投稿元:
レビューを見る
人はそれぞれ苦しみを抱えている。そばにある優しさに気づかなかったりする。家族は一番近くて遠いのかもしれまないが、根本で実はわかっていたりする。表現や言葉が素直さの邪魔をしたりしてる。好きなものは好き。嫌なものは嫌。嫌な理由が言葉足らずだったり、表現出来なかったりする。
ドレスが出来上がっていく様は家族との結びつきの確認であったりする
家族は血が繋がっていなくても、思い合えていれば、それは大きな意味で家族なのだ。
なら俺にも家族が沢山いるぞ
投稿元:
レビューを見る
Amazonの紹介より
いま一番届けたい 世の中の〈普通〉を踏み越えていく、新たな家族小説が誕生! 「そしたら僕、僕がドレスつくったるわ」“かわいい”が苦手な姉のため、刺繍好きの弟は、ウェディングドレスを手作りしようと決心し――。
手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている高校一年生の清澄。一方、結婚を控えた姉の水青は、かわいいものや華やかな場が苦手だ。そんな彼女のために、清澄はウェディングドレスを手作りすると宣言するが、母・さつ子からは反対されて――。「男なのに」「女らしく」「母親/父親だから」。そんな言葉に立ち止まったことのあるすべての人へ贈る、清々しい家族小説。
第9回河合隼雄物語賞受賞作。
5人の視点から紡いでいく結婚式に向けての奮闘記に段々と優しい気持ちになっていきました。
人によって違う「普通」の基準。〇〇だからと決めつけるのではなく、色んな人がいるんだという認識を持つ大切さが必要だと感じましたし、周囲と分かち合う難しさも感じました。
投稿元:
レビューを見る
解説には、男らしさ女らしさというジェンダーによる締め付け、抑圧からの解放みたいなものに焦点を当てているという雰囲気だったが、自分はこの小説を読んでそういった感想は特に持たなかった。
というより、もちろん「らしさ」などの単語やエピソードは盛り込まれてはいるが、それ以上に一つの家族を構成する人間、一人一人がとても自然体で、作中の言葉を借りれば正に、流れる水の様だったのでいちいち、ジェンダーに抗うというよりは、わたしは女らしいものは好きじゃない、よってこれが好き。ではなく、わたしはこれが好き。なんだと思った。
らしさからの解放ではなく、もともとらしさなんてものはないよね、という解釈でした。
投稿元:
レビューを見る
縫いものが好きな高校生・清澄が姉のウェディングドレスを作ろうとしたことで、家族や周囲が少しずつ「普通」を捉え直していく物語。
自分には当たり前のことでも、それが他の人にとっても当たり前とは限らない。家族の中でも「普通」は異なる。
投稿元:
レビューを見る
ずっと気になっていた本。
ナツイチのラインナップに入っていたので本棚にお迎え。爽やかな表紙が夏に読む一冊にぴったりで心躍る。
やっぱり寺地さん作品、好きやなぁ。
くだけた優しい調子で、"それでいいやん"、 ”そのまんまでいいやん”と背中を押してくれる。
もっと自分を肯定してあげても良いんじゃないか?
自分らしさを磨いて"もっと自分のことを好きになってあげたい"と思わせてくれる。
寺地さんの小説に勇気付けられる人も多いのだろうな。
今回は、"女やから"、"男やから”と無意識に抱いていた先入観、それに対する違和感やその他諸々のモヤッとする気持ちを少しづつほぐしてくれた気がする。
日頃から「おかしいで」「そんな時代やないで。だから古い考えの人は」と、男尊女卑を唱える人達を批判してきたものの、よーく考えてみれば「〇〇やからおかしいと思う」という、しっかりとした自分の意見もなくて。
私は周りの空気に流されていただけで、きちんと考えた事がなかった。
しっかりと芯を持ったキヨの姿にハッとして背筋を正される思いだった。
寺地さん作品に登場する、パッと見ダメンズ(死語かしら)に見える人達がとてもすき。今回は全さんめっちゃ好きだったなぁ。ドレス作りで覚醒する場面はかなりわくわくした。
黒田さんと全さんの関係性も素敵だった。
あと、表現がとても綺麗で、情景をじっくりと思い浮かべたくなる。
特におばあさんがプールで泳ぐ場面がとても綺麗で好き。水面のキラキラした感じ、身体が水に浸かって気持ち良いけど少し心許ない、あの感じ。
もう何年もプールには入っていないけど、夏の日のプールを思い出した。
何度も言うけれど、やっぱり寺地さん作品好きだなぁ。
出会えて良かった一冊。また読み返したいな。
投稿元:
レビューを見る
寄り添うように優しく、心地よくとても良い読後感。涙が溢れました。
寺地はるなさんの、この細かな現代のズレの捉え方とモヤモヤ加減の描写が絶妙で好き。
上から目線ではなく、弱々しく悲しげでなく、淡々とフラットにおかしくないか?と語られる様が好き。
水青の話は切なくなった。彼女が「かわいい」を避けてきてしまった理由が。本当に、こんな悲しいことは起きてほしくないし、起きた後ケアどころか傷をつけるのはやめてほしい。
プロのお仕事として、全やスタッフの人たちが素早く仕上げていく様は胸が熱くなった。
