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[ 内容 ]
ナチスのユダヤ人虐殺を筆頭に、組織に属する人はその組織の命令とあらば、通常は考えられない残酷なことをやってしまう。
権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために、前代未聞の実験が行われた。
通称、アイヒマン実験―本書は世界を震撼させたその衝撃の実験報告である。
心理学史上に輝く名著、新訳決定版。
[ 目次 ]
服従のジレンマ
検討方法
予想される行動
被害者との近接性
権威に直面した個人
さらなる変種やコントロール
役割の入れ替え
集団効果
なぜ服従するのかの分析
服従のプロセス―分析を実験に適用する
緊張と非服従
別の理論―攻撃性がカギなのだろうか?
手法上の問題
エピローグ
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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心理学上有名な、通称アイヒマン実験の原本。
被験者のインタビュー、諸条件を変えてみての実験等、この実験の詳細が述べられている。
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組織や経営の研究、または大学で学生が獲得すべきスキルとして権威や服従のシステムを理解し、社会に出た中で、役立てられるような教育の仕組みを考えられるのかもしれない。紛れも無い名著であると感じた。
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人間が社会的な生物だからこそ権威への服従という性向は進化の過程で要請されたのだろう。またこの実験の詳述を見るに改めて観察とは対象への影響を及ぼさずにはいられないということを感じる。
人格とは真空状態で観察できるものではなく、
人間関係のネットワークにリンクする関係体としかありえないのだなあ
あとがき訳者の「蛇足」のミルグラム批判、一番クリティカルなのはやはり人間にはそもそも攻撃的性向があるのでは?という点。
非人道的な行いができるのはまさに攻撃対象たる他者が
もはや人間とは認識されていないゆえなのだろうか。
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ヒエラルキー、権威のもとでは、服従してしまう、自分の責任を「権威」に転嫁しがちであるということが示されていました。
こんなにも従ってしまうものなのか、と驚きました。置かれている状況が、その人の行動や判断力に影響を与えるというお話、ソーシャルワークにとってはとても大切な内容でした。
パワーバランスと影響力、現場でもしかと見ていかねばです。
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実験についての論文と言うか調査記録の様な感じ。実験内容と結果については様々なパターンで試すので研究者じゃないと面白くないだろうが、参加者の追跡調査については実に興味深かった。
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『アイヒマン実験』として知られる心理実験のレポート。
単行本が出た時に買ったと思っていたのだが、どうやら買っていなかった……?
流石に古いものだけあって、新訳を担当した山形浩生氏が『蛇足』として少し批判的な視点から幾つかの指摘をしている。素人が読んでも割と妥当な指摘だと感じられたので、この辺りを加味して同じ実験をしたらどうなるのだろう、という興味は湧く。
しかし『アイヒマン実験』自体が余りに人口に膾炙しているし、今の社会的な情勢で果たして許されるのか、と考えると、まぁ、無理だろうw
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このアイヒマン実験について著者のミルグラムは、参加者の良心と権威に対する服従についての葛藤の場として見ている。一方で日本語訳者は、参加者の社会に対する信頼の度合いと、なにがより高位の規範であるかについての判断の場として見ている。これら実験に対する向き合い方の違いは、人の理性について理解しようとする際の方向性の違いだけでなく、アウシュビッツの存在がそれぞれに与えた衝撃の受け止め方の違いのように感じた。
