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後半はキリシタン大名についてが多く割かれていて、本能寺の変以降の動きについて書かれていましたが、前半の信長はなぜ葬られたのかについてはとても面白かったし興味深かったです。私が思うストーリーに近かったので納得しやすかったということもあります。著者がキリシタンについてかなりのページを割かれていたように、キリシタン、イエズス会の影響力というのは想像以上で驚きました。現代の某学会みたいだなと思いました。私は本能寺の変は信長があっさり殺られたことより、なぜ光秀が裏切ったのかに興味があるのですが、やっぱりただ都合よく利用されて捨て駒にされたんだと悲しくなりました。
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前半は、著者が調べたことを「朝廷黒幕説」を展開されている。一次資料も少ない事件なのでやむを得ないとはいえ、随所に「〜に違いない」とか「〜であるはず」とか書き振りで、テンポが損なわれる。
後半の大航海時代・宣教師と茶の湯・キリシタン大名や南蛮貿易と本能寺の変との関係は、とても興味深い。
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桶狭間の戦い・本能寺の変・関ヶ原の戦いは、私にとってずっと追いかけていきたい歴史上の興味ある事件です。どの事件も、最終的な勝者の検閲(意見)が反映されたと思われる歴史書による解説は多くなされていますが、本当のところはどうたったのか、を同じ人間として興味を持っています。
最近の研究によれば、勇ましい武士の姿とは別に、それを聞いて私も少し安心できるような「本当かもしれなかった姿」が明らかにされてきているように思います。今回のテーマの、本能寺の変、では信長の生きた時代、日本だけでなく世界(特に、ポルトガルとスペイン)がどのように動いていたかを把握したうえで、信長暗殺にどのように絡んでいたのかという考え方が示されています。
従来言われてきた、明智光秀の単なる怨恨説はあまりにも単純であるような気がします。原因の一つとしてそれがあったかもしれませんが、この本で示されている様に、日本史の事件を、世界史の中の出来事としてとらえる見方は、今後、世界史を掘り下げていきたいと思っている私にとっては、絶好の指南書となったと思います。
以下は気になったポイントです。
・イエズス会とスペインを敵に回したために、信長政権はとたんに不安定化した、キリシタン大名(高山右近、中川清秀、黒田官兵衛)や南蛮貿易で巨万の富を得ていた豪商たちが、信長を見限り始めたから(p17)
・キリシタン大名は、イエズス会と協力し、信長が光秀に打たれた直後に決起、光秀を討つことで羽柴秀吉に天下を取らせる計略を立てた、秀吉の中国大返しは、こうして実現した(p19)
・江戸時代の史観によって戦国時代史を語っているために、本当のことがわからなくなっている、その中核を成しているのは、鎖国史観・士農工商の身分差別史観・農本主義史観・儒教史観である(p20)
・二条御所で信忠が討死したのを聞いた、清玉上人は、光秀に申し出て信忠と家臣たちの遺体を引き取った、清玉上人は正親町天皇の勅願僧に任ぜられたほどの高僧なので、光秀も無下に断れなかった、また清玉上人は信長の遺骨を引き取り、本能寺から逃れる僧たちにまぎれて脱出した(p29)
・信長は三好三人衆を討つべく、将軍義昭を総大将とした負けるはずのない戦であったが、9月12日に突然、石山本願寺が反旗を翻して、一向一揆の軍勢が信長軍に襲い掛かった、このとき浅井・朝倉三万も南近江へ乱入して、宇佐山城を守る織田信治・森可成を血祭りにあげた(p82)
・比叡山延暦寺までも半信長となり、絶体絶命のピンチにたった信長は、正親町天皇の勅命により、浅井朝倉、比叡山に和睦を承諾させた、この9か月後には、比叡山を焼き討ちにした、勅命・聖書も反故にした(p84)
・朝廷を支配下におくためには、猶子としていた五の宮を皇位につける方法があった、そうすれば信長は名目的には天皇の父となり、太上天皇となって院政を行うことができる。こうした地位に挑戦しようとしたのが日本国王と称した足利義満である、義満は37歳で将軍位を嫡男義持にゆずり、次男義嗣を親王に準じて内裏��元服させて、やがては皇位につけようとしたが、急死した(p100)
・武田討伐事には、信忠を大将とする5万の軍勢(伊奈口)、徳川家康3万(駿河)、北条氏政3万(関東から甲斐・信濃)、信長本隊は7万の、総兵力は18万余(p105)
・戦国大名にとってもっとも重要なことは、劉通路を押さえることであった、川・海の港を押さえ、関銭(関税)や津料(港湾利用税)を徴収した、この収入はコメの売買から上がる収益よりもはるかに大きい(p119)
・普通は、先にお茶、次にお菓子と思うが、お茶の作法を、ミサの作法にならったとすれば納得がいく(p124)
