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チャールズ・ディケンズの代表作であり、新潮文庫のStar Classics 名作新訳コレクションの1冊として発売されたばかりであり、セレクト。
ディケンズは『クリスマス・キャロル』と『オリバー・ツイスト』しか読んでいなかったのだが、両作にも共通するように、ストーリーテリングの巧みさが際立っている。特に本作『大いなる遺産』では、主人公の少年ピップが冒頭で巻き込まれる脱獄囚との恐怖に満ちた出会いが彼を奇想天外な運命へ導く下巻のドライブ感が素晴らしい。
点在する登場人物の関係性が最後には綺麗につながっていきながら、早く続きを読みたいという思いに駆られていく古典的名作。
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遺産の贈与者は一体だれか。本当にあの人?
お金はあった方がいいけど、多すぎなくていい。幸せを感じられることが幸せだと思う。ああでもないこうでもないと、色々考えてしまうピップは良い人だ。
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大いなる遺産を天からの授かりもののように約束され、人が変わった主人公ピップ。贈り主が意外な人物であり、運命を急転させる。変転するピップに対して変わらぬ愛情で支える人たち。態度を変える人たち。いろんな事が、周囲の人たちがピップの人生を豊かにしてくれているようだ。新潮文庫では今年新訳書が出てページ数が減ったが、理解しやすい文章になった。2020.9.21
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これに満点以外を付ける人の気持ちがわからない。
それくらいには衝撃を受けた作品だった。
上巻の200ページくらいまではひたすらイングランドの田舎での貧乏な暮らしの細かな描写が続き、正直退屈していたが主人公がある人物の家に招かれてから興味を惹かれ出した。
そのまま導かれるように下巻を読み進めるとディケンズの魔力に取り憑かれることとなった。
上巻で描かれていた(私が退屈だと感じた箇所含め)ことが、見事な伏線となり丁寧に少しずつ回収されていく。こんなことされてはページを捲る手が止まらない。
本作は大きくミステリーとジャンル分けされているようだが、文学で表現出来る様々な要素が入り組んでおり、読み手によって感覚は別れるだろう。いずれにしろ本作が歴史的マスターピースであるという事実は揺るがない。
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人はやはり失敗から多くを学ぶ生き物だと感じた。成功からも学びはあるけれど、失敗してどうしようもない不幸を感じる時こそ、本当に大切なモノが見えたり自分の言動を省みたりできて、それはいつの時代も変わらないのだと思った。下巻での伏線回収や謎が解けていく感覚がすごく快感で一気に読んでしまった。
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メチャクチャ面白くない?突然金や地位を得る若者というのは何度となく焼き直されてるが、これを超える話は無いのでは。登場人物の一人一人がイキイキとしていたし、最後も良い。古さを感じない翻訳もgood!
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当初は新聞連載であったということで、話の展開が速く劇的です。最後に女性と再会する場面がありますが、連載時には再婚した女性の設定だったのが、書籍化にあたり、読者の意見を取り入れて、未亡人の設定に変えたそうです。
筆者の生い立ちが所々に反映されていて、当時のイギリス社会を垣間見ることができました。
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さて下巻からは一気にストーリーが動き、上巻で謎に包まれたことが玉ねぎの皮を1枚1枚剥ぐようにクリアになっていく
ピップに大いなる遺産を渡した人物は予想通りだったが、理由がわかりちょっと切なくなる
さらに過去に登場した人物があれよあれよと繋がっていき、「ええそうだったの⁉︎」と何度も心で叫んだ(笑)
紳士になるため、遺産とともにロンドンへ
贅沢な暮らしを送りながらも、人様の勝手なエゴに翻弄されていく
さらに美しさを増したエステラに再会したピップ
彼女への愛に確信をもつものの、相変わらずの態度に愛が深まるほど虚しさは増す
婚約者に裏切られた過去を持つハヴィシャムの差金でエステラの面倒を見ることはできるものの、ハヴィシャムとエステラは最後の賽を投げる
絶望のどん底に着き落とされるピップ
最後に自分の気持ちを二人に体当たりでぶちまけエステラに別れを告げる(いやいや、カッコいいよピップ!よく言った)
一方姉の婿、鍛冶屋のジョー
親代わりであり、兄であり、友人のはずの二人の関係にも変化が
ジョーはピップを「サー(sir)」と呼ぶように…
悲しく思うものの自分が蒔いた種なのだ
どうすることもできない
幼い頃クリスマスに会った脱獄囚に再会
深く同情はするものの、嫌悪感を抑えきれない
しかし二人の関係にも変化が…
そして姉を襲った人物にピップも襲われ絶体絶命の大ピンチ!
死を目前にピップは自分の人生と向き合うのだ
波瀾万丈な出来事が立て続けに降り掛かり、心身共に疲労困憊するピップ
しかし友人のハーバートが常に彼を助ける
そしてウェミックもしょっちゅう自身の城(家なんだけど城なの)に招待し、ピップに手を貸す
最後はジョーの暖かさと二人の友情にジーンとくる
遺産を渡した人物との最後も切ないながら救いを感じる
エステラとの最後のシーンもいい!
