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すごく空気感が好きだった。
ふわふわと時空の中を言葉たちが、会話たちが入り混じる。好きだった、うみとアミの関係が。冷めてるというよりもずっと熱いその関係が。そしてうみと芽衣子さんの関係も、うみとアオの関係も、アミとアオのつながりも、うみとこよみのつながりも。なりゆきで一緒になって、なりゆきで会って、なりゆきで妊娠して…すべて大切ななりゆきの本。
好きだから一緒に暮らせないって、なんて愛ある言葉なんだろと思ってしまったくらいにはこの物語の世界観がすき。
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地面と空と昔と未来と煙と匂いと血縁と他人……いろんなとこに意識とばしながらの読書。すがすがしい。うっとり。
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まっしろな砂が上から下へ、指の隙間をさらさら落ちていくような文章だった。
温度もなく、湿度もなく、不快指数ももちろん存在しない、ただ流れてくる砂を見ていた。
うみの語りは今と過去をごく自然に行き来する。今、ここに生きているアミのことを思いつつ、高校の修学旅行の記憶、遠くに死んでしまったゆりちゃんのことを語る。
起こってしまった大きすぎる災害のことも、どこか現実味なく漂っている空気のようだった。怒りも悲しみも恐怖も諦めもない、そんな人間の一切の感情とはすべてにおいて切り離された、ただそこにある空気として。起こってしまったものはもう取り戻せない、それだけのこととして。
(ふたつめの災害によって人口は激減したそうだが、それもただ事実として)
静かになったであろう世界、で、静かに息をしている人たち。
読み進めた分だけ時間が進むわけではない、行き来して、飛び越えて、また戻ってくる。
だから『TIMELESS』なのだなと、物語がどう、という前にこの文章こそがtimeless。
静謐に流れていく砂みたいな文章。
時間の制約からすり抜けた文章の行き先は無限で、うみたちの精神世界もまた無限に広がっていくのを追いかけるのが、とても贅沢な時間だったと思う。こんな文章は書けない。
殲滅、の「殲」の字の由来を語る一節が印象的だった。
息をするように行方をくらましたり離婚したり新しい恋人を作る人たちだった。
ゆりちゃんのことをもっと聞きたかった。
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川上弘美のような、小川洋子のような、柴崎友香のような。すなわち好きなタイプのお話でした。ちょっと短文が過ぎて心にとどまらないときもあったが、とどまる文はとどまった。
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縷々流れる言葉たち、時間たち
気がついたら時を超えていく、曖昧な世界
思い出しているうちに、このままいまのすべてが思い出すことでおわってしまうんじゃないだろうか。思い出すことがあって、思い出すことばかりで、夜が過ぎる。
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この小説の舞台は、近未来の日本。
大きな災難に見舞われた日本の姿が描かれていますが、物語はあくまでも淡々と進みます。
夢とうつつを行き交いしながら。
正直、私にとって読んで楽しい物語とはいえません。
登場人物が皆、揃って捉えどころがありません。
芥川賞作家らしいといえばらしい小説です。
でも不思議な余韻があります。
アミとアオ、うみ、こよみが対面するところは感動しました。
薄野原を静かに歩いてみたくなりました。
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空から死は降ってこない。
降ってくるとしたら、それは――。
恋愛感情のないまま結婚し、「交配」を試みるうみとアミ。
高校時代の広島への修学旅行、ともに歩く六本木、そこに重なる四百年前の土地の記憶、いくつものたゆたう時間。
やがてうみは妊娠、アミは姿を消す。
――二〇三五年、父を知らぬまま17歳になった息子のアオは、旅先の奈良で桜を見ていた……。
(アマゾンより引用)
読みづらい。
意味が分からない。
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今この時は、自分の生まれる前の時間からずっと繋がっていて、ちょっとしたきっかけさえあれば自分が存在すらしない世界に行けたりするかもしれない。
そんなことを思わせてくれる不思議な話。
争いや災害や、二度と起きてほしくないことが繰り返されてしまうことは歴史を見れば分かることで、そんな世の中を今自分は生きている。
そんな運命みたいな時間の流れの中で、自分の意思はあまりにも無力かもしれないけれど、それでも意思を持って生きたいと思った。
