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大学入学後の授業で出会ったちょっと空気を読まない女の子。他人の意見に反論しないことで人間関係をやり過ごしてきた楓の世界にその彼女は屈託もなく飛び込んできた。最初は引き気味の楓だったが臆面もなく理想を追求しようとする彼女に半ば引きずられるようにして二人で「秘密結社」を立ち上げる。世界を変えるために、理想を追求するために。やがて組織は大きくなるがそれとともに組織は当初の理念を失ってゆく。目的は捻じ曲げられ、楓は居場所を失い、彼女も彼のいる世界から去って行った。。。
4年になり就職も決まり、ふとしたきっかけで改めて今は変容し巨大化した組織を潰すことを決意した楓。友人の董介やその後輩の協力も得ながら組織を探って行くと...。
それぞれの登場人物が抱く青春時代の痛みが後半ぶはっと噴き出してくる。特に最後は楓が一番痛い奴になって、組織に対する意趣返しは成功するんだけれど、結局彼がやった動機の根底にはなんの正義も理想もない、でもきっと多くの人が身に覚えがあって共感してしまう、自分勝手でわがままで一番認めたくない感情が潜んでいたのだ。そして取り返しのつかない過ちを犯してしまった彼は、何もかも失った喪失の後で新たな道を歩み始める...。
それぞれの登場人物が好きか嫌いかはともかく、彼らの抱く思いや感情はリアリティがあって共感する部分も多くて、決して爽やかだけではない青春小説として良かったと思う。ただストーリー運びに少々説得力がなく、ちょっと変わった女の子とたった二人で立ち上げた団体があの程度の活動内容でたかだか2年ちょっとで大学にまで注目されるような巨大組織に成長するわけがないし、またさらにあんなに簡単に相手の弱点なんて入手できるわけがないだろと、そんなところは気になってしまった。
それはともかく、読後朝井リョウの『何者』をちょっと彷彿させた部分もあって、就活時期ってきっとほとほと「自分じゃない」「何者」かになって企業に自分を売り込んでいかなければならないわけで、そんな中で多くの若者が青春を喪失し現実にまみれてゆくんだなあと、それをしみじみと感じさせられたのが一番の感想かもしれない。
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2018031
ひとが変わっていくってどういうことだろう。自分の居場所を守りたいから。まわりが変わっていくから自分も変わらなきゃいけないから。
理想を語るって、格好悪いけど格好いい。ひとが変わっていくって、寂しいけど、その背中を追いかけていたい。自分も傷つくけど、相手も傷付くか。
学生であることと、社会人であることの違いは大きいと思うけど、もうあの頃には戻れない。ひとは誰かを傷付けて、傷付けながらじゃないと成長できない。今さらながら、若さって偉大だなと思う。
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名前にギミックがあるのはいつものこと。持って回った言い方をする語り手に、バイアスバイアスとつぶやきながら読み進め、気持ち悪いの一言と共に読了。これがイタいという意味であったなあと、
自分の書く感想もイタい。あ、高評価です。
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リアルな大学生の4年間を写し出してる1冊。恋愛小説というより、成長もの。
自分の大学生活を振り返って読むと深くのめり込んでしまった。今から大学生になる方、大学生にはぜひ読んでほしい。
大学という舞台においてこその個人の自由さがよくある高校生ストーリーよりも面白くテンプレのようなものを感じない。
団体活動に伴う各人の主張や考えに加え、それにつく周りから見る風景と中の違い。自分から見る世界は本当に正しいのか。あの日の友はずっと仲がいいままではいられなかった。
苦い経験に蓋をしないで乗り越える、それは必要なことだから。行動をおこさないと行けない。
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『君の膵臓をたべたい』の著者の新作。過去のある出来事から意識高い系サークルを敵視する大学生の物語。文章が一人称視点のため読者もどこか冷めた卑屈な目線で“イタい奴ら”を見ることになる。そんな自分に牙が向けられる視点の転換が実に痛い。この感覚は朝井リョウの『何者』と通じるかも。
