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人類が進化の過程で、より良い社会を作るための「青写真」を描く遺伝子を受け継いできたことを、自然科学・社会科学両面からのアプローチによって明らかにした一冊。
著者は、過去に形成された様々なタイプのコミュニティを検証し、それらの成否を分けたポイントが、著者の定義する「社会性一式」、つまり個人のアイディンティティ認識や家族への愛情、他人との交友や協力、社会的な指導と学習といった、社会の構成・維持に不可欠な8つの特性にあったと分析するとともに、一部の動物もこれらのいくつかを保持することをふまえ、人類を特別視せず生物の種の一つと考えれば、同じ種である人間同士で殊更「違い」を強調するよりも、普遍的遺産として受け継いできた社会性一式という「共通性」にむしろ着目すべきであり、人々は偏見や差別よりも互いに協力的であることこそが、進化論の観点からも合理的なのだと主張する。
人類が遺伝子的進化によって形成してきた社会の中で、人々が協力や学習といった相互作用を通じてさらに社会を進化させ、その進化をもたらす行動様式等が自然選択によって再び人類の遺伝子に組み込まれていくというフィードバック作用、いわば遺伝子的進化と文化的進化の共進性こそが人類発展のキーであるという著者の大局的かつ楽観的な視点は、自然科学vs社会科学、同質性vs多様性といったトレードオフを超えたジンテーゼとして、今日の分極化が進む世界に重要な示唆を与えてくれる。
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「善き社会をつくりあげるためのブルー・プリント(青写真)を、私たちは自分たちの内に持っている」というのが本書の内容。ブルー・プリントは世界の人類が持っている一揃えの普遍的な文化ともいうことができ、それを「社会性一式(social suite)」と名付け、解説を加えてくれている。例えば、個人のアイデンティティを持つこと、社会的交流、教育など。これらは人間の進化の過程で遺伝子に書き込まれ、フィードバック・ループを繰り返している。
本書を読み進めると、人間の本姓は善なのだと改めて認識をさせてくれる。過去の歴史を振り返り、人間の本姓は本当に善なのか?と問いかけることは簡単だ。けれども、本書は善なのであると説得力を持って私たちに教えてくれる。
ますます混沌として予測が難しくなる世の中になるけれども、人間の善性を信じるということはゆるがせにせずにいたいものであると思った。
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社会の分断や差別など暗い話題がどうしても多くなるニュースを見ていれば、人間が本質的に備えているであろう人間性もまた暗いもののように思えてくる。しかし本書はそうしたイメージに対して、実は遺伝子レベルで善き社会を作ろうとする青写真(=ブループリント)が人間には存在しているという点を主張する。その点で本書のメッセージは、新たなる啓蒙概念を提示するスティーブン・ピンカーと近いものだと理解した。
遺伝子レベルに存在する人間性とは本当に存在しているのか?読者が当然抱くであろうそうした疑問に対して、本書は人類の歴史を辿りながら、一つ一つ実証的に議論を進めていく。当然、実験室の中で善き遺伝子を分析するといったことは不可能であるわけで、読み手としても本書を読んで全てに確証が持てたとは言い難い。
それでも本書が伝達しようとするメッセージには一定の正当性があると感じたし、善き人間性を遺伝子にまで翻って証明しようとするこのアプローチは面白いものであると感じた。
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第10章の「遺伝子は体内だけでなく体外にも影響を及ぼす」がめちゃめちゃ気になるんだけど、これは前作参照らしい。ドーキンス『延長された表現型』と合わせて読む。ところで、「ハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)」と「シカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)」とかって和名、もうちょっと何とかならんもんなんですか…??
