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p83 認諾 民事訴訟において、被告が訴訟内容についていっさい答弁せず、原告側の請求をそのまま認めて裁判を終わらせる手続きをいう。認諾をすれば、審理は行われない 普通の民事訴訟では認諾はめったにない。国賠訴訟となればなおさらである
p336 クロロキンを腎炎の治療薬として認めた国は日本以外になかった
p487 後に彼はその体験をもとに、「弁護士いらず」と言う本を出版した
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本の厚さにびっくりしたが、それ以上に裁判に関する事実の積み重ねが重い。
取り上げられた登場人物に対する見方も変わった。
事件当時の自分の記憶と違う情報が述べられていて、「そうだったのか⁉︎」と感じさせられる。
やはり、流される情報を何も考えずに受け止めるのは良くないと、改めて考えさせられた。
99.9というドラマのタイトルを思い出し、合点が入った内容だった。
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これを読むとこんな些細なことで犯罪者として
扱われてしまう恐怖を感じた。
東京地検特捜部は暴力団とか半グレとかの
壊滅に向けて対応すればいいのに、
存在意義はあるのでであろうか。
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数々の大事件の容疑者の弁護を引き受け無罪を勝ち取ってきた著名弁護士の回顧録。事件ファイル1としては最大のページを割いたロス疑惑のほか、村木厚子氏、鈴木宗男氏、小澤一郎氏の政治絡みの事件、その他薬害訴訟やベトナム反戦運動を背景としたマクリーン事件や東大裁判を取り扱う。
それぞれの事件につき事件概要を述べた上で著者の受任の経緯、相手側の主張する事件の筋書きがあればそれを取り上げた上でその訴訟にどういう戦い方をしたか、またその判決の結果、それによる社会的影響、その他受任した関連事件の紹介、事件の思い出などを振り返る。500ページ超のボリュームだが、章ごとに異なる問題意識があり、飽きさせない。
第1章の村木厚子氏、鈴木宗男氏、小澤一郎氏の事件においては地検特捜部が捜査・起訴することの構造的な問題点やその捜査方法の問題点が記される。具体的には特捜自身が捜査を始めるプレイヤーであり、かつ起訴・不起訴を決める決裁官であるので、警察がした捜査の正当性を判断して起訴・不起訴するのと異なり、特捜のした捜査やその捜査方法の正当性を中立的に判断することを特捜自身に期待するのは無理があると述べる。
その結果捜査体制を組んで一旦捜査を始めた以上、何が何でも有罪に持っていきたがってしまうというのである。特に取り調べ結果を纏めた調書を証拠の骨格とする場合、調書自体は検察が臨場感溢れる表現で書いた架空のストーリーでも、劣悪な環境の拘置所での長時間の拘束の下、容疑者にそれにサインをさせれば一見そのストーリーが成り立ってしまうのである。
また、本人の自白を取るための第三者の証言や調書でさえ、検察は自らのストーリーに合わせるため、犯罪事件から最も遠い事実を最も遠い関係者からそのストーリーがさもあったように捜査に入るため、捜査を受ける関係者は記憶が不確かな場合や自らにあまり関わって欲しくない場合、検察に都合の良い事実を認め易くなってしまうのである。
また、世間の耳目を集める事件の場合、容疑者取り調べの段階から得た情報のうち、検察側に有利な情報のみマスメディアにリークできるので、そういったマスメディアのバイアスがある中で検察は捜査で事件関係者に自己に有利な証言を取り易くなる側面もあると述べる。
第4章のロス疑惑においては検察ではなくメディアが創り始めたストーリーとの戦いとなるが、ストーリーの切り崩しの面では政治絡みの事件と同様である。しかし、ロス疑惑では一度日本で無罪が確定した事件と同じ容疑でアメリカで逮捕されるという一事不再理の問題も生じ、それに対して国家として抗議しない政府への問題意識も提起される。
第2章のマクリーン事件とは日本滞在中にベトナム反戦運動に参加した外国人に在留更新許可を与えなかったことが問題となった事件であるが、こちらでは裁判における法廷戦術の重要性が語られる。つまりこの裁判ではその事件において何が争点か。外国人の表現の自由か、単なる法務大臣の自由裁量の幅の問題か、法律上どちらの問題と設定するかで結論としてのマクリーン氏の扱いが大きく変わってしまうのである。他にも行政訴訟の訴え方に技術的な工夫をした事にも触れられている。