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自分が以前作ったけど今は変わってしまったグループを壊して以前のように戻そうとする大学生の話
タイトルはヒロインの秋良さんのことを言ってるんだと思う
この作者の話は文章も展開もわかりやすいところがいい
過去のよかったころに縛られすぎて、変化を恐れてしまった主人公の気持ちはよくわかる。自分も昔は「気持ちや考えが変わるなんてありえない」と思ってたから。でも、考えが変わるのはごくごく普通なことで悪いことでもない、というのを知ったから、この話は面白いなと思った。知らないままの自分だったらきっと納得も共感もできなくて、面白くないなと思ってたと思う
この小説が言いたかったのはきっと「変化を恐れるな、成長しろ」ってことなんじゃないかなぁと思った
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まさしく青春小説という感じであった。秘密結社とかに関わっている彼女は純粋な心を持ち、僕と接する。僕は大学の就職活動の最中で、なかなか内定を貰えずに苦悩していたが、内定をもらった時のどこか実感がない気持ち、浮ついた気持ちの中、秘密結社の内情を知り、僕と彼女の関係はぐらついてしまう。一度間違った方向へ傾いた関係を修正するのに、僕は正義を守るためにもがき、青臭く、チクッとした痛みを抱え、傷つき、誰かの為に尽くし、今しかない青春を謳歌するという、等身大の表現で読みやすかった。
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『君の膵臓をたべたい』読了後、間を置かずに読みました。大変上から目線になってしまい申し訳ないのですが、物語としての完成度、文章力共にすごく向上していると思います。これはすごい。他の二十代若手の人気作家さんたちと肩を並べるほどです。Web小説投稿サイトから'発掘'されてから数作を重ね、慣れももちろんあるのでしょうが、力を伸ばされたのでしょう。
主人公の'気持ち悪さ'はまるで同じ大学生だった、過去の自分自身と被る部分が多々あり、読んでいて当時の苦い記憶と共に(ギクッ!)となることも…
物語の主人公である楓くんがデタッチメントを気取り、自意識をどんどんこじらせてゆく様など、モテない大学生男子の描写はリアルで、なんとも言えない気分になりました。
その一方で、私自身から見ると(あれ?)と思う部分もそれなりにあります。例えばサークルが巨大化する成長スピードがリアリティを超越してしまっている点(二人で秘密結社的に始めたサークルがわずか数年で巨大化し、大学の仕組みに組み込まれる)や、あまりにあっさりめに進む、情報提供〜弱点入手の描写などです。さらに一番気になったのは、主人公は'時が経てば、組織も相手の気持ちも変化があって当たり前'ということを学びますが、ヒロインに対して'彼女の芯は変わっていなかった'という評価を下しているように思える点です。このズレを'青くて痛くて脆い'主人公が許容できるまでのストーリー展開が短すぎる気がします。彼の性格からして相当な葛藤があることは予想でき、(四回生になっても性格は変わっていない)その部分が描かれて然るべきだと思うのですが。また、主人公と対になるヒロインは相当の経験を積んだはずですが、性格の変化が少なすぎる(または十分に描ききれていない)のではないでしょうか。いずれにせよ、どうしても主人公以外のキャラクターが物語を進めるための'駒'、作者が舞台裏から操る糸あやつり人形のように見えてしまいます。
今後の作品ではそのあたりのディテールがさらに細かく描かれ、さらに物語にリアリティと説得力が増せば、さらに良い作品になってゆくのではないか…という感想を持ちました。
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楽しくて危うくてそして不安定な時期。以前の作品でも思ったけれど、駐車場で待ってくれる川原さんの気持ちとか、コンタクトの空の容器が置いてあることとか、直接書かずに行間から読者に連想させるところがうまい。それと現在のことと過去のことが書かれているけれど、文体だけで容易に読み取れてさすがのリーダビリティ。個人的な話だけれど、ごく最近始めて知った「スリッポン」という名称がここでもでてきて、シンクロニシティ?
