投稿元:
レビューを見る
軽快なリズムの文章、テンポ良く進むセリフ回しが小気味良い。
しかしながら、歌舞伎界の役者が持つ役者魂への執念、女形を演じる役者の美しく妖艶な描写と繊細な内面の対比が色濃く描かれている。
見え隠れする複雑で繊細な移ろう心情描写、艶やかな着物の描写、極彩色が広がる独特な世界観なのだけど、どこか爽快。
普段あまり読むタイプではない作風だけど、手に取って良かった。
投稿元:
レビューを見る
ダヴィンチの書評が気になって拝読。小説野性時代新人賞受賞作で選考委員も大絶賛だったようだが、私にはそこまでの手応えではなかった。が、確かに読んだことがないような面白さが文体にも文章にも構成にも科白にも充満していて非凡であることは間違いない。次回作にも期待。。
投稿元:
レビューを見る
歌舞伎役者という芸に身を置く男たちの嫉妬と愛憎入り乱れる時代小説絵巻。
女形と切っては切れない陰間文化を、こういった形で書き上げた作品は初めてかもしれない…。
人間としてもだろうけど、魚之助は”男”としても”女”としても藤九郎に惚れてるんじゃないかな…。
もう情緒がグチャグチャだよ…。
でもまさか鬼と人間のおとこの無理心中を読まされることになるとは思ってもみなかったよね…。
投稿元:
レビューを見る
江戸・文政年間。元女形の田村魚之助(足を失い絶望の底にありながらも毒舌を吐く)と、鳥を愛する鳥屋の藤九郎(魚之助の足がわりとなり、彼を負ぶって移動する)のコンビとなって、中村座に現れた「鬼」正体を暴いていくお話。
それぞれの役者の業がぶつかり合って、役者として人間としての本性があぶりだされていく様子は、とても興奮するし面白い。最終的に「鬼」の正体が、本当に「鬼」であったことも良かったし。
魚之助の抱えてる苦悩が、また切ない。そんな自分をありのまま受け入れ認めてくれる藤九郎の存在に、彼はどれだけ救われたろう。闇を取り払う光のような藤九郎の優しさと、魚之助の関係性が、とても美しいと思った。
全体的に耽美な感じの物語。面白かった。好き。
投稿元:
レビューを見る
江戸言葉で進む物語が小気味よく、読んでいる最中は頭の中の独り言が江戸言葉になりました。
また、それぞれの役者がみせる執念や、昔の日本らしい奥ゆかしいところも良かったのですが、何より魚之助の何とも言えない色っぽさがすごかったです。
投稿元:
レビューを見る
ちょいちょいと読みにくかったり分かりにくい部分はあったけど、全体としては面白かった。
人の中の鬼を暴く方向になっていくので「あれ、鬼は?」と思ったけど、ちゃんと正体もわかってよかった。魚之助が切なかったなぁ。
足がなくなり、役者でもいられず、女でも男でもいられないなんて。
シリーズ化してほしいな
投稿元:
レビューを見る
その所業、人か鬼か―時は文政、所は江戸。当代一の人気を誇る中村座の座元から、鬼探しの依頼を受け、心優しい鳥屋の藤九郎は、かつて一世を風靡した稀代の女形・魚之助とともに真相解明に乗り出す。(e-honより)
投稿元:
レビューを見る
お江戸の芝居小屋を舞台にした鬼探しミステリー。
容疑者六名はいずれも役者だけにクセ者揃い。六名の内、鬼が成り代わっているのは一名だけのはずなのに、どいつもこいつも怪しくて特定するのも大変。そんな人間たちに紛れて鬼もそう簡単には尻尾を出さない。
みな芸のためなら何でもごさいの役者たち。見た目は華やかだけれど心の内はどす黒く、嫉妬に荒れ狂い周囲を簡単に踏み台にして、我こそはとのし上がろうとする執念は底知れぬ。
化けの皮を剥がした人間たちの強欲な本性を知ったなら、鬼なんて簡単に退散するのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
楽しく読みましたが、後半は新人さんらしく、ミステリー時代小説を無難に終える展開になり、前半のイキイキとした文章が若干減退した様に感じました。それにしてもユーモアとオリジナリティ溢れる意欲作で、今後に大いに期待したくなる作品でした。
投稿元:
レビューを見る
図書館より。
ようやく読了。私には読みにくかった。
鬼探しから始まる、役者みんな化け物?なお話。
最後はラブ?かな。
続編に続く、のかなぁ。
投稿元:
レビューを見る
個人的に読み慣れていないため、初まりは少し取っ付きにくい感じがあったが、芝居小屋での本読みの最中に起きた事件から一気に入り込んでいった。そこから江戸の雰囲気や芝居の熱量や登場人物たちの口調もぐっと親しみ深く感じてきて、空気感や人物像が鮮明になっていった。後はもう最後までハマりこんでしまい、人の欲望や本性を突きつけられつつ存分に楽しめた。言い当ててはいるが追い込み方がなかなかに辛辣な場面もあるので、目を背けたくなるようなことも結構ある。それでも、ひとつのことを追求するが故の容赦の無さや葛藤を存分に味わった。
もし、まだ読んでおらず何も前情報なしで読みたい方はここでそっと閉じてください。