東大裁判では主に当時の社会背景や著者の思い出、現在とかなり異なる当時の裁判風景が描写される。
第3章の医療過誤訴訟においてはその専門性故の訴訟の難しさが語られる。つまり、事件となった医療行為が違法であるためには単にその医療行為と事件との繋がりが証明できれば良いわけではなく、その医療行為がその時の医療水準からみて通常より劣り、故意・過失があったといえるまで立証しなくてはならない。そして医者は皆医療過誤訴訟のリスクを潜在的に抱えているので被害者の証人として協力してくれる医者の証人を確保しづらいとの問題も指摘される。
今までは裁判は何となく公正な証拠に基づいてプロとしての裁判官に公正に裁かれていると漠然と思っていたが、現実動いているのは様々な思惑や得られる証拠の差や能力差を抱えた人同士である事を実感した。自分が犯罪を行っていても平然と無実を主張する者もいるので、逮捕・拘留した後もあまり自由にするのも良くないが、強引に捜査・起訴するのも免罪を生み、本当の犯人が野放しとなり裁判の意義が問われよう。逮捕・起訴などそれぞれの権限を異なる組織に分け、相互に抑制・均衡させたり、時には事後検証する仕組みを入れたりして、この国にとって何がベストな訴訟のあり方なのかを常に議論し、修正していかねばならないと感じた。
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実際に手掛けた訴訟だから説得力がある。話題になった裁判もあるが、その割に最終的な結果を知らないことが多いことに気づいた。とにかく裁判には時間がかかりすぎるのだろう。
改めて検察の横暴について具体的な事例に接して知ることとなった。権力を持つ側が、その力を行使するときの恐ろしさを感じる。表に出てこない事例がまだまだあるのではないだろうか。
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上巻だけで520頁と分厚いにもかかわらず、読み始めたら、頁を捲る手が止まらなくなる。それは、真実が何であるかを求めるからであろう。
ここで取り上げられる刑事事件は、どれもが検察の一方的な無理筋のストーリーで取り調べが行われ、検察のリークなどに乗っかって興味本位に報道するマスコミに対し、弁護団が現場で起きたファクトに基づいて、弁護する構図となっている。
この本を読むといかに我々が日頃、メディアの報道に翻弄されていることを痛感する。
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興味深い、読みにくいかと思ったが途中から引き込まれる。
カルチエ・ラタンの暴動が日本に飛び火し、学生闘争の炎となる
312〜
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筆者の弘中さんはベテラン弁護士。1945年10月生まれなので、現在76歳。大学卒業と同時に弁護士になられているので、弁護士業務を50年以上続けておられる方だ。弘中さんは、世間の注目を浴びた事件での弁護人を数多く務められている。本書で取り上げられているのは、村木厚子氏・小澤一郎氏・鈴木宗男氏・三浦和義氏のケースであり、2分冊の第2巻で取り上げられているのは、安倍英氏・野村沙知代氏・カルロスゴーン氏のケース等である。2分冊の第1巻にあたる本書は、500ページを超える大部の作品であるが、一気に読んだ。
筆者の著作としては、「無罪請負人」という本を読んだことがあり、このブログにも感想を書いている。「無罪請負人」で、筆者は、日本の刑事司法の国際的に見た場合の後進性について、強く訴えていた。本書でも、各事件で同趣旨のことを訴えられているが、本書は、基本的にそういった司法の後進性を訴える本ではなく、ご自身が担当された事件についての事実関係をレポートする本である。本書の中で、そのようにご本人も述べられており、だから、題名が「事件ファイル」なのだという説明もされている。
私は本書を抜群に面白いノンフィクションとして読んだ。村木氏・小澤氏・鈴木氏の事件、筆者はそれらを検察特捜部による「国策捜査」と呼んでいるが、それらの事件の弁護人として、事件の細部まで知り尽くした筆者が語る事件の真相と裁判の経緯・結果は手に汗握ると言っても大げさではない。ジョン・グリシャムやスコット・トゥローが描くリーガル・サスペンスも面白いが、本書はそういった面でも、それに匹敵する、あるいは、それ以上に面白い話が続く。
