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なかなか鋭い視点で、目からうろこ、実際に見ての洞察力に敬服。ただ、写真がカラーを白黒にしたための調整がなく、みな夕暮れ夜景の写真になっていて、惜しい。
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教養と経験を自由自在に結びつけた知的好奇心をくすぐる素晴らしい旅行記。
知識が本当の意味で自分の地肉になっていないと、ここまで縦横無尽な文章を書くことは不可能だと思う。
また、なんていうか考え方が柔軟で凝り固まっていない感じがする。押し付けられていない感じがする。
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地政学と聞くと何だか固そうに聞こえますが、ほぼ旅行記に筆者の歴史や地政学的な補足が入った内容です。旅行記として読むのであれば、あまり日本人になじみのない国を訪れたりしているので面白いですが、地政学として読むとやや物足りないかもしれません。
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「二時間だけ入国して成田山新勝寺に立ち寄った外国人が、それだけの経験から日本を語る」というような覚悟と気合
人は知識だけで頭でっかちになりがち。
それを強く理解させてくれる旅行ノンフィクション。
旅は「地理」と「歴史」の味わい方で、大きく跳ねる。
というよりも、地理と歴史を感じれなければ、薄い時間と経験だけに。
人類の歴史そのものが、国境を複雑怪奇にしている。
歴史の闇が、いまだに各地で残りまくっている。
人が見ただけで解ったフリをするのが理解できた気がする。
ちゃんと国境を知れば知るほど、解決出来ない問題が心に入って来るからだ。
旅をする時に用意や準備をしていく。
だけど。
行きたいとこ・知りたいことを、ただなぞるだけの旅だけの、何と多いコトか。
行き当たりばったりがイイとは言わないけど、感動や思い出に残る旅の時間にするヒントが、たくさん隠されていて、面白かった!
「世界は行かなきゃわからない」
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旅行が「趣味」を超絶している著者。ほんの短時間立ち寄った印象で、街角が照射する国際情勢や地域経済を独断をまじえて解説する。著者によれば、地政学とは、ある地理的条件の下でどういう人間行動のパターンがあるのか、共通点を通して社会や経済の構造を把握するもの。今は軍事よりも、経済力や技術力、文化力、人口圧力、宗教などのソフトパワーが重要な地政学の要素になっている。これらを行使するのは企業や資産家、芸術家、個人。ハードパワーには無縁でも、ソフトパワーの中核である資金力を持つ小国が存在感を放つケースもある。例えばドバイ、シンガポール、ルクセンブルク、スイスなど。土地が重要な意味を持ったのは農業社会において。現在は土地よりも資本や技術、人材が重要。中国の21世紀型覇権主義の本質は、経済力というソフトパワーの行使にある。その主戦場は東南アジアや南アジア、中南部アフリカ。日本はどうたち振る舞うのか。強みは何か。
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偏差値の高い、でも肩肘張らない旅行記!
