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6人の男女による、章ごとに語り手が変わる物語。男が2人に女が4人。年齢の幅はそこまでないものの、立場も性格も何もかも違う登場人物たちだけど、誰かに共感したり肩入れしたりするタイプの物語では個人的にはなかった。
社会の中に紛れて普通に生きる人たちの極端な部分だとかある種の異常性のようなものを、これでもかというくらい抉って抉って描いている。美しいとは言えない登場人物の心の内とともに。
読んでいるうちに病んでくるような感覚さえある。金原ひとみさんの小説は全般的にそういうところがあるような気がする(褒め言葉です)。
元モデルで現在はファッション系のライターをしている由依。由依の夫で小説家であるものの過去の盗作騒動により現在はあまり執筆をしていない桂。由依の不倫相手でフランス料理店のシェフをしている瑛人。瑛人の店のパティシエで家族に問題をたくさん抱えている英美。由依の友人でミュージシャンである夫のDVに悩みつつ社内の同僚と不倫をしている真奈美。由依の妹でホストに入れ上げつつパパ活をして小遣い稼ぎをしている枝里。の、6人。
中心にいる由依は醒めていて妹曰く「サイコパスみたいで分かり合える気がしない」。本作の中ではいちばん自分の欲求に対して忠実で自分軸全開で生きている。おそらく「何を考えているか分からない」と言われがちなタイプ。
そんな由依を変質的に愛する夫の桂。良好な関係を築くものの由依からすると「本質に触れている気がしない」ように感じる瑛人。
いちばんしんどそうなのは英美だと感じる。真奈美も状況としては厳しいけれど、話を聞いてくれる不倫相手がいる。
主に男女の関係の中の、あまり知りたくない本質が描かれている。パートナーと過ごすことにおいて自分がどんな立場でいるのが理想なのかというのが叶うことはあまりないことだとか、いくら近しくても他人であることを痛切に感じてしまう瞬間だとか。
癖のある人物たちをこれだけ書き分ける小説家ってすごい、と当たり前のことを改めて思わされる。
そしてラストにぞっとした。想定外すぎて、え、そういう展開?と。伏線がばっちり張られているのにまったく気づかなかった。
人って本当に解らない。たくさんの面があるのでどれが本物というわけでもなく、すべての面があって1人の人間なのだ。
アタラクシアとは「乱されない心の状態」という意味だそう。目指す理想は常にそこだ…と考えた。それがとても難しいのだけど。
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金原ひとみの圧倒的筆力を感じさせる、渡辺淳一文学賞受賞の小説。
最初の章「由依」で描かれる、いま・この一瞬を味わう由依の甘美な多幸感、続く「英美」でのどうしようもない閉塞感と世界への呪詛に、金原ひとみの初読者として、たいへんに惹かれた。その後は、ゆっくり一章ずつ読み進め、楽しんだ。
上記の通り、タイトルの登場人物の視点で各章は描かれるので主役はいないのだけれど、ほぼ主役であろう由依というキャラクターは、恐ろしくも魅力的で。サイコパス的だと言えばわかりやすいのだけれど、そうではないのだろうと留保したくなる、そういう感触をもった。
彼女ほか、登場人物たちの織りなす人間関係の均衡が、ドミノのように繊細に崩壊することを予感させて終わるラストも絶妙。
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様々な状況に置かれた男女視点の話。
登場人物が皆、自己分析と言語化が上手く、聡明で、そのため感情論の部分が少なく、とても「文学を読んでいる」という感覚を強く感じた一冊だった。
金原ひとみさんの本を読むといつも思うが、あと数年を経、男性経験を重ねたらたどり着く思想の境地なのだろうなと。それがこの作品には特に色濃く出ていたように感じた。
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由依、桂、真奈美、荒木、英美、瑛人
職場などで関わりのある人達がそれぞれの視点で書かれている。何だか読んでいて不快とまではいかないけれど苦手な描写。共感できる人もいない…掴みどころのない本だった。私には
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金原ひとみによる不倫小説オムニバスみたいな一冊。色んな家庭事情(夫のDV・妻と上司の不倫からの妻のストーカー化・メンヘラによるパパ活・仕事上の付き合い・死産による虚無感)などから不倫を行う人たちの思惑絡み合う、漂う重さのようなものを一身に浴びせられる作品。全体的にあまり救いがないが、中盤過ぎたあたりから、何となくぐいぐい引き付けられるものがあって、最終章はほぼ一気読み状態。
「アタラクシア」というのは、心の不平不動のことらしい。これはそのまま結衣の状態を指すのだろうけど、作中でこの言葉は一回も出てこないという徹底っぷり。作者の言語や感覚センスとも相まって、全体的に読み終えたあとの虚無感が凄まじい一冊である。
個人的には圭がひたすら結衣に寄り添いながらも(最終章で結衣に調味料を分けてあげるような日々を続けたいというあたりに人としての温もりがある)、ともすれば結衣を殺しかねないような危ういまま終わっているところが何とも言えない。
