電子書籍
小学生タタン
2023/01/08 22:56
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
これって、作者さんの経験がつづられているような感じがしました。でも、そうなると、父母が帰るまで、小学生の女児を喫茶店に預かってもらっているというカタチになります。なんだか、そう思うとと違和感……
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2020年37作品目。
30年以上前の淡い思い出を語るタタン。
死んだ人の思い出が生きている人の生を豊かにすると、祖母との日々をタタンは振り返るけれども、ささやかな思い出全てがその人を形づくり豊かにしているのではないかしら。
記憶は宝物。
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学校が苦手で友達もいなかった少女時代に
学校帰りに通っていた喫茶店。
その店の隅にあるコーヒーの樽の上に座っていると
「タタン」とあだ名をつけられて、喫茶店に来る癖が強いお客さんとの交流が綴られた物語。
読み始めの時にはこれはおとぎ話か架空の話なのか
それともファンタジーの世界なのかと思うくらいに
現実味とかけ離れていた不思議いな空間でした。
けれど少女と癖のあるお客さんとの会話を読み進めると
これは著者の幼少期の経験した話ではないかと思い
そこからは現実味が増してきました。
普通は幼い子供がいたらもう少し現実味のある会話や
楽しい話などを多くしてもらえるのかと思いましたが、
少女の事を心配しつつもそれぞれの大人が
自分の問題を交えながら少女にも分かりやすいように
話しかけたりしている様子を見ると、
段々とこんな環境が羨ましくも思えました。
夢ばかり見ているだけの話しではなく、
現実を厳しくも分かりやすく話している長老の
人達の話を聞くのは難しいながらもしっかりとした
大人への階段を上る道筋をつけているのだと思えました。
ひと昔までまでは家族も大所帯で住んでいたので、
色々な人を交わってその中で子供は生きていく術を
学んでいきますが、現代は核家族になっているので
このような経験も薄れていっているのこの少女に
とっては良い経験ではなかったのかと思います。
癖の強いお客さんたちはそれぞれに悩みを抱えていたり、
ユニークな考え方だったりとして言葉の端々に
インパクトのある言葉があるのが印象的でした。
例えば男女の中や夫婦のことを
吸血鬼のように吸って、吸われてという表現をしたり、
一人で学校に行けないかったのが、
祖母が亡くなってからわたしは一人ではないようにと
思えるようになっていた。
恋ほど孤独なこのはない。
恋ほど豊かな孤独はない。
いつかおまえも恋をするだろう。
そのとききっとおまえは気付くはずだ。
木と仲良くなれば、孤独でなくなる。
嫌いなやつとは口をきかなくてもいいんだ。
木を友達にすれば、なんでも黙ってきいてくれる。
この少女が歳を重ねて思い返してみると
本当にあった事なのか記憶が定かではないと語っていますが、
朧気な記憶の中で心強い言葉あるかと思うと
良い記憶の思い出であるなと思いました。
心がとても温かくなるというわけではないですが、
懐かしい幼少期の記憶の思い出が蘇ったり、
子供たちがこれから生きていく時の大切なものや
大事なものをそっと教えてくれるような作品だと思いました。
喫茶店でコーヒーを飲みながら
ゆっくりと読んでこの作品を味わうのも
また良いかと思います。
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子どもの頃の現実と空想の世界を行き来する感覚に、懐かしさを覚えました。
ただ、読んでいるときに「これは現実?空想?」と分からなくなって読み返すこともありました笑
作者の凄さとも言えるのですが、少し読み進めづらさを感じました…
最後はなんだか胸がギュッとなるような感覚に陥りました。可愛らしさもあり、ちょっぴり切なさもあるお話だと感じました。
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完全に表紙買いだったのだけれども、読後の「いい小説読んだ!」感が素晴らしいのでおすすめです。さくっと読めるので再読性も高いです。こんな喫茶店迷い込んでみたいなぁ。
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なんだか不思議な話だった。
子供の頃の記憶は、なんとなく…であり、本当のことだったのかわからないこともある。
タタンと自分が似ているようなところもあって懐かしい気持ちで読めた。
私も小学校に入学した頃は学校に馴染めず、近所に飼われていた犬が大好きで、帰宅してからよくその家に犬を見に行っていた。
そのうち飼い主さんが家にあげてくださるようになり…。
ただ、どんな話をしたのか全く思い出せない。
ある時、我が家でも犬を飼うことになりいつの間にかその犬に会いに行くこともなくなり、飼い主さんも引っ越しをされて。
なんだか、飼い主さんとワンちゃんにお礼を伝えたくなりました。
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なつかしくて、せつなくて、でも読み手を煙に巻く物語。外の世界が怖かった女の子・タタンが、喫茶店(樽の中!)に居場所を見つけ、常連客の話を聞いて時を過ごす。これがまた、どこまでが本当でどこからが作り話なのか、分からないところがユニーク。
「小説家に聞いちゃいけない質問が一つだけある。『それはほんとう?それとも嘘?』ってやつだ。」
最終章に出てくる言葉だが、その心構えで読み直すと、この物語の虚実入り混じる雰囲気がとてもここち良く感じられる。大人になったタタンが回想する形で、解説で平松さんも書いているように子供時代の記憶というのはTPOがごっちゃになっていたり思い込みがあったりするものだ。私も、ハッキリ思い出せる昔の情景が本当かどうか、わかったもんじゃない。そう思いながら読むのが楽しいのだ。
黒いワンピースに赤い髪の"未来人"。
カネという生き血を吸い合う"吸血鬼"の男女。