旅好き仲間の先輩からお勧めいただき、読了。
最近めっきり一人旅には行かなくなってしまったのですが、ダレかねない一人旅には特に、テーマがあるとハリが出ます。
事前に本を読んで、政治的・歴史的な背景について少し深めの学習をして現地に行くと、街の風景も少し深めの「匠の目線」で見られるようになるのです。
本著の場合は、基本的に「予習なし」で現地に向かっているのですが、元々幅広い著書を持つ著者だからこその深い知識のバックグラウンドと結びついて、「この場所は北方領土と同じ」といった的確なアナロジーでのコメントができるものだと思います。
本著の行き先は、フツーの旅人が行かないエリアを集めているあたりで既に面白い訳ですが、台湾や韓国のような馴染み深いエリアであっても、目の付け所が違う印象。文体には出てこないですが、よほどのバイタリティがないとこんな旅はできない。同じ旅人として尊敬します。
巻末には地政学的な観点からの自著解説が載っており、これは短いながらも考えさせられる文章でした。抽象的な学術論ではなくて、現実に根差した「だから日本はこうなる」が説得力のある論でした。
細かいトコで、中国語の発音は、特に台湾は現地発音となんか違うルビが振ってありましたが、漢語の表記はこうなんだというのを後で調べて理解しました。
旅好きとして、旅のレベルを一段上げられそうな一冊です。
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著者が毎日新聞インターネット版に連載している「藻谷浩介の世界『来た・見た・考えた』」の中から選んだ記事をまとめた本の第一弾。
本書で登場するのはカリーニングラード(ロシア飛び地)、イギリス(特にアイルランドと北アイルランド)、旧ソ連コーカサス3カ国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)、スリランカとミャンマー、パナマとボリビア、台湾・韓国・中国の高速鉄道比較など。
地理を高校で選択していたら「興味が沸くけれども、自分が行くとなるとハードル高いなぁ」、という国々がズラリ。興味深い記述を抜粋します。
「ロシアにとってカリーニングラードと比較して重要性のかなり低い北方領土で日本に譲歩してしまうと、ドイツやポーランドとの複雑な利害関係の絡むカリーニングラードの返還問題に飛び火する恐れが出てくるから、ロシアがカリーニングラードより先に北方領土の返還に応じるはずがない」、
「スリランカに多額の貸し付けをして経済的に抑えようとする中国の外交を批難する見方があるが、隣国インドからの脅威から自国を守るために中国の存在を利用するやり方は、日本が中国からの脅威から自国を守るためにアメリカに基地を提供している構図と同じ」、「台湾が高速鉄道建設の際に日本の新幹線技術を導入し、韓国がフランスの新幹線技術を導入したのは日本に対する感情論によるものではなく、台湾の鉄道が狭軌であったため、標準軌の高速鉄道が相互乗り入れしない日本の新幹線技術との親和性が高く、すべて標準機の鉄道網だった韓国では相互乗り入れ方式のフランスの技術との親和性が高かったから」などなど、です。
藻谷氏のインタビュー記事も掲載されており、その中で最も腑に落ちたのは「地理は未来に続く歴史の現時点での断面であり、歴史はその時代時代の地理が積み重なっているという点で、”地理は歴史の微分、歴史は地理の積分”と考えられる」、「暗記勉強ばかりしてきた日本の知識人に不足しているのは、類推を通じて情報に横串をさすことだ。過去の出来事からその構造を理解すれば、未来の出来事も予測できる」という部分でした。
地図帳を片手に読んでいると、「なるほど!」と思える部分が次々と出てきます。地理好きな人、是非読んでみてください。
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ただ旅をするだけじゃもったいない、その土地の空気を感じ、歴史を調べ歩くことで何倍にも濃厚な時間になると実感。もう一度世界史を学び直しながらまた読みたいかも。
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「航空機の乗り継ぎ時間を利用して、成田山だけを弾丸観光し日本を理解するような覚悟」という、筆者の全力な姿勢が好きです。行先も日本人が普通観光で訪れないような、非常にマイナーで複雑な歴史を持つ地域ばかりであり、旅行超上級者ならではのチョイスです。高校の世界史の授業で何となく地名は知っているけれど、実際にどのような都市なのか一切イメージできないところが紹介されています。有名どころばかりを歩いて世界を知って満足する人生は勿体無いです。コロナ禍で満足して旅に行けない時期だからこそ、改めて地理歴史を学んで知的好奇心を高め、コロナ後に自分流の旅で世界観を広めることができるよう、準備しておきたいと思いました。
