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男にしか通常の人権が認められていない社会に、
様々な要望を満たすべく
性の道具として生み出されたデザイナーベビー(♀)の物語。
誰かの《愛人》となって、
それなりに愉快に暮らせると高をくくっていた彼女ら
「カスタムメイド・ガール」たちが、
男は女に愛情を持たず、ただ消費するだけという現実を知って絶望し、
結託し、反乱を起こす。
原著は古く、1976年刊行、但し、
本国イギリスでの出版は叶わず、
フランス語版とポルトガル語版が先に出たという。
その後、紆余曲折を経て刊行された日本語版の文庫化。
抑圧された女性が解放されるというプロットの小説が
現代においてクローズアップされる意義は
よくわかるのだが、
期待したほど高尚でも下劣でもなかったので拍子抜け。
これが過激な内容だろうかと首を傾げた。
設定は異様だけれども、
恐らく――その方面には全然詳しくないのだが――
日本の官能小説や成人向けコミックの方が
遙かに頭がおかしくて(←コラ!)フェティッシュで、
ひねくれているのではなかろうかと思うし、
状況の異様さが生々しく描かれている点では
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』こそ、
余程、読んでいて気分が悪くなる、といったところ。
https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4151200118
登場人物の誰にも感情移入できなかったので、
ドキドキワクワク感も得られなかった。
訳文が小説として“こなれていない”印象を受けるせいか。
ただ、作者の妻ジュディ・ワトスンのイラストは
ヘタウマでカワイイので☆3つ。
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人類(human)=男(man)である価値観の下、女は男の所有物である「モノ」としてしか生きることを許されない未来。とあるコンクリートの島において、顧客たる男の欲望に基づき遺伝子改変と肉体改造を経て「製造」されるカスタムメイド・ガールたちの体験を描く物語。常人の二倍以上の大きな青い目を持つ素直なジェイド、六つの乳房に加えて顎にも乳房を持つ優しいハナ、獣の毛皮と獣性を併せ持つ勝気なマリ、金持ちの煙草入れとして乳房を引き出しに改造された高慢なキャシィ・・・彼女たちが「出荷」された後の過酷な顛末とは?
一言でいえば、残酷な「大人の寓話」、ということになるのでしょう。
SFとしての科学的な説得力よりも、SFというフォーマットをベースにした問題提起を目的とした作品だと、鴨は受け取りました。
徹底的な男性優位社会を描いた作品でありつつ、イアン・ワトスンが表現したかったのはそこではないのだろうな、と思います。
SF作品としてのツッコミどころは満載です。ラストシーン、ジェイドが自らの立ち位置を理解してとった行動は、ストーリーとしての説得力がイマイチで、結末がはっきりとわかりやすい作品がお望みの向きにはお勧めできない作品だと思います。
でも、このストーリー展開には、一人のオンナSF者として、いろいろと思うところはあります。この作品に対する感想として、「高尚さも下劣さもイマイチ」とか「萌えが足りない」とか無邪気に評する日本語サイトが散見されることに、鴨は深い絶望を感じます。これまで数多くのSFを読んできた自負がありますが、「超えられない壁」を改めて如実に感じましたね・・・。
そんなこんなで、SFという文学ジャンルは本当に様々な気づきを与えてくれる文学ジャンルなので、これからも読み続けていきたいと思います。
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SF。ディストピア。
著者の作品は『エンベディング』『スローバード』に続いて3作目だが、今作が1番好き。
近未来を描いたディストピア小説だと思うが、自分には架空の物語とは思えなかった。
今作における女性の立場を、労働者・子供・ペット・養殖されている生物などに置き換えたら、現実に同じようなことをしていませんか?
第四部の結末が、微かな希望があるように思えて良い。
うっすらとカバーの裏の文字が見える本のデザインは、素晴らしい。さすが竹書房さん。
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2023-06-06 再読
とてつもない物語ではある。しかしながらその想像力はあくまでプレイメイト的な健全?な性指向の延長線上にあるように思える。いや、そんなことはないんだけど。
何より恐ろしいのは、そういった社会の仕組みよりも、その仕組みが自己保存を目的として歪んで行った様にあるように思える。奴隷制度は全てを奴隷と化す。その方が恐ろしい。