投稿元:
レビューを見る
若い世代向けに書かれているが、すべての世代におすすめできる心揺さぶるノンフィクション。
著者の1人、マイケルはごく幼いころにアウシュヴィッツに送られ、奇跡的に生き延びた過去を持つ。マイケルがサバイバーとなれたのは、いくつかの偶然の所産だが、その陰には、一族の強い絆と、家族の深い情愛があった。
長年、過去について沈黙を守ってきた彼だが、1枚の写真との出会いをきっかけに、アウシュヴィッツの証言者となることを決意する。
当時4歳と幼かったマイケルのおぼろげな記憶を掘り起こし、裏付けたのは、同じ苦難を乗り越えた同胞のユダヤ人や家族の証言、そして丹念な文献調査だった。
ジャーナリストであるマイケルの娘、デビーは、マイケルの話や他の人々のエピソードを再構成し、読みやすく、心打つ物語にまとめている。
ユダヤ人コミュニティに迫るナチスの手、アウシュヴィッツでの残酷な出来事ももちろん胸に迫る。
だが、それらに加えて、この物語を力強いものにしているのは、帰還後のマイケル一家の姿だ。何もかもを失い、ゼロから、いやマイナスから始めることになった彼らは、手を取り合い、挫けずに生き延びていく。
「これもいつかは過ぎていく(ガム・ゼ・ヤ・ヴォール)」
父の口癖であったこの言葉は、一家を支える灯となる。
全員が命を長らえることはかなわなかった。けれど、亡き人々の思いもまた、次の世代につながれていく。
これは、ユダヤ人としての民族の歴史にとどまらず、すべての人に響く普遍的な物語だ。
理不尽な運命に負けず、毅然として立ち向かった庶民の歴史を生き生きと描く本書は、多くの人の心を捉えることだろう。
* NetGalley(ネットギャリー)https://www.netgalley.jp/という、出版前の本のデジタル版ゲラが読めるサイトでいただいた本です。Amazonの書誌事項が登録されたようなので、こちらにも投稿します。
投稿元:
レビューを見る
アウシュヴィッツを奇跡的に生き抜いたマイケル。戦後、同じく生き抜いた母親と移住した米国で結婚したが、長くアウシュヴィッツのことは語らなかった。しかし、上映されていた映画のドキュメンタリー部分にアウシュヴィッツから解放された自分を見て驚く。そして、ネットで検索するとその写真はすぐに見つかり、その子どもたちの健康そうな姿に、アウシュヴィッツはユダヤ人のでっち上げだ、という書き込みまで見つけてしまう。その写真は、アウシュヴィッツを解放したソ連軍が、数日後に記録のためにもう一度解放時の服装をさせて撮ったもので、連合軍の手厚い保護のおかげで健康を取り戻した後の写真だったのだ。マイケルは、娘のデビーの協力のもと、一家や親戚のたどった苦難の道を書き残すことにしたのが本書である。
当時のポーランドのユダヤ人社会の実力者であった父親の判断と、たくさんの幸運に恵まれ生き延びたマイケルと祖母。戦後亡くなっていたと思っていた母親との再会。調べあげた事実を淡々と記していることがより考えさせる。
投稿元:
レビューを見る
もう10年前くらいにアウシュビッツの強制収容所を訪れたことがある。有名なArbeit macht frei の看板も見たし、大量のユダヤ人の髪の毛とかシューズの山の展示物も見たことがある。
