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シーソーモンスターは、市井に暮らしているスパイって状況が、スピンモンスターは、ある日急に大きな権力に追われるって状況が、いかにも伊坂幸太郎さんっぽい。シーソーの方が面白かった。スピンはあやふやなラストはいまひとつ。プロジェクト連作みたいなのでしょうがないのかなあ。
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平成も残り少なくなった4月に、伊坂幸太郎さんの新刊が届けられた。2編を収録しているが、時代設定は昭和のバブル期と近未来の2050年。
「シーソーモンスター」。一見平凡な家庭だが、夫は妻と母の嫁姑問題に悩んでいた。妻には夫が知らない過去があった。そんな経歴を持つ妻でも、義母との冷戦の日々は気詰まりで仕方ないが、徐々に義母への疑惑を深めていく。
この時代らしく連日接待に明け暮れる夫。世代的に懐かしいキーワードが多く出てくるが、伊坂作品には珍しい時代設定か。内容の方は、実に王道的な伊坂作品と言えるだろう。あまりにバカ正直にピンチに陥る、お人よしな夫。そして妻は…。わははは、最後の展開は読めなかった。なるほど、ピリピリするわけである。
多くのファンは満足したはずだ。そして続く「スピンモンスター」。空気感が大きく変わるが、こちらも王道といえば王道だろう。近未来を舞台に、現代社会に警鐘を鳴らすような設定は、伊坂作品でもしばしば描かれてきた。
シリアスな設定ながら、どこかとぼけたキャラクターの魅力で、シリアス一辺倒にはしないのが伊坂流。そう思っていたが、本編に関してはシリアス色が濃い印象を受ける。仕事中の主人公が新東北新幹線の車内で遭遇したのは、あいつだった…。
成り行き上巻き込まれ、追われる身となるのはお約束。意外な形で意外な人物が登場し、そう来たかと唸る。色々な敵役が登場した伊坂作品だが、これほど強大な敵は初めてだろう。2050年の世の中が、ここまで進んでいるのかはわからないが。
近未来を舞台にしつつ、そのキーワードは今現在持て囃されており、現代社会も似たような状況にある。最後まで目が離せない展開だが、すっきりしない結末かなあ。敢えてこういう結末にしたのだろうとは思う。それだけ強敵だったのだ。
十分に堪能した、いつもの伊坂作品ではあった。ところで、本作は中央公論新社によるプロジェクトの1冊として刊行されており、伊坂さんを含め8組9人の作家が、共通のルールで異なる時代を描くのだそうな。どれか他の作品も読んでみるか。
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螺旋プロジェクト
おおおお、これぞ伊坂幸太郎だ!と納得の一冊でした。
Aは○であり、Bは△である。と思わせておいて、実はAが△でBが○で…と思いきや、実はAは◎でBは▽だった、というような。
これとてもわかりにくいたとえなんだけど、なんとなくそんな感じ、うまく言えないけど。
そして時を超えて全く別の物語が繋がっていくあの感じが大好きな伊坂ファンにはたまらん一冊。
新幹線の中でのくだりの種明かしは、んなあほな!と突っ込みながら笑っちゃいました。それと小さいんだか大きいんだか、という嫁姑戦争の「理由」に、ほっほぉ、とうなずいたり。
先が気になるのでどんどん読み進めて行っちゃうんだけど、伊坂さんの小説は二度目がおいしいので。
じっくりといろいろ拾いながら読む、二度目のおいしさよ。
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ー争いはなくならない。だけど、折り合いをつけて生きていくしない。
様々な文化や過去があって、みんなそれぞれの環境で育って来た。だからこそ価値観はみんな違うから争いはなくならない。
ーaとbの対立からcが生まれる
ってすごくしっくりきた。トランプのルールでの喧嘩みたいな些細な対立だとしても、戦争のような大きな対立だとしても、何かを生み出している。
そのcが今後にとって良いものなのか、思い出したくもない過去になるのかそれは自分次第なのかなって。
あと自分の記憶って曖昧なものだなぁとハッとさせられた!!
ちなみに個人的にシーソーモンスターの方が好きだし、伊坂幸太郎っぽい!!