これぞ職人技…と。商売で成功するのと、技術に情熱を持っていることは必ずしも両立しないのが歯痒くあるけれどその切なさがあるからこそ、一瞬の輝きがより尊く思えるのかもしれない。
たまにプロらしく捌けたとしても普段が体たらくであればそれはムカつくだろうし。
でも、たまにであっても能力が発揮できるのであれば良いなと思うし、それを良しと思える社会でありたい。
清澄と水青の命名の理由、とっても素敵だった。
読みながら、『たゆたえども沈まず』という言葉を思い出した。
漢字の意味だけ、響きだけじゃなくてストーリーや想いが乗ってるのが良い。
読みながら、これは映画化しそう、と思った。
描かれる背景、風景が映像で想像できたし、ドレスを、ドレープを、刺繍を見てみたい、なんて。
投稿元:
レビューを見る
こうあるべきという周囲からの決めつけへの苛立ちと失望。でも、理解してもらえないと諦めている自分も、そう決めつけて他者を理解しようとしていないのかも。自分の思いを伝えることを恐れてばかりではいけないと、この小説に勇気づけられました。
投稿元:
レビューを見る
自分の価値観を他者に押し付けない。
とても大事なことだと思う。
でもそうしたら、子どもの躾って何だろうとも思う。
親は親、子は子。
そんな風に見てくれる時は、でもきっと来ないと思う。
女らしい、とか、男らしい、とか、この年代ならこうするのが幸せ、とか。
そこから自由になるべきだとは思っているけれども、私は死ぬまでそれに捕らわれているだろうと思う。
それはそうではないし、他者に一般論として話すべきでもないと分かってはいる。
でもそういったものの中で育てられてしまったから、意識して手放さなければならず、意識しなければならないということはいつか無意識に出てしまう可能性があるからだ。
悔しいが、時が流れてどんどん薄れていくはずの次の世代に期待しながら、自分だけでも清らかでありたい。
黒田の話に涙が止まらなかった。
血の繋がりや婚姻関係など関係ない、人と人とのあたたかな繋がりが欲しい。
簡単なことではないけれども、そうなったらいいのにな。
投稿元:
レビューを見る
兄妹、母、祖母、父の同級生の視点で物語が進んでいきます。
らしさとは?ふつうとは?
読んでいて心が温まりました。
個人的には、全さんのやる気スイッチが入った場面が好きです。
投稿元:
レビューを見る
読了後にあったかくて優しい気持ちになりました。
洋裁や刺繍が好きな人に是非読んで欲しい!
章ごとに視点が変わり読みやすいのにじんわりと心に沁みる。
私も刺繍をしているので最後の章では手に汗握る様な話では無いのにドキドキしてしまいました。
投稿元:
レビューを見る
人が人を想うとは、こういうことなんだろうな、が詰まっていた。皆どこか不器用で、イラっとすることもありそれがまたリアル。でもなぜか憎めない。
爽やかな読後感だった。
投稿元:
レビューを見る
寺地はるなさんの作品は初
読みやすかった。
劇的な展開がある訳ではないが、すいすいと読めるかんじ。
父親がつけた娘と息子の名前の由来 いいなあと思いました。
清らかなのは、けがれを知らないことではなく、流れ続けること、進んで行くことで清らかさを保つ と言うような考えはステキですね。
あと、好きなこと、ものを人に伝えたり、分かってもらうことは難しい。ただ咎める訳ではなく、認めることが出来る そういう考えが広まっていけばと思う。
投稿元:
レビューを見る
緩やかに話が進んでいくのに
読み進める事にググッと引き込まれる
歳とか
性別とか
普通とか
何か心に染み付いている擬かしいものが
清澄の言葉に周りが救われていくような、
流されて清らかになっていくような
清澄本人も周りによって流れて成長していくような
投稿元:
レビューを見る
周りの視線を気にして自分の好きな事を辞めなかった主人公の意志が、自分には無くて素敵だなと思った。
性別で判断されたくないし、自分が無意識に判断してしまいたくないと思いながらも、実際問題難しい部分もあるのかな〜ともやもやする。
投稿元:
レビューを見る
いつまでも思い煩っていたら日常生活が立ち行かなくなるので、腹の奥に呑み込んで忘れたふりをして過ごしている、様々な負の経験。
誰しもが抱えているそんな類の古い傷跡を潜在意識の底から浮かび上がらせ、絶妙に著している第四章がまず、強く心に残る。
読み進めるうちに、なるほど"水"で繋がる物語なんだな、とタイトルが腑に落ちていく構成が、最終章のまとめ方含め、美しい。
他人である黒田目線の章があるのに対し、血縁の家族である全が一人称で語るところだけが敢えて設けられていないということについても、読了した後に違和感は持たない。
また、昨今喧しいところのいわゆるジェンダーバイアスを重要な主題の一つとして採り入れているが、それも妙な押し付けや説教臭さを感じることがない良い塩梅で配合されている。
「明るいところで見ると、わたしの腕にはいくつもしみが浮いている。手の甲にも皺がいくつも刻まれている。
でも恥ずかしくはなかった。七十四年の歳月をともにしてきた、自分の身体。」