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増田俊也はいつも理不尽の先にある真実を描きます。バーリトゥード、高専柔道、そして今回はジャーナリズム。相変わらずど真ん中じゃなくて、地方紙の、そして地方のNo.1紙じゃなくて、それも取材記者ではなくて整理部員という隅の隅の物語。そこも最果てではなくてその先に印刷、販売という新聞にとっては欠かせない役割を背負った新聞人たちが存在するのです。物語の舞台が北海道という最北のエリアであることや白系ロシアやアイヌの血を受け継ぐ登場人物によって差別というテーマへの向き合いも強く押し出されていました。社会をつくっている今まで会っていなかった人間との出会いによって、その無言のプロフェショナリズムの影響によって、少年が大人になっていく、という成長譚は「七帝柔道記」でおなじみの著者の最も得意とするところ、わかっていてもラスト不覚にも目が潤んでしまいました。またラストスパートでの新聞学講義はそれだけスピンオフでまとめて欲しいです。ただ高専柔道と同じようにジャーナリズムに対しても滅びゆくものの挽歌になっていないか?と心配になってしまいました。とにかく「働き方改革」という言葉の徹底的な逆。もはや神話?
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2017.10 理不尽すぎる会社生活にリアリティが感じられないし、途中で描かれていることが散らかったままな感じで、中途半端に感じてしまいました。七帝柔道記は理不尽ながら印象に残る小説だったのに。
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清々しい読後感に満たされながら、レビューを書いています。
うん、いい物語です。
舞台は北海道に実在した新聞社「北海タイムス」。
実は著者の増田俊也さん自身が、新卒でこの北海タイムスに入社し、記者としてのキャリアを出発させています。
そのため、当時の社内や周囲の状況はまさに微に入り細を穿つような詳しさで夢中で読み耽りました。
主人公は、北海タイムスの記者として社会人生活のスタートを切った野々村巡洋という青年です。
しかし、野々村は希望した取材記者ではなく、整理部に配属され、内心、不貞腐れて仕事をしています。
直属の上司である権藤は野々村に殊の外厳しく、指示されるまま原稿に見出しを付けて渡しても、丸めてゴミ箱に捨ててしまいます。
野々村は悔しいのと自分が情けないのとで何度も人目の付かないところで涙を流し、何故、自分がこんな目に遭わなければならないのかと呪詛を吐きます。
さらに給与は超が付くほど安く、同僚の中には食い詰めて休日に日雇い仕事に行く者もあるほど。
まさにワーキングプアという表現がぴったりです。
にも関わらず休みはほとんどなく、連日、12時間を超す超過勤務が続き、社主催の花火大会やマラソン大会などのイベントにも無償で駆り出されます。
今だと、間違いなく「ブラック企業」に認定されるでしょう。
そんなわけなので退職者が続出し、各部署とも欠員状態が慢性化しており、それが社員に一層の負担を強いる悪循環に陥っています。
野々村自身も酒におぼれ、女にはフラれと、光の見えない鬱屈した日々を送っています。
ただ、野々村の同僚や先輩の中には、貧乏をものともせず明るく立ち振る舞っている人がたくさんいます。
何より、野々村の直属の上司である権藤を含め、北海タイムスに勤務するほとんどの人間が北海タイムスを愛し、プロとしての自覚を持って仕事をしています。
そして、あることがきっかけで、野々村も前向きに仕事に向き合い、「新聞人」としてまさに成長を遂げんとします。
ここが本作の白眉で、読んでいて胸が熱くなりました。
これから読む方の興趣を殺ぐことになりかねませんので、詳しくは書きませんが、仕事に前向きになった野々村が新聞の歴史や制作について学ぶ場面は、著者の豊富な経験と膨大な知識が生かされていてまさに圧巻でした。
最後は感動で目頭が熱くなりましたね。
実は、自分はかつて業界紙で記者をしており、旭川支社勤務の時に「北海タイムス」のM記者と親しくなりました。
また、年配のK記者には、報道用の駐車スペースに車を止めていて怒鳴られたことがあります。
女性のA記者は小柄なのにパワーがあって、タイムスを退職後は道新、そして朝日へと移って活躍している由。
そんなわけで親近感も手伝って充実した読書となりました。
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怒涛のワーキングプア
ものすごく過酷な職場
北海タイムス
実在した会社だそうです
とても面白かったけど疲れました
あまりにすさまじくて
新聞発刊の苦労が身に沁みました
≪ 熱血は どこから生まれる 愛情か ≫
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新聞の存在価値はあるのか疑問に思っているが、地方紙が必死で生き残りをかけていた当時の精神を大切に、横並びではない記事で紙面作りをしてほしい!
