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刀剣に興味が湧いたら手始めに読んでみると好いと思う。刀剣業界独特の用語があって想像しにくいところはしっかりイラストや写真がついている。ただの読み物ではなく資料としても使えそう。前田利為、18振りも所蔵してたらしい。
巻末には軍刀としての日本刀の選び方なる章がおかれている。この本が発刊されたのは1939年、岩波新書が創始されたのは前1938年、さらにその前1937年には日本軍が南京入城(所謂南京大虐殺)。満洲の零下数十度という環境下でも実用に耐える軍刀を選ぶための指南が詳細に述べられている中に精神論がちらほら見えるのが感慨深い。
秦郁彦の『南京事件 「虐殺」の構造』(中公新書, 1986) には「日本軍特有の処刑法に捕虜の試し斬りがあった。満州事変の匪賊討伐で習慣化したようだが、新兵に戦場度胸をつけるには最適だった……。……内地からやってきた剣士に、愛刀で試し斬りさせた……ぐらいだから、この『悪習』がいかに日常化していたかが察せられよう。」(p.191) とある。