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英検2級の対策本、というよりは大学受験生レベルのライティング指導の本。しかもライティングの初級レベルがクリア出来ていることが前提で、基本的なパラグラフ・ライティングの構成や表現を既に知っている人じゃないとややキツいかもしれない。正直この本の模範解答レベルが書ける人は明らかに英検準1級以上だと思う。
英語中級者が犯しがちなミスというのが第2章でまとめられていて、この部分がとても役に立つ。この辺はまず高校生のライティング指導で必ず扱いたい部分だ。2章の最後に見開きで「間違えやすいコロケーションTop20」と「間違えやすいスペリングミスTop20」というのもあって、高校生には確認させたいところだ。巻末の「英検2級ライティング必須表現200」と、「英検2級ライティング必須例文100」というのがあって、これも日本語→英語の訓練をするのに使える。
真ん中の第3章、第4章の実際の問題を解きながらの解説部分がこの本の核となる部分で、ある論題について賛成か反対かの立場それぞれでどんな理由付けがあるか、さらにその上で抽象→具体で議論を展開していく方法が示される。ここでは、英語云々よりも、それは設問に答えたことになるのか、議論のポイントを外していないか、論理が前後でつながるのか、といったことが内容の中心で、特に「ロジカルシンキング・トレーニングにチャレンジ」というコーナーが役に立つ。ただこれは指導も色んな意味で結構難しい部分だと思う。理由の一つ目は、(おれを含めて)指導者自身に「ロジカルシンキング」が欠如している可能性があること、2つ目は、そもそも英語がここまで書けない生徒にとって、このレベルのダメ出しをするべきかどうか悩ましいということ、が主な理由。あとは1つ目の理由とかぶるが、「それは本当に論理的と言えるのかどうか」という正解がよく分からない。例えばSome people say that children today don't spend enough time playing with other children. What do you think about that? (p.80) の問題については「トピックは、『本当に他の子供と遊んでいないか』という事実の検証というより、『他の子供と遊ばないことの問題点』についての見解を聞いている」(同)とあるが、本当にそうなのか。とっさに聞かれたら、「今はゲームを持ち寄ったりオンラインゲームやSNSでコミュニケーションを取ったりして、むしろ友達と何らかのことを一緒にする機会は増えた。ただ過ごし方が変わっただけだ」みたいなことを、たぶんおれは答えると思う。問題点についての見解を聞くなら、Some people say that children should spend more time playing with other children. What do you think about that?となるのではないか、と思った。そしてこれから2つ目の理由につながるが、ただこういうことをごちゃごちゃ考える前に、とりあえず最低限の英語が出来るようにトレーニングしようよ、という話にもなるので、実際の高校生相手を想定すると結構難しい。
あとは勉強になったところのメモ。p.30「~の数は増加することが予想される」で~ is projected to increaseのようにbe projected toという言い方。「provideの主語になるのは通常、個人ではなく、政府、学校、企業、病院、ホテルなどの機関や施設です。個人を主語にする場合はprovideではなくgiveを用いて表します。」(p.32)の部分���、Parents should provide their children the opportunity to...ではなく、giveを使う、ということらしい。あんまりちゃんと教えられていない気がする。prepare an examとprepare for an examの違い(p.47)。人 has possibilty that ~ではなく、There is a possibilty that ~(p.54)。このミスはわりと多い気がする。develop determination in students「生徒の意志の強さを育てる」(p.71)という表現は、言えるようにしたい。あと、「ますます多くの~」と来れば、おれはMore and more~の一辺倒だったが、確かにp.98にあるようなAn increase number of ~ も使える表現にしたい。「~で生計を立てる」はlive onだと思っていたが、確かにlive offもあるのか(p.105)、という面白い発見。「観光客が増えることによって観光産業が活性化され」(p.108)で、An increasing number of visitors will boost the tourism industryという英語は、高校生にも教えないといけないだろう。経済の活性化、みたいなことは結構理由になると思うのに、あんまり高校生にboost sales「売り上げを伸ばす」とか、boost demand for ~「~の需要が高まる」とか、あるいはboost the morale「士気を高める」とか、boostという単語を教えてない気がする。
ということで、英検云々にこだわらず、単純に英語やライティングや、あるいは「ロジカルシンキング」というものには役に立ちそうだ。が、一応英検を銘打っているだけなので、Pro/Conの問題だけしかなくて、バリエーションがない点は仕方ないと思う。(18/12/01)