第2巻を読むのが楽しみだ。
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弁護士としての著者が携わってきた有名な事件について非常に赤裸々に書かれた本で面白かった。特に村木厚子さんの事件については、一般人が突如冤罪になったことが共感から非常に勉強になった。
ただ、後半になるにつれて政治事件など専門性が高くなり読止めてしまった。
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分厚い本だ。村木厚子さんの事件は確かに無実だと思うし、弁護士の主張にも共感できる。国策で対立する勢力を嵌める、みたいなことも実際あるとは思う。ただ、鈴木宗男も小沢一郎も、クリーンな立場の人とは思えない。私もマスコミの戦略に乗せられてるようだ。正義の味方のように喝采を浴びる検察官が、自分の思い通りに事件の筋書きを作ってしまう。これも、あり得る話と納得。裁判や弁護士、検事の仕事というものがよくわかり、そういう意味では興味深かった。中身が濃くて読み疲れて、途中で一時中断した。また、時期が来たら手にとってみたい。
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生涯弁護人
事件ファイル1
村木厚子 小澤一郎 鈴木宗男 三浦和義・・・・・・
著者:弘中惇一郞
発行:2121年11月30日
講談社
弘中惇一郞弁護士が日本の最強弁護士の一人であることは、法曹界に疎い僕でも知っている。これまで、重大事件で驚くような無罪判決を勝ち取ってきた。アメリカのように、お金をたくさん出せばこの人のような優秀な弁護士が雇えて無罪になれるのか、というイメージもあったが、どうやら違うようだ。本のカバーのそでに書かれたコピーにある「無罪請負人」というのも、中身を読んでみると違うように思える(つまりいいコピーではない)。何百人もの弁護士軍団を率いる弁護士法人というより、どちらかというと町弁っぽい純粋な弁護士(決してそうではないのだろうけど)の印象を持ってしまったほど。
500ページ以上もある分厚い本で、しかも、この本はファイル1であり、ファイル2も同時刊行されているという。守秘義務もあるし、過去の話を表層的に扱っている本だろうからつまらないのではないか、という思い込みは、読み出してすぐに吹っ飛んだ。非常に面白い本だった。構成ライター(昔ならゴーストライター)が入って書いているのでとても読みやすく、飽きることもない。
ただ、僕個人としては、薬害エイズの安部英が無罪になった許せない一審判決の担当弁護士がこの人だから、それについては絶対この本には誤魔化されないぞと思っていたけど、残念ながら薬害エイズ裁判についてはファイル2に書かれている。現在、図書館予約中。
ドラマや小説と違い、決定的な証拠を見つけてどんでん返しの無罪勝ち取り!などという事例は出てこない。この人の身上は現場を知ること。必ず現場に足を運んで細かなことも調べ上げていく。そして、小さな状況証拠を少しずつ積み上げて材料に。その意味では我々の人生や仕事のありようにおける大きな参考にもなる本だ。
第1章は国策捜査との闘いとして、厚労省の村木厚子事件、小澤一郎事件、鈴木宗男事件を紹介。個人的には村木さん以外の2人は好きではなかったので有罪かもと思っていたが、小澤氏は報道されているなかで段々と無罪に思えた。鈴木氏は有罪だろう(有罪になれ)と思っていた。結果はその通りになったが、著者はもちろん全員無罪、裏に大きな理由がある冤罪だと考えている。民主党政権誕生目前となる2009年、村木事件は民主党の有力議員である石井一氏からの圧力で不正が行われたとの検察ストーリー、小澤事件は民主党代表選の最有力だった小澤氏を陥れ、政権交代~小澤首相誕生を阻止する目的(小澤は検察改革を強く主張していた)、鈴木事件は小泉政権による田中真紀子外相Vs鈴木宗男の両者を排除したい総理の意向により行われたものと読む。折しも検察による5億円裏金づくりが発覚し、世間でそこから目を逸らすために村木事件、鈴木事件の逮捕、起訴を行ったというものだ。
