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ボツワナの最高裁判事であるユニティさんが、在任中に書かれて小説。
本当にあった儀礼殺人をもとに書かれたもので、フィクションとして書かれていたが、とてもリアリティを感じた。
アフリカでは儀礼殺人とか儀式殺人といって呪術師の指導の元人体の一部を供物にしたり、食べたりすることによって富を得たり、力が増すと信じられている地域がある。
なんと迷信じみている内容ではあるが、一部の人に信じられ実際にそのために幼い子どもが殺されることもある。
その殺人に関わった人を実際に裁判で担当したかどうかは定かではないが、女性初の最高裁判事となりボツワナのさまざまな現状を見てきた著者が書いただけあって、
女性や子ども、AIDS、LGBTなど社会的弱者とされる人々の魂の叫びを感じた。
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ボツワナを始めとしたアフリカ各国で今尚発生している「儀礼殺人」(富や地位をもたらすと信じられている儀式に必要な人体の一部を得る目的で犯される殺人)を題材としたサスペンス小説。アフリカ発のサスペンス?!儀礼殺人?!しかも現職の女性外務大臣が執筆、っておいおいおい情報量多過ぎるだろ!と興奮しながら手に取った一冊。そもそも儀礼殺人や呪術は一般的な日本人からして見ればだいぶ縁遠い話だが(かつてアフリカで働いていた援助業界の同僚曰く呪殺/毒殺は割と日常茶飯だったらしいけども)、権力者の欲の犠牲となる平民の姿は普遍そのもの。巨大な悪に闘いを挑む主人公、終始どちらが勝つかハラハラ、サスペンスとしてしっかりと成功している作品だった。ラストでは「うわあああああ」と叫ぶ事必至。また、複数の女性キャラが力強く描かれているのも良い。結局、権力者VS一般市民の対立が生じる時、男VS女の構図も生まれるのが現代社会では必然なんだろう。
呪術を畏れの対象としてはいない我々だけれども、警察を、政府を、権力を、心から信じられる国に果たして住んでいるだろうか。我々の社会もやはり、欺瞞で満ちているのではないか。足下が一瞬揺らぐような作品だった。
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アフリカ、ボツワナの現職女性大臣が今のアフリカに残る“儀礼殺人“の実態を、ミステリーの形式で告発した作品。サバンナをライオンや象が行き交い、人々は呪術医にいまだに頼ったりする、そんな世界をなかなかイメージしづらく読むのに時間がかかったけれど、身の毛のよだつラスト10ページなど、読み応えのあるものだった。人体の一部を切り取り呪術医に捧げることで権威やとみが得られると信じられ、今も残る悪しき風習、儀礼殺人。フィクションにせず、犯罪を犯す側の心情も描くことで、単なる個人の悪意ではない構造悪として炙り出されているし、根深さも同時に感じさせる。
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ああ・・・
辛い、辛いよ・・・
ユーモアも交えて描いてる(友人がサバンナでキャンプしてパニくるとことか)から読みやすいけど、あの子の身に起こった事を思うと・・・
もう、子供を大事にしない男どもは一度滅びたほうがいいんじゃないか。
いや違う。自分の子供じゃないからいい、自分とは関係ないから、と思う全ての者どもは。
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儀礼殺人というものを知らなかったので、人身売買の話かと思って読んだがとんでもなかった。
最後の老人の告白で終わるのが、衝撃的過ぎて辛すぎて…
今でもまだ行われているのか?怖すぎる
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儀礼殺人を扱った小説。小説の最初のほうは、なかなか読み進めることが難しかった。男性の考え方があまりにも、こちらと違いすぎて。胸糞悪い、という言葉がぴったりだった。
アマントルが登場してから、どんどん読み進めることができたのに、ラストに打ちのめされてしまった。
誰だれの母、誰だれの父、という呼び方が当然なのは、個人が認められていないように感じてしまう。けれども、それが普通の世界では疑問に思うこともないのだろう。
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Unity Dow、ボツワナの現職女性大臣が記したものということで、興味を持った。
