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小さな娘が破傷風になる。「もしかしたら・・・」と思いながらも、違う診断にほっとしながら、最終的には手遅れに近い状態で入院。そして主人公も感染? 全体的に暗い文体で、主人公の子供に対する距離感とか、妻が壊れていく感じとか怖い。
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許さんの授業課題作品。じっくり味わうほど名作なんだなあ、と納得。破傷風の恐ろしさ、家族の不安定な感じ。緊張感。不快な生活匂いが充満した文体。色んな意味で生臭い。詩人ならではの独特な言葉選びも凄い。
病に冒されて舌を噛み、血だらけになりながら痛いよう痛いよう…と泣き叫ぶ娘。
看病疲れで狂ってしまう妻。
「あなたは私の夫ですね、そうですね」と電話口で呟く。触れたくない見たくない人間の怖さが全面に出てきちゃってるかんじ。怖い。ほんと怖い。
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破傷風の恐怖!
子供が破傷風にもしかかってしまったら、この夫婦のように頑張れるか自信がない。子どもvs病魔、夫婦間のいさかい、子どもは助かっててほしいが、自分も感染してしまうのではないかという、抑えがたいジレンマ・・・等々、リアルな人間の本質が描き出されています。映画にもなった感動的ドラマです。外遊びから帰ったら、必ず手洗いは習慣付けましょう。
ただ、現在でも入手できるか、わかりませんので、あしからず。
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映画が強烈で、「エクソシスト」並のホラーという印象だったので、大人になってから三木卓原作と知って驚いた。
読んでみると、精神的に追い詰められていく夫婦を描くという点ではサイコサスペンスとは言えるかもしれないが、ホラーではもちろんない。
娘の異常の原因が、病院に行っても分からず、躾の行きすぎでおかしくなったんじゃないか、とか若い夫婦が疑心暗鬼に陥る。
やっと破傷風とわかって入院するが、治療が遅れたため激烈な発作が襲う。
当然娘の「死」を考える。
疲労と心労が重なり、妻は精神的なバランスを崩す。
実体験に基づいてはいるものの筆致は感情に溺れず、さすが小説家、親であっても業が深いな、と思った。
いい小説だけど、家族を描き、映画がホラー扱いだったことを考えると、三木さんの奥さん、娘さんは辛かったのではないかな、と考えてしまうのは余計なお世話か。
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幼い娘が破傷風にかかった。
昼夜問わず起きる発作の恐怖。感染したのではと募る不安。たった数日の出来事なのに、両親は疲労困ぱいで今にも発狂しそうだ。
読み終わっても、その気持ちに引きずられて腹にずっしりと重みを残した。
自分は、夫とここまで支え合えるだろうか。
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感染症の仕事をしている人でなければ破傷風の怖さはわからないだろうし、若い人は名前さえ聞いたことがないだろう
著者の実の娘さんの実体験のストーリー。
最初は何だかわからず様子を見ている状態に置かれていた娘はかわいそうだ 子供が小さかった時の様子がいつもと違う感じは親にとって不安で混乱してしまうのが思い出された
痙攣の描写がリアルで辛く、これ程の辛い状態の娘を何も出来ずに近くで見守るしかない両親が、精神的におかしくなってしまうのは普通のことかもしれない
治ってよかった
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一人娘にある日突然現れた異変。悪魔に憑かれたかの如く激しい発作に暴れ苦しむ娘の病はやがて破傷風と判明し、入院し本格的な治療が開始されるも、付ききりで必死の看護に当たる両親の精神は次第に蝕まれていきます。
作家の実体験を元にしたというこの小説は、娘の病状がリアルで本当にしんどそうで心が痛んだのはもちろんですが、それ以上に両親がそれぞれにじわじわ追い詰められていく描写に胸を締め付けられると同時に、あまりの凄まじさに恐怖を覚えました。
物語の語り手でもある父親も、冒頭で「お父さんがあまり娘を叱るからストレスで体調が悪化するのだ」と言いがかりをつけられるほどには神経質で繊細で、自分自身の幼児体験や感染への不安でピリピリし、看病にやつれて病んでいるのですが、ふと気づくと実は母親が、誰よりも娘への自責の念に苛まれながら、娘の凄惨な発作への恐怖のあまり、今で言うPTSD的症状に陥り、しばらく病室に足を踏み入れることができなくなるという展開は夢に出てきてうなされそうです。40年程前にホラー風味の演出で映画化されたのもさもありなん、と納得。これでラストに救いがなかったらトラウマに留めを刺されていたと思います。ああ、あのラストで良かった……。
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映画化されたものを小学生の時にTV初放映か何かで観た記憶だけでずっと鮮明だった口から流れる血の泡がトラウマで、破傷風という病気の恐ろしさをずっと引きずりいつか自分も外でけがをした時に発病するんじゃってドキドキしたのを覚えている。
急にその記憶から原作が読みたいって思うようになり、急遽借りて読んだ。
物語も素晴らしいが、住まいの表現、感情の描写、父として、夫としての描写などが巧みで天才作家だったんだなって感心した。
破傷風にかかった娘の看病地獄、そして自分も感染したのではないかと、しかも医師が正直に答えてくれないという疑心暗鬼が見事に盛り立てられており、最後の大部屋の子供たちが全員寝ましたと電話のセリフまで緊張感が半端なかった。短い話だけど読みごたえは十分で、あとがきを読んで実は作者の実話だったと知り二度びっくりした。
そして我慢できずAmazonプライムで無料視聴できるという事もあり、映画版まで観た。
小学生の時の記憶は薄ぼんやりだったけど、子供が扉を開けて入ってくるシーンや、お父さんがうたた寝したときに開くカーテン、そして発作時の口からの血泡は当時そのままの映像でまったく色あせることなく覚えていた自分にもびっくりだった。
余談だが、この映画、今作ったらもう幼女を裸に剥き大のおっさんが触りまくっているという異様なシーンで問題視されていただろうなぁ
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映画は割と怖いらしいけど見たことがない。得体の知れないものに侵され娘が得体の知れないものになっていく恐怖、診断と治療、破傷風との戦いと家族をめぐる環境、冷静であろうとして感情のこもった雰囲気がうまく書かれている。万が一、何かの実体験を書くことになったらこういう文章を書きたいと思う。子供ができてから、破傷風そのものの症状より看病する親の心情と疲労の方がリアルで感情移入しそうだった。
p82 うすぐらい室内のなかで昌子の顔は闇の黴に蝕まれているように見え、それは僅かずつではあるが昌子がわたしたち夫婦の支配する圏から脱しつつある兆のように思われた。(そして、これからどういうことが起るのだろう?)