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「動的平衡」という言葉は聞いたことがありましたが著者の本ははじめて読みました。
方丈記の『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず』という言葉が浮かんできました。
面白かったです。
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私は観たことはないが、「最後の講義」というNHKの番組があるそうだ。その番組の福岡伸一先生が担当した回を書籍化したのが本書。この講義で福岡先生が紹介されたのは、先生の他の著書でも紹介されている「動的平衡」という概念。
私たちの身体は膨大の数の細胞で出来ているが、細胞レベルで考えると、私たちの身体は、日々入れ替わっている。入れ替わりの早い臓器であれば数日、筋肉だと2週間くらい、血液の細胞は数か月で入れ替わっている。身体全体として考えても、1年前の私と今日の私は個々の細胞レベルでは、すなわち、物質レベルでは、全く別人と考えても良い。私たちは、古い細胞を壊し、それを新しい細胞と入れ替えながら生物としての形を保っているのである。
何故、生物はそのようなメカニズムを持っているのか。
エントロピー増大の法則という法則がある。およそ宇宙の中の秩序のあるものは秩序がない方向にしか動かないという法則である。要するに宇宙の中では、秩序は常に崩壊する方向に動くということ。細胞も、細胞の集まりである生物もこの法則から逃れられない。今ある細胞は、そして、無数の細胞から成立している私たちの身体は、すなわち生命は、放っておくとエントロピー増大の法則の影響を受け、無秩序の方向に、すなわち、崩壊・死の方向に向かうわけである。生物はそれに対抗するために、細胞の1個1個を頑丈に壊れにくく作るのではなく、むしろ、自ら壊して新しいものに入れ替えるという方法をとっている。
細胞という身体の部分が入れ替わって、何故、身体は機能を保持できるのか。例えば、脳細胞が、あるいは、脳神経細胞が入れ替わっているのに、私たちの記憶が保持されているのは何故か。福岡先生は、それを「相補性」という考え方で説明している。私たちの細胞は、身体中の細胞の関係性の中で成立しているという考え方だ。それはジグソーパズルのようなものである。ジグソーパズルのピースは、その上下左右との関係の中で初めて意味を持つというか、上下左右の関係性の中で形が決まっている。要するに、細胞は入れ替わる際に、他の細胞との関係でどのような細胞が出来るべきかが決まり、実際にそのような細胞が「相補性」の関係の中で出来るのだ。
というのが、私の理解した「動的平衡」の考え方。
自分自身がトータルで生き残るために、部分を日々入れ替えていき、動的に平衡を保っているというのが生物、ということだと理解した。
知的な興味を惹かれる考え方だ。
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福岡伸一先生の本はあれこれ読んできましたが、本書はやさしくまとめた決定版かな。
おっしゃっていることが本当に理解しやすいです。
バトンを受け取って、次の世代に渡してあげる一員に私もなりたいと思いました。
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NHKの番組「最後の講義」から、「動的平衡」の福岡さんの回を書籍化。講義形式のまま書き記されているので、サラッと読める。その反面、限られた時間で話すので、深堀りはできない感じ。
相手は中高生くらいか?どのようにわかり易く話すのか興味があり手に取った。当たり前だが、テーマの「動的平衡」については、昔の研究や考え方から、自身がその考え方にたどり着いた経緯などを話し、流れるように説明されている。(個人的には単行本の「動的平衡」を既読なので、おさらい)
こんな風に、トップクラスの研究者がわかり易く講義してくれれば、勉強に興味を持って取り組む子どもたちが増える気がする。
「機械論的な生命観」では、生命を細かく解体して、小さな部品に分け、一つ一つの機能を明らかにしていく。生命や生物は、ミクロなパーツが寄り集まってできている精密機械のようだと考える。
食べたものは、マウスの体の中、いろいろなところに溶け込んで、細胞の一部になっていた。このことから、マウスもヒトも、生物の体は絶え間なく「合成と分解」を繰り返している、というシェーンハイマーの動的な生命観が著者から紹介される。そして、この合成と分解がバランスを取っているというコンセプトを「動的平衡」と呼んで提唱を始めた。
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『動的平衡』という概念に目から鱗。
1年前の私と今日の私は個々の細胞レベルでは全く別人と考えても良いという。
『動的平衡』は必ずしも一つの生命の中で起こっているだけではなく、地球全体の生態系の中でも成り立っているという。
地球全体も一個の生命体と捉えたら、世界の見方が変わるかもしれない。
『動的平衡』を社会や文化に当てはめて考えられることにも納得。
質疑応答にも的確に解りやすく回答されているところに福岡伸一さんの奥深さを感じた。
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是非読んでほしい1冊です!
NHKの最後の講義という番組を書籍化したものです。
「どうして生命にそんなに価値があるのか」
福岡伸一先生のファンになったきっかけの1冊です!