いつも斜めなコメントでホントにスミマセン(汗)
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全部を理解できたとは言い難いけど、人間とその他の生物の遺伝子や文化、社会性を獲得していく過程などに関する考察が面白かった。その裏付けとなる膨大な実験と観察の量に圧倒された。
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著者のニコラス・クリスタキスは、医師で、イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長。専門はネットワーク科学、進化生物学、行動遺伝学、社会学、医学など多岐にわたる。2009年には『タイム』誌の世界で最も影響力のある100人に選出されている。
世界が分断される中では、どうしても人間の負の側面が強調されてしまう。しかし、そもそも人間は隣人を愛するようにできており、善き社会をつくるための特性を備えていると著者は言う。これらは遺伝子にコード化されているのだ。暗い世の中にあって、希望の光は私たち自身の中にあったようだ。これらの主張をさまざまなファクトで解き明かしている。
<概要>
米国をはじめとして世界では、大きな分断が生まれている。政治思想における右と左、都市部と郊外、富裕層と貧困層、マジョリティとマイノリティなど、さまざま軸で対立構造が生まれている。
このような状況では、どうしても人間性の負の側面ばかりが強調されてしまうことが多い。しかし、人間の本性には賞賛すべき点がたくさんがある。私たちは善い行いをすると、とても良い気分になれる。これは啓蒙主義的な価値観の産物だけではない。これは人間に備わっている本来からの特性である。
人間は本来的に、愛する、友情を育む、協力するといった人間性を持っている。それは遺伝子に書き込まれており、私たちはそれに基づいて進化してきた。世界中の人々はこの人間性と進化を共有している。
今、私たちの世界は両極に引き裂かれた状態にある。しかし、私たちは、隣人を愛し、善き世界をつくるためのブループリント(青写真)を携えて生まれている。それは人類が共有する遺伝子というインクで書かれたものだ。遺伝子は、人間の構造や機能、精神、行動のみを形づくるものではない。人間社会の構造や機能にも影響を与えるのだ。
人間が一致団結して社会をつくり上げる能力は、二足歩行と同様に、人間が生き延び、繁殖を助けるために身に着けた本来的な行動である。あらゆる社会の核心には社会性一式(ソーシャル・スイート)が存在する。これらは私たちが”できる”と同時に”しなければならない”何かでもある。
<社会性一式(ソーシャル・スイート)>
1.個人のアイデンティティを持つ、またはそれを認識する能力
2.パートナーや子どもへの愛情
3.交友
4.社会的なネットワーク
5.協力
6.自分が属する集団への好意(すなわち内集団バイアス)
7.ゆるやかな階級制(すなわち相対的な平等主義)
8.社会的な学習と指導
個人を認識する能力は全ての動物が持つものではない。これができるようになると、誰が自分を助けてくれたのか、そのお返しを誰にすれば良いかを把握することができる。時と場所を越えて長期的に記憶することもできる。この個人を認識する能力は、愛情や交友、協力といった互恵関係の構築に欠かせない。
パートナーや子どもへの愛情は自分の遺伝子を残すために重要であることは言うまでもない。同時に愛情はパートナーや子どもを越えて、血縁外の交友(友だち)をつくることも可能にする。さらには短期的な損得勘定を越えて、長期的な絆を築きあげることも可能にする。もし、私たちがその場限りの損得勘定だけでしか行動できないとしよう。そうすると短期的なメリットが得られない場合には、リスクを冒してまで他の誰かを助けるという行為は成り立たない。愛情は血縁を越えて交友(友だち)をつくり出し、さらには長期的な互恵関係をも生む。
それぞれの交友関係が結びつくことにより、より広範な社会的ネットワークが形成される。そうなれば、自分たちを援助してくれる輪はさらに広がることになる。こうして、相互援助が期待できる自集団への好意や忠誠心(内集団バイアス)は高まっていく。
集団内の地位は、”順位/支配力”による階級性と、”威信”による階級性によってつくり出される。順位/支配力による階級性は、体格の大きさや相手への攻撃力によって決まる。そのため、下位の者は、高い地位にある者と距離を置くことになる。一方で威信による階級制は、どれだけを相手に利益を与えられるかによって地位が決まる。そのため利益を多く与えられる者には、より多くの者が近寄ってくることになる。威信のある者は社会的ネットワークの中心に位置するようになり、下位のものがより多く結びつくことによって集団は強固なものになる。両者のバランスによって社会は形成されるが、人間は後者をより発達させている。
威信による階級制により、下位の者は上位の者から、より多くを学ぶこともできる。また、それぞれが学習で得た知識はネットワーク化された社会に蓄積されていく。そうすることで、集団はより高度な文化を持続的に成長させることができるようになる。
人間には、競争と協力、暴力性と情け深さという相反する特性を併せ持っている。社会の分断に直面している現代においては、どうしても前者の傾向が強調されてしまう。しかし、私たちには生まれつき隣人を愛し、善き世界をつくるためのブループリント持っていることを忘れてはならない。
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人間は社会性一式(ソーシャルスイート)という原則にもどついて社会を形成すればより善い社会を未来に向かって実現することができるという仮説に基づき、下巻では遺伝子と他動物との近似性に基づく人間の社会性の根拠について紹介。
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人間の持つ「社会性」(友情、利他の心、グループに階級ができる傾向など)は、「本能なのか、それとも、社会での学習の結果なのか?」。
違う言い方では「生まれか育ちか?」。
要するに結局遺伝か?
