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昭和の時代が舞台なのと閉鎖的な村のドロドロ感が、昔本当にこんな事件が起きたんじゃないかと思えるくらい面白かった。
最後の方は展開が同時進行でひっ迫していき、先が気になって一気に読んでしまった。
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豪雨による土砂災害で孤立した鵜頭川村。
男尊女卑で、一族間の格差甚だしい閉鎖的な村落が、日に日に不穏な気配で満たされていく。中心には、日頃虐げられてきた者たち。父親に、矢萩姓の粗暴な男たちに小突かれ詰られ虐げたれてきた若者たち。彼らの不満は、安保闘争さながらの勢いである夜爆発する。
岩森はどうして標的にされてしまったのだろうか。
限りなく余所者で、無害で、幼い娘を連れた岩森が狩られる対象になってしまったのが解せなかった。扇動者の外への憧れが、彼を標的に加えてしまったのだろうか。パニックホラー的に、幼い娘を連れて逃げるというのは恐怖を煽るのに有効だと思うが、それだけのように感じた。また、恐怖を煽る要素として使うのであれば、愛子を連れて逃げる描写がもう少し細かく、そして多く頁を割かれるべきであるように感じた。
村の様子を丁寧に描く前半。
ゆっくりと村に狂気や不穏な気配を満たしていくという意味で、じっくり描くという配慮は有りだった。それによって、後半の狂気に火がついた時との差が著しく感じられる。
村には、矢萩姓と降谷姓が大半を占める。
親戚関係も入り組んでいるので、人物の区別に一苦労。閉鎖的な村落を描く作品なら、村の地図を付けたり登場人物一覧を冒頭に載せたり、群像劇的に一人一人を深彫ってもよかった。一生懸命読んだつもりだが、登場人物全員を把握しきれなかった。一人一人が抱える鬱屈した思いなども拾いきれなかった。この作品をパニックホラーとして読むかどうかでまた読み方が変わるかもしれない。
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丁寧な描写に前半進まないなぁと感じつつも、次第に不穏になっていく様子と後半の爆発力から一気読み。違和感も伏線として回収され、ミステリとしても楽しめた一冊。
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怖かった。
娘を守らなければという必死の親心。
村に染み着いた陰湿な空気。
ゆるやかに異変が始まり、急速に事態が悪化していく様子は、こちらの心もかき乱していった。
人がおかしくなっていく描写がうますぎる。
決して明るい物語ではないし、神経もすり減るのに続きをどんどん読みたくなる。
櫛木ワールドの魅力である。
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村の閉鎖性に異物が入る事でかき乱されて行く現実。重苦しい描写ではあるが、どことなく少し離れた感じがする。
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亡き妻の墓参りのため、妻の故郷の鵜頭川村にやってきた岩森とその娘。鵜頭川村は昔ながらの慣習を残す田舎の村。男尊女卑など当たり前。村の権力は矢萩吉朗を代表とする矢萩家に握られている。余所者はいじめられる、と言った村だった。そこで急な豪雨にみまわれ村は孤立する。そこに若者の死体が発見された。殺したのは矢萩家の乱暴者大助か?そして若者を中心に自警団が結成される。リーダーは皆の憧れだった矢萩工業で働く降谷辰樹。岩森親子はそんな暴動と狂乱に陥った村でどうするのか?櫛木さんらしい血と恐怖の戦慄のパニックサスペンス。
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ど田舎の村を襲った集中豪雨と、その最中に起きた内乱の話。
最後らへんはほとんどバトル物だった。辰樹と敦人の関係が捩れまくってて良すぎた。
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キャラ重視のホラー小説「ホーンテッド・キャンパス」があまり合わなかったが、筆致から作者は相当本を読んでいて実力があるのではないかと感じ、諦めずに本書にも手を伸ばしてみた。
結果、大正解。この作品に出会えて良かった。やはり櫛木さんはすごい。
山奥の寒村で起こる豪雨による土砂崩れ災害、それに伴う停電や断水、殺人事件、対立する村人達。
僻地の村人の描写がすごい。
それぞれの住民が屋号を持っているというのがリアリティがあって良かった。自身も田舎育ちのため、村に一軒の魚屋の娘は「魚屋のひろみちゃん」と呼ばれるし、
和菓子屋があれば「饅頭屋の茂くん」などというように〇〇の誰それと読んでいたことを思い出した。
その中には本書に出てくるように「後妻さんの⚫️さん」や「40過ぎても跡取り息子の⚫️⚫️」などと
陰口のようなものもあったのも事実。これが田舎の生活にリアリティを与え、村という閉鎖的な社会の厭さを引き立てていると感じた。
一旦引く描写がすごい。
各章の文頭には「鵜頭川村事件」の新聞記事やウィキ記事からの引用という形で、事件を第三者に説明するような文章が配置されている。
どんなに主人公達がいる村で人々が苦しんで、状況が煮詰まっていようと、新聞の記事からは温度は感じられない。
ただ、死傷者が何人で重軽傷者、行方不明者が何人という機械的なアナウンスがあるのみである。
その温度差が、今まさに村内にいる主人公に感情移入している読者からすると、背筋が寒くなるようなゾッとする感覚を覚える。
あらためて、当事者しかこの恐怖や惨たらしさはわからないんだと思い起こされる。
テーマがすごい。
最初は「悪い子にはエイキチが来るよ…」というその地方の民話の記述があったので、妖怪か心霊モノかと期待して読んだ。
しかし、蓋を開けてみるとそんなものよりもやはり生きている人間の方がよほど残酷だった。
本書には⚫️を食いちぎったり、斧で叩き割ったりという恐ろしい描写もたくさんあったが、それより何よりも「見てみぬふり」を
する人間達の浅ましさが恐ろしや。
有名な「浅間山荘事件」より手前に同士殺害という悲劇が起こった「山岳ベース事件」を元にしているように感じたが、
本当にこれは恐ろしい事件だった。
本書を読むことで、どうしてこんなに恐ろしい事件が起こることになったのか……新聞や資料では読み解けなかった犯罪へのプロセスが
明らかになっていくというのがものすごく興味深く読んだ。
やや残念な点としては、犯人の動機が少しやっつけ感が否めなかった。
また、今回はホラーに見せかけたサスペンスだったので次回はぜひホラーを読みたい。
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村がどんどん狂気的になっていくパニック系で面白かった。この方は人間の心に生まれた闇が少しづつ育っていく様を表現するのがすごく上手い。森で隠れながら逃げている時には私も登場人物たちの最後尾にいる気持ちでドキドキした。
途中まですごく面白かったので終わりだけもう少し丁寧だともっと良かったなー。少し物足りない感じがした。
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構成は良いが犯罪を犯した動機、理由には疑問符。罪の理由と被害及び罪の規模が釣り合って居ない。
8割読み進めてこの本評価低くないか?賞取ってないのか?と思っていたが何となく納得した作品。尻切れトンボ感。
しかし作者の読ませる技術はある。他の作品も読んでみたいと思わせた不思議な本であった。
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昭和50年代の閉ざされた村のお話。
閉ざされた村が、更に水害によって物理的にも閉ざされ、普段不遇にされている者たちが、報復に出る。 人間の怖さ、群れになると残忍さ、自己が無くなる心理描写がよく書かれている。
また、学生運動の一片も出てきて、どんなものかよく知らなかったけれど、雰囲気が伝わってきた。
熱に浮かされ、半ばカルト的な雰囲気だった。