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「多様性」の社会での自分の価値観の貫き方とか、視野の広げ方について、あなたの考えを練り直せ、って投げられてるように感じた。
最近、自分が知らなかったり理解の及ばないことに対して、知らないが故に評価できない、と割り切れるような、そしてそれらにリスペクトを持てる人でありたいな、と思う。
自分が、特定のコンテンツが好きな人たちに嫌悪感を抱くのは、そのコンテンツを低俗なものだと見下しているからだ。
嫌な人間な自覚はあるが、身近な例を出すならコムドットとか、すとぷり、レペゼン地球とか。
もちろん世間の風潮の要素もあるが、自分に合わないものを「低俗だ」「質が低い」と評価することはあまりに傲慢だ、ということに今更気がついた。
また、「正統派」であることとか、「ちゃんとやっている」ことに対して過度なプライドを持ちたくない、と改めて思った。
私は、部活動でオーケストラに所属している。演奏会において、メインとなる交響曲は、それだけで50分近くになるものもある。
曲のバックグラウンドを調べたり、音楽表現や構造について勉強しながら、数ヶ月かけて練習に取り組む。
しかし、交響曲を楽しむお客さんは本当に少ない。どうしても「長い」「眠い」と感じさせてしまうようだ。
一般的なお客さんには、交響曲よりディズニーアレンジやジブリの曲がウケる。
何度か合わせれば曲が通せる位簡単で、それっぽい雰囲気を簡単に出せる。
ここにモヤモヤする自分が作中の尚吾に重なって、刺さった。
オケを知ってもらいたい、音楽の敷居を下げて多くの人に届けたい、という気持ちと、でもどうせ練習を頑張ったって評価されるのはジブリだろ、という気持ち。
それに対してもどかしさを持て余したり、かと思えば分かってくれる人だけわかってくれればいい、と独りごちてみたり。
交響曲は、過去の作曲家が技術と感性を存分に詰め込んだ、素晴らしい作品だ、という私の価値観と、知ってる曲だからジブリの方が良い、という価値観。
そこに優劣はない、って自分に言い聞かせるんじゃなくて、素でそう思える謙虚さを持てるようになりたい。
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映画監督志望の大学生2人が主人公。対照的な2人が卒業後、それぞれの道を歩んでいきながら答えのない問いに自問自答し、葛藤し、夢を追いかけるストーリー。
毎度この作者の心理描写や社会の切り取り方が素晴らしい。自分はクリエイティブな仕事をしていないが、わかる!と頷けるシーンも多く、読後感も爽快。
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こんなに現代的な内容なのに、単行本は2020年初版で2年以上前の作品であることに時の流れの速さを感じた。自分の作りたいもののために、細部までこだわり努力し続けられるクリエイターは本当に尊敬する。そういう人たちのおかげで、私の頭の中や世界はわくわくする。ただ、作り手の見せたいもののほんの一部しか感じることができていない気がするからもっと自分の外の世界を広げて、新しいものや知識を得て、もっと人の創作物にときめきたいと思った。最後の千紗との会話は核心をついていると思った。特別感を味わえるならその分の対価は惜しまない人は多い気がする。自分がほしい経験、ほしい言葉、感じたいことを受け取ることができるものがニーズに合うということで、合うことが正しい。考え方は人それぞれで、求めているものも人それぞれだから、正しいか正しくないかにこだわらず、やりたいことを信念を持って続けられるかが大切だし、そういうものに心は動くんだと思った。
・人は選択をすることに多大なエネルギーを費やしている
・「仕事とか娯楽とか家族とか、そういう何もかもって、結局は人間が生きていくことの付加価値っていうか...人間が“ただ生きているだけ”の状態になっちゃうことから目を逸らしてくれるものなのかもって」
・「そもそも欲求には、大も小も上下もなくて、色んな種類があるだけなんだよね」
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初めて朝井リョウさんの本を読みました。
読み進めていく中で、社会に溢れているコンテンツに対して、自分の心が揺さぶられない理由に気付かされたような気がしていました。人の心、人の顔が過るか。
でも、最後の千紗の言葉から、
自分が無意識に考えていた思考は、誰かやなにかと比べて否定してるだけなのでは、自分がこだわり続けているものを守りたいだけなんだな、と。
「誰かがしていることの悪いところよりも、自分がしていることの良いところを言えるように。」
誰かと比べて自分を守るのではなく、
自分がこだわり続けていることを胸張って言える人間でいたいと感じました。
しっかり読ませ、しっかり考えさせてくれる一冊でした。
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どこにいてもネットに繋がれる世界となった現代、日々情報の渦に巻き込まれている感覚を覚える。しかし、その結果多様性が尊重され、個々の細分化が起こった。
本作品では、この変化が顕著に起こっているエンタメ業界の話。時代に合わせるのか、自分に合わせるのか、何を大切にするのか、、、。一本の軸がなければ、その渦に波に飲まれてしまうぞ!っと伝えるかのように語られる。
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映画監督、YouTuber、アスリート、芸能人、インフルエンサー……
“国民的”スターなき時代に
あなたの心を
動かすのは誰だ?