どこか他人事になっちゃうけど、当時4歳の子どもが体験した経験としてはあまりにも悲惨。周りの家族、大人たちの執念と奇跡によって生き延びることができた、無事でほんと良かったあって思った。
アウシュビッツからの生還がクライマックスかと思ったらその後の再起の物語と戦後にもはびこるユダヤ人差別の実情が暗澹とした気持ちと希望に燃える輝かしさを感じ取れて寧ろ後半わくわく読み進めることができた。
しかし、家族の別れと再会の物語は涙を誘うわ。感動。
投稿元:
レビューを見る
ホロコースト生存者のノンフィクション。
本物にしかない迫力がある。
アウシュビッツから解放された後にも
たくさんの困難があったことが
興味深い。
奇跡の物語。
投稿元:
レビューを見る
アウシュビッツの女たちの間には、暗黙のルールがあった。それは、子供を見かけたら守ってやることだ。畑仕事を割り当てられた女たちは、収穫した野菜のいくつかをかすめ取っていた。それはもちろん自分のためでもあったが、彼女たちはいつも、収容所の中で栄養が極端に足りない子供を探して食べ物を与えていた。カナダで働く女性たちは、盗みが見つかれば死刑になると知りながら、子供たちのために下着やセーターをこっそりかすめ取っていた。縫製の仕事をしていた女たちは、シーツと毛布をひそかに上着や肌着に変身させていた。ユダヤ人の囚人に比べると、カトリックの囚人は、子供の棟に使づいても怪しまれにくかった。彼女らもそうした立場を利用して、子供たちを助けようとした。子供がユダヤ人かどうかは気にしていなかった。
投稿元:
レビューを見る
アウシュビッツを生き抜いた、というだけでなく、その後が長く描かれているのがとても興味深かった。
自分たちの家を奪われたり、故郷に戻っても差別が続いたり、ホロコーストから帰還したからといって彼らの生活がすぐに好転したわけではなく長く不遇の時代が続いたことが切々と伝わってきた。
そして何より母は強い。絶対に生き抜いて、子供を探し出してみせるという信念を貫いていた。
投稿元:
レビューを見る
テレビで紹介され、興味を持った本(オープニングしか見ていないが)。わずか4歳でアウシュヴィッツを経験した著者が、「ホロコーストは存在しない」と言う言葉を聞いた事が、本書の出版のきっかけとなったという。私自身、小学生の時に読んだ数冊の本でしか知らないその悲劇。でも、実際はアウシュヴィッツの前後にも想像を絶する迫害を受けていた事をこの本で知った。著者の経験した年齢が4歳のため、確実な記憶が少ないとされつつも、奥様、娘さんによる調査や、同じく生還した親類達の証言により、とても生々しく、細かく綴られています。次の世代にも語り継がれるようにと、非常に分かりやすく、物語形式で書かれた本書。著者がこの本に込めた想いは、確実に広く伝わっている。
投稿元:
レビューを見る
時々、戦争関係の本を読んだり、知識を入れたりする必要があるな、と思う
それにしても「水から茹でた蛙は飛び出せない」という言葉を思い出す
投稿元:
レビューを見る
長くかかってしまいましたが、読んでよかったです。やっぱり時々でも、歴史を振り返るのは大事。
2019/3/1読了
投稿元:
レビューを見る
世界一受けたい授業11/10著者出演
最年少の生還者が「事実を捻じ曲げられてはいけない」と決意。放送後、大反響!