それにしても検察の「人質司法」はえぐい。鈴木事件では、彼の事務所でかつて会計担当をしていた当時66歳の女性が突然逮捕された。単に帳簿をつけていただけの人。逮捕2ヶ月前に子宮���摘手術をし、放射線治療中だったのに独房に拘留した。記録的猛暑だった年の真夏、独房にはもちろん冷房もない。逮捕を知らされた鈴木氏は病気だからと人道的な扱いを訴えたが相手にされなかったため、「俺は有罪になってもかまわない。嘘の内容でも認めていいから検察官の言うとおりにして出してもらい、病院へ行け」と彼女に伝言をした。彼女はそうした上で、公判で供述を否定したが、信じてもらえなかった。翌年、彼女はがんが転移して死亡した。
村木事件では、検察官自らによる証拠フロッピイの改竄事件、小澤事件では、元秘書で当時議員だった被告に関するデタラメ調書でっち上げ(彼が忍ばせたICレコーダー録音によりバレる)なども発覚している。
著者は東大法学部在学中に司法試験に合格し、大学出たてのころから弁護士への道を歩み始めた。憲法の教科書に必ず載っているらしい「マクリーン事件」は、彼がまだ右も左も分からぬ段階で同期と担当した事件だという。外国人記者にとって非常に重要な判決が1978年に出た。英会話講師のマクリーン氏が、ベトナム戦争反対の発言をしていたためにビザの再申請で拒否された事件。滞在ビザの延長は認められなかったが、滞在外国人にも日本国憲法による基本的事件の保障がおよぶことを認めた判決だった。
この事件を含め、第2章は著者が若い頃のことを中心に、国家権力へと立ち向かった事例がまとめてある。著者は1945年生まれなので東大闘争を経験している。1970年に弁護士登録後、在学中の先輩や友人たちが逮捕された弁護を引き受ける。司法研修所時代には、民生寄りの「青年法律家協会」を出て、30人ぐらいで「反戦法律家連合」を作って活動したらしい。当時は何でも「反戦○○」とつけるのが流行っていた。
第3章は、クロマイ薬害事件、クロロキン薬害事件といった薬害事件を担当(もちろん被害者側)した話。また、非常に壁が厚い医療過誤事件も4つ紹介している。
最後、第4章は「悪人」弁護として、三浦和義事件について詳しく書いている。これが社会問題化した当時、僕も常に報道をチェックし、珍しく週刊誌報道にも目を通して追っていた。そして、殴打事件は有罪だったものの、銃撃事件が無罪になったことは衝撃だったことを覚えている。さらに、21世紀になってから、日本で一度無罪になった三浦氏がアメリカで同じ罪状で逮捕され、なんと留置所で自殺するという悲劇的な結末を迎えた。確かに僕も彼を「悪人」のようにイメージしていたが、これを読む限りは決してそうではなかったようだ(もちろん全面的にそうイメージを変えたわけではないが)。当時、著者も、「なぜあんな悪人の弁護をするのか」と抗議され、いくつか仕事を失ったそうである。
この三浦事件に関しては、とにかくマスコミがひどかったこと。そして、やはりこちらも捜査当局の自己都合による犠牲という面が明かされている。ロサンゼルスで重体になった妻をヘリコプターに乗せて日本に運んだ三浦氏。あの時、発煙筒を自らたいてヘリを誘導した映像を思い出す。あれを見て「芝居がかっていて怪しいやつ」という印象を持った人は少なくないが、実はあれ、その場を取り囲んでいたマスコミから言われてやったことだそうだ。恐らくテレビだろう。その方が���になるからと言われ、素直な彼がやったそうだ。
殴打事件で逮捕された際、彼はマスコミが勢揃いするまで時間稼ぎをするため車で連れ回され、建物から30メートルも手前でおろされ、歩かされた。手錠や腰縄も隠さず、配置された警察官全員腰をかがめて写真撮影がしやすいようにした。多くのマスコミがその姿を報道した。人権侵害も甚だしく、起こした国賠訴訟に実質的に勝利したため、以後は手錠を見せなかったり、モザイクをかけたりするようになった。
なお、同じ1984年にはグリコ・森永事件で犯人を取り逃がすという失態を見せた捜査当局の失地挽回の犠牲になったのも彼だった、というのが著者の主張だ。
殴打事件は有罪。銃撃事件については、一審は有罪、二審は無罪。しかし、これは決して一発逆転無罪ではなかった。その点は本を読むとよくわかる。一審でほとんど検察側の論理は崩れており、二審無罪はその段階でほぼ確定していたようなものだった。裁判とはこうして闘うものだと、教えてくれる力強い本だった。
