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文句のつけようのない傑作。例を挙げるなら新国誠一のような、具体詩的な要素がふんだんに鏤められている。恐らく英訳はほぼ不可能だろう。これを日本語で読める喜びはこの上ないものだ。言語の意味に執拗に拘り、意味と文字とを視覚的に楽しめるものにしている。
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いつも通り頭がおかしい平常運転。 兵馬俑の話と、膨大なテキスト群を海や島に見立てた話が面白かった。文字が生きていたという発想がすごい。私は文字までは考えが及ばなくて、言葉に利用されるという発想止まりだった。
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読むのが大変でした。…それはもう読むのが大変でした。笑。初の円城塔作品でしたが、他のレビュアーさんの感想にはこれが平常運転とあり、ちょっとどきどきしています。他の本、読めるかしら…。Kindleで読んだのですが、ルビの部分はちゃんとルビでした(ルビを使った仕掛けがある章があります)。電子書籍でもきちんとできていてすごい。紙の本だとどうなっているのかとても気になりました。犬神家の一族の一族とか読んだことがある方はよりいっそう楽しめると思います。自分の想像を超えるような発想がたくさんあり(印刷機とか)、円城先生の世界にただただ圧倒されておりました。奇想天外な世界を味わいたい方は是非。
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一瞬「文字禍」と空目して「中島敦への挑戦状か!?」と思ってしまいましたが、こちらは「文字の『渦』」ですね。
日本SF大賞・川端康成文学賞受賞作。日本SF大賞はともかく、川端康成文学賞の方は、かなりの英断ではないかと(笑)まさに「奇書」です。
あらすじを紹介するとネタバレになる類の作品については、レビュー投稿のときに注意を払うようにしていますが、この作品に限っては何をどう書けばネタバレになるのか、そもそも「あらすじ」とは(定義に悩む)といった、鴨ごときの浅薄な理解力では全く太刀打ちできない、まるで「手玉に取られた」かのような読後感です。でも、「あーよくわからん、ツマラナイ」という印象はなく、むしろ心地よい酩酊感が味わえますね(まあ、世の中ではそれを「手玉に取られた」というわけですがヽ( ´ー`)ノ)。
テーマは文字、主人公も文字、それを描いていくのも文字です。これまで見たこともないような文字がそれぞれに意味を持ちつつ大挙して登場し、組版にも工夫と意匠と暗喩が込められていて、これは出版社泣かせの作品だなぁ、と思ったのが第一印象(笑)
主要な登場人物(文字じゃなくて人間)も数名出てきますが、彼ら/彼女らはあくまでも文字の語り部であり観察者であって、結局は文字の、文字による、文字のための世界。人を食ったようなユーモラスな筆致で描かれる、文字をめぐるアイディアの奔流を楽しむことができれば、それに尽きるのでは、と思います。
同じように、文字を駆使して世界を描き出す作家として、鴨は真っ先に酉島伝法氏の作品を想起します。
が、酉島作品は文字によって異質な世界を、そこに暮らす動植物や無生物も含めて分厚く描き出し、知的大伽藍のような圧倒的世界観を広げていく「構築的」な作風であるのに対し、円城作品は文字というものを徹底的に掘り下げて、様々な角度・観点・価値観からしつこくしつこく文字の本質を突き詰めて、掴み取ったレイヤーを重ねていく、「重層的」な作風だと感じました。言い方を変えれば、酉島伝法は作品を「展開」し、円城塔は作品を「演算」しているイメージ。
共通して言えるのは、どちらも日本語を母語とする者こそが味わうことのできる、稀有な作品だということです。日本でSF者として生まれてきて、本当によかったなー。
しかし、酉島作品はギリギリ翻訳可能ですが、この「文字渦」は無理ですよね・・・^_^;
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円城さんの作品は初めてだったが、全くついていけず断念…。
何というか格闘技的な読書が要求されますね。
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読みやすいのに分からない!最初は辞書活用して分からない漢字や言葉の意味を調べながら読んでたけどきりがない。流すように読むようにしたらなんとか進めるけど一日一話読むのがやっとでした。するする読めるけど読後の疲労感がすごい。なんなんだこの本と思いながらなんとか読み終えました。多分不思議な読書体験ができる本なんでしょうけど私にはレベルが高かったです。
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読んでも読んでも、読んだようでも読んでないような気もする。不思議な気分。
禅問答を読んでるみたい。
時をおいて読み直すとまた違う風景が見えそう。
今の時点ではよく見通せない。
いつか、また読みたい。