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住野さんの本を読むと、いつも瑞々しさを感じるのは、きっと、自分たちがずっと昔に置き忘れてきたその頃の心をしっかりと持っているからだ。
今回も心の奥底にあるものをギュッと握られるような切ない思いにとらわれながら読み終えた。
大学1年生の楓は、ちょっと痛い女、秋好と出会う。秋好は『みんなが幸せになれる世の中』を目指し、『モアイ』なるサークルを作った。部員は秋好と楓。初めのうちは、写真展を見に行ったり、そんな活動だけをしていたが、やがて人が人を呼び、巨大な組織へとなっていった。
そして、考えのズレを感じた楓はモアイを抜けることに・・・。それから3年後、秋好がいなくなった世界でやり残したこと。今のモアイを変えようと楓は立ち向かうことを決意して・・・。
内容が良いとかじゃないんですよね。住野さんの場合。まあ、悪いわけではもちろんないけれど。それでも一番の魅力は心に突き刺さる透明感というか、本当に心をギュッとされているような感じ。ピュアだった頃の自分を思い出させてくれる、そんな数少ない作家さん。今後もそういった作品を描き続けていっていただきたい。
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初出 2017〜18「文芸カドカワ」
人との距離を保つことに過敏な大学1年生の田端楓は、授業中に理想論を繰り返し発言する「痛い」秋好の純粋さを持て余しながら、誘われて、なりたい自分になるための「モアイ」というサークルを二人で立ち上げた。
参加者が増える中で疎外感を感じた楓が途中で抜けたモアイは、その後就活のためのOBとの交流サークルと化し企業がスポンサーについくまでに発展していった。
4年生になった楓は、秋好が「いない」今、当初のモアイを取り戻したいとモアイ破壊工作に乗り出す。
ところが、196ページ目の衝撃!
そして、思ったとおり最悪の結末。
そこで楓はようやく気づく、自分の弱さに。
5年後、楓が大学の就活サークルに招かれ、「学生時代に学んだことは、大切な友人を傷つけて後悔したことで、今、人に対して誠実でいようする自分がある。」と語る最後の場面にはほろりとさせられる。
大切な人を傷つけた自分を葬りたくて、周囲の人には自分のことを忘れて欲しいと思い、過去を切り捨ててきた私には、「逃げてきた」ことを突きつけられた作品だった。
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タイトル通りの話だった。
主人公は一人鬱々とせずに向き合える勇気があればなーと少し思ったり。
最後に気付きがあったのでお互い救われている部分があったかなと。
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題名とおりの内容。
結末はやや日和った感があるが、それも「青くて痛くて脆い」と言われれば、その通りかも知れない。
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理想が時間が経つにつれ、少しずつ変化していくことを許さず過去を求めてしまう楓。自分が傷付いたから相手も傷付いて当然だし、それを受け入るのも当然という傲慢な考えが、楓と秋好の関係を最悪なものとする。人との関わり合いの難しさを不器用な人間を中心に表現されている。その痛々しさに、読みながら何故か自分も傷付かされた気分になった。
人を傷つければ自分も傷つく。
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君の膵臓をたべたい
また同じ夢を見ていた
よるのばけもの
か「」く「」し「」ご「」と「」など
青くてみずみずしい心を描く作家。
今回の舞台は大学1年から就活の時代。
互いの奥底の気持ちに気づかず、距離を置くようになった二人。
気心知れた異性の友人だったはずが
それぞれの正義感、理想論の行方が
痛々しい結果を産む。
そこで初めて気づく心の奥底の感情。
脆く痛々しい二人の気持ちの動きが
言葉の刃になり、互いを傷つける。
本当に魅力的な作家だ。
ただし今回はかすり傷をもらうような読後感。