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帯に書かれていた「音痴」設定が、かなり後半にならないと出てこなかったので少し驚いた。
いつ出てくるんだよ、本当に音痴なのかよと心配になるほど。
瑛子が今後の身の振りようを考える上で必要な設定だったが、帯でわざわざ触れる必要はなかった気はする。
タイトルに「鬼」とあるし、困りごとを抱えて駆け込んでくる人たちは「鬼が出た」などと正体不明のことを鬼の仕業にしてはいるが、あやかし要素はなし。
不思議な出来事や事件も、実際は現実的な解答が用意されているライトミステリである。
ファンタジー要素がないわけではないが、少なくとも謎解き部分には一切関わってこない。
呉服屋の娘で、美しい着物を考えているだけで白米をいくらでも食えちゃう瑛子が、その知識と愛を駆使して謎を解いていく。
花街に身を置きながら芸妓にならずとも生きていける道を瑛子が見出せたのは驚いたし、その道を応援したいと思えた。
まあ、そもそも芸妓になられると困るお人もいたようだし。
その困るお人、女物の着物を羽織る冬真は謎解きの際の相棒であり、彼もまた瑛子によって救われる対象だ。
彼が抱えていた件については、結局悲しい結末を迎えることになるが、その場に瑛子がいたことは、本人も言ったように救いになったと思う。
途中から明らかに自分のお悩みどころではなくなっていたし。
お前は瑛子のお父さんかと言わんばかりの過保護ぶりだったし。
無論、理由はあった訳だが。
その理由が明らかに(?)なるラストはニヤニヤものである。
悲しい真実を受け止めた直後ではあるが、明るいラストでよかった。
これで冬真も自分自身について考えることもできるだろう。
とどのつまり、素直になる余裕も出るはずだ。
多分。