(個人的にエステラ一人称の番外編を読んでみたい!)
ピップは確かに運命を翻弄された犠牲者かもしれないが、その罠にハマりにいくことは自分で選択しているのだ
最後にはきちんと気づいたであろう
ピップを通して皆が変わる
脱獄囚も、ハヴィシャムも、恐らくエステラさえも…
そして誰よりピップ自身が自分の向き合い変わっていく…
気づけば大親友ともいえるハーバートがいつもそばにおり、ウェミック他、たくさんの人たちがピップに手を差し伸べる
ピップくん
幸せ者じゃあないですか!
ちょっと羨ましいわよ!
知ってた?
ミステリー要素もピップの成長も、人の心の移り変わりも…多彩で巧みで面白い
今読んでこれだけ面白いということは、当時の人たちにはどれほどの影響を与えたのか…
ただどうしてもピップに対する執拗なイジメや蔑み、俗物たちの品のない嫌がらせ…
こういう描写が多すぎてウンザリしてしまったので、少々好みからは外れる…うーん残念
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現代でいう異世界転生ものやタワマン文学などにに共通する,孤独な人間の隠れた僻みを感じさせる。枯れた皮肉をどう読むかで印象が変わると思う。
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貧しい少年が、思いがけなく得ることになる「大いなる遺産」とは……。
『クリスマス・キャロル』に代表される、19世紀のイギリス人作家チャールズ・ディケンズの長編小説。
アルソンフォ・キュアロン監督による同名の映画では、舞台を20世紀のアメリカに移してリメイクされているが、原作は当然に19世紀のイギリス・ロンドンとその郊外が舞台。
本筋は主人公の成長物語ではあるが、小説では恋と富と挫折と後悔が様々な場面で様々な人物に見えたり隠れたりする。
主人公ピップにエステラ以外の登場人物も魅力的で、ミス・ハヴィジャム、実の姉とその夫ジョー、囚人マグウィッチ、後見人ジャガーズなど、19世紀の風情のなかで映画以上の多くのものが語られている。
特に、ピップにはジョーはもちろん、ジャガーズの事務所員ウェミックがいたことで「世の中、そう捨てたもんではない」と、ずいぶんホッとさせられる。
でもやっぱり、この小説の一番は“エステラ”で、しかも、エンディングのシーン……それは映画でも変わらない……あぁ、手で触れられないほど、美しい。
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“The pen is mightier than the sword”
さすがや!さすがエドワード・ブルワー=リットンだわ!さすがリットン調査団だわ!(これは孫ね)
はい、なんでリットン男爵が出てくんねん?まぁそれはおいおいということで、ディケンズの『大いなる遺産』です
やっぱな!っていうね
やっぱそうなるわなっていう
もう思い描いた通りの展開で大満足です
いらんねん変なサプライズはw
それにしても登場人物がいちいち魅力的すぎる
そして分かりやすい
いい人たちはとことんいい人
ちょっと冷たい感じの人たちも実はいい人
ちょっと嫌な感じの人は改心していい人
すごーく嫌な感じの奴は最後まで嫌な奴w
そしてピップの周りにはほんとに素晴らしい人たちがいたんよね
またピップ自身が最後にはそれにちゃんと気付けて、感謝できる人間だったからこそそういう人がいてくれたんよね
全ての謎がきれいにほどかれるストーリー展開、ハラハラドキドキの逃走劇、善き人々に訪れる幸せな結末、気の利いたユーモアと、どれをとっても一級品の素晴らしい作品でした
何より素晴らしいのは全てを明かさぬ余韻の残るラストです!
もう書いちゃう!
これを知った上で読んだとしてもこの作品の素晴らしさは全く損なわれないと思うので書いちゃう!
ラストの文章書いちゃう!
(以下ネタバレ)
〜私は彼女の手を取り、ふたりで廃墟の敷地から出た。はるか昔、初めて鍛冶場をあとにした朝に霧が晴れ上がったように、いまも夕霧が晴れようとしていた。見渡すかぎり広がる静かな光のなかに、彼女との別離の影は少しも見えなかった。〜
どうよ?
出会った時からこの結末は予感されてたのよ〜ってことがひとつね
そんで「別離の影は少しも見えなかった」ってのはもちろん今後は離れないってことなんだけど、その関係性については言及してないのよ
それが物理的な距離なのか、精神的なものなのか、あるいは両方なのか
信頼できる友人としてなのか、愛しあう恋人同士としてなのか
ここはもうお任せしますって感じなのよね
で、実はこの素晴らしいラストは当初かな〜りがっかり感漂うラストだったんだけど、ディケンズがリットンに「このラストでええやろか?」って相談した時に「いやいやいや、そんなんしたらもうみんながっかりしはるで〜」言われて書き直した結果らしいのよね
いや〜、さすがリットン男爵!だてに爵位持ってないわ
よーし次は光文社に戻るぞw