上巻での夫婦間の愛情(社会性の最小単位)の分析に続き、下巻では友情や利他の感情を俎上にのせる。
集団が生き抜く上で、身内を守り合う利他の心は人間以外の動物でも発達している。
中でも人類は、相手がどういう存在で、敵が味方かを判別するために表情や顔の違いを著しく進化させた。
火を使う調理を手に入れ、摂取カロリーが爆発的に増加した中で、頭脳が活発化。知恵の共有は不可欠になっていく。
こうした経験は、遺伝子の突然変異として受け継がれていく、、、
この本の宣伝文句は「人は協調しあえる、それはプログラミングされている」というもののようだ。分断は乗り越えられる、と。
もちろん著者もそうした良識を支持しているが、通読すれば、人間が徒党を組み、敵味方を判別し、違う文化の持ち主には容易に心を開かない「本能」を持っていることも本書は示唆している。
単にポリティカルコレクトネスなだけの本ではない。
末尾で著者は、人工知能が人間の長らく保持してきた社会性に与える影響について、非常に慎重な言い回しで危惧の念を伝えている。
人間がAIを模倣するときが近づいている、と。
具体例として、穏やかに謝罪するbotを加えると人間3人の議論がまとまりやすくなった、とか、囲碁でイ・セドル氏がAIに敗れたこともさることながら、手筋が人間のこれまでのものとは全く違ったことなどが挙げられている。
そういえば、日本でもペッパー君がいると殺伐とした空気が丸くなる、という缶コーヒーのCMがあったが、、、
結局遺伝、の虚無の前で我々がなお自分の人生を自分で選びとっているという実感をいつまで維持できるのか、そんな怖さも感じる本。
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上巻での多種多様な事物の積み重ねからの、人類の文明の堆積を思わせるスペクタルな下巻でした。
人間にはこれまでの歴史が積み重ねた遺伝的な特性である 普遍的な社会性一式 ソーシャル・スイート がある。
=自然選択によって形成され、人間の遺伝子にコードされているもの
何故そのような特性が遺伝子のコードに刻まれたのかは、社会的な種として連綿たる歴史を紡いだ結果だ。
これはただ事実であるだけではなく、私たちの幸せの源でもある。
そしてそれは全人類のDNAの少なくとも99%は完全に同じであり、私たちが共有する人間性の深い源を特定することによって本当の正義を育むことに他ならない。
弁社会論 で世界を見る。
人間の中に根本的な善が備わっているのを認識すればこそのものである。
現代の社会は進化的な青写真の表面を 文明 という緑青で覆っているようなものだ。
人類という種は、友情、協力、社会的学習に依存するように進化した。
烈火のような競争と暴力から生まれたのだとしても。
社会的動物が持つ内集団バイアスやそれに伴う偏見は、正しく連携をとるのに絶対に欠かせない認知技能がもたらす。
つまり有益な能力の別方向に進化した一形態である。
ニコラス・クリスタキスが定義する 協力 とは
集団全員に利益をもたらす結果に貢献することだ。
集団の他のメンバーがその結果に貢献したかどうかは関係ないとされる。
血縁選択、直接互恵性、間接互恵性、処罰が協力を促すが、人間は 貢献した人(協力者)、貢献しない人(フリーライダー)、孤独者の各タイプに分かれ、各タイプそれぞれが天敵を打ちまかし消滅も支配もすることができない。
そして必然的に多様性が維持される。
社会的集団を形成する独特な理由の一つは、学習の強化が可能になるからだ。社会的学習はかくも効率的なものであり、さらに効率化されるのが教えるという行為である。
クリスタキスの定義する 教える とは 経験のない個体を前にして行われ、教える側にコストを払わせるか、そうでなくとも直接の利益を何ももたらさないが、学ぶ側が単独で学ぶ場合よりと効率的に情報や技能を獲得できるようにしてやる行動だ。
↓
集団に典型的なものであり、かつ社会的に伝達される
↓
ボールド・ウィン効果 学習結果が遺伝する
もともとは非遺伝性だった行動が、遺伝子にコードされた行動に変わる。