前者の考え方の落とし穴は、人の良心を信じる者がアイヒマン実験の結果を知ったときに、その結果を人の性悪説の証明であるかのように感じ、実験のプロセスを含めて強い拒否反応を示すことにある。また後者の考え方の落とし穴は、その思考にのみ拘泥していてはアウシュビッツを防ぐための倫理的な防波堤を構築しえないことにある。人の本質を性善と性悪に簡単に分類できるものではないだろうし、また、倫理的判断を各人の判断や時代の判断にまる投げできるものでもないだろう。
正常と異常の判断または、優位と劣位の判断はその定義からして、あくまでも正常な側や優位な側が行わざるを得ないことを肝に命じながら、前者の考える倫理と後者の考える法規範をもって、人の行動に制約をかけることの大切さをあらためて教えられる。
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通称「アイヒマン実験」の報告にあたる本著。ここで得られた実験報告は人は権威に対して服従する生き物であるという、目を背けたくなるような結果だったということ。厳密にいえば、この実験で行われた手法の正確さについて異論等もあるようだが、いずれにせよ確実なことは、権威という目に見えないパワーの強大さ。そして人間がそれに対して、社会システムの構造上指示に従わざるを得ないところにいるという点は否定しにくいのではないだろうか。
日々、家庭、学校、会社、社会・・・あらゆる生活の場に権威は存在しており、その権威に服従して生きている。こう考えると、自分はさも奴隷かのように感じてしまうが、そうではなくて視点を変えてみれば、相手への信頼にほかならないとも言えなくもない。
ただ、なんというか、協調や空気を読むことを大事と見ないしている日本においては、この実験を行ったらかなりの率で服従する人が多いような気がしてならないし、私自身、服従してしまう側なんだろうな・・・と思いながら読んでいたら、背筋がゾッとした。
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見ず知らずの人に「殴って下さい。」と言われて実際に手を出せる人はまずいない。
だが、実験室を用意し、実験参加の求人広告に応募してもらい、白衣の指導者が参加者に実験の概要を説明し、
簡単なテストに間違える仕掛け人と電撃発生装置を用意したならば、その電撃の強さを最大値まで設定できる人間は多い。
本書は各所で引用されるミルグラムの服従実験を、スタンレー・ミルグラム自身が語る一冊。
驚くような新事実が載っているわけではないが。
実験室の様子、与えられる役割、種々の条件設定、結果データの数値など、引用では省かれる詳細がよくわかる。
だが、本家だからといって実験に対する考察が十分にされているとは言い難く、それは訳者による解説にて補完される。
この実験から得られる教訓とは、『人は権威への服従により残酷な行動をとりうる』ということではない。
現代戦争における虐殺や捕虜虐待などは、むしろ体制が厳しく禁じているにもかかわらず発生しうるが、
その原因を一つに限定することはできない。
対象との心理的距離の乖離、
厳しい環境におけるストレス、
強すぎる共同体の結束と反抗者への敵愾心、
多段の命令系統による責任の希薄化、
その中の一つが、本書で語られる進行し続ける状況への服従だ。
学校でも会社でも遊びでも、始まってしまった状況へたった一人で反抗することの難しさは、誰しも感じたことがあるだろう。
では、服従さえ克服できれば人類は進歩できるのだろうか。
手持ちの紙幣の価値を疑い、書籍に記されている歴史を信じず、皆が従う法律を認めず、全ての状況に抗う。
そして全ての事実を確かめるために世界を巡る。
そう、状況への服従とは、現代の繁栄の根幹である分業すなわち他者への信用と表裏一体だ。
歴史への服従・信用があってこそ、2,000年以上を費やした学問の利益を得ることができ、
社会への服従・信用があってこそ、突然斬りかかられることを心配せず往来を歩ける。
服従と信用の違いが他発的か自発的かだとすれば、現代社会に生まれた時点で服従を強いられるのは間違いない。
そうやって生きるためのコストを他者にゆだねて得られた時間を用い、
信用できる領域をそれぞれのペースで広げてみよう。
人間社会はそうやって進歩してきたのだから。
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【由来】
・amazonで「群集心理」の関連本。やはりミルグラムだし、読んでおかないと、という感じ。
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
