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登場人物がとても多く、複雑だったので家系図を書きながら読み進めました。
めっちゃ面白い!!と思うことはなかったのにも関わらず、最後まで読んでみたくなるこの感じ。
今ではもう、自分の幼少期を鮮明には覚えていませんが、私も幼いながらに故人に対して思うこともあったのだろうか。
未成年飲酒多すぎないかと感じました。流石に。
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人称を消すことで、小説が成り立つのか?乱暴に言えば、そういう実験が成功している。
一番単純な例は、いわゆる会話文、回想文の主体が明示されないことによって、小説世界は読者の「ぼく」の頭の中に、他人事でない様相でひろがっていく。その感じがとてもいい。「意識」や「記憶」、生きていることの時間感覚の浮かび上がらせ方は、今までになかった新しさ、いや、大げさに言えば「失われた時」を求める小説本来の方向を真摯に描こうとする作家の意志が感じられて感心した。
作品の後半にクローズアップされている美之と知佳の兄妹のエピソードの描写の「まっとうさ」の中に、作家の世界観の「まっとうさ」があり、鶴見俊輔のいう「お守り的ことば」の使用になれた世界に対する痛烈な批判でもあることに、胸がすく思いがした。拍手。
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芥川賞受賞作文庫化ってことで購入。故人を偲ぶ通夜や葬式の場で、遺されたもの=死んでいないものたちの様々な思いが、時間的・空間的自由に書き綴られる。で、個人的には読みながら頭に浮かんでいたのは、いつか読んだ古井作『仮往生~』。識者からすると、褒め過ぎっていうことになるのかも知らんけど、私はむしろ本作の方を好もしく思いながら読んだ。それでも、大好きまではいかないけど。
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いろんな意味で小品。とある親族一族の通夜から葬式なのだが、族の関係など関係ないほどに、人生などそれぞれ色々あって、いろんな思いがあって、誰もがストレートに表現する訳もなく、そうなっているものだ、と訴えかけてくる。
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絶妙である。
お祖父さんが死んで、その葬式の一夜の話なのだが、その子、孫、ひ孫の様子や側面を少しずつ描いていき、一族の全体像が見えてくる。
みんな本当は全然別の考えを持つ他人なのに、家族という雑な枠組みで集まってくる異様さ。
葬式という厳粛な場だけど、非日常の祝祭感もある。
爽やかさもある。
こういう面白さがほんわか感じられるのが良い。
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死んで、居ない者 と 死んでいない=生者 のダブルミーニングのタイトルがぴったりだなぁと思った。
大往生し子や孫が多かったある老人の通夜の後。身内だけが居残っていて、特に悲しみも感傷もなく飲んだり会話したりしている。
その光景は自分の記憶のようにはっきりと目に浮かぶ。
何も起きないがところどころにわずかなささくれがある。
終始まったくシチュエーションは変わらず時間もほとんど進まない。
なんというか、不思議な読後感だった。
同時収録の「夜曲」もとあるスナックのとある時間帯で終始し、ところどころにわずかなささくれがある。この作家のスタイルなのだろう。
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通夜に集まった親類たちの一晩をそこに参加する一人一人の視点で、交錯する想いを描いている。たった一晩だが、人々の想いを重ね合わせてゆくと、徐々に重厚になってゆく。なかなか楽しめる一冊。
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うわ!これ!大好きです!!!!語りは幽霊のように人びとの思考と記憶を辿り、それは声も身体も超えて、時間を自在に伸縮させる。そのなかで忘れがたく描かれる機微の愛しさ。敦賀の砂だったか石だったかのところかなり好き(好きといいながら砂だか石だかおぼえていないのだからまるで信用がならない)。
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読んだ時期によるのかもしれないけど、主題に全然共感できなかったな。タイトルと違い、生物学的に死んでる人も声があり、文体は言ってしまえば最後にそのものが現れるように主語を明確に切り分けない歌のように響かせていてスムース。ただ、どうでもいい人としか読めず。興味を持てたのが唯一声を与えられてない祖母のことだったというのは、個人的な理由だけど。あまり合わなかったなー。残念
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詩と小説の中間のような、独特の文体(わたしが初めましてだっただけで、他にも沢山いらっしゃるのかもしれないけど!)
難しい文章じゃないのに、読むのに時間がかかったのはそういうところかな?
そこにただ存在する、人間たちのリアルな一晩を切り取ったお話。淡々とゆっくり流れていくリアル感が好きなひとには合うのかもとおもった。
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「通夜」という一枚の黒々した布に、その製作過程あるいは身に纏ったことのある人々が様々な角度から手を伸ばしている様を連想した。あらすじと呼べるあらすじも全然なくただ「死者」と残された様々な年齢・立場・関係・人となりを持つ親戚たちが死という一つの出来事に対して、それぞれ淡々と向き合っている。ごく自然に視点が入れ替わり、そこに章分けやカッコ書きなどの心内語と実際に口に出された言葉を分かつ明確なものは存在しない。時間軸もするりと別のところに飛んで行く。文体や進み方は一見奇妙だが、死という究極の非日常が根底にあるその場にしかないリズムが確実に存在する。そんな究極の非日常を描いておきながら、案外「現実」ってこういう流れ方をするよね、人の心ってこういう動き方をするよね、というのを最もリアリスティックに書き起こしたら結果的にこうなった、という印象があった。
登場人物が多過ぎるのも、かつ彼らの経歴や血縁関係について説明を繰り返しながら全員が面倒臭くなっていくのも、確かに滅多に会わない親戚一同の集い(それも宴会とか結婚式とかと違って、あまりプラスの感情を持ち寄らない負の集い)って、そういうドライなところがある。「死」に対峙した夜なわけだから本来身内ほどウェットにならなきゃいけないのに、結局自分たちのいる「生」側の世界の煩わしさにかまけて、かつ「非存在」の話ばかりする(死者とか、行方不明になった寛とか)。そういう奇妙かつ繊細な日常の「何か」を、この小説はこれまた奇妙なやり方でピックアップしている。そんなふうに思う。
それにしても、何かに吸い寄せられるように相次ぐ夜中の未成年飲酒は何だろう。
こういうのって、「合う人」「合わない人」いるだろうな〜!賛否両論が予想されそうだけど、すごくよかった!
