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想像を超える展開と言葉に満ちていて、すごく新鮮な読書体験だった。好きか嫌いかは分かれそうだと思ったけど。
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カラフルで不恰好な磨かれていない石が無秩序に組み合わさった結果できた、唯一無二の輝きを放つ宝石。
想像を超えるさまざまな経験のひとつひとつは、
辛かったり苦しかったりするかもしれないけど、
その人が生きることと対峙し、自分の人生を広義で謳歌し、そして自信と人生に魅力的な味を持たせる。
本屋さんでこの本を見かけた時、彩りと奥行きのある人生にする秘訣を少しばかり期待して手に取ったのだけれど、実際は期待値をはるかに上回った。
秘伝のスパイスはそんなにないのに、めちゃめちゃ美味しいスパイスカレーを食べさせられたような感覚。
人生に疲れた人やよりよく変えたいけどなぁとか、その類いの悩みを多少なりとも抱えている人におススメ
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文庫本で読みました。
実は半信半疑で読み始めましたが、良かったし面白かった。
最初は丁寧に書き始めて、途中からテンポ速くなり、急に終わるところが面白いです。
最初は、素人の私が言うのも失礼ですが、女性版ブコウスキーだと感じましたが、
ブコウスキーよりはちゃんとしてます。
思いがあります。言いたい事があります。
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本当に良かった。
ほぼ全ての話が彼女の実体験を元にしているという不思議な物語達。ルシア・ベルリンの乾いていながら豊かという不思議な感性を通して見える、彼女の鮮やかな人生がものすごく刺さる。
どれも本当に良かったけど、個人的には「掃除婦のための手引き書」「喪の仕事」「ソーロング」「ママ」「あとちょっとだけ」......いや全部良かったな。
最後の一文まで読むと、話の印象ががらりと変わったりして、びっくりします。読み手の感情を、そうと分からせない微細なニュアンスで操作するのが本当に上手い。最後の一文まで読んだ時、ルシアはこれが言いたかったのか、ここに連れてきたかったのかと思って総毛立つ。久々の体験でした。楽しかったです。
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壮絶な人生を語った短編。
悲惨な人生なのに悲惨さを感じさせず、むしろなんだか楽しそうにさえ感じてしまう不思議な物語。
自分も頑張ろうと思える。
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期待値が高すぎたためか、それほどでもなかった。おっ、と思うものと、まったく響かないものが半々くらい。
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これをもう一度読んだ時に、星が四つになるでしょう。
こう言うのを読みつけていないことと、背景があまりにもわからないことで、なかなか距離を縮めることが出来なかった。
これを良いと認めて、出版しようとした人たちの思いにまでまだ辿り着けていない。
でもお手上げというのではなく、つまらないというのでもなく、隠された魅力がわたしのどこかを引っ掻いているというのは確か。
そして、とても好きなものもあるわけだし。
ずいぶんと長いこと、読みたいリストに入っていて、ようやく文庫になり、手を出しやすい価格となり(それでも1000円近い)手元に来たのだから、これからじっくりお付き合い願おう。
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「エンジェル・コインランドリー店」4
「ドクターH.A.モイニハン」5
「星と聖人」5
「掃除婦のための手引き書」5
「私の騎手ジョッキー」5
「最初のデトックス」5
「ファントム・ペイン」4
「今を楽しめ(カルペ・ディエム)」5
「いいと悪い」5
「どうにもならない」4
「エルパソの電気自動車」4
「セックス・アピール」4
「ティーンエイジ・パンク」4
「ステップ」4
「バラ色の人生(ウ・ヴィ・アン・ローズ)」4
「マカダム」3
「喪の仕事」5
「苦しみ(ドロレス)の殿堂」5
