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【1回目】九州のある町に住む男女と近親者たちを中心にした、心温まる物語。自分と、他の誰かを大切にするとはどういうことなのかについて、考えてみたくなる。主人公は32歳の翼。巻頭の表題作の中で、翼は10歳近く離れているレモンと出会う。取り立てて奇抜な設定やドラマチックな展開があるわけでも、皆が皆、とてつもなく「やさしい」というわけでもない。しかしこの、心がほぐれていくような読後感は何に由来するものだろうか。
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「こうあらねばならない」という自分の中の勝手なルールを作っていること、あるなあと思いつつ読みました。主人公が、できる限り、丁寧に生きていこうとするのが、いいなあ。田舎に生きている身としては、人の噂話にふりまわされ、古い価値観、男女観など、役割をまるで道化のように演じている一瞬があるなあ。だからといって、新しい環境に身をおいても、それなりにいろいろ悩みはつきないだろうけれど。主人公の周りの人に少しずつ変化があり、生きているのがいいなと思った。
「生きていくのは大事業だよ。その事業が継続できるなら、どんな編成だっていいんよ。」
「今いるこの場所をどうやったらもっと楽しくするかってことを考えたいのよね。」「『もともとやりたかったこと』じゃなくても仕事はできると思うし、それがしっかりできてたら『やりたかったことをやってる人』に引け目を感じる必要なないと覆うよ。」
「自分でいろいろ考えて、結論を出して、そのことに折り合いをつけてかなきゃならない。ちゃんと別れを告げることが、去っていく人間の最低限の礼儀だと思います。」
「俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。いちいち悩んだり、まごついたりしながら。」
読後、元気になりました。とりあえず、またできることをしよう。
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全然読んだことないものを、と思い選んだ。
こういうときに、夏の文庫フェスがありがたい。
タイトルから、あまり好みじゃ無いよな、と思って読み始めた。
ところが、出てくる人たちが面白いので、予想外に楽しく読めた。
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主人公の男性が、今の自分の境遇から逃げ出すこともなく、深刻になりすぎることもなく、生まれ育った田舎町で、家族やご近所さん、友人、職場の同僚との毎日を卒無く消化している。新しい人との出会いもあるが、それでもなお現状維持で過ごすのか、一歩踏み込んだ人間関係を築いていくのか。短編それぞれにおいて、主人公の周囲の人々が結婚、離婚、再婚、それらを決意する時の心の揺れや不安、希望がよく描かれていた。
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好み。
初読み作家、会話「」で閉じた後にセリフの続きを綴るのは作風かな?
物語の舞台は、九州の数年前まで村だった集落。閉鎖的な窮屈さがベースとなった7話連作短編集。
狭いコミュニティの中では、人の噂話が娯楽で、古い価値観、男女観が拭えない。私だったらとても耐えられない、と思いながら読んでいた。
でも、地域から脱して新しい環境に身をおく人も、あえて留まり少しずつ反抗を試みる人も、今さら変われない人も、みんな否定していない話に共感するようになった。
男らしい、女のくせに、大人として… 都会でも心の奥にあるでしょ。
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女らしく、男らしく、長男らしく、、、こうあらねばならないという鎖に囚われて生きる人々の連作短編集。
人々が影響し合って価値観が更新され、変わっていく姿が読んでいて清々しく感じられた。
一方で自分の『ねばならない』に固められて動けない人の気持ちもよく分かる。自分の価値観が変わってしまったことに気づいても、自分の行動を変えるのにはとても覚悟が要ると思う。読後は変えられない自分に気づいて、すこし悲しくもなった。
なんとなく買ったけど、心に響くものがある話だった。
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寺地はるなさんの小説は、『大人は泣かないと思っていた』が初めてですが、私好みの文章で、心地良かったです。ファンになりました。
短編の連作です。どの物語も素敵ですが、『小柳さんと小柳さん』のレモンちゃんと義理パパの会話がとても心に沁みました。
「家族って、僕は、会社みたいなもんだと思う。
会社って、ひとつの目的のために、いろいろな人が集まるでしょ。みんなでそのひとつの目的を達成するために、力をあわせるでしょ」