他人とのつながりや協力があるからこそ、人間は他人から学ぶことができ、それをまた土台として次は自分から他人に教えることへの興味と意欲を進化させる。
→利他行動→文化
文化は人間においては非常に複雑で累積的なものにもなる。場所と時間を超えて人から人へと伝えてきた。社会性一式が伝達可能な文化を築く才能を支え、遺伝的継承と並ぶ、交差する第二の継承システムの基盤をつくるのだ。
私たちは相互に影響を及ぼす遺伝子と文化をともに次の世代に伝達する。
遺伝子と文化をあわせて考える見��には、3つの重要な要素が含まれている。
1.文化を生み育てる人間の才能は、それ自体が自然選択によって形成された適応だ。認知面と心理面の特徴を進化させ、文化を出現させる能力が自分達にあれば有益なことであり、したがってその能力を進化させやすい。
2.文化そのものが進化できる。次世代というよりも同じ世代間での水平な伝達がおこりうるという特別な特徴がある。
3.遺伝子が文化に作用し、文化もまた遺伝子に作用している。
自然から分離した人間
→現在は科学者がますます人間の特質を動物に見出している
アリストテレス
キウィタスの概念、合理的な原則と言語の付与
人間を動物界の上に立たせる固有の特徴である
↓
トマス・アクィナス
神学大全、対異教徒大全
人間と自然とが階層関係にある、神は自然界を人間に支配させるために創造した
↓
フランシス・ベーコン
自然哲学
自然界は人間がそれらの特別な能力を使って研究するために存在する
↓
科学革命 17C
ガリレオ、ニュートン
科学的探究により自然からその真髄である霊性が剥ぎ取られる
人間は科学を通じて自然界に対する支配力を行使すべきである
↓
ジョン・ロック
人間が財産を有効に保護し、倫理的な生活をおくるためには、自然状態から脱して政治的な社会に、まとまるための契約を設けなければならない
↓
ルネ・デカルト
二元論の概念提示
人間の精神と肉体がそれぞれに異なる領域であり、動物は理性を持てない
↓
イマヌエル・カント
行為者性と理性を行使できる人間は、それゆえに独特の道徳的な存在である
↓
デイヴィッド・ヒューム
自然についての推論能力や観察能力を持つことではなく、共感能力を持つことにもとづいて人間を自然界から切り離した
↓
18C 産業革命
新しいテクノロジーによる、より一層の自然制御を好ましく思う一方、
またこの支配を不穏なもの、自然の純粋な何かを潜在的に脅かすものとみなした
↓
ジャン・ジャック・ルソー
ヒュームと正反対の見方
↓
ラルフ・ウォルドー・エマソン 自然論
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー ウォールデン
超越主義の哲学に自然界を取り込む
↓
ダーウィン
人間の由来
私たちの動物への近さこそが、私たちに共通の人間性を明らかにする
クリスタキスに対しての反論(生物学と人間行動を統合することに対しての抵抗)
反論1.実証主義
科学的研究を通じてしか真実は知り得ず、その為には立証可能で再現可能な形で論理と数学を自然界に適用しなければならない。
→科学的洞察の完全性を極端に過信するのは問題だが、実証主義をまるごと拒絶するのもやはり問題がある。
反論2.還元主義
遺伝子にコードされた社会性一式へ単純化し全てが還元されている
→創発 という過程を無視している
各部分からなる総体に、各部分にはない特性が現れる。
社会に関する限り全体は各部分の総和より大きくなること、そして全体を���成する各要素には存在しない独自の特徴を持つようになる。
人の集まりには、各個人の形質の総和を超えた資質がある。これを認識した上で、集合的な現象に進化的な基盤があることを受け入れれば、協力や社会的ネットワークのような創発的な資質が生じうるのかが見えてくる。
社会の遺伝的な基盤に注目するのはただの還元主義どころではなく、むしろ社会生活についての真に全体論的な理解を得るための土台をつくっている。
反論3.本質主義
物質世界の事物はそれぞれ一連の基本的な特性を持ち、その特性がそれをその事物たらしめてるいる。事物の特定の例を見るのではなく、その先を見てその事物の変わらない本質を見つけようとする。