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語りが移り変わっていくので、色々な人の視点で話が進んでいった
登場人物が多すぎて家系図がないと分からなくなってしまつ
2021/3/21 ★3.0
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滝口さん二作目。
茄子の輝きの、1話目のお茶汲み係を頑張って決める話くらい、第三者にわからせようとしていない、いや、正直そこはどうだっていい、それよりも、そんなことを整理したり考えている時間そのものの尊さを考えさせられる、不思議さ。
カギカッコを使わない冗長的な、客観的に影響を受けて動かされる感情のない情景。
忘れることと、忘れていないことの間のような、思い出すことと思い出さないことの間のような、死んでいない者と死んでいる者の間のような。
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読書開始日:2021年7月25日
読書終了日:2021年7月30日
所感
読むのに時間がかかったし、正直なところ自分には合わなかった。
でもその場の雰囲気や景色はなぜかするっと入ってきた。
題材が他人の親族で、さらに登場する親族が把握しきれないくらい多いから、多分入りずらかった。
でもここに作者の表現したかった、結びつきの弱さによる、義理を感じないことによる関心の薄さを味わえたと思う。
当の親族同士ですら、お互いをそこそこにしか知らないんだから、その親族となんらかかわりの無い一読者の自分は、
関心が薄くてもともとなのだ。
関係が薄い知り合いと話すとき、思い返しても何を話していたか覚えていない。ただ、何個かの話は鮮烈に興味を持ったりする。
この本のそれは、ダニエルの義理の話が一つ。
「義理は文字はない、感じるもの」
もう一つは思い出の話。
「思い出は詳細になれば嘘になる」。
思い出や夢はさまようためにあり、曖昧だからこそ愉しめる。
きらりと光る箇所が随所にあったが、基本つかみどころのない作品だった。
お互いにお互いの死をゆるやかに思い合っている連帯感
露悪的な感じ
目は何も教えてくれない。ただ見るばかりで、見えるばかりだ。
そんな返事をすまい、という自己陶酔めいた感慨をともなう否定のために浮かぶ。
いいよ、いいよ、お兄ちゃん、と歌うように繰り返す
彼はとにかくいたたまれなさらが怖いのだった
ただ単に姉の配偶者だとおもっていたかもしれないのは、姉の夫の間に働く義理が、自分に直接働くものではなかったからかもしれない。
義理を感じるものと考えたところが、えらいね
父親や自分たちを実体のらない不幸という名の下に縛りつけようとする奴らの存在こそらが自分たちにとって不吉なのだ
輪郭というか抜け殻のようなものは残っている。
忘れてはいないのだが、もう死ぬまで思い出さないかもしれない記憶もあっすて、考えようによったら忘れるよりその方が残酷だ
思い出は、詳細になれば嘘になる。
いやおうなしに記憶は自ら記憶を掘り返し始め、穴や理由を埋めようとする。余計なことはしてくれるなとおもうが、とめようもない
思い出は曖昧だからこそ愉しめる。地図の引き合いは思い出に結論が出ることの恐れ。自分の声を自分で聴いてしまうことも夢からの様につながる。夢や思い出は彷徨うためにある。
誰かと一緒にいて、そのうえで、文句を言ったり、ぶすっとしていられるんだな
ずっといつかばあさんが死ぬことを悲しみ続けていきてきた気がする。
おれには何も、お前達の頼りにできるようなものなどない
どうしてか、かなしみの隙間にこういう晴れやかさとか楽しさがないというのも嘘だ。
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この作家の本を読むのは4冊目。若い世代の男性作家をあまり読まないのだが、『長い一日』がとても良かったし、これからどんな小説が読めるのか、楽しみだ。
亡くなった高齢の男性の一族が通夜に集まる、一夜の群像劇っぽい話。
でも描かれるのは、子供から孫にいたる多数の人々の内面と記憶、それが一夜の行動の中で代わる代わる書かれるだけなので、これを群像劇と読んで良いのか、分からない。
世間的には引きこもりと思われる孫と祖父(この話の中心である死者)の関わりが関係性としては一番重厚そうで意味があるように思うのだが、それは具体的には記されない。それぞれの想像を駆してまで書かれる部分と、まったく書かれない部分の区別が面白い。
失踪していて実際の場面には出て来ない人物の内面の吐露もあったりして、独特の表現は『長い一日』とも親和性を感じた。