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京都大学名誉教授(政治学)の大嶽秀夫(1943-)によるニクソン・キッシンジャー外交再考。
【構成】
第1章 ニクソン・キッシンジャー外交の基盤
1 「外交大統領」
2 準備期間と在任期間の長さ
3 ニクソン・キッシンジャーの国際秩序観
4 ニクソン・キッシンジャー外交の本質と評価
5 パーソナリティ
第2章 ニクソン大統領の対ソ戦略-戦略兵器削減交渉(SALT)への道
1 核バランスの変化
2 ニクソン政権によるデタント政策開始とソ連の事情
3 ニクソンの戦略
4 SALT締結への経過
第3章 米中和解-ソ連と日本の脅威を梃子に
1 ニクソンの狙い
2 中国の国際認識
3 中国の内情
4 中ソ対立の激化
5 米中和解へ
6 中国によるヴェトナム支援政策
7 対中接近の経緯
8 その後の経過
第4章 ヴェトナムからの撤退-中ソ対立の狭間で
1 1968年1月末~ テト攻勢
2 米軍の撤退とヴェトナム戦争の「ヴェトナム化」
3 和平交渉とエスカレーション1
4 和平交渉とエスカレーション2
5 ソ連のヴェトナム援助
6 中国のヴェトナム支援と中越関係の展開
第5章 「ネオリベラル・ポピュリズム」と「ナショナリズム」
1 ニクソンのポピュリズム
2 ネオリベラリストとしてのニクソン
3 ニクソンのナショナリズム
後書きに代えて
「再考」が本書の意図するところであるから、ニクソン・キッシンジャー路線の既存イメージについてまずは先行研究の整理が必要と思われるが、本書ではそれは省かれている。(もちろん随所で既存イメージは提示されているが)
評者が抱いていた二人のイメージは、「計算高く冷徹、パワーポリティクス重視」というものであった。
本書で提示される修正イメージは、計算高く(猜疑心強く)、パワーポリティクス重視であるが、一方で大衆中間層に対する呼びかけを通じて、アメリカの威厳を保つことに心を砕いた、というものであろう。加えて、パワーポリティクス重視であるがゆえに、アジア諸国の内政への理解も乏しいままに戦略を立て、大国間バランス以外の要素への配慮は欠けたものになっていた、と言えるだろう。
本書で紹介されるSALT、米中和解、ヴェトナム撤退という3つの事例は、種々の要素はあるにせよ根源は対ソ戦略である。
ニクソン就任当時、ソ連は、①プラハの春に代表される東欧の離反懸念、②国内経済の停滞、③中ソ対立の激化(珍宝島事件)と中国の核開発、④アメリカの軍拡再開という環境下で「デタント」を受け入れる素地があった。
ニクソン・キッシンジャーはソ連が攻勢に出ない(出させない)環境を作り上げることを第一義として戦略を立案した。その手段は、カーターのような宥和的なものではなく、軍拡・具体的軍事行動(exカンボジア爆撃)を含めて、アメリカの威厳を見せながら相手に条件を飲ませるものであった。特にSALT締結の場合はそれがうまく作用する。
一方で、米中和解については、ソ連への対抗・牽制という意味で米中のコンセンサスは取れていたものの、文革下での中国国内の権力闘争について認識を欠くままに周恩来に肩入れし、結果的に成功したと言えなくもないだろう。
また、ヴェトナム撤退時の北爆強化、カンボジア侵攻といったオプションは事実上の米中代理戦争であり一歩間違えば第二の朝鮮戦争になりかねない要素もあった。朝鮮戦争と決定的に異なっていたのは、韓国と異なり、南ヴェトナムを見捨てたところであった。
撤退そのものは成功したし、戦略的にそれが正しい選択であったと思われるが、ニクソン・キッシンジャーが目指したアメリカの威厳は損なわれた。また、中越戦争、カンボジア内戦と同地に紛争の火種が撒かれることになった。
本書の主題とは直接関係ないが個人的に気になった点がある。キッシンジャーという人間は非常に明晰で優秀な戦略家であると思うが、西ドイツ・日本といった第二次大戦時の敵国への憎悪と無理解はあらためて驚かされる。
19世紀ヨーロッパのバランス・オブ・パワーに郷愁と理想を見ていたキッシンジャーには、ソ連以外にも「敵」が必要だったのだろうか。
そして、これがキッシンジャー個人に限定されず、(少なくともこの時期の)アメリカの外交政策策定者に通底していたことが想像されるにつけ、日本のプレステージ形成に何が必要かを考えさせられる。
大嶽先生らしくバランスよくまとまった著作であり、沖縄返還交渉を除けばニクソン・キッシンジャー外交を概観するに十分な質と内容を備えている。ただ、欲を言えば、先行研究を引きながら、ニクソンとキッシンジャーの温度差や政策決定過程にもう少し踏み込んで、論じてもらいたかった。
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ニクソンとキッシンジャーは互いに相手の人格を評価していなかったとのことです。しかし、彼らは協力して偉大な事業を成し遂げました。そこが素晴らしい。単なる仲良しどうしではだめだということです。
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ニクソン政権における外交政策を
米ソ、米中、米越戦争を題材に読み解く一冊。
米ソ中の大国間における外交取引を
それぞれの立場を細かくフォローしつつ説明しており、
複雑さを感じさせつつも分かりやすく解説する。