一審では、三浦被告が銃撃を依頼したとされるO氏は無罪になった。しかし、三浦被告は氏名不詳の人物に依頼したと有罪になった。そして、検察と被告双方が控訴した。ここに検察の破綻があった。公訴理由もふくめ検察はO氏が実行犯だとしている。一審で裁判所が、被告が氏名不詳者に依頼したと断定したのは、訴因変更の手続きを取らないままの判決であり違法である、と弁護側は主張した。確かに、O氏が実行犯なのか、氏名不詳者が実行犯なのか、どちらかしかないわけで、どっちを前提にしているか変更なしに有罪にすることはおかしい。二審はそれが「違法」であるとして無罪を言い渡した。裁判所が「違法」なことをするわけである。
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村木事件:
村木氏に不正をお願いにいった人物は、公判で、厚生省では彼女とデスク越しに話をしたと証言したが、彼女のデスク前には大人の背丈ほどのついたてとスチール製キャビネットが置いてあり、事前に調べていた著者たちによりそれが嘘であることが明かされた。検察に暗記させられたままのデタラメ証言だった。
大阪地検の案件だったため、事件関係者は東京から呼び出され、取り調べを受けた。検察のストーリーを認めないと、また来てもらいますと帰す。交通費は自費、時間もお金も大変な負担。だから、これぐらいなら認めてしまおうと、言われるままに認める。それが積み重なって村木氏を追い詰めていった。
論告で村木被告を懲役1年6ヶ月に処すよう平然と求刑したのは、後にフロッピイ改竄がバレて実刑をくらった前田主任検事だった。
小澤事件:
元秘書、石川被告に関する嘘の調書をつくった田代検事。ICレコーダーの内容と違うことを指摘されると、「捜査報告書はこの日の取り調べ直後に作成したものではなく、数日かけて思い出し、思い出し記録した。記憶違いで混同して事実に反する供述になった」と言い訳をした。
国策捜査は、時代との関わりのなかでなされる。GHQの駐留予算を削減した石橋湛山は公職追放、日ソ国交回復を推進した鳩山一郎、日中国交正常化をした田中角栄、中国・北朝鮮に近かった金丸信や加藤紘一、沖縄の普天間基���は「最低でも県外」と言ってアメリカから猛烈な反感を買った鳩山由紀夫らは、いずれも政治の表舞台から引きずり降ろされた。
一方、日米安保を締結した吉田茂、「核抜き本土並み」を骨抜きにして沖縄返還を実現し、日米安保を延長した佐藤栄作、日米関係を修復・強化したロン・ヤスの中曽根康弘、アメリカ一辺倒だった小泉純一郎、集団的自衛権の安倍晋三。この5人は歴代内閣総理大臣在任期間ランキングの戦後トップ5である。
マクリーン事件:
著者ともう一人の弁護士が受け取った弁護料は〝労役による支払〟だった。マクリーン氏は豊かではないため、「英会話学校の先生なんだから英会話を教えてよ」と持ちかけ、タダで英会話のレッスンを受けた。
東大闘争裁判:
加藤一郎東大総長、大河内一男前東大総長を含む多数の教授、坂田道太郎前文部大臣、秦野章前警視総監をはじめとする警察幹部など、今では到底考えられないような証人を申請して認めてもらった。
医学部中央館グループの公判で、元医学部長を証人尋問した際に裁判長から「尋問は今日中に終えるように」と言われ、「今日中なら何時まででもいいんだな」と、夜9時間で尋問した。
大菩薩峠事件:
板橋区の派出所で警察官から銃を奪おうとした青年が逆に射殺された事件の直後に開かれた「大菩薩峠事件」(派出所とは別の事件)の公判、被告人が立ち上がってそのことを問題にし、「非常に残念なので黙祷したい」と発言した。「黙祷!」と彼が呼びかけると、被告人16人と傍聴席にいた支援者が全員立ち上がり、1分間の黙祷を捧げた。裁判長は2度ほど「やめなさい」と軽く制止しただけだった。終わると裁判長は「もうしませんか?」と声をかけ、「しません」と答えると「では続けましょう」と何事もなかったかのように審理を続けた。大らかな時代だった。
明治公園爆弾事件:
警察官37人が怪我をし、全員の診断書が証拠提出されていたが、結審近くになり、再診断した結果として新しい診断書が出された。全治期間が大きくのびたり、後遺症が残るという診断書に変わっていたり。しかし、著者ら弁護団はそんな診断書の証拠採用にあえて同意した。そして、2回目の診断書にある怪我の原因が1度目の怪我と同一であるとは立証されていない、本件と関係ない、と主張した。その主張は認められ、求刑無期懲役に対して17年判決となった。検察側は墓穴を掘ったことになる。
