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「突然ガバチョ!」・「夜はクネクネ!」(何れもMBS)・「EXテレビ」(YTV)という、80年代~90年代半ばにかけて、それまでテレビバラエティーになかった番組が席捲した。それらの番組で人気を博した企画は形を変え、引き継がれていく。ダウンタウンの「笑ってはいけないシリーズ」、「鶴瓶の家族に乾杯」に代表される「街ブラ」、「開運なんでも鑑定団」等の元ネタとなっている。その企画を生み出したのが構成作家 倉本美津留。その異才ぶりをスポーツドキュメンタリーで知られた著者が、アシスタントディレクターを経て構成作家へと転身、松本人志との出会い、そして現在の非お笑い分野の仕事までを丹念な筆致で追いかけた評伝。倉本は様々な番組に関わるも、一貫して追求するのは「ドキュメンタリー的な笑い」。予定調和な笑いを排除し、「何が起こるか分からない、その意外性こそが面白い」…、企画をめぐってディレクターと口角泡を飛ばさんばかりの激論、放送事故もあり得る、キワキワのその一瞬に賭ける。その姿勢は時に攻撃的であり、時にアナーキーでありながらも、M-1の一次審査全3,000組のビデオにすべて目を通すなど、通底には笑いに対する真摯で貪欲な姿勢が今なおコンコンと湧出中である。本書一読後、youtubeで当時の番組を検索してしまう衝動に駆り立てられることお約束します。