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リーダーシップ論は、ビジネススクールで最もよく研究されたテーマの一つである。しかし、まだわかっていないことも多いという。リーダーシップを巡っては様々な理論が存在するが、「理論はリーダーシップをとろうとする人の持論に翻案され、それがその人の経験に根付くときに初めて大きなパワーをもたらす」。「リーダーシップ入門」と銘打った本書で、著者はことさらこのことを強調している。
それゆえ、前段に「リーダーシップの学び方」を詳しく述べ、その後で優れた実践家としてペプシコのR.エンリコや、GEのJ.ウェルチ、ヤマト運輸の小倉昌男などの実例を紹介し、最後にリーダーシップを巡るこれまでの理論を俯瞰する。
特徴的なのが、読者がリーダーシップを自分のものにできるように、随所に演習をちりばめていることだ。自分のリーダー経験を分析してみたり、リーダー理論を自分の言葉に翻訳してみるという作業を通じて、与えられるリーダー像の理解だけではなく、自ら考えることでリーダーとは何かを明らかにさせようという工夫がなされている。
自身の関心のあったところでは、一流企業でのリーダー育成についてだが、実践事例で取り上げられていたペプシコもGEも、トップ自らが次世代リーダーの育成に関わっていたということを知って、大変参考になった。
リーダーシップは理論だけを知っていても身につかないし、状況によっても要求されることが違ってくる。そこに、実績をあげているトップ自らが後進の育成に関わることで、組織にとって最適な教育ができるであろうし、実戦の中から得るものも多いと思う。また、そうした取り組みの積み重ねが、組織気風土や組織のDNAを形成するのだと思う。
【リーダーシップに関するメモ】
・振り向けばついてくるフォロワーが存在すること。
・フォロワーはフォロワーなりに自立していること。
・リーダーシップは、リーダーその人の中に存在するというよりは、リーダーとフォロワーとのやり取りの中から、インタラクティブかつダイナミックに帰属されていく過程である。
・リーダーシップを支える鍵は「信頼」である。
・リーダーシップの規範は、産業によって、会社によって、職能分野によって、世代によって、それぞれ異なっている。
【リーダーシップ理論に共通する基本的な二軸】
・課題(仕事)関連行動:人間(対人関係)関連行動
・三隅二不二=P(パフォーマンス):M(メンテナンス)
・ベールズ=課題リーダー:社会・情緒的リーダー
・リッカート=職務中心の監督:従業員中心の監督
・ブレーク、ムートン=生産に関する関心:人々に関する関心
・コッター=アジェンダ設定:ネットワーク構築
・日常語=大きな絵(ビジョン)を描く:大勢の人々を巻き込む
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目次
[I] いかなる意味での「入門」なのか
(1) 実践と理論が出会う場
(2) エクササイズで考えを整理
(3) リーダーシップの定義
(4) 本書の特徴
(5) 本書の構成
[II] リーダーシップの学び方を学ぶ
(1) 実践的に学ぶということ
(2) ミンツバーグがめざしてきた教育とは
(3) 実践家のためのマインドセットからの学習
(4) アージリスが大切にする学習とは
(5) 使用中の理論としての持論 他
[III] リーダーシップの定義とリーダーシップを見る視点
(1) われわれが注目する二側面
(2) 定義の共通項に見るいくつかの問い
(3) 信頼性、信頼の蓄積というキーワード
(4) この定義を身近にするためのささやかな頭の体操
(5) リーダーの倫理観という問題 他
[IV] 実践家のリーダーシップ持論
1 二通りの理論――実践家の理論と研究者の理論
2 プレゼンテーションのコツ――リーダーシップ持論のウォームアップに
3 すぐれた実践家のリーダーシップ持論の実例(1)――R・エンリコ
4 すぐれた実践家のリーダーシップ持論の実例(2)――J・ウェルチ
5 すぐれた実践家のリーダーシップ持論の実例(3)――小倉昌男 他
[V] 研究から生まれたリーダーシップ理論――貫く不動の二次元
(1) 不動の二次元にはじめてふれたとき
(2) PM理論の尺度とPMによる四類型
(3) ハーバード大学のR・F・ベールズ
(4) 相互作用分析と『12人の怒れる男』
(5) ミシガン研究――高業績チームはどこが違うか 他
終章 リーダーシップを身に付けるために
(1) 実践につなげる視点
(2) 持論づくりのロードマップ
(3) TPOVの4分野
(4) 持論を磨く旅の心得
あとがきと文献案内
COFFEE BREAK
エクササイズ