不倫をしている人々も、皆一様に擦り切れていて悲壮感が漂い、あまり強く咎めたくなるような人物がいないような感じがただただ「文学」だなと思った。不倫とは自分を見てほしい心の弱さからくることもある、というようなメッセージも感じたが、そういう弱さを受け止めてくれるのがこういった作品なのだろう。
ああ、強く咎めたくなる人がいないと言ったが。ただし荒木、てめぇはダメだ。
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結婚・離婚・不倫....男女の複雑に入り混じった群像劇とでもいうのだろうか。きっと共感できるような部分やそういう人いた気がする的な感覚。とにかく想像が追いつかない部分や謎を感じるところも含めてまるで生きている人間と接しているような文章が響いた。人物が全て描かれるのではなく過程で少しずつみえてくる感じは本当に人と触れ合っている感覚さえ感じる。読み手によっては期待すると何も見出せないのかもしれない作品。
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蛇にピアス以来の金原ひとみ。デビュー作は宇多田ヒカルが出てきた時と同じような衝撃があった。色々な経験を経た今の彼女が書く物語に興味があって読んでみた。他の作品も読みたい。
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金原ひとみさんというより小手鞠るいさんとか島本理生さんを読んでるような感覚になった。うまく言えないが。
「…素敵な旦那ゲットして人一人作り出せる作り出せる貴重な三十代の一年を不倫されてるかもって思いながら何もせずに過ごしたんだよあんたは。…」
「色々あって実現しなかっただけで、本来僕たちはこうなるはずだったって、どこかで信じてた。でもそれは自分の、っていうか自分と由依さんの思い込みだったのかもしれないって、あと少しでも距離が縮まれば二人とも気づいてしまいそうな気がするんだ」
自分の存在を否定するのに、結婚相手からセックスしたくないという言葉を聞く以上に効果的なやり方はないだろう。
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「望んで結婚したはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう」
登場人物があまりにも多いので、相関図をメモしながら読むことを推奨します。
私は明誠社で働く佐倉真奈美を見て、まるで自分をネタに書かれているのかと思うほど共感してしまいました。
暗黙のルールのもとに成り立つ関係。
そしてその距離感を無視して極端に重い言葉、軽い言葉を吐けば一瞬で崩壊してしまう空気感。
夫も彼も両方いて初めて成り立つ関係であること。
どちらも等しく必要な存在であること。
金原ひとみさんの作品はどれも自伝かと思うほど、体験していなければ書けないはずのことが書かれているので読んでいて驚きます。
そして、
夢心地のような幸せと、絶望感しかない現実のあまりにもアンビバレントなバランスを描くのがとても上手い作家さんだなと。読むたびに痺れます。
しばらくこの世界観を引きずるだろうな…
以下ネタバレ
章ごとに視点が変わる形で、それぞれの目線から描かれるのですが、
周りから見た姿と本人があまりにも違う印象だったりするから、ちゃんとメモしてないと登場人物を覚えるのが難しい。
印象最悪なツイッタラー・コウボクノマックと、
真奈美の優しいセカンドパートナー・荒木が同一人物だったことに驚いた。
枝里20歳、被害者22歳だそうだから、ここは繋がってないだろうけど、それにしても続きが知りたい。荒木のことを何度も回想してしまう。
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アタラクシア。心の平穏。
誰ひとり平穏じゃなくて、みんな情緒不安定すぎる。
”望んで結婚したはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう”
「誰も愛してなくても、誰からも愛されなくても、普通に生きていける人間になった方がいい。」
私は、普通に生きていける人間になって、そのうえで、ちゃんと、心から、真剣に、人を愛したい。
祈りのような愛。
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昔に「蛇とピアス」を読んだ時に全く合わず、ずっと敬遠してた作家。
テレビ番組で「デクリネゾン」を紹介していて本屋に買いに行ったが無くてこの本に興味が沸いて衝動買い。
年を重ねたせいか人生経験を積んだせいかとても心に響いた。
全ての人物に共感するとこは無いが、全否定は出来ない。
色んな人の心の葛藤を苦しいまでに赤裸々に描いている。
又、やはり文章と言うか筆力が凄くて評価に値する作家だなと思い改めた。
綿矢りさより金原ひとみの方が個人的には評価が高い。それ程面白かった。
他の作品も読んでみよう。
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望んで結婚したはずなのに、ままならない結婚生活に救いを求めもがく男女を描いた小説。登場人物たちは30代中心で、私はもう通過したせいか(^^)、世代が違うせいか、境遇が違うせいか、あまり響かなかった。