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面白かった。先輩の言葉が熱いし泣ける。海難事故の話も実話なんだろうか。
北海タイムス事件の法廷も熱かったんだろうなぁ,と読み返したくなる。
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「七帝柔道記」の続編的小説。今は無き新聞社・北海タイムスを舞台にしているものの、新入部員が新入社員に置き換わっただけで、出てくる人々もノリもほとんど「七帝柔道記」のような体育会系青春小説です。新聞社がどのように毎日新聞を作っているのか、その組織の動いている様を垣間見ることができるのも興味深いところです。現在の地方紙がどうなのか分からないが、登場人物達は今風に言えばあからさまにブラック企業な働かされぶりです。ですが、クラブ活動のように会社を愛して仲間と留まる様がまさに「七帝柔道記」と言えなくも無い。本作の主人公は著者の増田さんではなくなっているけど、北大柔道部中退の新入社員「松田」として登場します。
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全国紙の採用試験に落ち、やむなく北海道新聞社北海タイムスに入社した野々村巡洋。
同業他社の6分の1の給料に4倍の就労時間。
もはや無くなってしまった実在の新聞社を舞台に、主人公の成長と青春が描かれます。
似たような業界にいたので、共感するところ満載です。
仕事ってこうだったったなぁと、とにかく熱く読ませます。
全く違った仕事をしていても、主人公や周りの人々に共感すること間違いなしです。
超お勧めです!
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年号が昭和から平成に変わる頃の地方新聞社が舞台。著者が実際、元新聞社の記者だから当時の過激な働き方を表現した作品のようです。
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労基の方がお読みになった時の対応は想像に難しくありませんが、こんな世界もあるのも現実なのかも。
例えば新たにビジネスを立ち上げようとされている若者は、今でもこんな生活をしているかもしれませんね。
他人に強制する気は毛頭ありませんが、ここまで仕事に若いうちに打ち込めたら、この先何があっても超えていけそうです。
私にとっては前向きな気持ちになる本でした。
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内容(「BOOK」データベースより)
平成2年。全国紙の採用試験にすべて落ち、北海道の名門紙・北海タイムスに入社した野々村巡洋。縁もゆかりもない土地、地味な仕事、同業他社の6分の1の給料に4倍の就労時間という衝撃の労働環境に打ちのめされるが…会社存続の危機に、ヤル気ゼロだった野々村が立ち上がる!休刊した実在の新聞社を舞台に、新入社員の成長を描く熱血お仕事小説。『七帝柔道記』の“その後”を描く感動作。
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新聞記者の卵が成長するまでの物語。
今は紙媒体は元気がありませんが、
物語は平成2年の日本を舞台にしています。
この年は、皇太子の弟君礼宮さまと紀子さまの結婚で湧いた年。
まだまだニュースペーパーが主流でした。
物語の主人公・野々村巡洋は、
大学在学中、新聞記者をめざし、
全国紙の採用試験を何社も受けますが、すべて不合格。
仕方なく、たった一つだけ合格した、
北海道の名門紙・北海タイムスに入社します。
それまで縁も縁もなかった北海道という土地柄に加え、
他の新聞社に比べ、6分の1の給料と4倍の就労時間、
という圧倒的な待遇の悪さに打ちのめされます。
しかも、配属先が希望する社会部記者ではなく、
社内で、紙面のレイアウトや見出しをつける
地味な仕事をしている整理部となり、
野々村は大いに失望し、仕事への意欲もなくします。
一年辛抱して、来年は大手を受けなおして
再就職するぞ、と思っていた野々村ですが、
北海タイムスの直面する危機を知り、
厳しいばかりで嫌だった上司・権藤の仕事への想いを悟って
一大決心をしました。
小さな地方の新聞社というものがよく書かれています。
こんなに現場はドタバタと大変なんだとビックリしました。
かっこよく見える記者に比べて、
地味で目立たない製作や校正の仕事。
でもそれがなければ、新聞は出来上がりません。
作者は自分の体験を基にこの小説を書かれたようですが、
新聞記者一年生としての社内での仕事や
新聞ができるまでの一連の流れもよくわかりました。
今はもっとデジタルな仕組みになっているのでしょうが、
それでも夜勤もあるでしょうし、
何かあれば徹夜仕事になることもあるでしょう。
「ニュースを読者に届ける!」
新聞の役割がとてもよくわかる作品でした。
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アラを見つけようと思えばいくらでも見つかる。例えば、後半までの主人公のダメっぷりがひどい。女性経験の少なさを露呈させる男女関係の機微を弁えない運び。仕事を頑張ると女にも好かれるという童貞臭い構図。
体育会系の部活に打ち込み格闘技のルポルタージュを手がけてきた著者だからこそ、書き得た新聞の熱さ。そして、記者はリベラルでなければならないという思い。
信頼できる読み応え。最後まで信頼しきって初見の小説を読んだのは久しぶり。
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北海タイムズの整理部に友人がいたので、親近感を持って読んだ。お仕事小説の舞台となっただけで、実態とは違うのかな? 後半の権藤さんのレクチャーはジャーナリスト必見。
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壮絶な仕事環境ですが、最後はその会社と仕事を愛せる。なかなか出会えない幸せです。職場は仕事内容以上に共に働く仲間。明日からも元気に仕事しようと思えました!