「血が繋がってたって、他人だよ。・・・面接や試験で集まった人間の集合体と、たいして変わんないよ。虫がすかないやつもいっぱいいるけど、協力しなきゃいけない。仕事だからさ」
「家族という組織の目的ってなんなの。わかんない」
「目的は、そりゃ、『生きていく』ことだよ」
「お父さんじゃなくてもいいよ。娘じゃなくてもいいよ。だけど僕らは同じ思いを抱く社員同士なんだから、助け合っていこうよ」
深い深い会話が続く。『生きていく』ことの説明も義理パパは上手なので、本作で是非読んでください。感動します。
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主人公時田翼とその周囲の人たちとの短編集。
読んでいると、自分と違う価値観の話にはイラッとしたり、同じ価値観の人には、そうそうそう!と思ったり。それがこの本の面白さだと思う。色んな価値観があるものだ。メモしたい言葉もたくさんあった。
私は中でも「小柳さんと小柳さん」の話が好き。
小柳レモンさんのお友達の、小柳さんのような雰囲気の人になれたらなぁ。
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古い価値観から抜け出せない葛藤や、2人の時は近代的価値観を持っていても実家にいるとつい迎合してしまう、しかしそれがパートナーのその人らしさを損なわせてしまうかもしれないという罠はすごく身近に感じた。それを打破するストーリーが爽快だった
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普通、生きてる中で自分の価値観しか感じられないけど、この小説は一人を軸に色々な登場人物の価値観が描かれていて、みんなで生きてるんだなーって感じた。どの章もすごく感情移入しやすくて考えさせられた。翼はこれから少しずつ人に頼って生きられますように。
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タイトルに惹かれて買ってみましたけど、想像と違う中身だったかな。
今ではなくなりつつあるような、田舎での考え方ではないかな。
どの話も最後はとても切なくなるお話である。。。
最後のお話で、自分にはこんなに思ってくれる人がいるのだろうかと考えさせられた。
また、誰かを自分が本当に大切な人だと思えていない現実に寂しくなりました。。。
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「あるべき姿」に悩む事が多くあるけれど、そう言ったことに向き合う人たちの話
相手の話を聞いた後に、よく頑張ったねとか安易に慰め無いほうが相手を労ることにもなると気づいた。
あと、自分のした選択は自分の経験や思いのもとに下されるものであって、強いられてするものでは無い。もっと自分の意見を持っていいんだなと思った。
自分はあまり小説を読まないからかもしれないが、登場人物の中から、考えや心情の変化について自分の考えや人生の送り方がまだまだ未熟だと気付かされる事が多い。
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九州の田舎町に住む、生真面目な男と呑んだくれの父、出て行った母、親友、職場仲間、ご近所さんなど、日常の中で関わる人々たちの独白によって綴られた7つの連作短編集。
ブクログアプリの話題文庫ランキングで、本作品の表題名が目にとまり、そのまま手に取った。
『大人は泣かないと思っていた』
なるほど。言われてみれば確かになと。
各章ごとに主人公が変わり、年代も幅広く性別も違うそれぞれの生き様が語られていく。
兎角、主人公である翼という青年の発する人情味が心地よい。
総じて、何か大きなドラマがある作品ではない。
ただただ、各登場人物たちの思い想いが徒然に描かれている。地味とまでは言わないが、派手さは一切ない。
何よりそれが、この作品の見どころだ。
各登場人物の中に、少しずつ自分がいた。
幼き頃からおじさんとなった私自身の、あらゆる感情のパーツが点在していて、独白ごとに胸に沁みる言葉があった。
私も思っていた。大人は泣かないと。
子どもの頃の私は大人然り、男は泣いてはいけないのだと思い込んで育った。
そして時は経て、おじさんになった今の私はどうだ。
ことあるごとに泣く虫のようになった。
そうだ。大人だって泣くのだ。
何かおかしいだろうか。大人だって泣くのだよ。
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大人は泣かないと思ってた…きっと自分で勝手に決めつけて思い込んでいることはたくさんあると思う。
読み終わって心がほっこりしたし、自分の考えを改めようとも思った。いい本に出会えた。
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どれも読んだ後に暖かくなる話で、特に鉄腕のお父さんの話に惹かれました。最近の価値観とか考え方に戸惑う大人は多いんだろうなって、読んだあともっと人に優しくしたいなって思える本でした。