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年末の人気番組の一つ「プロ野球戦力外通告」。
華やかなプロの世界から「無職」になってしまった男たちを追いかけるドキュメント。
著者もこの本に登場する元選手たちも、一度はその「戦力外通告」を受けた男たちだ。
だが、この本には全く悲壮感がない。
著者自身、現役時代から親会社がDeNAであったという環境を活かし、学んでいた。
そして引退後すぐに「起業」し、今日に至っている。
馬肉を専門に扱う会社に就職した、ベイスターズの代打の切り札にして元選手会長の下園辰哉。
タイガースを戦力外通告後、初のプロ野球選手出身の公認会計士となった奥村武博。
ペーチェット病と闘いながらジャイアンツの育成選手となり、球団職員を経て大手外資系コンサルティング会社「アクセンチュア」に就職した柴田章吾。
ベイスターズのブルペンキャッチャーから、顧客関係管理のクラウドアプリケーションを提供する外資系企業「セールスフォース」に就職した松下一郎。
ベイスターズ、楽天イーグルス、アメリカ独立リーグを経て、実兄とともに大阪で「焼き肉39ごりら」を経営する藤江均。
プロ野球を戦力外になったことだけが取りざたされるが、もともとプロ野球選手になれたことこそが凄いこと。
野球という複雑なルールのスポーツの最高峰のレベルに一度はたどり着いた男たち。
圧倒的な身体能力と、明晰な頭脳と、コミュニケーション能力がなければ、プロの目にはとまらない。
一人ひとりが、「戦力外」という挫折すら武器にして、本当にやりたいことを掴んでいく。
迷っている時間があったら、一歩踏み出せ。
ピンチはチャンスだ。
そのためにも、自分自身を正確に把握せよ。
その生き様は、刺激に充ち満ちている。
生きる元気、前に進む力が沸き上がってくる好著。