帯にある”驚愕のアフリカ発サスペンス”というほどの、驚きはない。フィクションの形をとっているが、”実際の儀礼殺人事件をもとに描いた”というだけあって、素直なストーリー展開だ。
ただ、未開の地アフリカの一国で、ごく近年まで(地域によっては現在も)、女性の人権が軽視され、権力や男性の欲望のために、純潔どころか、命までもが簡単に奪われていく社会があるのということを知ることには、大いに意味があった。
「牝牛の乳首をくれてやれ!」=「4回鞭打ちする」という意味のボツワナの慣用句
レラツアワ・ツィバ、つまりナイフを舐めるやつ = ナイフの血を舐めて証拠を隠そうとするような不正直なやつという意味
といった、現地の慣用表現も面白かった。
とはいえ、プロットが単純だし、登場人物の善悪の立場があからさまで、サスペンスというより、途中からは、政治色というか、反体制な民衆運動のルポのような趣きとなり、作品トーンが定まっていない感は否めないか。
まぁ、もとよりプロの小説家がものした作品でないのは承知の上。
ただ、これ、映画原作にしたら、もっと興味深くスリリングに脚色できるだろうなと思う内容だ。そして、より広く世界にボツワナの、あるいは周辺アフリカ諸国の現状を知ってもらう良い素材になりうる可能性を秘めていると思う。
なかなか、興味深い一冊。
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儀礼殺人に関するサスペンス
序盤は男性観や価値観が違いすぎて読み進めるのが重かったけど、アマントルが登場してからは一気読みできた。
文化の維持と人権の保護、時として対峙するケースがあることをリアルに感じることができた。
人間を信仰は時として人を怪物にしてしまう恐ろしさを痛感。。。
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ボツワナでの儀礼殺人事件を下敷きにしたアフリカ発のサスペンス。著者のユニティ・ダウは現職のボツワナ国務大臣である。
『テスカトリポカ』もそうだったが、陰惨な殺人を扱った小説は言葉で感想を述べるのが難しい。主人公であるアマントルが権力に果敢に挑み、事件の内容を掘り起こしていく様は痛快なように見える。しかし、ラストの衝撃を考えると彼女は単なる狂言回しであるようにすら感じる。
権力の腐敗やジェンダー格差は勿論問題であろう。だが、根本にあるのはボツワナ人が持つ呪術への信頼と恐怖である。ボツワナ人は何かあると「呪術医」を頼り、実際に他者を呪おうとしたり、あるいは呪いに対抗したりしようとする。
彼らを非科学的だと、非合理的だと笑うことはできるだろうか。我々が神社に詣でる心、勝負の前に験を担ぐ心と、彼らが呪術に頼る心は同一線上にある。ダウもまた、呪術信仰については決して否定しない。彼女自身、伝統と近代のコンフリクトに対し結論を自分のなかで出せていないのだろう。そこにある歯切れの悪さが却って人間臭い。
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古より慣習として残る「儀礼殺人」、今なおそれにより命を落とす子どもが多くいることを、私は知らなかった。
権力を得るために、呪術師や呪術医を頼る。困り事があると、医師よりも役所よりもまず相談に行くのは彼らの慣わしである。問題や事件は彼らに占いで解決してもらおうとする。そんな風に一見馬鹿げたような話がごく当たり前にされている地域があると思うと、なんとも言えない苦い気持ちが胸に広がる。
ノンフィクションではなくフィクションで書いた理由は読者が読みながら自分の考えを紡いでいく余地を残すためだと著者は言う。
正直なところ、フィクションだとはいえ、実際に起こっていることだと思うと、創作された物語としては読めない。
この物語では、アマントルというたまたまその地域に派遣された外部の人間がその慣習に口を挟む形になっている。けれど、彼らはそんなことでは全くびくともしない。それは心の底から何も悪いことをしていないと思っているからなのか、それとも悪いと思っていても行うことが当たり前で仕方がないことだからなのか。
こういった出来事とは無縁の読者に対しては、それを信じるものたちが固く戸を閉ざしているようにも見える。我々は黙って見ているしかないのだろうか。
実際に起こる事件をフィクションとして書き、その問題点の本質を浮き彫りにしている手腕はすごいと思う。
すごいと思うだけに、もどかしさの残る読後感となってしまった。