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タイトルが少し分かりづらいが、天皇退位と新天皇即位について、コロナ禍という非常事態において見えてきた日本社会の特徴など、いくつかの時事的問題を対象として、昭和史の出来事や歴史の流れと対比させつつ考えた、複数の論考をまとめたものである。
各編、比較として上げられる例や見る視点、角度が興味深いし、大正から昭和戦前期の生々しい政治の動きを具体的に知ることが出来た。
その中でも著者が最も強調したいことは、大正時代に萌芽のある“ポピュリズム”がいかに歴史を動かしてきたのか、それが理解できなければ昭和史は十分に分からないし、歴史の教訓から学んだとも言えないということだろうと思う。
日比谷焼打ち事件と大衆の登場、大隈内閣期に始まる現代的な選挙運動、関東大震災と後藤新平の動向などが、その例として上げられる。普通選挙権というと、歴史の進歩の一事例として良いものという印象が強いが、大衆とマスメディアが強く結び付いて、政治家の動ける幅を狭くしてしまい、合理的な選択を難しくする面があることも分かった。
終章「ポピュリズム型同調社会と政治的リーダーの形成」。柳田國男の言う"大勢順応主義"や神島二郎の「第二のムラ」論(懐かしい!)に依拠しつつ、日本型同調社会がいかに出来上がってきたかを分析したものである。
希望はあるのだろうか。
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第1章 岐路に立つ象徴天皇制
第2章 天皇周辺の「大衆性」―近衛文麿と宮中グループ
第3章 戦前型ポピュリズムの教訓
第4章 コロナ「緊急事態」で伸張したポピュリズム
第5章 ポピュリズムと危機の議会制民主主義―菅内閣論
第6章 大正期政治における大衆化の進展
第7章 関東大震災と「ポピュリズム型政治家」後藤新平
第8章 「大正デモクラシー」から「昭和軍国主義」へ
第9章 太平洋戦争への道程とポピュリズム
終章 ポピュリズム型同調社会と政治的リーダーの形成
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ちくま新書の昭和史講義のシリーズは、しっかりとした実証研究を踏まえた内容になっていて、これまでなんとなく分かったようなわからないような昭和史がやっと納得できる説明にであったような感じがしている。
その昭和史講義の編集を担当している筒井清忠さんの時事問題を扱った新書。
なんだか三題噺みたいなタイトルであるが、戦前のさまざまな問題、政治社会構造が、現代においても繰り返されていることを説得力ある形で説明してある。
いろいろな雑誌などに掲載されたものを集めたもので、ややバラバラ感はなくもないが、かえってリアリティがある。
それにしても、日本のポピュリズム的な体質は、まずいな〜と改めて思う。