誰もが発信者になった現代の光と歪を問う新世代の物語
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大学の映画サークルで共同制作した作品。
映画祭でグランプリを受賞した二人の監督。
尚吾と紘は、大学卒業後それぞれの道へ。
名監督への弟子入り、
YouTubeでの制作、発信。
質の良いものに触れろ
良いものは自分で選べ
二人の葛藤、嫉妬、迷い、現実、お金、名声、満足、
何が良いのか。
周囲の人たちが、それぞれの結論や考えを語る場面が多々ありますが、すべてが正しく思えて心に迫ってくるものがありました。読んでいて苦しかったです。
他の本に書いてありましたが、
一日に約80年分の動画がアップされているらしく。
みんな発信したいし、クオリティも関係なく、
刺激的で目に留まって、関心を集められれば、
有名にもなれる。
私自身も、大好きなYouTuberの動画をあっという間にすべて見て、今ではもう見ない、なんてこともあり。
単純な量も増えているけれど、消費のスピードもかなり上がったのかも。
尚吾と紘が見つける答え。
最後の尚吾と千紗のやりとりは、読んでいてうすら怖い感じでした。
ちょっと待って、これ以上言わないで、と何度も思いました。苦笑
これは「今」読むべきかもしれないです。
ただ、10年後にもう一度読み返してみたいです。
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SNSやYouTubeの普及により、誰もがスターになり得る時代が到来して早や久しい。昭和的な根性論が未だ根付いていた時代を経験した身としては、それらを通じてデビューするミュージシャンや漫画家より、地道なライブハウス周りや長年のアシスタント経験を経てデビューする人達を応援したい気持ちの方が強いが、だからといって前者を腐すのは見当違いだ。多様な価値観が許容される現代は一昔前より優しい世界ではあろうが、収益を長らく維持出来るとも限らない。大量消費社会の行く末を憂いつつ、良質な作品に出会う機会を増やしてゆきたい。
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“ひとつの道しるべ”
学生時代、映画監督として賞を獲得したことのある尚吾と紘。卒業後、尚吾は映画の名門、鐘ヶ江組で力を磨き、紘はYouTubeや新しいプラットフォームの制作会社で動画編集を仕事とする。互いに正反対の道を歩む二人の眼には、お互いの道を羨ましく映り、自分との差や現状に苦悩する。人としての道しるべとなるような人間小説。。
ボリューム満点、考えることの多い小説だった。
それは人生についてというより、潜在意識に対する問いのような。
振り返ってみればそんなに多くのことを感じたわけではないのに、
読後の不思議な感覚は、言葉に表せられない。
充実していた。
私が数冊前に読んだ『自転しながら公転する』と似ているような。
ただ、主人公の性別が違うだけでこうも違うかというような。
どこかに生きることの重さを感じる小説だった。
朝井さんは、言葉選びが賢い。
けれどもわかる、読める。ぎりぎりのラインにある。
それがまた良い。
一番良かったところ。
8章、p.193あたり。
今まで上手く言語化できていなかった、「なぜ読書が好きなのか」
それにひとつの答えが見えた部分。
本は正解のない問いをくれる存在である。
それに対する自分の出した答えに不正解はない。
だから“安心して”楽しく読めるのではないか?