投稿元:
レビューを見る
1940年にドイツ占領下のポーランドに生まれたマイケルは、家族の愛を一身に受けながら成長するも、状況は悪化し、わずか4歳でアウシュビッツに送られた。
労働力にならない子供や老人は真っ先に殺されていったなかで、彼は6ヶ月後、奇跡的に生還を果たした。運もさることながら、母親や祖母、まわりの大人たちの、必死な努力での生還。
幼子の目に映った収容所でのむごい出来事、生還できたとはいえ、そのすさまじい体験は一生背負って生きることとなる。
今年もまた、もうすぐ敗戦の記念日がやってくる。
余所事とか、他人事ではなく、ひとりひとりが考えていただきたい。
投稿元:
レビューを見る
ポ-ランド生まれの4歳の男の子(マイケル)は、ユダヤ人であるが故にアウシュヴィッツ強制収容所に送られました。解放されるまでの過酷な体験を語るにも、幼児期の記憶には確証がありませんでした。40数年後、当時のソ連軍が解放後に撮影した映像を見て、生存していた子どもたち中の自分を発見します。やがて〝ホロコ-ストはなかった〟と主張する輩が出現するにおよび、実娘の協力を得て調査が重ねられ、悲愴な事実が表れたのでした。マイケルの母ソフィ-の帰還、ソフィ—の姉(オラ)と杉原千畝など、次々と明かされる真相に驚かされます。
投稿元:
レビューを見る
以前に一度読んだことがあったことを、読み始めてから気がついた。
ただ、『アウシュビッツの図書係』の後に読んだことで、重なる部分を違う視点で見ることができて、より立体的なユダヤ人迫害像に迫ることができた。
この本の前半は住んでいた街でのゲットーの始まりからアウシュビッツでの生活に至るまでを描き、後半ではアウシュビッツを出てからの生活を描いている。
アウシュビッツを出てからの生活についてはあまり読んだことがなかったので、興味深かった。
また、この本の冒頭で述べられていたように、すでにこの経験から長い年月が経っており、記憶していることが、本当のことなのか、そのように想像していたのか定かではないため、あまり話したくなかったという点では実に誠実な対応に感心する。この本はそれが思い込みでないことを証明するため、さまざまな資料に当たりながら書かれたものだ。信頼に値する立派な体験記である。
投稿元:
レビューを見る
1940年にドイツ占領下のポーランドに生まれたマイケルは、ゲットーや収容所暮らしを余儀なくされたのち、わずか4歳でアウシュヴィッツに送られた。なぜ、子どもが次々に殺されていった収容所で、彼は6か月も生き延びられたのか?悪や絶望がうずまく世界の中で、ひたむきに前を向いて生きたマイケル一族の姿が胸を打つとともに、家族の絆や、希望を失わずに生きることの大切さをあらためて教えてくれる良質なノンフィクション。
投稿元:
レビューを見る
本当に面白かった。
アウシュビッツで生還した収容者の物語。ホロコーストはなかったとか信じる奴らに対しリアルな経験を物語る。まあでも普通文明人が一つの民族を根絶やしにしようと考えるなんてありえないって考えてもおかしくないよな。事実は小説より奇なり。
ゲットーの物語、アウシュビッツでの苦痛など現実味が溢れていて、ノンフィクションの惨劇にめまいがする。ユダヤ人嫌い嫌いになるぞ。わずか4歳でアウシュビッツ入りする子供に同情するし、そこで子供を守るために全力を尽くした母と祖母に涙が出る。父は賄賂という方法で同胞を救ったが、言うなればこれは救えない人間を選ぶということでもあるから心が傷んだろうと感じた。キツイな。ナチのクズめ。
ジャルキでの苦悩の日々から、ピョンキでの多少マシな日々を経てアウシュビッツに行ったのは本当に幸運だったと思う。ピョンキでのまともな(それでも健康で文化的とは言えないだろうが)生活のおかけでアウシュビッツを乗り越えられたという面はあるだろう。「死の行進」を避けたのは本当に幸運で驚嘆する。
母子の再会が最高。これは涙が出る。生きててよかったねえ。父と兄がなくなったのは悲劇だが、母、子、祖母が生き残ったのは20世紀最大の奇跡だろう。隠れん坊の世界チャンピオンに幸あれ。
ユダヤ人を石鹸にするクズどもに対し、母の「それなら私はとびきり上等の石鹼になるわ、イズラエル。ラベンダーの石鹼、それともライラックやローズヒップ?」好き。
たまーにだがまともなドイツ人がおり、それを描写している点も評価できる。流れには逆らえないけど自分のやり方で差別と戦う姿は良い。こういう人を描いたノンフィクション本も読みたいね。
オーウェルのエッセイを読むと感じるが、ヨーロッパ人のユダヤ人嫌いって根拠がない上に根深いよなあ。