司法修習における検察修習で、著者と同期の22期では取り調べ修習拒否者が続出した。著者も拒否したが、それでも指導の検察官にひどく可愛がられ、飲み歩いたうえ、自宅に泊めてもらったこともあった。拒否するなら卒業させないと脅されたが、それならそれでしょうがないと思っていた。
クロマイ裁判:
何度も裁判長が交代した。非常に難しい専門的な内容であるため、文献類や準備書類が理解できない裁判長が多く、引き継ぎで渡された書類がひもで縛ったまま和解室におかれていたこともあった。
証人尋問で統計学者を証人として呼んだとき、「疫学とはなんぞや」からはじまったが、内容が難しく、延々と難解な統計学の話がつづく。居眠りしている人が続出、裁判官も寝ている、被告側の弁護士も寝て��る、さらにはこちら側の弁護士も眠ってしまった。後日、一人の裁判官に会ったので、居眠りのことを抗議したが、こちら側も寝ていたので強く言えなかった。
長崎大学クロロキン薬害訴訟:
控訴審の裁判長が無能で、まったくとんちんかんなことしかいわない。嫌になった著者は、国の代理人である検事に対し「こんなひどい裁判長で裁判をやることはない。もうやめよう。一審どおりでいいじゃないか」と説得したところ「確かにあの裁判長はひどい」と同意してくれた。
異型輸血死亡事件:
愛知県選出の衆議院議員で国土庁長官や労働大臣などをしたN・H氏が、1990年10月21日に名古屋市内の陸上自衛隊駐屯地で行われる創隊祈念式典に来賓出席した際、地元のM精神病院に措置入院させられていた男Kに刺されて意識不明に。地元のY病院に救急配送され、本来ならO型の血液をB型で輸血してしまい、そのあと手術のために運ばれたA医大病院でもB型の輸血が行われた。
この事件は、僕が70年代まで住んでいたところの近く。N・H氏は丹羽兵助、M精神病院は守山荘病院、自衛隊は守山駐屯地、Y病院はヤトウ病院、A医大は愛知医科大学。地元が出て来て懐かしい。なお、丹羽兵助の弟も衆議院議員で丹羽久章。北区大曽根時代の小学校の先輩。
医療過誤の被害者や被害家族の怒りと悲しみ、とりわけ子供を亡くした親の嘆きは深い。そうした人たちに納得してもらい、感情の落としどころを見つけていくプロセスと、裁判で勝ちを取っていく、あるいは和解に持ち込んでいくプロセスは、必ずしもイコールではない。
三浦和義事件
三浦氏はのちに、テレビ局や週刊誌などを相手に名誉毀損の民事訴訟を約530件起こしている。そのうちの多くは弁護士に依頼せず、自分で提訴している。
三浦氏は女性にはもてたが生活は地味で、生活費もそんなに使わず、貯金もたくさんあった。妻が死んで受け取った保険金にもまったく手をつけず、貯金や国債購入にあてた。だから保険金目的の犯行動機がないと主張した。ところが一審では「金に困っているわけでもないのに保険金殺人をしたのだから、非常に悪質で許せない」という珍妙な理屈が判決文にはあった。
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Audible で聞きました。村木厚子さんの事件はこの本で詳細を始めて知った。どの事件も時代を反映していて、とても興味深く読めます。
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順番が逆になったが、Ⅰを読破。Ⅱの感想で、
「日本の司法制度の問題点を炙り出す小説はかなり読んできたつもりだが、当事者の経験と視点によるノンフィクションの前には沈黙してしまう。たとえ弁護人という一方からの独善的な偏りがある立場だとしても。それほど重く深い作品だ。国策捜査の闇を暴いた佐藤優氏の「国家の罠」と共に多くの日本人に読んでもらいたい作品。図書館で借りている都合で事件ファイル1は未読なので、早く読みたいと思っている。特に村木厚子事件は丹念に読みたい。」
と書いたがほぼ同じ感想。中身の濃さとして村木厚子事件はそこまででもなかったが、改めて酷い事件だったことがわかる。政治の季節と医療被害の章も興味深い内容だった。
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クロマイ薬害訴訟で因果関係を証明するのに、研究の進んでいた米国から資料・証言を取り寄せた両親の執念に頭が下がる。また逸失利益について死亡した娘さんの姉は東大法学部を出て司法試験と国家公務員試験に合格したから、そのベースで生涯収入は計算すべきとの主張に対して、裁判所は平均賃金でしか認めないという話は印象に残った。