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『津原泰水』名義でのデビュー作(と、言って良いのか?)が復刊。
確かこれ、当時、店頭で見掛けて、『なんかすげぇもんを見た』的な動機で買ったんだよなぁ。で、ティーンズハートの人気作家『津原やすみ』だったと知って吃驚した、と……(ジュブナイルの方はあんまり読んでいなかったが)。
解説を読んで、当時、『続編がある』と思われていたことに驚いた。最初に読んだ時も、続編があるとも思っていなかったし、読み返してみても、続編が書けるとも思えない。単に『ジュブナイルの人気作家が一般小説に移行した→ジュブナイル出身ならシリーズ化するだろう』的な先入観があっただけなのでは……?
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作者の津原泰水氏がTwitterで
「俺の小説が政治的でなかっことがあるか」
とネトウヨに返答をしたことを記憶している。
不慮の事故や自殺が多発する東京に「死者」が増殖する。霊ではなく生けるものを死へと導き「死者」は更に数を増やす。彼らを統べるチェシャが東京を妖都として再生しようとする。
「死者」はある種の能力あるいは感受性のある者にしか見えない。
これは1997年に書かれた小説だが、2020年の日本にも当て嵌まるだろう。
目に見えないcovid-19が蔓延り、政治体制はおよそ民主主義から遠ざかり1人の政治家が日本を破壊している。
大部分は「普通の日本人」として生活しているようにみえるが本性は暗部をもち彼を根拠なく熱烈に支持する。いわゆるネトウヨだ。
ネトウヨは、本作の「死者」のような存在であり、普通の生活では見抜けない。ある種の感受性と理性があるものしか見えない。
「妖都」の描いた世界と2020年の日本が妙に重なると思うのは私だけだろうか。
確たる未来は期待できない、日本も妖都も。
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人間、死ぬ寸前に「あぁ死ぬのか」と思うはずだ。そのときに書き遺すことが不可能な刹那の感覚、それはきっと誰そ彼刻と似ている。
横溢する血や粘液は、生の証と同時に死の証。曖昧な境界線。境界線をいきつ戻りつする物語。
安寧の地とならぬ東京は生きる屍として身体化され、私達に啓示を与える。
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幽霊でもゾンビでもない、普通には見えない「死者」に徐々に侵略される東京。主人公と仲間が、その秘密を解き明かしていくのですが、ちょっと物足りない終わり方...
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面白かった!
キャラクターに魅力あって、苦しいんだけど、面白かったなぁ。
チェシャは今見てるテレビ番組のアヴちゃんを想像してしまった。
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圧倒的なまでの90年代の香りを醸し出す作品。
バブル期日本の思想が無く、目的もなく、ひたすら周りよりいかにイケてるかという軽薄なかっこよさと同時に存在する虚無感と死への誘い。
岡崎京子のリバーズエッジや岩井俊二のリリィ・シュシュのすべてを思い出さずにはいられなかった。
解説でラストがオープンエンドであることに触れられていたが、エヴァにしろ何にしろこの時代の作品はオープンエンドが多い。結局目指すべき方向性とその基となる思想を失っていた時代なのだからきっちりとした結末を用意できない事は仕方がない。
心地よいナルシシズムと表裏一体の自己破壊願望を存分に堪能しつつも、やはり時代と寝た作品でもあると思った。