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雑草や植物の生存戦略について書かれている。ヒトの営みに応用できる部分もあり、良い学びを得られた。文章は平易で読みやすく、その割に内容は自然科学の専門知識のため満足感が高い。
本書では具体的な植物名が挙げられることがあるが、写真資料は載っていないため、読者が自分で調べると理解がしやすくて良いだろう。
以下はわかりづらかった点のメモ1つ目。
93ページ「そのため、裸子植物はすべて風媒花である。」
94ページ「ところが、花粉症の原因にもなる風媒花の中には、ブタクサやイネ科雑草など、被子植物のものもある。昆虫に花粉を運んでもらう虫媒花は、効率が良いが、昆虫がいないような環境では、どうすることもできない。そのため、花粉を運ぶ昆虫が少ないような環境では、再び風媒花に進化しなおしているのである。」
つまり、裸子植物には風媒花しかないので虫媒花はない。被子植物は風媒花も虫媒花もあるし、風媒花は裸子植物も被子植物もある。元々は裸子植物の風媒花から始まり、裸子植物から被子植物(風媒花)へ進化して効率を上げて、さらに被子植物の風媒花は虫媒花へ進化してさらに効率を上げたという順序だろう。
以下はわかりづらかった点の2つ目。
96ページ「それでは、AAとaaを掛け合わせてみるとどうだろう。」
このF1や次のF2についての説明自体は理解できるが、どうやってAAとAaを区別してAAを選んで使えているのかがわからなかった。読了後の今でもまだ理解できていない。優性形質の親2つを配合して、第2世代が全部優性形質だとしても、これだけでは判断できない(親がAAとAaでも成立する)。…と思っていたが、今この文を書きながら気づいたのだけど、さらにこの全部優性形質だった第2世代から第3世代を作って、ここでも全部優性形質だったら、この家系で出てくるものはAAしかいないとわかるから判断がつくということか。
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「「抜いても抜いても生えてくる、粘り強くてしぶとい」というイメージのある雑草だが、実はとても弱い植物だ。それゆえに生き残りをかけた驚くべき戦略をもっている。厳しい自然界を生きていくそのたくましさの秘密を紹介する。」
目次
第1章 雑草とは何か?
第2章 雑草は強くない
第3章 播いても芽が出ない(雑草の発芽戦略)
第4章 雑草は変化する(雑草の変異)
第5章 雑草の花の秘密(雑草の生殖生理)
第6章 タネの旅立ち(雑草の繁殖戦略)
第7章 雑草を防除する方法
第8章 理想的な雑草?
第9章 本当の雑草魂
著者等紹介
稲垣栄洋[イナガキヒデヒロ]
1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する著述や講演を行っている
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「雑草魂」は力強さのことではなく、多様性のことだった!
「雑草魂」という言葉があるように、雑草には力強いイメージがありますが、そんな雑草も実は巧みな戦略をもってサバイブしていることに、この本を読んで驚きました。
商品として売り出される野菜や花などの作物は、人間があつらえてくれた良質な土壌に植えられ、人間の手で守られ、収穫時期や性質は一定に管理されています(今をときめく言葉「多様性」とは真逆!)。しかし雑草は当たり前ですが人に世話してもらえません。むしろ引っこ抜かれたり刈られたり、除草剤をまかれて邪魔者扱いです。しかしそんな雑草のことを嫌っている人間のそばでないと、雑草は生きられない。人間と雑草は不思議な関係なのです。
雑草はコンクリートのひび割れだの、ビルとビルの間など、人間に近いところでよく見かけるのですがそれには理由があります。人間にとって雑草と認定されている植物は、山林など豊かな自然の中では繁栄ができません。人間の目に癒しを与えてくれる緑は、その実、生存競争のるつぼであり、その過酷さは私の想像を遥かに超えていました。隣りの草花より少しでも多くの日光を浴びて、少しでも多くの養分を土から得なければならない。土の上でも土の中でも銃弾が飛び交っている戦場のなかでは、雑草は他の植物に負けてしまうのです。力強いイメージの雑草は、意外にもかよわいものだったのです。
人間のそばに生きる道を見つけた雑草は、他の強い植物たちから逃れ、安住しているように思えますが、そこは人間の暮らす場所。人間の都合でいとも簡単に荒らされます。道端に咲いていても道路工事で掘り起こされ、畑に芽吹いても耕され、、、。しかし雑草たちは長い人間との共存の末に多様性を身につけます。同じ品種でも芽が出る時期をずらしたり、虫や風などによる受粉が叶わない場合は、最悪自分の雄しべと雌しべで自家受粉して種を残すなど、人間社会の変化に対応してどんな過酷な状況でも粘り強く花を咲かせ、種を残そうとします。「雑草は抜いても抜いても生えてくる」と言われますが、それは力強い一点突破の生命力ではなくその逆、変幻自在の多様性のたまものだと本書を読んで分かりました。
しかし、この本を読んでいると人間はこんなに雑草のことを嫌って対策を練っているはずなのに、それがまるで雑草の進化を手助けしているかのように思えてきます。人間と自然の関係性は一筋縄ではいかないものだとしみじみ思います。
何も考えずただ生えているだけに見える雑草。しかしその実は戦略に満ちた生を送っていることが本書で分かりました。ひるがえって、人間も生きてるだけで戦略的で、生に対して充分アクティブなのかもしれないと思います。今を生きている全ての人々は、たとえ社会の役に立っている実感がなくても、誰かのために生きられなくても、人生がステップアップできていると思えなくても、輝いていなくても構わない。「なんにもせずただ生きてるだけ」という人がいるとしても、それは「なにもしない」ことが自分にとって有利だという無意識な戦略をとっているとも言えます。個体は生きてるだけ、自分を生かしているだけで生物としての生を全うしていると思います。人間という「種」の単位でなく、いち人間、いち個人という立場で語るなら「こう生きたい」という希望はもちろんありますけど、いち生物としては生きてるだけでアクティブだと思います。そう思えたら色々とラクになれそうじゃないですか。
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雑草の面白い話は勿論ながら、雑草の生き様を通して著者が何を想い、何を楽しんでるのかがよく伝わってくる良書だと想いました。
中高生くらいから大人まで、幅広く楽しめる、雑草学&人生哲学書。
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雑草とは闘わないことにしている。負けが決まっているからだ。しかし、踏まれると弱いのが雑草だと知った。抜かれても地下には限りなく種があり、種を生存させ続けることが雑草の使命なのだ。