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うみとアオ、そしてアミ。ひと組の親子だけでなく、うみの母、アミの父母、広島で被爆したというその両親。時折思い出のようにうみに語られる話しが、現代なのか、戦争時代なのか、江戸時代なのかわからなくなります。短いセンテンスが「うみ」と「アオ」の移りゆく心を表して、読んでいる私は、自分の断片的な感情のように錯覚します。うみは、アオを産んでこよみを育てて、少しづつ変わっていったんだと思いました。親子、時代、時がたゆたうタイムレスな小説です。
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『白黒模様でも猫又になるのか、ふと思う。茶虎は妖気を吸って猫又になりやすいと聞いたことがある。聞いたことがあるといってそれは誰に?』ー『TIMELESS 1』
硬い言葉の輪郭。すきの無い言葉の連なり。言葉の意味するところを取り違えようが無いようにそれは連なってゆくが、成立した文章の言わんとするところはもどかしい程に発せられた場所に留まっている。まるで半透明の紙に裏刷りされた作家自身の名前のように。
随分前にこの作家の書いたものを読んだ。その感想を読み返してみる。驚く程に同じような印象が書き付けてある。しかし、この一冊には物語る作家の言葉がある。廃墟の中で妖艶に薄暗く灯る赤い光。香木の烟に擬えているものの正体。芭蕉の訪ねた象潟が受けた変化。近未来の東京の風景に込められた風刺。それらが静かに迫り来る。朝吹真理子は現代社会を痛烈に批判しているようにも読める。
その一方で夥しく並べられたブランドの名前や都心に並ぶ店簿の名前。批判しているものの上にしか存在し得ないものたち。そんな名前に絡め取られるのが業であるかのような存在なども律儀に描く。絡め取られた先が龍宮城のような場所に繋がっていることを強く匂わせながら。永遠の二十四歳に何の意味があるのか。蓋を開けてしまえば(そしてその蓋は必ず自分で開けることになるのに)止まっていた筈の時間はまとめてやって来る。
タイトルが示唆するように物語は特定の時間軸に沿って進まず、過去の思念が現在に入り込み、未来の自分が知り得ようの無い過去に紛れ込む。その境目の途中で迷子にならないように付いていくと、何か朧気に朝吹真理子の思いが垣間見えたような気になる。しかし、所詮、それは裏刷りされた作家の名前のようなものに過ぎないのだ。
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鴻巣友季子の2018年のベスト。
子づくりのための無機的な「交配」を繰り返す……。
アテンポラルな架空世界。
(時間の枠に縛られない、永遠」、「不変)
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著者の作品では芥川賞を受賞した「きことわ」を読んだことがある。その作品の文章の美しさが印象に残っていたので、本書を読んでみた。第一印象は、人と人との関係や生きることや生き物が繁殖するための行為などを読者に考えさせるものだということ。読み進めるに連れ、それ以上に不思議な世界観に連れて行かれる印象が強くなった。全体的に綺麗な文章である。長編の詩を読んでいるようで、リズムよく奇妙な世界を体験できる。
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うみとアミを軸にした1とその子供のアオを軸とした2.2の方でもうみとアミが登場するので繋がっているのだけど,1の方が好きだ.現実と微妙に混ざり合う想像(妄想)の色合いが美しい.好きだから一緒に暮らせないというのが,哀しかった.
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これ、ここ数年で一番度肝を抜かれました。凄いよ、朝吹真理子。もう凄い!読んで‼︎という事しか出来ないのが歯がゆいです。
スケールの大きい話で、文学の快楽が詰まってました。後半、1人声を出して驚いてから一気に読みましたよ。凄い!良い!読んで!
#読書 #timeless #朝吹真理子 #文学
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恋愛感情がないうみとアミの日常と未来を淡い文体で表現しています
本来ミステリなどしっかりしたストーリー物が好きなのでこのような文章自体を楽しむような経験ができたのは貴重でした
現実と夢と過去と現在、また一人称が入り混じる文章を追いかけているといつのまにか迷い込んだような感覚を覚えます
人物は変わりますが基本的には一人称でしか語られないので解き明かされない事実や向き合った人物の心情はあえて分からないようになっています
私にとっては新鮮で、自身の日常の些細な出来事を忘れさせてくれる良書でした