「ソー・ロング」5
「ママ」5
「沈黙」5
「さあ土曜日だ」5
「あとちょっとだけ」5
「巣に帰る」5
「物語こそがすべて/リディア・ディヴィス」4
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岸本佐和子さんのミランダジュライがとても好きだったので手に取った。
歯医者のストーリーが気持ち悪くて途中でやめてしまった。
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初めの2/3は、アメリカ文学特有の「よく分からなさ」と比喩表現で、イマイチ面白味が感じられなかった。
だが、そのピンと来なかった2/3を踏まえて読む、後半数篇(特に『さぁ土曜日だ』、『あとちょっとだけ』、『巣に帰る』)は素晴らしかった。
ルシア・ベルリンは日常の中に埋もれる小さな感性を失わず、どんな境遇に置いても心の豊かさを保ち続けた人だったんだなぁ。
社会的立場や、経済状況、生い立ちが存分に描かれているのに、物事に対する感受性、そこから生まれる真実はそういったもので判断できないと逆説的に気づかされた。彼女と私、それぞれ生きる人生は全く違っても、心の奥にもつ孤独や悔恨は普遍のものなのだなぁ。
生きてる中で感じる捉えようのない心の動きを、私達はどんどん忘れ上書きしていってしまうけど、彼女はそれを絵葉書のように残し、後になって見返し、そして言葉にすることができる。
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カバーの写真の女性。これは著者自身。吸いかけの煙草を掲げたまま、彼女の視線は遠くを見つめる。いくつもの言葉が彼女の口や胸の内からあふれ出したあの瞬間を。何度目かの結婚生活の頃、ごく幼い子供の季節、息子たちが独立した後のひとりの朝から、見送った母や妹との別れを予感した夜へ。また子供に佇んだ庭の風景へと。そのうつろな眼差しはまるで、とりとめない記憶の海を漂うようだ。
――他人の苦しみがよくわかるなどという人間はみんな阿保だからだ。
原則、友だちの家では働かないこと。遅かれ早かれ、知りすぎたせいで憎まれる。でなければいろいろ知りすぎて、こっちが向こうを嫌になる。
待って。これにはわけがあるんです。今までの人生で、そういいたくなる場面は何度となくあった。
わたしには話す相手がいなかった。ごめんなさいという相手が。
死には手引書がない。どうすればいいのか、何が起こるのか、誰も教えてくれない――
彼女の物語を読んでいる間は、心がざわざわと波打って仕方なかった。どうして私は、あんなに彼女の言葉に動揺していたのだろう。こんなふうに、彼女のように、言いたかった場面が、今までの人生のなかで何度もあったから?
まるで誰かに自分の人生の、見られたくない場面を見られているみたいで落ち着かない。
この作家さんが、アメリカ本国においても発見されたのはごく最近のことだという。それも死後10年を経て。
この『掃除婦のための手引書』はもっとたくさんの読者に届いてほしい。そうしてもっとたくさんのレビューを書かれるようになってほしい。他の読者のひとたちは、この物語に触れた際の心の動揺をどう表現し、どう分析するだろう。
かつて、波乱万丈の人生を送ったひとりの女性が生み出し残した数々の言葉は、その死後もなお、彼女の物語に触れる人の心を揺さぶり、そこに新たな引っかき傷を作り続けている。その生々しさに、ひとりでも多くの読者に気付いてほしいし揺さぶられてみてほしい。
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『掃除婦のための手引き書』 ルシア・ベルリン 岸本佐知子 訳 (講談社文庫)
濃いわー。
いろんなものがぎゅっと詰まってるわー。
しかも、岸本佐知子さんの翻訳がとてもいいのだ。
ガンガン繰り出される短いセンテンスの文。
時には単語のみがものすごい勢いでバン、バン、と置かれる。
そうかと思えば、会話と地の文がごちゃまぜの勢いのある文章に横っ面をはたかれる。
面白い。
清々しい。
毒々しい。
目をそむけたくなるような汚さと夢のような美しさが、同じレベルで扱われている。
この本は、作者ルシア・ベルリンの実体験をもとに書かれているそうだ。
最初はそれと知らずに読み始め、いくつかのエピソードを辿るうち、一人の女性の姿が見えてくる。
それがルシア本人だと分かった時の動揺。
震えた。
一気に心を掴まれた。