・信長はイエズス会の仲介によってポルトガルと親交を結び、南蛮貿易によって硝石や鉛などの軍事物質を得ていたが、ポルトガルがスペインに併合されたために、スペインと親交を結ばなければ南蛮貿易を円滑に続けられない状況に陥っていた、スペインの要求は、1)民国征服の軍勢を出すこと、2)イギリス・オランダと絶交すること、であった、これを拒否して、イエズス会と絶交し、キリスト教を禁じた(p134、140)」
・秀吉が明国征服を明言した天正14年(1588)には、スペインと同盟すれば勝てる見込みがあったが、その時には前提が崩れ去っていた、イギリスとドーバー海峡で戦い、無敵艦隊の3分の2を失っていたから(p147)
・一般には足利幕府は義昭が都を追われた元亀4年(1573)に滅亡とされているが、最近では彼が出家した天正16年(1588)で終焉とする説が主流となった、鞆の浦を拠点とすることで、瀬戸内海の流通経路を押さえ、西日本の経済掌握により、大名達を味方に引き入れることもできた(p186)
・戦国時代に来日したイエズス会の宣教師達は、一向宗(浄土真宗)の教義があまりにもカトリックの教えに似ていることに驚いた、そして一向宗を潰さなければ、この国で布教を成功させることはできないと思った、なので信長を支援して一向宗の弾圧をおこなわせたという説がある(p204)
・戦国時代にキリスト教があれほど多くの信者を獲得し、江戸幕府の弾圧にも屈することなく命脈を保ったのは、キリスト教的な信仰が「景教」という形で日本に深く浸透してからかもしれない(p204)
2018年8月15日作成
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あまり知られていないものを含む、多数の資料による、力強さを持った言葉。感情を抑えない優しく温かい言葉。
二つの言葉を、心地よく感じながら読むことができた。まだどこかに謎を紐解く資料が残っているのだろうか。残っていないのだろうか。歴史浪漫に胸が熱くなった。
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話題になり、人からもおすすめされたので手に取りました。
本能寺の変の謎を解く、といった作品は、おそらくこれまで多数あったと思いますが、国内の政治状況に加え、大航海時代という世界の歴史の中でとらえたこの作品は、かなり興味をそそる一冊となりました。
その観点からとらえ、その後の秀吉の天下統一、朝鮮出兵、関ケ原の戦い、大坂の陣まで長期を対象としているため、従来の歴史で習ったことの裏付けのなるかもしれない、という視点で読むとかなり面白い。
歴史は、その時代にとって不都合な部分は見えないようにするということがあるものですが、著者が指摘した、江戸史観4つの誤り(鎖国史観、身分差別史観、農本主義史観、儒教史観)があることを踏まえて、この当時の歴史を見ると、違う発見があるかもしれない。そんな歴史の面白さ、わくわく感を思い起こさせてくれる内容でした。
<目次>
第1章 消えた信長の骨(秀吉は信長を見殺しにしたのか
富士山麓に埋められた信長の首 ほか)
第2章 信長の真の敵は誰か?(正親町天皇の勅命が、織田信長を滅亡の危機から救った
織田信長の覇業を陰から支えた元関白 ほか)
第3章 大航海時代から本能寺の変を考える(隠された信長
キリスト教禁教、イエズス会との断交)
第4章 戦国大名とキリシタン(黒田官兵衛の実力とは
加藤清正の経済力 ほか)
おわりに 「リスボンへの旅」
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本能寺の変の背景を大胆に推測した一冊。
信長は、ポルトガルとの南蛮貿易で富を得て、それが権力の源泉になっていた。このころ、宣教師たちの日本での活動が最も盛んとなる。ポルトガルがスペインに併合されると、スペインとの交渉に入ったが、決裂。貿易で得ていた信長の力に陰りが生じる。それをみた足利義昭は、公家勢力と組んで、信長を潰しにかかる。その手下となったのが明智光秀。そのころ、宣教師たちは、キリシタンと近しかった秀吉と組み、キリシタンのネットワークを使って、秀吉に中国大返しをさせ、権力を握らせる。
雑誌などに掲載されたいくつもの文書をまとめたようで、少々全体的なまとまりには欠け、若干読みにくいが、歴史を見る視点の新しさに好奇心を刺激された。
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明智光秀の謀叛とされている本能寺の変は、実は明智光秀ひとりに悪役が押し付けられたもので、裏では色んな動きがあった、というものですが、これが歴史の真実なのかよくできたフィクションなのかよくわからないながらも、おもしろく読めました。
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いろいろと納得するところが多い.秀吉はその通りだと思った,近衛前久に関しては将軍義輝への思いも残しているだろうし,将軍家を立て直したかったとの説にも頷ける.イエズス会の暗躍はきっともっとえげつない感じではなかったかと思う.今も昔も商人と宗教は一筋縄ではいかないということだ.