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2つの中編からなる物語。雰囲気は伊坂さんの小説の「魔王」に似てる。
この小説は、8人にの作家さんとの連作で、他の作品とも繋がりがあるプロジェクトになってるみたい。
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『シーソーモンスター』
嫁姑戦争。
中編のためか、ネタは早目に気付いた。
それでも面白かった。会話や言い回しが楽しめる。
読んだ後、楽しかったと思える。
いいなぁ、伊坂幸太郎さんって思える。
『スピンモンスター』
「私は、記憶力が悪いんだろうか?もっと青魚を食べるべき?」
そう思ってしまうぐらい、伊坂さんの作品の中であることを忘れてしまっていて、ある場面にきてビックリしてしまうのだ。
しょっちゅうだし、この『スピンモンスター』も読んでて、あーあー!なるほどー!と鳥肌になるわけ。
何で忘れてたんだろう。記憶力が悪くなってはきているが、伊坂さんの小説においては嬉しいかもしれない。ビックリできるからね。
私の記憶というより、伊坂マジック?
このストーリー、歴史人物や場所由来(違うかもしれないけど)の名前もあり、戦国時代、何か暗に示している。
…で、付録(付録は電子書籍のみ)インタビュー読んでわかった。
この小説は、プロジェクトの一部だったのね。
だから、歴史的なことも関与する。
他の時代を書いた作家さんたちの作品も読んでみたいな。
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(2019/8/22読了)
久しぶりの読書。あっという間に読み終わってしまった。
先を知りたくて、先走ってしまって、あれ?審判の保険屋さんはどうなった?とか、水戸のカメラは事故のあとじゃなかったっけ?なんで事故の映像か残ってるの?とか、宮子の息子はいつのまにどこへ行っちゃったの?とか、不思議に思ったことがままあったけど、戻って読み返すのも惜しくて、突っ走ってしまった。
やっぱり好きな本は楽しいなぁ。
この本は、文芸誌『小説BOC』の創刊にあたり、8組の作家によって紡がれた「螺旋プロジェクト」の一作とのこと。一作と言っても、二つの時代の2つの話となってて、二度美味しい!皆さんの評価はあまり良くないけど、私は面白かったなぁ。
他の作家さんの、他の時代の作品も気になる。
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特殊なスパイをしていた嫁姑の間柄
まさにフィクションといったスリリングな展開
そして近未来で起こる人工知能の暴走?問題
「事件があるからニュースが流れるのか、ニュースが流れるから事件があったことになるのか」
高度な情報社会が生む、情報の信頼性
そしてプライバシーの保護
デジタルが進んだ上の、機密性の保護のためのアナログ化
人工知能の発展
「対立があるからこそ、変化が生まれる」
その言葉が心に残った。
スピンモンスターの近未来感と展開の読めないハラハラした流れが非常に面白かった。
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シーソーモンスターの方が、私が思う伊坂さんっぽい感じがして好きでした。螺旋プロジェクトの2作。今は全て追いかける気力はありませんが、ゆるゆると機会があれば。宮小さんが通して登場していて、とても魅力的な女性でした。今より先、90歳でさえ20歳ほど若くなるのか・・・。それならば、人類は生きている限り若くなるんだね。自動運転や人工知能、近い将来実現するんだろうけど、ちょっと怖い。
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伊坂幸太郎の新作は表題作
「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の二本
立て。こないだちょっとだけ触れた「螺旋プロジェクト」
の中核的な作品。
今回も伊坂幸太郎節全開!