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この本は、実にいい。
リーダーシップ論を学ぶにあたり、全体の基礎となるような座標軸を与えてくれる本。この考え方のもとに、様々な論を位置づけて、自分独自の持論を作るベースに使えるだろう。
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日本のリーダーシップ研究における第一人者、金井壽宏先生(神戸大学大学院 経営学研究科)によるリーダーシップ論とのことです。金井先生が本書で扱うリーダーシップは、ある特定のいわゆる「リーダーが持つ」リーダーシップではなく、誰もが持つことが可能なリーダーシップを扱っています。リーダーシップの定義は、1) それを支えるフォロワーがいること、2) 実践的に言語化されていることとしています。特に 2) 実践的に言語化されていることを強調しており、次のように解説しています。
誰もが、何かを達成すると言う実践上に得た「持論」がある筈で、そのノウハウを言語として抽象化した概念化すること(例えば、「即決」とか)がリーダーシップについて、内省面、外部コミュニケーション面で有効としています。逆に、そのようにして出てきた他者の「持論」が、抽象化されているが故に、そのまま鵜呑みにしてはならず、その人の職種や状況などに依存しているため、自分の中に取り込む際には、自分の環境を重ね合わせて咀嚼する必要を説く。
また、そのような持論が、一般に、組織の目指すべき課題軸 - Performance と組織を担保するための人間軸 - Maintenance の2軸で展開できるとしています。そのことは、現存の全てのリーダーシップ論の基礎となる考え方である、と位置づけ、PM理論を展開しています。
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まさに入門という感じの良書だと思います。
めずらしくじっくり読みました。
リーダーシップは、家庭・仕事・地域社会などあらゆる側面で必要。
人生通じての勉強ですね。
・自分の持論を持つこと・作っていくこと
・シンプルな2軸(課題関連行動・人間関連行動)のものさしを持つこと
・次世代の育成が使命
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理論だけを学んでも身につかない。実践してこそ理論の理解も深まり身につく。リーダーシップ論をいろんな研究者の考えを紹介しつつ、エクササイズを用いている本。
大小はあれど誰しもが持っているリーダーシップ。どのようなタイプでどこを目指すのか。ここでも軸をもつことが重要。俺のTPOVは?再読すべき本。
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リーダーシップを学ぶためにエクササイズを入れた構成となっている。
リーダーとはフォロワーが自然とついてゆく者のことです。
自分ならどうするかを常に考えて、リーダーシップの持論を作り、言語化しておくことが大切。
持論を原理原則として、状況を判断して行動するのがリーダー。
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幅広い実例、文献、研究をとりあげながらも、著者の一貫した視点で自分の言葉で整理・説明されているので、初心者でもリーダーシップの概念を整理することができる、本当に優れた本だと思いました。
組織目標(課題:P)の軸と、組織維持(人間:M)の軸が非常に多くの研究で研究された、ロバストなものなのだということがよくわかりました。PM理論は聞いたことはありましたが、これほど安定していると理解できると、実際の仕事のときでも意識できそうな気がしました。また、
行動理論(三隅、ミシガン、オハイオ)
↓
状況適応理論(フィードラーなど)
↓
変革型(コッターなど)
と発展するリーダーシップ理論においても、課題Pと人間Mの2軸が基本になっていて、そこからの発展形として説明されているので、整理して理解ができました。
こんなに充実感ある新書は初めてでした。
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装飾語が多すぎてとても読みにくい。
リーダシップを学ぶ人ではなく、リーダシップ論を研究する人のための本ではないかと。
要点を簡単に記すと以下のとおり。
・持論をもつ
・大きな絵を描く×人々を巻き込む
(相乗効果)
・コミットメント効果を使う
・アジェンダ設定をする
・人的ネットワークを構築
・実行
・課題と人間関係について考える
