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2023年度の半分は過ぎているが、22年11月に発行された本なので、トレンドの確認には不足はない。
現在国内外で進行している社会経済的な課題を、改めて知る意味でも良かった。
再認識させられたのは以下
エネルギー情勢が厳しくなったのは、ウクライナ戦争のためだけではない。グリーン、SDGsのブームが広まる中で世界が脱炭素に向けて動き、化石燃料設備への投資は金融市場から極端に敬遠されるようになっていた。その結果、ウクライナ戦争の前から、2030年までの中期的なエネルギー需給にはぼっかり穴が開いていた。自然エネルギーからの電力供給が大幅に拡大するのは30年代からなので、需給ギャップは短期には埋められない。ロシアは、エネルギーが最強の武器になるまさにこのタイミングを狙って、ウクライナ戦争に打って出た。
世界がいま深刻な短・中期的エネルギー逼迫の危機に直面しているのは、「化石燃料からの撤退の時点」と「自然エネルギー拡大の時点」とを、総合的な政策によってシンクロナイズすることができなかったために、エネルギーの一時的不足が不可避になったのが原因だ。自然エネルギーを重視するSDGsやグリーン化の動きそのものが、今後後退するわけではなく、それはむしろ加速する。インフレ黙認という選択を日銀が避けられるようにするためには、今後の財政運営については総花的に予算をつけるのではなく、何よりも必要なエネルギーや電力関係の予算を最優先した選択的予算への転換が必要ではないか。
デフレ戦争デフレ脱却というスローガンの下、マネタリーベースの膨張をもたらした日銀による資産の大規模な買入れは、デフレ戦争の終結とともに終わらせる。これが金融政策の正常化の第一歩だが、それは早急な利上げを意味するものではない。デフレ戦争を終わらせた後も、しばらくは今のような低金利を続けることが、現実的な解となろう。デフレ脱却を消費者物価が2%上がることという狭い意味で捉えてしまったことが間違いだった。日本経済が直面している問題は、経済が競争力を失って、中国など新興国との競争に勝つことができず、所得も増えず、成長力が高まらない状況だ。そうした状況をデフレと呼ぶのであれば、デフレ脱却とは、競争力と成長力を高めて、日本経済を再生することだ。やみくもに金融を緩和して、マネタリーベースを膨張させても解決する問題ではない。一方で、2%物価が上昇しても問題は解決しないが、物価が2%上がらなくても、競争力や成長力を高めることはできる。2%の物価安定目標を掲げ、その達成に固執したことが間違いだった。デフレ戦争が終結した暁には、民間セクター主体に競争力を高めさせることだ。
目次
1. アフターコロナ期、質の向上で成長する価値創造の時代へ
・ようやく終わりそうなデフレとの20年戦争
・アフターコロナ期も景気の回復速度は緩やか
・インフレ抑制で景気は減速、再浮揚を模索へ
・「新しい資本主義」実現に向けて歳出が増加
・不透明感強い原油・金の先行き
2. 2023年のキートレンドを読む
・SDGs/ESGの流れは続く
・ウクライナ危機後のサプライチェーンリスク
・DXの進展と新しい働き方
・人��資本経営の潮流と企業の対応
・外国人政策の展望―ー入管政策と統合政策
3. 2023年を理解するためのキーワード
3-1 国際社会・海外ビジネスはこうなる
1.課題山積で米企業の成長は一服か
2.脱口シアを模索するEU
3.3期目を迎えた習政権の内外政策
4.地産地消と供給網の複線化がカギ
5.グローバル化変質の下、経済安全保障に備える
6.各国の政策的支援を日系企業が活用するには
7.全世界スマートシティ評価体系の戦略的活用
8.見えてきたアジア型の制度の概要と方向性
9.人材マネジメント見直しの必要性
3-2 産業はこうなる
1.パンデミック下で進展した医療技術の活用促進
2.コロナ禍とデジタル技術の進化により再注目
3.ロジスティクスの変革が次世代SCMを実現
4.Beyond5G時代のデータビジネス
5.大手誘致で進むサプライチェーン大再編
6.ウクライナ危機によって食料問題が顕在化
7.ポストスマホ時代のビジネスチャンス
8.新産業発展を円滑にする「第3の規制」
9.事業実装により新たな試みが可能に
10.政府等の支援施策により事業化が加速
11.情報通信と経済安全保障
12.ユーザビリティ高まる政府の可視化サイト
13.パンデミックを乗り越え、より迅速・柔軟に
14.蒸発から復活への期待が高まる
15.DXによるビジネスの変革が一段と加速
3-3. 企業経営はこうなる
1.「ガクチカ」問題を抱えた24年・25年卒の就活
2.広義の知的財産の活用が力となる
3.攻めの経営戦略に役立つ知財情報の見取り
4.強化が求められる技術流出防止対策
5.未上場でも求められる喫緊の体制づくり
6.日系企業の事業拡大の一手法に
7.社会全体でDメが加速するきっかけに
8.M&Aは買収後から逆算して取り組む時代へ
3-4. 地球環境・脱炭素はこうなる
1.出力抑制急増と自家消費型拡大による転換
2.S-LCA開発を進めるアカデミア
3.重要性の高まりとともに問われる企業の姿勢
4.気候変動対策におけるビジネスチャンス
5.新たな世界目標で自然共生社会の実現へ
6.カーボンニュートラル対応が成長のカギに
7.売り切りモデルは時代遅れ
8.水素社会実装に向けた取り組みが加速
9.サプライチェーン上の対応がビジネスを左右
10.情報開示の枠組みが戦略的な取り組みの契機に
11.気候・サステナビリティ情報の国際会計基準
3-5.働く場はこうなる
1.学習歴時代における人材育成の新たな証明書
2.選択的週休3日制は普及するか?
3.帳簿や取引書類の電子保存が浸透
4.経営に社会的健康を包摂する動きが加速
5.女性の多様な働き方と健康経営を支える
6.更年期症状への理解と支援が広がる
7.社会人経験教師の活躍拡大なるか
8.多様な人材の可能性を「制約」する思い込み
9.いよいよ始まる医師の働き方改革
10.人件費増で中小企業では生産性向上が不可避に
3-6.社会・文化はこうなる
1.研究開発が進む一方、消費者の理解が課題
2.食糧危機の救世主、飛躍のカギは「餌」にあり
3.法制度の整備により実効性が期待される
4.パートナーシップ制度の人口カバー率7割へ
5.一時的支援から社会統合に向けた支援へ
6.地域の文化・観光拠点として期待される施設へ
7.架け橋プログラムがもたらす幼児教育改革
8.「世界と伍する研究大学」実現のために
9.コロナ禍を機に拡大する国内寄付市場
10.メディア変革と生活者の楽しみ方改革
11.IT大手のゲーム業界進出でさらなる進化
12.つくり、あつまり、ともにつながる展開へ
13.ウェルビーイングX新市場
3-7.地域はこうなる
1.変化する医療機関の受診の仕方
2.道路管理も官から民へ
3.産官学連携の拠点集約が先端医療を加速させる
4.求められる社会的責務と安全への投資
5.実効性を上げるカギは民間との連携
6.仕事の繁閑の組み合わせで持続可能な地域に
7.ウェルビーイングの実現がコロナ後の観光の柱に