投稿元:
レビューを見る
都市開発に携わった当事者の考えを知ることができる。著者の森はすでに亡くなっているけれど、自身の経験や都市の理想像を森ビル内だけでなく、社会全体で共有できたのは素晴らしい。しかも新書だから気軽に読める。都市開発は様々な主体の利害に関わるだけに、なおさら重要な事だと思う。
森ビルは現在進行形で前例のない都市モデルの開発に挑戦しているけれど、本書では「垂直庭園都市」がメインで記述されている。知識や創造性が重視される現代において、職住近接で身近に文化と接する機会のある都市は、多くの企業や人にとって魅力的なもの。六本木ヒルズといったら成金なイメージがあったけれど、「そこに住む人のステータス」といった面を捨象すれば、あらゆる地域に通用するものとなる。
ただひとつ気がかりなのは、分業を強調しすぎていたところ。人口が回帰しつつある都市をコンパクト化する一方で、郊外や地方は自然保全をし、そのことが社会の持続可能性を実現すると森は述べる。しかし、郊外や地方は自然があるだけではなく、その地に根付いた産業や文化もある。少子高齢化・都心への人口回帰により、供給も需要も減少しつつある地域で、それらを維持していくことは困難である。自分の住むところを自然保全の対象のみとして見られたら、誇りが傷つくのではないか。森は都市の多様性を主張するが、視点がそこに限られていて、郊外や地方を含めた多様性までは考慮していない。
とはいえ、都市専門のディベロッパーとして仕方のないことであるし、森ビルが構築してきたモデルそのものは地方でも応用できる。そのため、地方の活性化につながりうるものでもある。
投稿元:
レビューを見る
読んでよかった。感銘を受けた。
本来公共セクターが持つべき「まちづくり」や「タウンマネジメント」の意識を大変強く持ち、それに根気強く向き合うことで、アークヒルズや六本木ヒルズを形にしてきた――そんなプロセスがよくわかる。地域の人々との接点を大切にし、入り込み、ひとりひとりの人生を巻き込みながら、信念を形にしていく様子は、読んでいて気持ちよくもある。
アークヒルズのヒルズマルシェや六本木ヒルズのHills Breckfastはもとより、例えば毎週末森ビル社員がパトロールしていることを知る人はあまり多くないだろう。知らないまま「食わず嫌い」せず、森ビルの考え方をまず知ってみること。森ビルの再開発の好き嫌いを決めるのは、そのあとでよい(学生のころは食わず嫌いしていたなぁ)。
投稿元:
レビューを見る
地縁、血縁、電縁というのは、今まさにその通りで、その中でも新しい電縁というネットを介したつながりをしていて凄い。
会社自体の成長は、実際はもっとエグいこと多かったんだろうな、と想像できるような。
割と読みやすいので、オススメです。
投稿元:
レビューを見る
【きっかけ】
ブックオフ100均
【概要】
森ビルの思想と、創業から上海プロジェクトまでの挑戦の歴史が語られている。
【感想】
六本木ヒルズができたばかりのころ、大学のレポートで批判的な論評をしたことを覚えている。周辺との接点が希薄に見えること、時間的な連続性(歴史の尊重と未来への継続性)が感じられないこと、というのが趣旨だったように思う。
もちろんそれが当時の率直な印象だったけれども、本書を読み、また完成から10年以上の時間を経て、学生の時の評価は時期尚早な部分も多いにあったように感じる。
特に、近年の虎ノ門ヒルズ周辺地域とのエリアマネジメントなど、地域連携を活発に進めようという姿勢がむしろ強まっているような印象さえある。
再開発にあたって、制度がないところから始まったとてつもない苦労も、本書によって知った。
このことについても、学生の時は想像が及んでいなかったが、知ったことでプロジェクトの持つ意味・重さが違って見えてくる。
思想・理想(ヴァーティカルガーデンシティ)は分かるし、ハイエンド層から街への波及を狙っていくという考え方も合理的だと思う。
それでも自分は、当時も今も、やっぱりヒルズモデルの直接の顧客ではないかなという感覚はある。
結局は高層化することが望まれる地区もあれば、適度な低中層のよさがある地区も併存する、都市全体としても多様性を包含する、ということになるんじゃないだろうか。
投稿元:
レビューを見る
故 森稔氏が森ビルを通して実現しようとした理想のまちづくりについて語った本。コルビュジェ的な高容積率・低建ぺい率の都市を日本で実現する上で、立体道路制度を使った公開空地など実際にどう組み込んだのかを知ることができた。
投稿元:
レビューを見る
森ビルの森稔社長の都市開発への理論、思いが詰まっている。日本をリードする都市開発構想とともに、再開発における地権者との泥臭くも、人間味のあるデベロッパーの仕事が鮮明に映し出されるような内容だった。
投稿元:
レビューを見る
垂直の庭園都市と文化・アートのコンパクトシティ構想、長期戦の土地確保、そらをやりきる信念。
#ヒルズ挑戦する都市 #森稔 #読書記録 #読書記録2018
投稿元:
レビューを見る
森ビル社長による都市開発物語。虎ノ門・六本木地区で極めて存在感のある森ビルではあるが、その成功の裏には並々ならぬ苦労があったことがよくわかった。特に、身近な存在であるアークヒルズ付近の谷間地地区が、バラックだらけの取り残された陸の孤島であり、自らの理念に忠実に、反対者の多い500戸にものぼる住民を説得し、近代的空間を作り上げた熱意はすごい。森ビルの総帥なんだから、タダ者ではないとは思っていたが。私も普段から都心を散歩し、今でも小さな木造家屋の多い地区を見てはガッカリさせられるが、都心を快適空間に変える森社長の理念には、完全に同意である。街の姿を一変させる都市開発の力に驚嘆した。六本木地区の変遷がわかり、とても興味深く読めた。
