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物語も佳境に入ったのかな?
前巻まで狂気の深みにはまって暴走が懸念された主人公が、娘の失踪から信念を揺り起こされ、ヒロイック路線に戻って一安心。
妻子を村から逃がすと決断し、「あんたも一緒にいこうよ」と説得する妻へ言い放ったセリフがぐっとくる。
それに返す妻のセリフもいい。
そして敵の本拠地で、一族総出のおもてなしを受けるのだが……
敵も一枚岩じゃなく、儀式に疑念が芽生える者など、分裂の兆しがさし始めて今後の展開が気になる。
狙撃の天才でもある末子が味方になってくれれば心強いのだが、意味深MAXの神主が敵か味方がいまだにわからないのが不安要素。
前作「鳥葬のバベル」は打ち切りっぽく、駆け足で四巻完結したのだが、本作も次巻か次々巻で終わりそうな気配。下手にずるずる引き延ばしてもダレるし、物語のテンションを維持したまま幕を締めるならそれ位の配分がちょうどいい。
この作者の特徴として物語のキーパーソンになる幼女を無垢でいたいけな存在に描いて、「守るべき弱者」の側面を強調するのだが、娘のましろはやはり幼すぎる。9歳といえば小3、その年齢でアレを拾ってあの反応は解せない。
娘視点での描写がないので、現在の彼女が母親や父親に対しどう思っているかは想像するほかないが、父と娘の溝の修復が裏テーマならそこをもう少し掘り下げてほしい。
「食われるためだけに生まれてくる子ども」というショッキングな事実、鬼畜すぎる村の実態に単独で挑む主人公の死闘から目が離せない。