なぜ人はご飯を食べ続けるのか
なぜ老けるのか
なぜ生命には終わりがあるのか
とても分かりやすく書いてあります。
少々専門用語などが出てくるので難しい部分もありますが。
大学でもここまで丁寧にくだいた説明は聞けないです!
全174ページなので読みやすく学生さんにもオススメです。
学生時代にこの本に出会えていたら絶対に読書感想文を書きたい。。
理系出身なので読んでいて懐かしい気持ちになりました。
やはり生物学は奥が深く面白いです。
そして福岡伸一先生は芸術も嗜む方なんです。
「美の起源は、生命に必要なものを美しいと感じるところにあるのでは」というセリフがとても好きでした。
例として、なぜ青を美しいと感じるのか。
それは青が紫外線の色に近く生物が光合成をしようと光を求めるので未だに人間は青を美しいと感じるのだろうとの事。
なるほど、納得です。
でもそうすると1つ疑問点が、
美しいと感じるのであれば食欲にも繋がるのでは?
でも青いものを食べるのは人間嫌がりますよね、謎です。。
調べれば答えは分かるのでしょうが。。
まぁ、こんなカラクリ知らなくても生きていけるんですけどね。
でも自分が生命として存在している理由が分かります。
余談ですが、大学講師ビジネスあるあるで、
自分が書いた本を教科書に指定して買わせられます。
ホントにしょーもない本が多いですが、
この本なら何冊でも買いますよ!と声を大にしたいです(笑)
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WBC準決勝の凄い感動のあとで読んだけど、更に上回る感動を覚える素晴らしい作品でしたので推してくださったブクログのお仲間に感謝します!
福岡伸一さんはテレビで観たことはあったけど、どんな方なのか知らなかったので初めて人と成りを知り、且つこの本でワクワクドキドキハラハラ感をいっぱい頂くことが出来ました♪
私たちの身体は絶え間なく流れている流体である と言うことに非常に納得しました。
福岡さん言うところの「動的な平衡」を覚えておきます。
タイトルの「どうして生命にそんなに価値があるのか」が手に取るように分かった気がするし、福岡さんの視点にも凄く同感する点がたくさんありました!
あなたは人生最後の日に何を語りますか?と言う企画をしたNHKも素敵でしたし未放送部分まで載せて書籍化した主婦の友さんにも拍手を送ります笑
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最近気になっていた「最後の講義」シリーズ。
手始めに「生物と無生物のあいだ」で有名な福岡伸一さんの本を読んでみた。
この本のポイントは一つ、それは『動的平衡』
常に流れるように動きながらも平衡、バランスを保ちながら生命は存在しているという考え方。人間の体は個体ではなく流体である…というと想像しにくいですが、細胞をジグソーパズルに例えた時に、その中の1ピースが分解→再生というプロセスが絶え間なく体内で繰り返され、いつの間にか今とは全く違った細胞で体が形作られている…みたいなイメージです。
動的平衡の考え方で物事を見たり考えたりすることは、非常に重要なことではないかと感じた。単なる生物学における考え方の一つではなく、生き方の一つとして捉えることで、更にこの本から得られるものは大きいのではないかと感じた。
…とはいえ、あまり頭の良い私ではないので、ぜひこの元ネタである映像でこの内容を改めて学んでみたい。
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福岡伸一先生の本は何冊か読んだが、その中でもこの本には、先生が今までの人生で見出した生物学等の学問に対する考え、芸術や生命そのものに対する哲学が凝縮されていて、とても心に残った。
「生命とは機械ではなく、動的平衡なもの」
何回も目にしたワードだけど、やはりハッとする。
ベルクソンの弧のパートの考え方もとても面白い。
第3章に関して医療に携わる立場としては、脳死による移植など機械論的な考えに基づく医療行為が資本主義的なものであるというくだりはそのまま受け入れることは難しかったが、「本来草食動物である乳牛を人工的に肉食動物にした」という言葉はとても印象的。地球全体の動的平衡を崩すことの弊害を考えさせられた。
また、少年時代の福岡先生のレーウェンフック、フェルメールとの出会い、研究で壁にぶつかった時にシェーンハイマーの言葉によって動的平衡のコンセプトを得たことなど、先生の歩んできた学問の道の中にターニングポイントとなる先人達の存在があったというのがとても興味深かった。
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既に『動的平衡』を読んでおり、かつNHKで放送された同タイトルを視聴済みであるので、福岡先生の提唱されている内容の復習、として読んだ。NHKの放送でお話しされたことが実に鮮やかで、印象に残るものばかりだったので文字として読めて嬉しい限りだ。
『生命とは動的平衡な流れである』。機械的に組織の中の部品のように見るべきではなく、生命とは絶妙なバランスの上で成り立っている。一見哲学のような表現であるが、解説を聞くといかに生命というのは奥深いものだと感嘆させられる。
フェルメールのエピソードはNHKの番組にはなかったように思う。講義を聞いた人たちの質疑応答の鋭さ、また的確に回答する福岡先生。最後まで、なるほどと思うことばかりだった。