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本屋さんでふと目について手にした本だけど、めちゃめちゃおもしろかった!
もともとスポーツを観るのは好きで、相撲もテレビで観ることもあるし、一度だけ名古屋場所を観に行ったことはあるけれど、そんなに詳しいわけでもなく。まして裏方の仕事は全く知らなかったので、ストーリーの他に、相撲界のこともとても興味深かった。
毎場所ごとに土俵が新しく作られているのは知っていたけど、それが呼出の仕事とは知らなかったし、土俵祭や、土俵の真ん中に鎮め物を埋めるなどの行事も知らなかった。タイトルの櫓太鼓のことなんて全く知らなかったから、そういうことを知れただけでもおもしろかった(そうか、大相撲中継で流れる太鼓の音はこれだったのか)。
一連の行事のことを知ると、相撲は神事なんだなぁと分かる。今度は力士ばかりでなく、裏方に注目して観るのも、おもしろそうだ。
さて、主人公の篤は自己肯定感が低い。
何をやっても「どうせ」とか「ダメ」と自分を評す。それを言うとますますダメなのは分かっていても、思ってしまうその気持ち、自称自己肯定感低めの私もなんとなく分かる…。
が、朝霧部屋に入門し、居場所を見つけて、自分で気づかぬうちに少しずつ成長していく篤の姿に、何度も「君は大丈夫だよ」と心の中で、つい話しかけてしまった。
朝霧部屋の人たちは、みんな優しい。とにかく、周りの人たちがあたたかい。
篤が呼出になった理由は、家にいたくなかったからかもしれない。でも、周りのみんなに支えられながらもちゃんと向き合い、ちゃんと自分で乗り越えていく。
素直さ、謙虚さ、今の自分とも周りとも向き合い、受け入れること。
この本には、大事なことがたくさん詰まっていた。
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淡々としているのだけれども読む手が止まらない,そんな作品.篤の成長物語というのもあるのだろうけど,初々しさを感じる.
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女性が登場するシーンがあまりにも少なく相撲が男性社会(女人禁制)であることに気付く。私が経験したことの無い男子校のようなノリが新鮮だった。断髪式のシーンは涙が溢れ出た。筆者が呼出に注目してこの本を書いてくれたことに感謝の言葉しかありません。
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(audibleで聴く)
高校入試に出た小説です。
内容は高校中退した篤が伯父のきっかけで相撲の呼び出しという仕事をはじめ、呼び出しとして成長していく話。
呼び出しという特殊な職業のやりとり、相撲部屋での兄弟子たちのやりとりが人間くさくて非常に面白かった。
(相撲部屋に力士以外に呼び出しが住んでるのも初めて知りました)
最初やる気なかった篤の心情の変化も最終的には立派な呼び出しとして変化していく所に惹かれるものを感じます。
さらには家族との関係修復、嫌な兄弟子達のやりとり、呼び出しの兄弟子達の支えなどがうまく場面に入ってて、聴いてて惹きつけられるものが多かったです。
おそらくですがこのような心の成長と意外な職業のやりとりがうまくマッチングして高校入試に出したのではないかと思います。
audibleで聴くとすごく気持ちが入ってて面白かったです。
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知らない世界を垣間見せてくれる、魅力的なお仕事小説でした。
初め、タイトルだけを見ていたため、『櫓太鼓』ということだったので何かのお祭りか何かの話かと思っていたのですが、読み始めてそれが勘違いであったことに気付きました。
表紙のイラストは着物にたっつけ袴と扇の少年と、色とりどりの幟。大相撲の始まりと終わりに鳴っている太鼓のことなのだと、読みながら理解しました。
大相撲は、時々テレビで放送しているのを家族が見ていて、ああ相撲をやっているんだな、と気付くくらいにしか知らなかったのですが、このお話を読んで、今が相撲のシーズンではないことが残念になるくらいには次の相撲をちゃんと見てみたいと思いました。
主人公は、高校を中退して相撲部屋の『呼出し』として弟子入りした少年。
同じ相撲部屋の兄弟子力士や、あちこちの部屋の呼出しの兄弟子たちとの日々を通して、主人公が何を感じ、誰とどう関わって、どのように考えるようになったのか、主人公と一緒に成長していけるような物語となっていました。
今まで気にしたこともなかった『呼出し』という仕事のこと。
角界と呼ばれる相撲の世界のこと。
私にとっては知らない世界を垣間見るような、新鮮なお話でした。
高校を中退して中卒で働く、という考え方が私の中にはあまりなく、そんな若いうちから苦労して仕事に就くなんてすごい、と思うと同時に、そういう人にも広く受け皿を持っている角界の懐の深さに驚きました。
主人公のこれからが楽しみだと思えるところで物語が終わるところもとても良いです。
今から一番近い大相撲は十一月場所。
私も今度の大相撲は、『呼出し』の声や仕事にも注目して見てみたいと思います。
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2023/10/30
高校入試で多く取り上げられた小説の一覧の中にこの本があったので気になって読んでみました。
主人公は、宇都宮の実家で両親とほぼ絶縁状態になってから叔父さんの紹介で相撲部屋に所属して呼出の仕事をするようになった篤という人物に焦点を当てた物語です。
相撲のことが全然分からなくても、小説が展開していく中で相撲や相撲部屋、相撲界の慣習などにもうまく触れてくれるので読みやすくストーリーを追うことができます。
相撲をする力士ではなく、呼出という立場から物語が展開していくため、相撲についても客観的な感じで話が進んでいくのがさらに読みやすさを増してる気がします。
呼出にも力士の名前を呼ぶ以外にいろいろな仕事があることや、そもそも相撲の世界ってどんな感じになってるんだろうということをこの小説を読むことで知ることができるのもとても良い点だと考えています。
そこにさらに呼出としても人間的にも篤が成長していくことが、先の話を気になるように誘導されてしまいます。
相撲の世界についても知ることができるこの小説は読んでいてとても新鮮でした。
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昨年のナツイチで紹介されていた1冊。呼出の世界が気になって、フェアが終わってから探し続けたものの、どこへ行っても在庫なし…。ようやく読めた!
期待が高すぎた分星は抑え気味。
そもそも呼出や相撲の世界の色々だけでも盛りだくさんな内容なのに、主人公の成長、親との確執、憧れる存在の仲間たち、嫌味な先輩、師匠や女将さん、無骨なエース、仲間の怪我、選手としてのピーク、若手の台頭、焦り、苦しみ、いつかは来る引退…
…いや情報過多!
キャラクターはそれぞれが魅力ありそうなのに、あまり掘り下げられないからイメージが沸きそうで沸かない。主人公の成長も展開が早過ぎる気が。
ひとつひとつの要素が大ボス中ボス並の山場を持っているのに、クリボーやノコノコくらいのレベルであっさり倒されていく感じ。
解説の方は、各章でそれぞれの出来事がテンポよく描かれるから、淡々としがちな展開も全く飽きさせない…などベタ褒めしまくっていたのだが、自分はもっと淡々とゆっくりじんわりしていても十分面白いのに、と感じた。
それでも最後のシーンは視界がぱっと開ける鮮やかさを感じた。自分もその場所に立ってみたいと思えた。そして、偉そうに書いているが、そもそも著者は新人さん。デビュー作がこれって凄い。
2作目は床山の話らしい。関取系お仕事小説。悔しいが気になる…。