「日本は「土地こそ資産」という考えが強く、都心でさえ未だに一戸建てが数多く建てられている。これでは、建て詰まって都市環境は悪化するばかりである」p31
「(アークヒルズの)ケヤキ並木の中には6本の楠木が交じっている。「風よけに常緑樹を植えなさい」という指導があったからだ。ケヤキ並木のなかに、居心地悪そうな楠を見上げるたびに「まったく不思議な国、不思議なルールだ」とため息が出る」p70
「「田舎の3年、江戸の昼寝」という喩えがあるそうだ。田舎で3年勉強するより、江戸で半時昼寝をしているほうが勉強になるという意味らしい」p83
「(ヒルズは)「災害時に逃げ込める街」」p95
「日本では、リスクをとって新しいことに挑戦する人は少ない。前例のないことを認める人も少ない。実績と信用がつき、まわりの評判を聞いて初めて賛同する人が増える。よくいえば慎重。悪くいえば臆病。日本はベンチャー企業が育ちにくい国である」p122
「当時この一帯は「陸の孤島」だった。(谷間地地区は)土地が不整形で高低差が大きい、勾配がきつく、道路も曲がりくねっていた。しかも、崖下は老朽化した棟割長屋や木賃アパートが密集する下町、丘の上はお屋敷町と、全く性格の違う街だった」p135
「「できるはずがない」この言葉をこれまで何度聞かされただろう。そのたびに「そんなことはない、前例は自分たちでつくる」と奮い立った」p146
「(欧米人の)豊かなプライベートタイムが斬新なアイデアや、思いがけないビジネスチャンスを生み出しているように思われた」p196
「「法律で決まっているから仕方がない」と諦めるのではなく、法が制定された本来の目的を読み取り、その主旨に沿う最もいい方法を研究し、協議していくべき」p217
「中国には「井戸を掘った人を大切にする」ということわざがある」(皆のために良いことをしてくれた人を敬う)p256
「アジアのライバル都市に比べると、日本は意思決定も、許認可手続きも、工事も、供用開始もすべてにおいて遅い。このままでは、十年もたたないうちに追い越されてしまうだろう」p260
投稿元:
レビューを見る
日本人は広葉樹の方を好む。
前例は自分たちでつくる。
再開発の過程で多くの人に接し、色々な側面を見る。
六本木ヒルズだけでなく、上海の上海環球金融中心の話もあり興味深かった。
上海環球金融中心はアジア金融危機で中断していた。その時に撤退をする共同事業者もいたが、それをあきらめず株を引きとった。
投稿元:
レビューを見る
六本木ヒルズというのは、ヒルズ族というのがあって、
あぶく銭の館だと思っていたが、
この本を読んで、全く違っていたことを知った。
ワーカー2万人、住民2000人、訪問者4000万人。
森稔の「都市の中に、都市を建設する」という執念。
住みかつ働く、職住近接。用途限定から用途複合へ。
巨大フロアー(5400平米)をスペースとする。
「垂直の庭園都市」というコンセプトで、
「緑で覆われた超高層都市」そして「天空美術館」がある。
文化は経済活動に匹敵する産業になると森稔は思っていた。
クオリティオブライフを追求しながら、住み、暮らし、遊び、文化を創造する。
都市に小自然を作り出す。緑被率をあげる。四季を味わう。
自然が街を成熟させる。意外性や偶発性がある。
ワンテイストの街などあり得ない、異質なテイストが
高い次元で混じり合う街をつくる。
人口減少や少子高齢化になると都市に人口が集中する。
「田舎の三年、江戸の昼寝」と言われ、
情報が多くなればなるほど、都市にひかれ、集まる。
この指摘は、なるほどと思った。
中国から戻って、東京に住んで、もはや3年になるが、
やはり、東京の利便性と様々な文化的なイベントに参加できる。
やはり、東京に住むことを覚えたら、やめられない。
森ビル映像配信室、タウンマネジメント事業室が、
ヒルズジャックする。街がメディアになる。
この仕組みは、すごいなぁ。今後これが発展するだろうね。
既成概念に挑戦し、街の価値で勝負する。
そして、街の主役は人間であるという。
アークヒルズを作るときの、粘り強い取り組みには、
感心させられた。目標に向かって進む姿は、素晴らしい。
投稿元:
レビューを見る
アークヒルズの開発の経緯など、さすがに面白い話が色々載っています。
庭園都市の構想については、悪くはないと思いますが、養老孟司さんだったら、「その緑は自然ではなく、人工である」と言うでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
街を単に経済やシステムの効率的推進拠点にせず、街が「生きる」姿を重視する姿勢に強く共感し、また実際の事例とともに楽しく読み進められた。森氏はとくに文化・美術に着目し生きる都市イメージ実現に向かったようであったが、他にも住む者のアイデンティティやノスタルジーへの働きかけなど、「人が生きる=都市が生きる」構想を実現するには手段があると感じた。それ自体が生き、愛され、親しまれるために、都市やその開発にできることはまだまだあると感じさせられた。
投稿元:
レビューを見る
最頂部に美術館を置いたのは、文化が最重要というメッセージと外部と内部を連結させていること
六本木ヒルズが従来の都市に対するアンチテーゼ
寄り道や回り道をする街歩きの楽しさや多様性、意外性を表現
田舎の三年、江戸の昼寝
土地ではなく建物や街の価値で勝負