文政時代、江戸随一の芝居小屋である中村座にて、『曽根崎心中』を改変した『堂島連理柵』出演演者6人の本読み最中に黒い塊が転がり落ちる。その瞬間に室内の蝋燭が全て消え、暗闇の中で異様な音だけが響く。すぐに明かりを灯してみると6人とも揃っている。だが、畳には肉片のようなものと生臭い臭いが漂う。暗くなる瞬間に見えたのは人の頭に間違いはない。鬼が人を喰ってその者に成り代わったのではないか?中村座座元は鳥屋の藤九郎と元女形の魚之助に鬼探しを依頼する。
藤九郎と魚之助は鬼探し(犯人探し)のため各役者に不審なところがないか探っていくのだが、それぞれの本性があらわになる欲望うず巻く芸の世界の描写が何とも心穏やかでいられない。芸のためなら何をも厭わない。人の表と裏をたっぷり味わされる。物語の後半では魚之助のある事件の描写が挟み込まれ、過去が明らかになることでより一層この各役者たちの葛藤が強調される。人と鬼の違いは何かと問いながら描かれていることで鬼を常に意識されられ、まさに人でなしは誰だと一緒に考えさせられる。
犯人探しと合わせて、藤九郎と魚之助ふたりの関係性の変化に心奪われる。藤九郎は芝居をあまり知らないため、役者の心情や生き様にあまり理解がない。魚之助は一世を風靡した元女形のため、何をするにも今も常に芸のことから離れられない。このふたりの極上上吉のつながりは、人の良いところに光を当てているかのようだ。次の作品も楽しみになった。
投稿元:
レビューを見る
時は文政、所は江戸。『堂島連理柵』という新作台本の前読みを役者六人で車座でおこなった際、輪の真ん中に誰かの頭がごろりと転げ落ちてきたという。しかし役者の数は変わらず、鬼が誰かを食い殺して成り代わっているのは間違いない。そこで呼ばれたのが、かつて稀代の女形として人気を誇った元役者の魚之助。両足を失っている魚之助は、足替わりとなっている鳥屋の藤九郎と二人で鬼探しを始める。
でも単なる”鬼探し”ではなかった。歌舞伎を演じる役者たちが抱えているどろどろとした闇が執拗に描かれていた。役者魂以上の歌舞伎という芸事の世界で生きる人々の業。役者たちは芸の道をきわめるために鎬を削る。血のにじむような努力や才能への渇望や葛藤が渦巻く。一方で芸のためには人を人とも思わず利用し尽くし、嫉妬心も並大抵ではない。江戸の役者と大坂から来た役者との間に生じる対抗意識も凄まじい。彼らは一種の化け物だろう。「バケモノに鬼の居所を訪ねたってしようがないだろう」と思いながらも、若かったら羨ましかったかもしれないなぁ。心も体も女形として生きて来ずにはおられなかった魚之助の人生と、鳥を慈しむ藤九郎との関係性はどう考えたらいいのだろうか? めるの嫉妬も分かる。
本作は「小説 野性時代 新人賞」を受賞している。魚之助のモデルとなった三代目澤村田之助さんは初めて知った。
投稿元:
レビューを見る
わたしには、とても読みづらく合わない作品でした。
誰のセリフなのか、これが誰なのか、訳が分からなくなりながら、残り1/3くらいで、読むのをやめるか迷った挙句、読み飛ばしながらなんとか結末を拾い読みしました。
ミステリーとしての面白さは、いまいちに感じました。最後の最後に、鬼が誰かがわかってからのストーリーにインパクトが思ったよりもなく、さらっと終わりました。
鬼探しが始まって、鬼以外の人々の心の中の鬼を暴き出している流れを楽しめる方は、面白く感じられると思います。
江戸時代の歌舞伎役者の世界という設定はめずらしく、知らないことばかりだったので面白かったとは思います。
映像化されたらもう少しわかりやすいのかなあ、とか考えながら読んでしまいました。
投稿元:
レビューを見る
江戸時代(文政)。当代一の女形として活躍していたが、贔屓客に切られた怪我が元で足を失い、舞台から退いた田村魚之助(トトノスケ)。鳥を売ったことが縁で、彼の足がわりにされた鳥屋、藤九郎(フジクロウ)。二人は芝居小屋の座元の依頼で、鬼の正体暴きに乗り出す。
鬼は比喩かと思ったら、まんまその通りの鬼だった。鬼の存在が自然に受けいれられているのが奇妙な感じがするくらい、普通?の芸事の話にも見える。芝居に憑かれた者たちの妄執うずまく世界を垣間見せ、なんとも手触りの悪い話だった。誰も彼もが薄気味悪さを感じさせるなか、視点人物の藤九郎のまともな鈍さが、かえって不穏。
投稿元:
レビューを見る
鬼はいないんだろうなぁと思って読み進めていたので結末に驚いた
最初は魚之助を役者に戻したい座元が一芝居打っているのかと思っていたが、私の勘違いで笑ってしまった
芝居好きの鬼が芝居を教えていた人間の哀しむ顔が見たくなくて殺してしまう
化け物心中、タイトルが光り輝く最終章で泣いてしまった
なぜ喰ってしまったのかわからず困惑しつつも芝居を続ける鬼
人を喰うことに関しては鬼畜の所業かもしれない
けれども、その結末にたどり着くまでに他の役者の性根を知ってしまっているからどちらが鬼なのかと問われると回答に困ってしまうなと
うまいなぁ
面白かった
江戸時代が好きだというのもあるが、タイトルの意味が判明するところでグッときた
化け物なりの心中が切ない
あまりにも可愛いと食べてしまいたいという言葉があるけど、鬼の愛はそれを実行に移してしまうことなのかな
何より藤九郎の人柄が好きなのでまたどこかで魚之助と活躍?wするところを読みたい
時間をおいて再読する