→社会に関する限り、本質主義的な現実を受け入れつつも、社会生活を彩る極めて多様なものがたくさん社会性一式を取り巻いていて、しかもそれが社会生活を円滑にしてもいるのだと認めることは可能だと考えている。
反論4.決定論
現在の状態はその前の状態によって完全に決定される。
→社会は人間の遺伝子によって優位に決定される。ある特定の人間行動の流れを生物学が、完全に支配しないまでも誘導されることはありうる。
マズローの欲求階層説
基本的なものから最も高度なものへと
生理的欲求、安全、所属、承認、自己実現 の順に並べた。
→この欲求と動機の順序は逆にされるべきである。
後者が前者の基盤である。種としての人間は、そうした高位の欲求を持つように進化してきた。そしてこの進化はもっと効率的に満たせるようにするためである。
クリスタキスが指摘する人類へ重大な影響力を持ちそうなテクノロジーが2つある。
1.人工知能
2.クリスパー
どちらも人間の持つ社会性一式への影響を懸念している。
1.人間に新しいことを学ばせる、学習させる、また人間とは異なった利他行動についての考え方を会得するかも知れない。
2.際限のない遺伝子組み換えによるディストピア的な未来予想
→新しい契約で社会性一式を尊重するように定める
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人間の善い社会性は遺伝子に組み込まれている。
他人が、社会が、その行動を通じて他人の遺伝子に影響を与えうること、同じくAIが行動を通して人間社会を変革する可能性は衝撃的でした。
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「ブループリント」下Nicholas Christakis
人類や霊長類の社会的ネットワークの特徴として、同じ数の絆を持つ個体同士が繋がるという「次数の同類選択性」がある。
ニューロン、遺伝子、コンピューターのネットワークでは、人気のある節点は多数の不人気な節点と繋がる傾向があり、これを「次数の異類選択性」という。
多少のヒエラルキーがある方が公平な集団になりやすく、集団内の全メンバーが有益な活動において協力し、協調し、生き延びる機会が増える。
安定したリーダーシップはリーダーと追従者の間だけでなく、追従者同士の平和的な関わり合いも促す。
友情こそが幸福の主要な決定因であり、むしろ婚姻よりも重要
真の友情は、相手に対してできる事(相互援助や有用性)を基盤にしているのではなく、それぞれが相手に対して感じている事(相互の善意や思いやり)を基盤にしている。
人が誰かの為に苦しい姿勢を耐えられる平均時間
自分の為:140秒
親兄弟の為:132秒
親友の為:123秒
他血縁者の為:107秒
子供の為:103秒
血の繋がりに囚われない絆は、文化を生み出して保持する人類ならではの能力が出現するにあたって特に重要だった。
人々は平均して4,5つの社会的絆を持ち、一般にはそこに配偶者と1-2名の兄弟、1-2名の親友が含まれる。
友を作れる能力にはもれなく敵を作れる能力がついてくる。
友情には友情で返す傾向は34%。敵意には敵意で返す傾向は5%。人には密かな友達は少なくても密かな敵は少なくない。互いへの友情なら高らかに宣言するが、敵には敵と言わない可能性が高い。
バランス理論
友の友は友である
友の敵は敵である
敵の友は敵である
敵の敵は友である
友の数が多いほど敵の数も多い。友が10人多くなるごとに敵も1人多くなる。
自民族中心主義(エスノセントリズム)と外国人嫌悪(ゼノフォビア)は同じ過程の一旦として共進化した。
2歳の幼児でも自分と同じ色のTシャツを無作為に割り当てられた幼児を好む。
論理的な理由がなくても人は外集団のメンバーを差別する。
人々とって重要なのは、自分の集団のメンバーが他の集団のメンバーに比べてどれだけ多く得ているかであり、自分の集団がどれだけの利得を持っているかではない。
人々は絶対的な立場も相対的な立場も両方重要視する。