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アゼルバイジャンやケーニヒスベルクといった歴史の交差点のような場所に訪れる。
狙っている土地も面白いのだけどそれ以上に単なる感想ではなくて観察を抽象化し、他所との共通項や、重ならない点の考察になっているところが面白い。個人的にいわゆる観光地よりも歴史的に人物の行き交う場所という所に興味があるのでいつか追体験してみたいものだ。
地政学と言うと戦争の話になりがちなところに違和感を持っていたがその違和感の理由を解き明かしてくれた。
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面白いコンセプトだと思う。短い滞在期間でその国を論じるという割り切り方がすごい。しかも、馴染みの国ばかりで、興味深くもある。一方で、それだけ短い滞在期間であるならば、実際にはいかなくても本書を書けたのではないかという気がしないでもない。読み手の好みが大きく分かれる本だと思う。
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政投銀の著者の世界紀行。カリーニングラード、英国、カフカス、スリランカ、東亜三国、南北米州と世界を周っている。筆者が実際に体感したことから考察が展開されているが、その場に行かないと正しいかわからないので何とも言えない。洞察が鋭いことは分かる。本文は視点が一歩引いており、現地においてもマクロな視点を捨てていないところはやはり政投銀なのかと感じる。気になったのは、本文に通底するリベラリズム(国際政治)的価値観。地政学を類似から地理学的な構造を明らかにすることと規定しているのに異論はないが、国際経済の相互依存が絶対に戦争を引き起こすことはないと固く信じているようだ。経済力(ソフトパワー)一辺倒ではなく軍事均衡とバランスを持った見方も大事と思うのだが。まあ安全保障の分野の人ではないのでそこは話半分に。カリーニングラード:独の北方領土
英国:4地方のBrexit,Irelandとの葛藤
カフカス:民族と資源の混沌
スリランカ:インドと中華の狭間で
東亜三国:鉄道の規格の話
南北米州:QOL街づくり、リチウム、パナマ
旅の極意:定点観測、犬棒、現地人と交流、アナロジー
2022/1/20
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藻谷さんが講演会のついでに、とか時間が空いたから、あるいは計画的になど色々な事情や理由によって自腹で現地にいって歩いて体感した旅行記です。誰かのためじゃなく、自分が見たい知りたいから行くというこの姿勢に圧倒されます。
ちなみにこの本は毎日新聞社のネット「経済プレミア」に寄稿した掲載分を単行本化したものだそうです(残念ながら2021.8.30が最終稿)。
旅行記といってもいわゆる観光地じゃない、ちょっと日本からは行きづらそうな所ばかりです。ビザや現地の交通機関などもかなり詳細に調べてから現地へ旅立ち(一種の鉄オタさんみたいな感じでしょうか)、そのあたりの紹介も楽しいです。
現地の紹介はどれも楽しく、地理の全くわからない私は家にある世界地図片手に読みましたが、マニアックすぎて(私の持っている地図がショボいという話もある)地名が検索できないところも沢山ありました。
中程に藻谷さんへのインタビューがあります。そこに地理は歴史の微分、歴史は地理の積分とありました。
以下抜粋「歴史を勉強していない人が外国に行って書くことは、建物がこんなにきれいとかご飯がこんなにおいしい(あるいはまずい)とか。どうしてこのような建築物がたっているのか、どうしてこのよう料理が生まれたのかという歴史的な経緯にまったく触れていない文章は、読んでいて全く面白くないのです。」
・・・・なるほど、なんかめちゃ納得です。
最終章の自著解説もはぁとため息がでるくらい説得力というか勉強になるというか。地政学に少し興味がでてきてランドバワーだとシーパワーだの一帯一路など知り始めた私ですが、なんというか一人の識者の話を鵜呑みにするのではなく色んな方の話や事実を知った上で納得するというのが庶民のワタシには大切なのだと学びました。
藻谷さんは地政学を「歴史に照らし、ある地理的条件の場所ではどういう人間活動のパターンが繰り返される傾向にあるのかを発見する学問である」と書かれています。また今の時代はハードパワー(軍事力)よりソフトパワー(経済力など)の方がよほど重要な地政学上の要素になっているので他国に進出するのにハードパワーを行使するなど下の下の超低パフォーマンスだと。
紀行先の国だけではなく我が国日本や日本人を含めて痛烈な批判や憂慮なども書かれているけど素直に反省したくなるような愛あるものであり次作もきっと読むぞと心に違いました。
図書館でふと目にして手に取りましたが大当たり。