ルシア・ベルリンの生涯は波瀾万丈だ。
鉱山技師の父親の仕事の関係で住まいを転々とし、貧困と富裕の両方を経験する。
脊椎湾曲症を患い、アル中の祖父や母から虐待を受けていた悲惨な子供時代。
三度の結婚と離婚。
本人もアルコール依存症に苦しみ、シングルマザーとして四人の子供を育てながら、学校教師、掃除婦、電話交換手、ER看護助手など、職を転々とする。
アルコール依存症を克服した後は、刑務所で創作を教えたり、大学の教授もしていた。
六十八歳の誕生日に癌で死去。
私はエッセイが苦手で、それは他人の“本当のこと”をあまり見たくないからなのだが、この本は、実体験に基づいているもののきちんとフィクションで、客観的なところがあり、物語として読み応えがある。
地べたを這いつくばっているような内容なのに、想像力のバネで遠くにぽーんと飛ばしてくれるような浮遊感がある。
“悪”をユーモアで包み込み、違うものにしてしまう。
一編一編はとても短い。
辛く、切なく、楽しく、どれも心に刺さってくるが、その中でも私がいちばん印象に残っているのは「どうにもならない」だ。
アルコール依存症の“彼女”が、早朝、子供が起きてくる前にお酒を買いに行く。
体が震えて立てないくらいなのに行く。
そして泣きながら飲む。
アル中の人の気持ちなんて分からないはずなのに、なぜか彼女に感情移入してしまう。
バスルームでウォッカを飲み干すと、彼女は何事もなかったかのように洗濯をし、子供たちに朝食を食べさせて、学校へ送り出す。
……で、ラストがすごい。
子供たちが家を出てバス停からバスに乗り、バスが走り去るのを見届けて、彼女は再び酒屋へ向かうのだ。
もう、「どうにもならない」というタイトルにどつかれた気分で、いっそ爽やかですらある。
こんなに悲惨なのに。
それがルシア・ベルリンの魅力なのだ。
最後に収録されている「巣に帰る」は、ルシアの晩年の話だろうか。
自分はいろんなこ��を見逃してきたんじゃないかと、彼女が思うシーンがある。
「わたしに向かって発せられたのに聞きそこねた、どんな言葉があっただろう?気づかずに過ぎてしまった、どんな愛があっただろう?」
「無意味な問いだ。わたしがここまで長生きできたのは、過去をぜんぶ捨ててきたからだ。悲しみも後悔も罪悪感も締め出して、ぴったりドアを閉ざす。もしもちょっとでも甘い気持ちで細く開けたが最後、バン!たちまちドアは押し破られ、苦悩の嵐が胸の中に吹きこみ恥で目がつぶれコップや瓶が割れジャーは倒れ窓は割れこぼれた砂糖とガラスの破片でしたたかすっ転んでおびえ取り乱し、そうしてやっとぶるぶるふるえて泣きながら重いドアを閉ざす。散らばった破片を一から拾いなおす。」
ルシア・ベルリンは、没後十年以上たってから見出された作家なのだそうだ。
この「巣に帰る」を読んで、晩年彼女はどんな気持ちで暮らしていたのかなと思いを致す。
ものすごいものを読んでしまったなぁ。
小説なのに、絵画でも見たような余韻に押し流されそうな読後感だった。
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こんな小説初めて読みました。
いろんな場所、いろんな種類の人物が時間を超えて登場し、独特のみずみずしい、時に優しく時に鋭い描写で書かれていて、不思議な感覚をもたらしてくれる作品でした。
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作者の人生をもとにした短編集。瀕死の妹とのやりとりを描いたいくつかの短編がよかった。
アル中と、側湾症と、虐待と、離婚と、困難に思われることがたくさんあるのに、変に暗くもなく淡々としていてたくましい。
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ルシア・ベルリン 「掃除婦のための手引き書」読了。
24編からなる彼女の実体験に近しいと言われるその物語はどれもアル中や背骨矯正の少女など世の中から外れてしまっている人々のリアルを切り取ったものとなっている。どれも特異で美しく詩情的な文体で編まれていて、訳者の岸本佐知子さんの名訳からも充分伝わってくるが、これが原文で理解出来たらもっと素敵だったろうなと思う。
ルシアは「小説はリアルでなければならない」と言ったと後書きでも書かれているけれど、その、時に寂しい境遇を味わい、かつアイロニカルにもならなかった彼女の人生観が、どの短編の読後感にも通底していて「嘘でない」ことの静清しさが心地よかった。