本だけは安心して答えを言える。
そんな存在だから好きなのではないか。
『恋愛ごっこ』という言葉が、やけに自分にしっくりくる。
『待つ。ただそれだけのことが、俺たちはどんどん下手になっている——。——最終的に、自分を待てなくなる。すぐに評価されない自分自身を信じてあげられなくなって』
『星って、ほんとうは星形じゃないよね』
学生最後の本がこれで良かった。
数日後には社会人となる。
社会人になっても、読書をしたい。
理想は、なんの負い目もなく読書できるようになること。
再び本を読み始めてくれてありがとう、大学二年生の俺。。
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あらゆる情報が溢れている今だからこそ、自分が本当に心から良いと思えるもの、好きと思えるもの、価値があると思えるものを自ら見極める物差しを持っていないといけないと思った。
この本は映像のことを中心に書かれてるけど、どのジャンルにも当てはまることだなぁと思いました。
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人物設定にしても、登場人物の心情吐露にしても、どうも説明過多なきらいがあるのだけど、作者の「今書かなくてはならない」っていう気迫めいたものが筆を走らせた故なのかも。主人公二人の後輩・泉の描き方と与えられた役割がまさに朝井リョウの真骨頂って感じでゾクゾク。
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フォロワー何十万、登録者何百万、みたいな、数値化されたひとつの指標で捉え方を変えたりしたくはない自分がいるけれど、やっぱりちょっと気にしてしまう自分もいるわけで。
自分の中に確かな価値観を持てるかどうかって、いろんなとこで考えたり確かめたりぶつけたりしながら形作っていくものなんだろうな、きっと。
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朝井リョウの作品は何が正解かわからなくなってグルグル考えるという終わり方を自分の中ですることが多いが、この作品もまさにそんな感じ。手軽で質の低いものか、高価で質の高いものか、という議論は様々なジャンルにおいてなされるが、それをさらに深く考えた。
万人に刺さるものを作ることは難しいから、せめて自分には嘘をつかないでおこう、という考え方はとても新鮮で、今後の人生で心がけていきたいところだと感じた。
時代が進んでから読んだらまた違った印象を抱くんだろうなぁ…
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刻一刻と変化していく時代の中で、自分が何を信じていくべきなのかモヤモヤ、葛藤しながら進んでいく主人公。
成果が出ないときに真っ直ぐに自分の信念を貫くのは、この多様性のある世界の中では本当に難しい。
それでも自分自身に問いかけながら、周りの意見も聞きながら自分が正しいと思うものを頑張っていく。
現代社会をギュッと閉じ込めていて、視野が広がっていく気がする。
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朝井リョウさんの新作、文庫化まで待っていたので即購入、読了(´∀`)
いやー、なかなかに良作でしたー( ̄∇ ̄)
ストーリー的な面白さももちろんありましたが、新たな気付きをくれたという側面の方が大きかったかなぁと。
「『質が高い』なんていう絶対的な価値基準は無く、それこそがとても移ろいやすいもの」、コレは自分の中でも何となく感じていた違和感を改めて言語化してもらえた気がして、ものすごくスッキリしました。
でも一方で、自分が実際にやっていること、仕事とか、趣味とか、その内容に対しては「それが本物であり、質が高いものなんだ」となぜか無意識的に、とても盲目的に信じている部分もあるなぁと…そこにも気付くことができました。
小説として客観的に外から俯瞰して見ることで、その考えに至ることができたのかなと。
主人公達を意図的に?その違和感を描くことで、偏った考え方を際立たせるという作者の意図があるのかなと思いました。
作者の提案(最後の千紗の語りの部分)、「誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしていることの良いところを言えるようにしておきたい」、素直に良いフレーズだなぁと。
この先の人生でも、大切にしたい考え方だなと思いました。
<印象に残った言葉>
・ほんとに、本物の人たちの中で学ばせてもらえる環境にいられるのって、最高だよね。(P73、千紗)
・周りが取り囲むと、そこに何もなくったって、取り囲んだ人垣が輪郭になる(P133、占部)
・だけどあんたも、天堂奈緒も、なんか、答えを持ってる人間に思われようとしてる気がする。それって逆に、こっちからすると何かが足りない感じがする(P195、浅沼)
・色々話したけど、結局、自分が愛されることが目的の人は、この業界に向いてないような気がする。お金も人ももう、とっくに別の場所に流れてるから(P206、浅沼)
・だからきっと、どんな世界にいたって、悪い遺伝子に巻き込まれないことが大切なんです。一番怖いのは、知らないうちに悪い遺伝子に触れることで、自分も生まれ変わってしまうことです(P236、眼科医)
・ものを創って世に送り出すっていうのは、結局は、心の問題なんだと思う(P297、鐘ヶ江)
・今となっては、君のおじいさんの言葉が本当だったかどうかはわからない。おじいさんが君に観せた映画たちが本当に良質なものばかりだったかもうかもわからない。だけも、君がおじいさんの言葉をきっかけとして沢山の映画を観て過ごした時間は、紛れもなく本当なんだ(P303、鐘ヶ江)
・勝手に、そのジャンルで最高峰の場所で学ぶ自分は、そのジャンル全体の欲求を満たせるはずだって思い込んでた。でも私が満たしてあげられるのは、たとえ本当に最高峰の場所にいるとしても、そのジャンルの一点だけ。ピラミッドの中の一点を塗り潰す技術を学んだだけなのに、そこは頂点で、頂点を塗れる自分はそのピラミッド全部を塗り潰せるつもりでいた(P370、千紗)
・そのときのために、私は、誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしてることの良いところを言える���うにしておこうかなって、思う(P372、千紗)
<内容(「BOOK」データベースより)>
国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。 誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。 新時代の「スター」は誰だ。 「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」 新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した 立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、 名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。 受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応―― 作品の質や価値は何をもって測られるのか。 私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。 ベストセラー『正欲』と共に作家生活10周年を飾った長編小説が待望の文庫化。
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面白かった。色々なフィールドでそれぞれ自分の方針をもって活動している色々な人が描かれていて、共感も違和感もたくさん感じた。読みながら自分自身にも色んな考えが浮かんでは、違う問いかけが見えて来て整理が難しい。もう一回読んでもっと咀嚼したい。