外交の難しさや各国の内政事情把握の困難さがよく伝わる。
また、時折示されるドゴールの影響、対比も面白い。
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ニクソンが構想し、キッシンジャーが理論化した、バランスオブパワーを基軸とする現実主義外交。ソ連とのデタント、中国との国交樹立、ベトナム戦争からの名誉ある撤退がテーマとして取り上げられている。
そこでは、冷徹な計算、国益の追求から、イデオロギーが反する国家とも手を結ぶ、国民の支持を確保しつつ、兵を撤退させるといった離れ業があった。
ただ印象的だったのは、最後の方で筆者が指摘している、ニクソンらが有していた発想。すなわち国家の名誉、や国家の自尊心というものだ。それは、時に商人的狡猾さを拒否するような、ある種理想主義的な発想に結びつく。それに対し、日本やドイツははるかに、功利主義、現実主義的な国家であると。そしてその国家運営は、やはりある種のナショナルプライド無しにはできないということを、ニクソンらは理解していないだろう、と。
今後の日本、現実世界の動向を占う上で、重要な示唆に富む指摘だ。
全体を通じて、知的興奮を喚起する内容だった。
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ウォーターゲート事件の印象が強いニクソンだが,本書では彼が主導した三つの
外交成果(対ソ緊張緩和,対中接近,ベトナムからの名誉ある撤退)に絞って,
その世界史的意義を論じていく。タイトルに反してキッシンジャーはかなり脇役。副題の方が内容をよく表している。
反共の闘士として頭角を現しながら,中道政策を掲げて「普通のアメリカ人」
(=サイレントマジョリティ)の支持を調達,イデオロギーを排して地政学とパ
ワーバランスに基づく外交を繰り広げたニクソン政権。その現実主義的な政治姿
勢が,実は多分に理想主義的な使命感に裏打ちされていたことまで踏み込んで考
察している。もちろんニクソン・キッシンジャー外交が寸分の隙もなく成果を挙
げていったというわけではない。第三世界の動きに関しては偏見から脱すること
ができず,印パ戦争などでは対応を誤ったし,ニクソンの北京訪問成功は,中国
での権力闘争の状況を読み違ったために実現した瓢箪から駒的な僥倖だったとも
いえる。林彪によるクーデタ計画を察知していたら,あの時期の北京訪問は危険
すぎてできなかった。
本書はまったく評伝ではなくて,大統領就任以前の話については,かなりの程度
端折られている。生い立ちや海軍時代はもちろん,フルシチョフとのキッチン討
論,ケネディに負けた60年の大統領選の話題など,ニクソンにまつわる魅力的な
エピソードも収められていない。ウォーターゲート事件についても触れる程度。
現職大統領が辞任した前代未聞のスキャンダル,ニクソンとキッシンジャーの明
暗を分けたこの事件について知りたければ,他の本にあたる必要がある。
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田中角栄におけるロッキード事件と同様、ニクソンもウォーターゲート事件とともに記憶されているという著者の指摘はそのとおりで、そのせいで粗雑に描写されがちなニクソンと、単にその部下ではなかったキッシンジャーの外交理念を描いている。文章はあまり良くない。
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テーマ自体は面白そうだったが文章とテーマへのフォーカスがちょっと… 南北ベトナム、ソ連、中国とアメリカのせめぎ合いは十分に面白そうな素材なのに残念。
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ニクソン政権の外交について書かれた本。当時のソビエトや中国、北ベトナムの事情などを抑えながら、ニクソンとキッシンジャーがどう彼らと交渉していったかを詳しく書いている。やはり、悪いイメージの強いニクソンだが、ちゃんと後世のためになる政治を行った立派な政治家であることには違いない。こういった政治家を輩出することが今の共和党の課題なのかも・・。
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ちょっと…わかりにくい。
中国との関係が知りたくなり、「キッシンジャー回想録・中国」を読んでみようと思いました。
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[特異な二人三脚]米中接近、米ソ間のデタント(緊張緩和)、そしてベトナムからの「名誉ある撤退」をはじめとして、アメリカの外交において特筆すべき役割を果たしたニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官。「リアリズム」と評される二人の外交政策の背後に控えていた理想主義・ナショナリズムにスポットを当てながら、なぜこの二人が特筆に値すべきかを論評した作品です。著者は、戦後日本政治に関する著作を多く残されている大嶽秀夫。
