著者が参考にした膨大な文献に著者の後を追って分け入るのも良いかもしれない。
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ハプスブルク帝国の歴史について世界史を縦の切り口で切り取った本。国立西洋美術館で開催されているハプスブルク展に行く前に読んでおけばよかったと後悔。
分厚い本だが、流石ハプスブルク帝国。ヨーロッパの主要な出来事にほとんど関わっており、人名などを除けば専門的な知識なしでも読める内容になっている。
むしろ、世界史Bの知識の隙間を埋めてくれる良書になっている。
通史をもっと読んだ方がいいなと感じた一冊。
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2020.11.1読了。
戦争、領土拡大、王位継承が繰り返し書かれて、音楽家、学者に話題が転換。最後はオットー・ハプスブルクの逝去で終わる。
オーストリアは保守主義と進歩主義が関わり合って、保守化した印象。
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【ひとこと紹介文】
「汝、結婚せよ」は家訓ではなかった?
神聖ローマ皇帝は選挙で選ばれていた?
広大な領地を有し、「日の沈まぬ帝国」に君臨したハプスブルク家1000 年の歴史を最新の知見でまとめた 1 冊。
あなたの知らない欧州事情がここにある。
(ナノサイエンス学科 Mさん)
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日本人にはわかりにくいが
世界に影響を与えたハプスブルグ家の通史。
ヨーロッパの国々のつながりが少し理解できた。
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高校時代に世界史をとっていなかったので、欧州史に関する知識はほぼゼロだったが、入門者にも読みやすく概要を理解するのには役立った。ただ記述がいかにも教科書チックで、内容が面白かったかというと。。。