それでも共感出来たのは、英美と由依。
英美の場合は、英美自身に共感出来たというよりも英美と母親との関係と英美と息子との関係。仕事でやむを得ず帰りが遅くなる娘にテレビのほうを向いたまま「子供がいるんだから、もっと早く帰れるようになんとかならないの?」という母親。同居して大切にしてもらえるのかと思っていたら晩御飯を作らされたりして、「家政婦のように扱われている」と文句を垂れる母親。夫が浮気症でいつ別れるか分からないから、一人でも子供を育てていけるように無理してパティシエの仕事を続けているのに、一人で何も出来ない母まで養っているのに、そんな娘の気持ちをまるで理解しない母に、英美はいらつき「うっせえ!ババア!」と言う。「あんただって浮気ばかりされてたくせに。あんな夫に頼るしか脳がなかったくせに」と。
“母と娘”はいつから“女と女”になるのだろう?仕事と子育てで無我夢中、夫婦関係が上手くいかず苦しんでいる中、上から娘を批判してくる母親に、「あんたは女としてなんぼのもんじゃい!」という気持ちになるはず。母と子はいつまでも聖母子像のようでいるはずがない。
そして、もう一つは息子との関係。小さい頃からよその子に暴力的だったり、口の悪い子の影響を受けやすかったりする小学生の息子。朝ご飯に出されたサンドイッチの中のキュウリを「こんなものいらねえよ」と床に投げ捨てた。その瞬間、英美は息子の首を右手で掴んで椅子ごと押し倒して、息子に馬乗りに「もう一回言ってみろ!」と怒鳴りつけた。
いや、やり過ぎ。やり過ぎだけれど、共感はできる。
一億総活躍だとか言って“働く女性”を歓迎する一方、子供を一人で留守番させるだけでも「虐待」という自治体も出てくるようなわけの分からない社会。働けば、ストレスが貯まるのは当たり前、夫婦関係だって多かれ少なかれギクシャクもする。母親だって、母である前に人間なのだ。人間として最低なことをした我が子に対して、人間としての怒りをぶつける母に「その怒り方は虐待だ」と批判する社会は、女性に対する「イジメ」だと思う。いやもちろん、女性(母)に対してだけではなく、男性(父)に対しても社会は厳しい。
世の働く世代の親達に対して、“活躍”と“理想の親像”を勝手に求める社会は、ポテトサラダを買おうとしている母親に「ポテトサラダぐらい自分で作ってあげれば?」と後ろから批判してくるオッサンと何ら変わらない。
つい、日頃の疑問をぶつけて、脱線してしまった。
もう、一人共感できると書いた由依は、「昆虫のような目をして何考えてるか分からない」と言われるが、19歳(?)でモデルを目指して単身フランスに渡るなど、一番自分の夢に向って正直に生きている。
感情が無いようだけど、子供を死産してしまった時にちゃんと我が子に会って抱き、その後は決して妊娠しないようにした行動から、悲しみを表に出さず、人に安々と同情されたり勝��に共感されたりするのを拒む、芯の強い人のように見える。私も表情に乏しいと言われるので、由依のことが少しは分かる気がする。それこそ、勝手な共感だけれど。だけど、理解出来ないのは、桂と結婚したこと。どうして「犯された気がした」人と結婚したのか。その時には由依には投げやりになる理由があったのだが、「投げやり」で結婚するなんて相手に対して失礼だ。
そして、一番分からないのは、由依の妹、枝里。枝里は自分でも自覚出来るほど「可愛い」のに、その「可愛い」を無駄遣いして(活用して?)パパ活している。パパ活しながら、出会い系アプリでせっせと出会いを求め、しかしながら本音はホストのヒロムとずっと一緒にいたい。「俺はやっぱり枝里やないとダメなんや」と言いながら本当は何人もいる彼女(客)の一人に過ぎないと分かっていながら、どうしてもヒロムのことを忘れたくて婚活アプリを始めた。ヒロムに「枝里が一番や」と言われたことの中毒になり、嘘だと分かっていても「俺の一番や」と言われたい。ヒロムでなければどうでも良くて、下ネタだらけのツイッターで知り合った仲間とのオフ会に参加して本当は軽蔑しているのに盛り上がって散々な目に合ったり、デブで気持ち悪い“パパ”とお茶するだけで二万円のパパ活したり。枝里は“メンヘラ”で承認要求が人一倍強いと自覚している。それも家庭環境が原因なのかな?
世の中には理解出来ない人も沢山いる。私は「可愛さ」にも恵まれなかったかわりに地道に、割と平穏に生きてきたからかな?それとも平穏でなかったことは都合よく忘れたオバサンになったのかもしれない。
でも、世の中の人も全てを理解するなんてムリ。
多分多くのブク友さんと逆で私は金原ひとみさんより先にお父さんの金原瑞人さんのほうを先に知った。「月と六ペンス」の翻訳で。多分、金原ひとみさんもすごい才能なんだろうけど、私とはあんまり交わらないかな?
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導入の面白くなさから第二章への展開が秀逸、かつ毒のあるもの言いが最高。私も憎き人にこのような口の利き方をしたいものだと切望。ま、悪口ポルノとでもいうべきか。
その後色々な人が出てくるが、もはや興味を持てず途中退場。
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金原ひとみさんのエッセイを読んだ後に小説を。
彼女の生きてきた人生が投影されているなと感じる。
パリや妊娠、夫との関係など、彼女の人生が随所に散りばめられている。