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金井教授の著書は好き。膨大な文献の読み込みに裏づけられた信頼性があるだけでなく、自分の言葉でも語られているからだ。彼でもまだまだわからないリーダーシップの分野だからこそ、持論の持ち方や磨き方が本書では提示されている。私にも持論があるがそれを深掘りしてみるのも良いかもしれない。
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金井先生の本はよく読む。好きなのだけれども、この本は、少しくどい感じで読みにくい。
先生ご自身に、リーダーシップについて語りたいことが多すぎて、収拾がついていない感じ。
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カッコ書きが多すぎて内容に集中しづらかったです。また、文章全般にまとまりを欠いている印象であり、なかなか読んでて頭に入ってこなかったです。
内容としてためになることも書いてあると思うのですが、上記のようなことから、それ以前といった感想です。
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リーダーシップについては、悩みはつきない。いろいろな試しては、うまくいったり、うまくいかなかったりである。
で、一応本もいろいろ読むのだが、リーダーシップ関係の理論書は概して退屈である。が、リーダーの自伝なんかを読むのも面倒だし、自分と違うスタイルの人の話しを読んでも、簡単に真似できるものでもない。
というときに結構便利なのは、金井先生が、翻訳や解説を担当されている本である。金井じるしを目安に何冊か読んでいるうちに、金井先生の考えも分かったような気がしていた。
で、改めてご本人による「リーダーシップ入門」である。
簡単にまとめると、リーダーシップは、「鑑賞」するようには学べない、「実践」を通じて学ぶのだ。ということをベースに、実践を通じて自らの「持論」を作って行く事が大切ということ。
なので、帯に書いてあるように「こうすれば部下はついてくる」という本ではない。もっとディープな本だ。
が、個人的に一番な納得したところは、リーダーシップに関するさまざまな理論を整理したパートだ。
リーダーシップは、いろいろな理論があって、どれが正しいのやら?何がどう違うのか、と結構、イライラするのだが、金井先生による、全てのリーダーシップ理論は、「成果」と「人間関係」の古典的な2軸で理解できるということ。
と言われてみれば、「そりゃ、当たり前だろう」という気もしなくないが、ちょっとコロンブスの卵的なまとめ方かな。
一旦、こういう風に理解したうえで、学者毎の違いというか重点の置き方を勉強していけば、理解しやすそうな気がしてきた。
最後に、リーダーシップに関する本がいろいろ紹介されていて便利ではある。
が、しばらくリーダーシップ系の本は、読まないかもね。
だって、本書のまとめにそれなりに満足したし、理論より、実践を通じた「持論」が大切ということなんで。
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作者曰く、「リーダーシップは、理論と持論から成り立つ」。理論と持論の関係は、「純粋スーパークラスと、その派生クラスのインスタンス」のような関係 (オブジェクトオリエンティッドな人にしか理解できない説明で申し訳ありません)。つまり、所詮理論は、そのままでは役に立つわけもなく、実践を見据えて(もしくは、実践の中で)、理論を元に持論を構築すべきと説く。参考にすべき点も多く、新任マネージャーにお勧めする。ただし、副題に「こうすれば部下はついてくる」とありますが、そんな方法はありません。
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単なるリーダーシップ論の紹介ではなく、リーダシップを発揮するための持論を持つことの重要性、見つけ方などが、具体的な手法とともに書かれています。
もちろんリーダーシップ論の流れも抑えつつ、偉大なリーダーのリーダーシップ論から学ぶ方法も解説しながら、自分自身のリーダーシップの開発方法を、ステップを踏んで説明しています。
ただ読み飛ばすのではなく、じっくりと、ワークにも取り組んで読まなければならない本です。
下記の、リーダーシップを見極める問いは、最も分かりやすく、本質を突いた問いですね。
リーダーシップがそこに存在するかを見極めるための問い
クーゼス=ポスナーの基準
「喜んでついてくるフォロワーがいるか」
ハイフェッツの基準
「そのフォロワーは、受動的でなく、能動的・自覚的に、喜んでついていくことを選んでいるか」 ー 78ページ