競合する集団の間でポジティブな関係が復活するには、全集団にとっての関心事となる「上位」のゴールが設定される事。
個人がみずからのアイデンティティをしっかりと身に纏えて、なおかつ一定の枠に囚われずにいられる社会ほど、誰をも許容できる社会になる。
ある個体を友か敵か、部内者か部外者かに類別する能力は正しく連携をとるのに絶対欠かせない認知技能。人間に存在するバイアスと偏見はこの有益な能力が別方向に進化した一形態。
バンドウイルカはシグニチャーホイッスルと言って全員が自分と認識できる特有の鳴き声を発する���
鏡像自己認知が実証されている動物は、人間、類人猿、ゾウ、イルカ。
自己意識を生み、自他の区別をつけられるようになるには幼少期からの他者の存在が必要。
悲嘆は生理学的に有害であり、死亡リスクを高める。
ヒヒの悲嘆の軽減方法は、毛繕いの数や毛繕いする相手の数を増やす事。
ゾウの集団は亡くなった類縁の骨の前に1時間黙って立ち尽くす。
チンパンジーやゾウも心痛のあまり死ぬ事がある。
ゾウは食べ物が不公平に分配されたとしても気にせず相手に協力する。
集団が大きくなればなるほど進化の過程でフリーライダーが増える傾向がある。
第三者を傷つける誰かを罰する為に進んで個人的コストを払おうとする事を「利他的罰」と言う。
良くない行いをした者を叱責したいという願望よりも、正義を回復し、不当な扱いをされた側に埋め合わせをしてやりたいという願望の方が強く現れる。
処罰者が実際の処罰行為をしなくても協力レベルは高く上昇し、維持される。罰は制度として機能する。
ネットワークは各個体に2,3つの絆を持たせるくらいが上手くいく。
イノベーションが起きやすいネットワークは、似た者同士と似ていない者同士が上手く釣り合っている事。
学習されていた行動が、時を経るうちに遺伝性になる事をボールドウィン効果という。
私たちは自分の遺伝子だけでなく、地球上の全ての生き物の遺伝子が含まれた広大な海に浮かんでいるようなもの。
友達の人数に差が生じる要因の半分は遺伝子。
旧石器時代では人間の1/3は意図的な暴力で死んでいたが、現代では物騒な場所でもせいぜい1/1,000程度。
動物は世界に働きかけ、世界のありようを変えるべく遺伝的にプログラムされている。
米国の家計に見る食費の割合推移
1900年:42%
1962年:16%
現在:9.5%
文化の定義
個体が同じ種の他のメンバーから教示や模倣などの社会的伝達を通じて獲得し、それによってその個体の行動に影響が及ぶような情報。
未就学児童は、不人気な大人よりも人気のある大人から学ぼうとする傾向が二倍も強い。
人口の多い集団ほど高い率で新しい単語を増やし、少ない集団ほど高い率で単語を失っていく。文化のイノベーションと保存において、規模は確実にものを言う。
文化の維持と進化は、社会的ネットワークにおける個人間の繋がりの数と構造、および情報がどれだけ容易にかつ自由にやりとりされるかによって決まる。従い、文化の伝達はその集団がどれだけ協力的で友情に溢れているかに関わる。
世界人口の65%は成人する頃にはラクターゼ酵素を失う。
血の繋がりのない個体とも協力できるのが人間。
文化は累積的で人間の数は増え続けているので、文化が働かせる選択圧は昔より今の方がずっと強くなっている。
産業が発達して社会経済の状態が向上すれば栄養状態が改善されて人間の身長は高くなる。
最も驚異的な創発は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リン、鉄、その他いくつかの元素が混合すると生命が出来上がる事。
意識構造の進化は、人生の基本的な要求をもっと効率的に満たせるようにする為。
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レビューはブログにて
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特に社会科学においては、変化しているのが世界なのか、それとも世界に対する私たちの理解なのかを判断する必要がある