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映画を鑑賞してからの原作。
主人公の周辺の描かれ方が全然違ってた。原作のがいいところもあれば映画のがいいところもそれぞれあり。
小説は完全にあさちゃん視点の世界、あさちゃんのセリフで構成されているので、映画で狂気に見えるあさちゃんの言動も小説の方ではすっと腑に落ちる。
普通に仕事して、職場のおばさんに気を遣い、ブランド物の洋服を試着して自分の似合う服を探し出す。結局ユニクロで服を買っちゃうことも。ある種普通の20代の女の子なんだ。
しかし映画でのあさちゃんは、そのようなセリフも少なくあまり私生活的なところは見えてこない。単純に二人の似た男に揺れ動いているサイコパス女のように見えるので、酷評する人も多いのでは。
小説の麦の方が自然で、広島で新幹線を下りて引き返すという選択が、あさちゃんの主体性をより感じさせる。帰ったら亮平が他の女の子と一緒に居たというのと、亮平をいたずらに「いい人」とはしないので、自然。そういう意味でも、映画では狙ったのかもしれないが、あさちゃんの狂気と可哀想な亮平という明確な構図ができており、原作との違和感は否めない。
結末についてもあさちゃん視点で描くという特性上、さらっと流されて終わる。だからこそ今後のあさちゃんと亮平の不穏な様子がリアルに想像されるラストになっている。
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急に出会い急に自らの元を去って行方不明になった男性を巡る1人の女性の恋愛物語、というのが一言でまとめた筋書きであるが、単純な筋書きには収まりきらない奇妙な小説。
主人公の一人称で語られる本作では、主人公のあけすけな性格もあり、主人公の思いが比較的ストレートに語られているかのような印象を受ける。しかし、実際にはそこで語られているのはごくごく一部でしかなく、主人公の本心は全く別のところにあるという事実が、ラスト30ページでのドラスティックな物語の転換によって明らかになる。
ラスト30ページに至るまでは極めてふわふわとしてつかみどころがない主人公の内面にやきもきしつつ、その曖昧さが心地よかったりもしたのだが、ラスト30ページでの主人公の行動とその背後にあると思しき心情の動き方には少しゾッとさせられるところすらある。そういう点で、一人称小説の型を破るような実験性を感じるし、それがuncomfortableな読者も一定数いるように思い、読み手を選ぶ作家であるとも感じる。
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私の苦手な文章表現だったため、途中から流し読みに切り替え。セリフ読み+αで完読。
綺麗な文章を好む自分としては、とにかく読み辛かった、、。
同じ顔の男性が2人いて〜ってお話。
(自分用メモ)
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映画を先に見てたから、仲本工事の演じていたキャラクター出て来るの待ってたのに、出て来なかった。残念。
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たんたんと凶悪
小説としての完成度は恐ろしいほどに高い。だからこその読んでしまった後悔。なぜ手に取ってしまったのか。寝たら、覚めたらでいいんだよ基本は!
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描写の精緻さ、爽快さに対して周りの人間への淡々とした無関心さが凄まじい。ただし、麦をのぞく。
主人公の目(さあちゃんずアイ)を通して見た話だと思えば、納得できるが、では主人公は何を考えて何をしてるのかほとんどわからない。
彼女の選択した仕事や行動に対する心理描写はほぼわからない。わかるのは麦の外見や行動、表面に出るところが好きということだけ。
その好きに至るプロセスもほぼわからない。最短距離で好きになるため、読者からすると理解できないため怖いとすら思う。
しかし、周りの人間や環境、風景の描写は綺麗で巧みなため、周辺の細部は浮き上がるが、主人公は空白という形で浮かびあがってくる。
浮かびあがってくるのは主人公の異常に見える行動(本人の中では好きに対して合理的)に対して、それを怖いと感じさせる積み上げと説得力があってすごい作品でした。
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主人公の置かれているその瞬間の情景と空気感を文章で伝えられる珍しいタイプの作家だと思います。
主人公が若い時は「若い」と分かる空気感と情景の表現であるため、昔を思い出し郷愁にかられる描写がいくつもありました。(当方トシなので)
しかしこれは甘い恋愛小説ではない!
主人公は(おそらく)守ってあげたいタイプの可愛い女の子で、自己中な性格でも友だちがいて男性にも好意を持ってもらえて…
若い女性特有の「根拠のない無敵感」が分かる描写が中盤まで続き、後半で30歳を超えた主人公を取り巻く現実が徐々に読者に開示されます。
これまでやってきた事のツケが回ってきており、職や友達を失い、貯金もない。
「根拠のない無敵感」が通用するのは若い時だけ。
人間性に難があっても若い時はノリで恋人や友達になれるけど、歳を重ねると付き合う人間を選ぶようになる。
しかしそのことに気づいていない主人公の未来が想像できるラストまで、秀逸でした。