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1920年に生まれ、ソウルや青森、東京などで幼少期を過ごし、戦争と病を経験しながら「昭和」という時代を歩んできた著者の自伝的作品です。
ジャン・ルノワールの映画『大いなる幻影』が見られなくなってしまった時勢の変化に違和感をおぼえていた少年時代から、理不尽な軍隊生活から思いもかけず帰還し、さらに無気力な学生時代を送りながら、脊椎カリエスのために寝そべって小説を書きつづっていた、遅れてきた青年時代まで、著者の前半生は一見周囲の状況に流されているようにも見えながら、戦争の前後にわたる時流に対して距離をとりつづける態度がつらぬかれていることがわかります。それも、肩ひじを張って抵抗の姿勢を示すのではなく、世の中をながめながらやり過ごそうとするところが著者らしいような気もします。
戦後にかんしては、40歳になってアメリカにわたりそこでの人びとの暮らしをじっさいに目にしての所感のほか、安保反対闘争や連合赤軍事件などについての著者自身の立場が語られています。