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情報技術と歴史や仏教を下敷きに、「文字」を題材にしたSF短編集。
何を元ネタにしているか、自分が読み取れたのはバイナリ、シンタックスハイライト、マークアップ言語、電子書籍(kindle?)、文字コード、デザインツール、typo、インベーダーゲームなど。インベーダーゲームのくだりは特に笑ってしまった。
概念で殴るというか、こういう解釈もできるよねっていうのが好きなんだなあと自覚できた一冊。
調べながら読むのを解説でもおすすめされているので、PC版kindleで読んで即調べるのが良いかもしれない。
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あまりにも難解だが心地よい
ほんの少しだけでも理解できれば楽しくそれで良しとする
章ごとの感想などはまたおいおい
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発売当初入手しながらも、表題作だけ読んでその後読み進められていなかった、『文字渦』をようやく読了。
円城塔の作品は、いつも、小説や物語というもの、言語というものへの実験が含まれており、『文字渦』では、まさに「文字」というものに対して様々な側面から様々な実験が繰り返される。
莫大な知識とSF作家による想像力をもって、文字というものへの可能性をこれでもかと拡張してくれる作品であることは間違いなく、全ての短編を読み終わったあとには、自分をとりまく言葉の世界がまるで変わってしまったような幻覚に襲われる。
そのような意味で、感動とも、脱力感ともつかぬような感覚をもたらす作品といえると思うのだけれども、読むためには相当の忍耐と想像エネルギーを必要とするので、心して、時間をかけて読んだほうがよいかもしれない。
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なんとも不思議な小説。歴史であり、SFであり、ファンタジーでもあり、ミステリーまで入っていたり、なんなのだろう。
コンピューター的なところなどよくわからない部分も多いのだけれど、それはそれとして読めてしまう。
勝手にひねくれた印象を持っていた作家だったけど、文章は素直だった。まあでも、この数々の設定はやっぱりひねくれてるのか?
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文字遊びの本。この本では、文字が物語の描写や状況の説明に使われるだけではない。
「緑字」では文字が地図のように広がって島を形成するし、「闘字」では漢字そのものを使って対戦バトルをするし、その他にも本筋と関係無いルビを執拗にふってみたりと、文字が記号、シンボル、おもちゃのような扱いがされている。
よくこんな発想を思いついたものだなあ。
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難しい。言いたいことはわかる。だけど読んでも意味がふわふわ滑ってしまい、戻って読むという作業が必要だった。
特に二番目の緑字。
えーん、なにー?と何度も読んでいて迷子になったし。
速読するタイプの私には特にこの作業はしんどかったけど、それ以上に面白いのだ。
ちくちょーと言いたくなる気持ちを抑えながら(面白いから難しいのに読んじゃうだろう、のちくしょー)なんとか読みました。
面白い。というか、絶対に私には書けない(他のものなら書けるという意味ではなく)
なんか、すごかったです。
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導入の「文字渦」がとても好き。文字の持つイメージや芋する分物と引き剥がされ、機構としての「文字」担っていく過程が秦王嬴、後の始皇帝と陶工俑と交わされる会話の中で作り上げられていくのが良かった。
読み従っていく間に固着した「文字」が様々な書き手と書き手の中で少しずつ意味を変え最後には「かな」になり解体していく文字の大冒険を楽しむ本。
「誤字」の章はDTPオペーレーターや校正の方々の苦労が忍ばれて本筋とは別のところで泣けた。
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筆者が文字をとにかく捏ねくり回す作品。
文字をこれでもかと弄り倒す、それが一番この作品を表すのにちょうどいいかな、と思います。
文字を1つ書く、それだけで考えられることはたくさんある。
例えば「の」という字があったとして、誰が書いた?とかどんな意味が?というのはもちろん何故「の」を選んだのかというのは「の」のつく言葉を書こうとした以外にも、もしかしたら「の」の丸みを注目したのか記号としての「の」なのか「もしかしたら、のが家出してきたのかも」などなど色んな考察ができる。
このように、一般的な考え方の文字の使い方とは限らないところに作品の面白さがある。
小説ではなく、学術書のような話、SFに寄った宇宙と文字の話、まるでムシキングやポケモンカードのような対戦型の文字、ずっと夢の中にいるときのようなファンタジー、真面目に一字一句読むのは正直疲れました。