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生業である対人援助職について、クライエントの「伴走者」と例えられることがある。
「誰かを助けるのではなく、その誰かとともにあろうとする者、互いを信じ、世界を共にしようと願う者」
自分はそんな風に伴走できているか。
自分の弱さを恥じずに、ちゃんと誰かや何かに頼ることができているか。
スポーツの話だけれど、そんなことを考えながら読んだ。
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・「なぜ目の見えない者がここに来たのだ」
「彼自身を変えるためです」
「お前は何者だ」
老人は怪訝そうな表情になった。
「俺は伴走者です」淡島は胸を張った。「革命家にだって伴走者はいたでしょう」
伴走者はレースを共に走るだけの存在ではない。誰かを応援し、その願いを叶えようと思う者は、みな伴走者なのだ。
内田の願いを叶えるのが、ここにいる俺の役割だ。伴走者としての俺の役割なのだ。淡島の必死の願いを聞き、老人は静かに目を閉じた。目尻から涙がこぼれ落ちる。
「儂が彼の伴走者だった。彼の革命をすぐ側で見つめてきたのだ」濁りのない瞳は淡島の遥か後ろを見つめているようだった。
・「怖がるのが不思議なんですよねー」
「何で不思議なんだよ」
「だって、それまで何でもできていた人が、急にダメ人間になるんだもん」
「俺たちは視覚に頼っているからな。視覚がなくなると動けなくなる」
そう。その瞬間、強者は弱者になり、弱者は強者となる。光のない世界に入り込めば、視覚障害者は圧倒的な力を持つことになる。
「それなのに立川さんは弱さを見せない」
「どうせ俺は偉そうだよ」
「弱さのない人は強くなれないんですよ」晴は静かに言った。
・
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障害者スポーツの話だが、人と人が信頼しあう事の難しさや、意志の疎通をはかる方法に、万人で違いはない事を思い出させてくれた。
一瞬を争うスポーツの指示を、口頭だけで的確に出す難しさは、想像以上なんだろうと思った。
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見たことはあるけれど全く関心がなかった
障がい者スポーツを支える「伴走者」
一コマ一コマが胸を打つ
単なるスポーツ小説ではなく
人と人との結びつき、自分への厳しさ、相手への想い
読んでよかった
そう思わせてくれた
≪ 伴走者 人の目になり 心解く ≫
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伴走者
視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。
夏・マラソン編と冬・スキー編 収録。
視覚障害者ランナー内田は勝ちにこだわる。
そのための作戦を練る。
駆け引きは、晴眼者のマラソンレースと変わりはない。
ただ、その駆け引きは「伴走者に求められる資質の一つ」という違いがある。
スキー編では、精神面が描かれる。
視覚に障害のある高校生の晴と涼介の信頼関係を中心にストーリーが展開していく。
視覚に障害のある人に対して
どのように接したら良いのか
読者の一人として、思うところがたくさんあった。
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自分が障害者の方とあまりかかわったことがなかったためので、新鮮な視点と触れることができた一冊でした。
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「障害者」と「健常者」。
当たり前にボーダーラインを引くことは容易。
しかし、一皮剥けば、欠けたもの、過剰なもの、その両者にそれぞれ、様々なかたちで存在する。
「当たり前」に見ているだけでは感じとれない物語を、色鮮やかに紡ぎ出す筆者の力は相当なものと感じた。
これからの活躍を期待したい。
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ブラインドスポーツにおいて、アスリートと共に支え合う伴走者。障害の扱い方への戸惑い、捨てられない自分の夢、共に走る意味。伴走する立場における苦悩や快感が感じられる、疾走感のある作品。
「目の見えないものにスポーツができるなどとは最初から誰も思わないのだ。」物語を読み進めていると、この一文にドキリとする。
晴眼者は、目の見えない人を「支える」、いわば「強者」の立場に見える。しかし、物語を通して、気付かされることはとても多い。「関係はいつでも簡単に逆転する」のだ。
物語としては「夏・マラソン編」も好きだが、「冬・スキー編」は響く言葉が多かった。弱さを見せて、相手に頼ろうとしなければ、相手からも信頼されない。これは、伴走者に限らず、人との付き合いの中で大切にしたい。
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パラスポーツの中でも視覚障害者には、ともに走る伴走者が必要だ。
夏・マラソン編、冬・スキー編。
どちらも、自分から望んでではなく、請われて伴走者となった経緯が、ちょっと複雑な心境を感じさせて良かった。
夏編はレースや勝負の駆け引きなどがメインで、冬編は選手と伴走者の心の綾を描いている。
今までよりも、興味を持って観戦できそうな気がします。
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ビブリオバトルで紹介されていて、個人的に1番気になった本。
視覚障害者をめぐる「伴走」の物語。
「目が見えないってだけで、なにもできないと思われる」という強烈な一文が頭から離れない。
マラソン編とスキー編があったけど、わたしはマラソンの方が好き。
障害者スポーツを見る目が変わった。
次のパラリンピック、たのしみだなあ。
わたしには想像力が足りていないなあ。
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パラスポーツや伴走者について、今まであまり意識してこなかった分、作品を通して新しい世界を知ることができました。
目が見えないから弱者で、目が見えるから強者なのか。立場は状況次第で逆転するんだと思います。
「弱さのない人は強くなれないんですよ」(p197)
【冬・スキー編】
晴ちゃんのセリフがすごく響きました。
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「【伴走者(ばんそうしゃ)】=視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたり、伴走(ガイド)をする存在。 資金はない。趣味ではない。福祉でもない。障害者スポーツの世界にあるのは、ひたすら真っ直ぐな「本気」だけ。選手を勝たせるためなら手段は選ばない。伴走者の熱くてひたむきな戦いを描く、新しいスポーツ小説!」
「夏・マラソン偏」
「冬・スキー偏」の2つの話が収録されている。
「マラソンは「苦しさとの戦い」だが、視覚障害者にはこれに「恐怖との戦い」が加わる。だが内田は言う。「長距離を走っていると、恐怖がふっと消える瞬間があるんだよ。」「走っている間だけ、俺は自由になれるような気がするんだ。」走りながら2人は1つになる。たがいが、たがいの伴走者となる。」
(『いつか君に出会ってほしい本』田村文著の紹介より)