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いろいろ知らないことが多く、勉強になる本。戦国時代のキリスタンの影響力が印象的です。あと、作家の想像力が感じられて、素直にすごいなあと思いました。
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事実としたら、秀吉のイメージは大きく変わる。秀吉は「本能寺の変」を事前に知っていた、ということだから。
光秀も一人責任を負わされ、長生きしていたら、「事実」がどれくらい公になったのだろうか。
信長の天才性や人を人とも思わぬ所業がやっぱり強烈だった。
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予てから私も著者と同じく、戦国~安土桃山時代の捉え方が、江戸時代に真逆に書き換えられていると感じていたので、本作品内で引用されている例示は至極納得でき、爽快な気分になった。キリシタンや南蛮貿易を主として捉えると人物も事件も違った様相を呈して非常に面白い。蛇足だが、景教の影響からの厩戸皇子や蘇我馬子の指摘は、全く知らなかったのでとても新鮮だった。
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「本能寺の変は朝廷と室町幕府の復権を果たそうとする勢力が光秀を動かして起こしたもので、その黒幕は時の大政大臣近衛前久だと思う」と言うのが安倍龍太郎氏の主張。
足利義明、イエズス会、が絡んでいる。と言う推測が面白い。
明智光秀が朝廷の命令を受けて信長を討つのを、秀吉が知っていた、だから中国大返しと言う離れ業が出来た。と言う推測も面白い。
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本能寺の黒幕は朝廷で、近衛前久が練って足利義昭なども参画して秀吉にも話は通してあった。実行犯の光秀を秀吉が裏切る。謀叛の背景にはキリシタン勢力も加担していた。
そんな大掛かりな計画が信長にバレなかったのはなぜ?という考察は無い。
陰謀論は限りなく広がりを見せる。
物語としては面白いが、それだけ。
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信長が天下統一目前で、本能寺に散った理由を公家の近衛前久やキリスト教の観点から分析。
信長という存在が当時の誰よりも進んだ存在だったからこそ、不安視されていたんだなと感じました。キリスト教を通じてヨーロッパから莫大な利益を得られる一方で、神の前では平等とする理念のために距離を取らざる得なかったこと。豊臣と江戸時代には70万人に及ぶキリスト教徒の危険性のために布教を中止したこと。キリスト教が如何に日本の歴史に影響を及ぼしてきたかがよくわかりました。
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本の感想(http://www.books-officehiguchi.com/?p=19190)
「明智光秀が謀反を起こした本能寺の変は未だに謎の部分が多い。
この本では、本能寺の変の背景にキリシタンの勢力があることを指摘している。
織田信長が自らを神と名乗ったことから、宣教師たちを怒らせ、本能寺の変のきっかけになったことを挙げている。
この本を読んでいると、キリシタンが多いことに気付く。その例として、黒田官兵衛が挙げられる。他に、明智光秀はキリシタンではないが、娘が洗礼を受けガラシャと名乗っていること、武将の家族がキリシタンであることがこの本で取り上げられている。
この本を呼んでいると、織田信長の家臣やその身内にキリスト教の洗礼を受けている人が多く、宣教師だけでなく家臣たちも信長への心証を悪くしたのかもしれないという印象を受ける。
最後に、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』で、主人公の明智光秀がキリスト教の宣教師とどのように関わり、本能寺の変を起こすのか注目したい。」
内容(「BOOK」データベースより)
戦国時代は世界の大航海時代だった。スペインやポルトガルは世界中で植民地獲得に乗り出し、その波が鉄砲やキリスト教伝来という形で日本にも押し寄せていた。織田信長はこれにどう対処するかという問題に直面した、わが国初の為政者だったのだ―。安土城跡に発見された「清涼殿」の意味、スペインからの使者・イエズス会ヴァリニャーノとの熾烈な交渉、そして決裂。その直後に本能寺の変は起きた…。江戸の鎖国史観から見ていてはわからない、世界史における本能寺の変の真実。信長が背負っていた真の孤独とは。
著者について
一九五五年六月福岡県八女市(旧・黒木町)生まれ。久留米工業高等専門学校卒業。上京し、大田区役所に就職、後に図書館司書を務める。一九九〇年「血の日本史」でデビュー。二〇〇五年「天馬、翔ける」で第一一回中山義秀文学賞、二〇一三年「等伯」で第一四八回直木賞受賞。二〇一五年福岡県文化賞受賞。『関ヶ原連判状』『信長燃ゆ』『蒼き信長』『おんなの城』『家康』など著書多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
安部龍太郎
1955年6月福岡県八女市(旧・黒木町)生まれ。久留米工業高等専門学校卒業。上京し、大田区役所に就職、後に図書館司書を務める。1990年「血の日本史」でデビュー。2005年「天馬、翔ける」で第11回中山義秀文学賞、2013年「等伯」で第148回直木賞受賞。2015年福岡県文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
目次
第1章 消えた信長の骨(秀吉は信長を見殺しにしたのか
富士山麓に埋められた信長の首 ほか)
第2章 信長の真の敵は誰か?(正親町天皇の勅命が、織田信長を滅亡の危機から救った
織田信長の覇業を陰から支えた元関白 ほか)
第3章 大航海時代から本能寺の変を考える(隠された信長
キリスト教禁教、イエズス会との断交)
第4章 戦国大名とキリシタン(黒田官兵衛の実力とは
加藤清正の経済力 ほか)
おわり��� 「リスボンへの旅」