ニクソンとキッシンジャーというと、地政学に重きを置いた現実主義の外交を展開したと評されますが、本書ではそこからさらに突っ込んで、その現実主義を成り立たせるための柱として機能した2人の「プライド」に焦点が当てられています。理想主義と現実の間を巧みに揺れ動きながらアメリカという国を導いたところに、この2人が高く評価されるところの所以があるのかもしれないと感じました。
ただ2人を礼讃するのではなく、その卓越した視点故に取りこぼされてしまったものについてもしっかりと言及されているところが素晴らしい。例えば下記は本書後半部分からの引用になるのですが、戦後日本の政治を深く見つめてきた大嶽氏だからこそ書ける(ともすれば書かずにはいられない)指摘なのではないでしょうか。
〜二人のマキャベリズムには、徹底した「商人的」狡猾さを拒否するような、ある種の理想主義がその核にあったことがわかる。しかし、卑屈なまでの狡猾さで「国益」を守ることも、それはそれでやはりある種の自尊心(いってよければナショナル・プライド)なくしては不可能だとは、二人は考えなかっただろう。〜
ニクソン大統領は、特に外交面において、時間の経過にしたがってその評価がじわじわと上がっている不思議な大統領だと思う☆5つ
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ニクソンの反ユダヤ主義はリベラルとの対決の政治的経験がそれを打ち消すどころか、強化した。キッシンジャーはジャーナリストに近畿があったから、悪いことを書かれなかった。そこがニクソンと違う。キッシンジャーはドイツ語なまりがあるため、1972年まで記者会見も映像は許されるが音声は許可されず、テレビには登場しなかった。
キッシンジャーにとってアメリカの偉大さとは、自由な人々が頼ることのできる唯一の国であることだった。
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◆戦後日中関係の画期となったニクソン訪中。これを差配したキッシンジャーと、彼と協働し続けたニクソンとが展開させた外交の実像を開陳◆
2013年刊行。
著者は京都大学名誉教授・同志社女子大学客員教授(政治過程論)。
対抗から日中共同宣言→日中平和友好条約へと進んできた戦後日中関係の転機は、ニクソン米国大統領による対中接近であり、これを実務的に取り仕切ったキッシンジャー外交だ。
このコンビは、ベトナム撤兵、対ソ・デタント(戦略兵器制限条約=SALT締結)など、大きな戦略的決定を行ってきた。
しかし、アイゼンハワー大統領の下で副大統領職にあったニクソンの根底には、本来はタカ派的・ナショナリスティックな心性が宿る。この矛盾するものを統合させた力学・システムは一体なんだったのか?。
本書は、矛盾も内包した彼らコンビ外交の実情を開陳するものである。
当然、関係国である、ソビエト(ブレジネフ政権)、中華人民共和国(毛沢東政権末期、周恩来といわゆる四人組)、ベトナムを含めた関係各国間の虚々実々の駆け引きと、国益を基軸にしつつ、互いの譲歩を引き出すための押し引き、関係国の情勢に対する洞察(当然誤りも多い)の実情が丁寧に論じられる。
交渉の細かい点は未知な点も多かったが、ニクソンの日・欧・ベトナムを見下す夜郎自大的心性も含め、彼らの交渉の実像に特に驚くべき点はなかった。
ところで、ケネディ・フルシュチョフ後、毛沢東政権末期の世界的な時代相がデタントにあったのは注意をしておくべし。
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ニクソンとキッシンジャーの業績のうち、主に外交面に絞って新書サイズにまとめた一冊。中公新書のアメリカ大統領シリーズ(?)のうちで読んだのはこれで2冊目。
中公新書は安心して買えるし読める。特に目新しいことはなく淡々と書かれているところも新書らしくて気に入ってる。最近は「わざわざ1冊の本にまとめるほどのことか?」という新書が多く出ているので買うのに躊躇することもあるが、中公新書なら安心。
内容については特に目新しいことはないが、ニクソン外交とはどういったものだったのか、ニクソンとキッシンジャーは何に恐れを感じ、何を見誤り、何を求めていたのかといった就任前から就任中の動きがまとまって描かれていて、リアルタイムでは知らない時代の価値観がよくわかっておもしろかった。
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150503 中央図書館
ポピュリストでありマキャベリアンであり、知性とタフネスを重視したニクソンとキッシンジャー。ベトナム戦争終結に向けた施策がデタントであり米中和解であった。
しかし、彼らの視線には北半球の国々(当時の「大国」)しか入っておらず、第三世界は付帯的なものとして認識されていた。
彼らの施策が、50年後の現在までの基本の流れを作り出していることに紛れはなさそうだが、世界の極配置が大きく変わってしまったことも、また、事実。
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【由来】
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【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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【目次】