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初めての澤田作品。これが澤田瞳子かという衝撃。一気にファンになってしまった。当時の地名や呼び名を使いながらも、会話や地の文の説明は分かりやすく、何より当時の風景を想起させる巧みな情景描写が物語を唯一無二のものにしている。
本作は聖武・孝謙天皇の時代を描いた5編の短編集。特に2作目の「南海の桃李」がお気に入り。吉備真備と高橋牛養の友情、そして当然だけどあまり意識していない未だ日本の領土でなかった島々をどう統治していったのかの端緒とその難しさが出ている。
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奈良時代を舞台に、官吏や学生といったそれぞれの立場から国を憂う人々を描いた短編集。
鑑真を伴って帰国した遣唐使団の、その後の明暗。
純真な学生たちに降りかかった政争の黒い渦。
女帝をたぶらかして権勢をほしいままにしたと考えられている道鏡の真実。
宮廷を舞台に、華やかに華麗に、ダイナミックに描かれやすい奈良時代の、違った一面を切り取った作品だ。
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遣唐使。学生。役人。そして道鏡。
奈良の時代に生きた人たちの
国を思う人生を描いた作品。
争い、裏切り、裏切られ
それでも治世の安寧を願った男達。
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奈良時代の話。
弱くも強くもある人の葛藤や心底が伺える。
澤田瞳子さんは素晴らしい!
この本を読んでからの「弧鷹の天」お薦めです!
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下野国薬師寺別当として流されてからの道鏡の心境がよかった。坂口安吾の道鏡も好きだが、澤田瞳子さんの道鏡もとても印象的。
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幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎の娘・河鍋とよ(暁翠)を主人公にした小説で直木賞を受賞した、澤田瞳子。
『星落ちて、なお』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B094HZY84B
明治から大正にかけての、日本画および絵師たちに降りかかった大きな変化と、そのうねりの中で自らに向き合い絵師であることを貫いた暁翠の内面を表現した、重厚な作品でした。
この作家さんの作品にはまだ未読のものがあることを思い出し、デビュー以来の中心テーマである古代を題材にしたこの作品を、読んでみることにしました。
本作品は、5つの短編で構成されています。
最初の『凱風の島』は、現在の沖縄本島を舞台にした、遣唐使のお話。
日本国内でなかなか進まない、仏教の戒律の普及のために招聘された、鑑真。
6回も繰り返すことになったその渡航が大変だったとは聞いていましたが、彼を引きとどめたい唐側の動きなど、船の運航以外にも要因があったのだということを、教えてもらいました。
そして航海技術が未発達だったこの時代、それぞれの船が無事にたどり着くかどうか、まさに紙一重だったということを、具体的なイメージを持って理解することができました。
表題作の『秋萩の散る』は、怪僧と呼ばれた道鏡が主人公。
孝謙天皇に重用され、天皇の血筋以外としては異例の出世をした彼ですが、女帝が崩御するとすぐに、東国の寺へと流罪同然の左遷をさせられてしまいます。
その地で出会ったのが、「呪い殺しが出来る」と言う老僧。
老僧から誘いを受けた道鏡が、孝謙天皇という女性が自分にとってどういう存在だったのか、その存在に自分はどう向き合うべきか、思い悩む姿が描かれています。
人の評判、歴史上の評価というものはどれだけ、人為的に曲げられるものなのか?歴史上の人物について、自分が知っていることはどれだけ正しいのか?と、考えさせられる内容でした。
5作品に共通するのが、奈良時代、それも女帝・孝謙天皇の時代が題材となっていること。
この時代に起こった大きな出来事の、サイドストーリー的な話を、時代順に読むような構成になっています。
一冊を読み通すことによって、この時代に、日本という国の形成に大きな影響を与えた出来事が起こっていたということを、学ばせてもらいました。
その変動の時代に、夫も子供もいない女性として描かれる孝謙天皇の姿が、(本人は登場しないのでよけいに)印象に残りました。
この作家さんがさまざまな題材を扱っていることは知っていますが、やはり、日本の古代を扱った作品は興味深いですね。
歴史を学ぶという意味でも、作品を探して読んでいきたいと思います。
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