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話に聞くだけではどこまで信用できるのか分からないような印象を持っていた実験だが、こうして細部を知るとなかなか説得力がある。でもなお、この実験での「服従」の度合いが驚くべきものではあるとは言え、その絶対的な水準からあまり多くを汲み取るのも勇み足である気がある。巻末の山形解説もその点、面白い。引き換え、いろいろ条件を変えて服従度合いへの影響を探るあたりは興味深い。
また、ミルグラムがベトナム戦争でのソンミ村虐殺などに極めて強い問題意識を持っていたこともはじめて知った。山形氏によれば、それがミルグラムの視野を狭めているということで、たしかにその側面は否定できないが、単に心理学の実験というだけではなく、社会的な強い問題意識がバックグラウンドがあるゆえ、これだけ人々の耳目を集める実験にもなったのだろう。
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ミルグラム「服従の心理」 権威に対する服従心理を紐解いた アイヒマン実験の報告書。なぜ 普通の軍人が 非人間的なユダヤ人虐殺や原爆投下をできたのか わかった気がする
服従の本質=自分の行動に責任を問われない→自分を権威に委ねる→自分の義務を果たしただけ
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心理学の文献ではしばしば登場する「ミルグラム実験」について、ミルグラム教授ご本人が書かれた報告書。
「アイヒマン実験」とも呼ばれるこの本は2008年に新訳として再版されるまでは約10年は絶版だったそうだ。
2012年には文庫化されたが、357ページで1300円という価格となっている。高すぎるのではと思い読み始めたら、疑念はすぐに払拭された。実験の全貌、ミルグラム教授の分析等、事細かく書かれている。被験者を募集するための広告、役割や条件を変えての全18種類の実験内容、被験者のナマの声等、読み応えは充分。
更によかったのが訳者山形氏による「訳者あとがき」である。通常のあとがきに加え、「蛇足 服従実験批判」とのタイトルで本書の分析・考察に情け容赦ない根本的批判を展開する。訳者がこんなに批判しちゃっていいの?とも思ったが、権威からの命令が責任回避や思考停止に陥ってしまう危険性を検証した本書に対し、訳者自ら、ミルグラム実験という「権威」を否定することでオチをつけたのでは、とも考えてしまった。
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こんなにはっきり傾向が出てしまうものか~、でも自分も被験者だったらボタンを押してしまいそう、と思いながら読んでいたのだが、ただ作中では「明らかに反抗するのが人として正解なのにそれができない」というのが前提になっていたのに対して「明らかに悪いことと本気で判断できない場合もあるのでは?」と違和感をもったんだよな。ちゃんとした大学がやっている実験なんだから倫理ガイドライン的なものをクリアしているはずであって、素人が感情論で反抗すべきでないとか思いそう、と思ったので。ただそれが、複数の価値観の対立で本当に判断がつかないのか、権威への遠慮で判断力が鈍っていたのかの区別は難しそう。しかし本編中ではその違いには言及していなくて(当然に後者の前提のみで語られていた)、この点については訳者の解説で痒いところに手が届いた感じ。その他にも本編で足りなかったところについて明快に補足してくれていて、いちいち納得。権威に従ってしまう心理を否定する必要はないし、個人が自己犠牲的に戦う必要もない、組織の中で改善していけばいいじゃない、というとてもまっとうかつ前向きな結論も良かった。
・人間の残虐な性向の存在をこの実験で否定できる訳ではない。それはまた別のきっかけで発露する可能性がある。
・公開実験の仮定はおもしろい。他人の目があったら反抗したかもしれない=世間という別の権威に従っただけで個人の道徳心による反抗ではないにしても、現実的なブレーキにはなるだろう。
・権威の性質についての考察もなるほど。権威だったら無条件に従う訳ではなく、科学や大学といった悪いことをしなさそうなイメージの権威だとより反抗しづらくなるというのと、そういう権威が悪いことをした時に、冷静に切り捨てられず「もしかしたらなにか事情があるのかも」と戸惑ってしまうという心理状態も納得。上記のひっかかりに対するある程度の回答になっている。
ベトナム戦争への批判、権威に対するマイナスイメージ等の時代背景がわかりやすく解説されていて良かった。しかし本文を読んでいる間は漏れなく条件設定されていると思ったのに、こんなに粗が出てくるものか。実験って難しいな。
なんかほとんど訳者解説への感想になってしまったな。