学者が恋した白いいきもの。
そして、タタンと同じ名前の女の子。
全部、幻だと言えそうで、でも幼い日のタタンはたしかにかれらと触れあった。心の底の孤独を分かち合ったのかもしれない。
帯の"心にしみる最高のラスト"というのは、私にはよくわからなかった。驚きはなくて、ただ幼い日の記憶が、女の子が大人になるのを助けたんだろうと思えて、それはとても優しい記憶だなと思った。
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甘いだけのふわふわ思い出話しは書かない。さすが中島京子。ねじれたりひねくれたり疑ったりしながら繰り広げられる変な思い出話し。騙されることでしか癒されない何かを誰もが持っている。それに気がつく人は少ない。私も、この本を読むまで知らなかった。
そんな小説です。
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少女タタンは喫茶店の樽の中にいる。
マスターと老小説家、神主、バヤイ、トミー…
個性的な常連さんたちとの優しい交流や、少し不思議なタタンの記憶。
ショートショートの結末はあるのやら、ないのやら…最終章で「繋がった!」系なのかなと思ったけれど、ファンタジーはファンタジーのまま。
不完全燃焼
小説家にはひとつだけ聞いてはいけないことがある。
言葉の一つひとつやエピソードはいい小説なのだろうけど、私の貧相な脳みそには少々支離滅裂でありました。
今年の28冊目
2020.9.20
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中島京子さんと言えば、小さいおうちが感動的だった。もちろん長いお別れも読みました。私は他にはあまり読んでいないけど、切ない小説を書く方なのかしら。
本作もとても切なかったです。ちょっと適応障害?みたいな少女の思い出話として、ある喫茶店に集う人たちが描かれる。最初は居場所がない少女が喫茶店の片隅に座って、いろんな大人と心を通わす話なのね~と思って読んでいたが、4章目で主人公の少女とおばあちゃんとの思い出になり、この章がかなり切なく心に刺さると同時に、あぁ、ただの連作短編じゃない、と気づかされる。果たしてその後の章では、徐々に成長する主人公が、新たな出会いを果たし、喫茶店での立ち位置も少しずつ変わっていく。
そして、これがこの小説の味かな、と思うのだが、すべては大人になった語り手の、「おぼろげな記憶」であり、どこからどこまでが本当のことか曖昧なところも良い。みんな、少なからずそういう思い出があるよね。
親が知らない、おばあちゃんとの記憶とかも、心の片隅にそっと仕舞われている。切ないけど温かい小説でした。
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ロッテvs日ハム@マリンスタジアムの観戦に行く前、時間が余り過ぎたので、フラッと立ち寄った西船橋の本屋さんで購入。完全にジャケ買い(笑)
主人公の女の子(タタン(本名:トモコ))が幼い頃学校帰りに通っていた喫茶店の常連客達とのお話。
その中の「ぱっと消えてぴっと入る」と「バヤイの孤独」が私のお気に入り。
「ぱっと消えてぴっと入る」は、タタンとタタンの祖母との話。「死者の思い出が生者の生を豊かにすることを、わたしは祖母を亡くしたとき始めて知ったのだった。」と言う最後の文章に深く感動した。死に対しての考えを大きく変えられた気がした。
「バヤイの孤独」は、謎の生物学者との話。場合をバヤイって言う学者のことをタタンは頭の中でバヤイと言う。「誰かを思って泣く孤独はいいものだ。それがいかに辛かろうといいものだ。孤独には二種類あって、誰かを思う孤独と、まるでそこになにも無いような孤独があり、誰かを思う孤独は思う人の心の中に誰かが存在する分、厳密には孤独ではないとも言える。誰にも思われず、誰にも知られず、誰にも理解されない場合、人は自分の存在すら疑うほどの孤独に直面する。そんなときに人を救うのは誰かを思う孤独である。」孤独に対する考え方って色々あるなと思った。これを読んだ時、叶わぬ想いをバヤイは秘めていて、孤独だけれど孤独ではない。心は豊かだと言っているようだった。
月日が経って読み直したら、また違う観点が出てくるんだろうな。その時にこの感想を読んだら楽しい。文章のタイムカプセルみたいで。
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少女タタンと喫茶店で出会う大人たち。
嘘と本当が入り交じるなんともいえない世界観がいい。
三十年以上前の記憶を辿って語られる話の真偽なんて確かめようがない。
むしろ分からなくて良いとさえ思ってしまう。
おぼろげであやふやなままの方が面白いことだってあるに違いないのだから。
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とある街の、坂の下の喫茶店。
少女は学校が終わると喫茶店で母親を待つ。
赤い樽にいた少女は、タタンという名で常連から可愛がられる。
喫茶店のマスター、常連客の小説家、売れない歌舞伎役者、神主、学生、サンタ。
最初から終わりがくることが暗示されているいつもの風景。
ああ、このままここでの生活が続いてほしい、と思った矢先のラストの妙。
うまいことできてるー!
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不思議だったり、小気味よかったりじんわりしたりそんなお話が幾つかあって、日常のような夢のような感じ
ぱっと消えてぴっと入る、より
「死者の思い出が生者の生を豊かにする」
救いのある言葉だなと心にメモ
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小さい頃の記憶を思い出している物語という設定により、うまい具合にストーリーに色をつけている。
記憶だから正確ではない。
それが逆に思い出が鮮やかになっていると思う。
小説家には聞いてはいけない質問が一つだけある。
「それは本当?それとも嘘?」
将来フワッと思い出せるくらいの日常を大切にしたい。