シニカルでやたらカッコイイ台詞回しが心地よい上に、
相変わらず冴え渡る抜群のキャラクターメイキング。特
に今回は珍しく“女性”がほぼほぼで主役を張る、とい
う、氏にしては非常に斬新な展開。おまけにこの女性キ
ャラがやたらカッコ良いのだから、呆れるほど感心した。
螺旋プロジェクトで伊坂幸太郎が担当した時代は、昭和
後期(シーソー)と近未来(スピン)。バブルからポス
トバブルまでの時代を丁寧に検証したシーソーでちょっ
とした懐かしさを感じ、スピンで表現される近未来のあ
まりのリアルさに感嘆する、という見事な二段構え。
更にこの2本、共通する登場人物を立てることで見事に
繋がっているのが凄い。
もう、明らかにオススメ。コレを読まないと、2019年
度は始まらない、とまで思った。
・・・若干心配になるのは、同じ螺旋プロジェクトに参加
している他の作家の作品クオリティ。伊坂幸太郎と同じ
レベルを保てるかどうか・・・。
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中央公論新社創業130周年記念企画創刊文芸誌「小説BOC」文芸競作企画「螺旋」プロジェクト作品。
昭和後期「シーソーモンスター」と近未来「スピンモンスター」の2編収録。
プロジェクトとしてのルールはあるが、「シーソーモンスター」の方は伊坂作品らしいサスペンスミステリーで最後のどんでん返しまで一気読みでした。
最後の最後に朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」にもつながるネタが出てプロジェクトらしさもありました。
時系列的には朝井作品からつながる「スピンモンスター」は、伊坂さん得意の不条理な逃走サスペンスなのですが、朝井作品との具体的つながりは見られないのがプロジェクトシリーズとしては物足りないです。
むしろ、「シーソーモンスター」の続編といってもいいかもしれない作品となっていました。
とはいえ、ラストのどんでん返しや落ちがないあいまいな感じで終わっているように思えて、ちょっと残念でした。
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昭和の時代、嫁姑問題に頭を悩ませる北山。
なぜか相容れないふたりの溝は深く、嫁は姑の周りであまりに事故死が多いことに疑念を抱く。ーーシーソーモンスター
近未来、色んなことがAI化された日本で逆に秘密が守られるからと需要のある手紙を届ける配達人をしている水戸は、新幹線で隣に座った男から手紙を託される。
その依頼から思いがけない事態へ巻き込まれ……ーースピンモンスター
全く知らずに伊坂さんの新刊!と飛びついて購入したけど、同じルールの元に8組の作家が古代から未来までの物語を紡ぐという螺旋プロジェクトの中の1冊でした。
もちろん他を知らなくても楽しめるんだけど、そんなこと言われると全部読みたくなってしまう!笑
2篇どちらの物語も、そこでこれが繋がるのか!という伊坂ならではの楽しさとテンポのいい展開であっという間に読み切ってしまった。
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「螺旋プロジェクト」を全く知らずに、伊坂氏最新作を読む。
久しぶりに著者の会心作だと感じた。
とにかく物語の語り口が抜群に良い。特にシーソーモンスターは昭和の終わりという「既知の過去」を舞台にしているためか、すんなり没入できる上に、嫁姑がともに間諜の先輩後輩でありながら海族と山族で磁石の同極という、面白くないはずがない設定。
スピンモンスターも負けずの力作だが、この終わり方には疑問が残った。
伊坂氏の作品は、このようなある外部的制約というかルールごとがある方が、その力量が十二分に発揮されるのではと感じた。この素晴らしいストーリテリングを待っていました。
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読む前のなんのこっちゃ分からないタイトルはいつものことなのでスルー。でも伊坂さんはいつも期待を裏切らないので安心と信頼と真心の完成品。
前作の「フーガはユーガ」も対比的だったが、今作は更に対比を感じる。昭和バブル時代が舞台の物語と近未来が舞台の物語。そして嫁姑問題。東西冷戦。米屋と蕎麦屋。山の者と海の者。蒼い目ととんがった耳。オツベルと象。
それはさておき、撹拌しないと実験は進まない。停滞と維持には進化がない。みたいな例えに納得。ま、とにかく面白かった。
平成から令和になった。元号が変わっただけなのか?それとも時代が変わるのか?
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「螺旋プロジェクト」なるものの一環として書かれた二つの作品。昭和のバブル期を描いた標題作と、東京五輪後の近未来を描いた「スピンモンスター」の2編からなる。
螺旋ものを読むのは朝井リョウの「死にがいを求めて生きているの」に続いて2作目。
リョウ君の作品の時も思ったけど、螺旋に共通する「海族と山族の対立」という設定や、巻頭、巻末に置かれる海と山の伝承「螺旋」の本文などが「なんだかな~」な私には、読んでいてそこにつなげようとする部分が見えてくると「あ~あ」ってなっちゃう。
とはいえ、そこは伊坂さん完全なる伊坂ワールドを構築していて、嫁姑問題を扱った「シーソーモンスター」は嫁と姑の経歴から、普通の嫁姑問題だけに留まらず二人のプライドをかけた戦いになるあたりは間諜もの好きの私には堪らない。
「スピンモンスター」は、善意の気弱な男が巻き込まれて終われるという、「ゴールデンスランバー」の設定に被りまくりで、「ゴールデンスランバー」は大好きなんだけど、ちょっと新鮮味に欠けるのよね~。
ただ、「スピンモンスター」の嫁がここにも意外な形で登場して、相変わらずの強さなのが嬉しくてそういう所はさすがに伊坂さん上手い。
軽妙な展開のなか、「監視社会の恐怖」とか「争いの必然」とか実はゾッとする内容を描いているところが伊坂さんならでは。
でも、まあ、もう螺旋プロジェクトはいいかな・・・