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2023/09/18 12:17
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リアライン: ディスラプションを超える戦略と組織の再構築
将来日本企業が対処しなければならない、密接に関連する2 つの課題がある。その1つが「開放性」、つまり企業が外部のアイデアや価値、 人材、 慣行を受け入れる積極性のことだ。開放性と関連のあるもう一つの課題は「俊敏性」だ。これは包括的な変化を迅速に起こす能力を意味する。開放性と俊敏性はイノベーションおよび国際化の前提条件であり、かつてないほど激しいディスラプションが起きうるグローバルな市場環境で生き残り、 成功することを目指すすべての企業にとって欠くことのできないものだ。
一方で難しいのは、 組織としてのまとまりを維持しながら、開放性と俊敏性を高めることである。あるいは、「古きよ、さものを守りつつ、新しい原則、価値、事業慣行を受け入れること」と言い換えてもいい。成功したければ、 日本企業の幹部は欧米企業の幹部と同様に、古いものと新しいもの、安定と変化. 効率とイノベーション、 ローカルとグローバルといった、相反するものに対する会社の要求を両立させなければならない。
高い業績を上げている企業にはどんな秘訣があるのだろう? 経営学には対立する2つの学派がある。これは、両者—普遍理論とコンティンジェンシー理論〔環境の変化に応じて、組織の管理方針を適切に変化させるという理諭〕で白埶いした議論が繰り広げられている。
簡単に説明すると、普遍理論はどんな状況下でも必ずすばらしい結果を生み出す、例外なくすべての状況に適用可能な管理方法が存在し、それに従えば、企業は最も効率よく機能すると主張する。事業規模の大小、国内企業か国際企業か、政府機関か企業か、 製造業か銀行かに関わりなく、すぐに使える「ベストプラクティス」は万能薬、というわけだ。
それほど単純ならばどんなに楽なことだろう。残念ながら、そうはいかないのが私が断然支持するコンティンジェンシー理論は、普遍的なベストプラクティスなる概念を否定する。万能な経営のアプローチなど存在しない。コンティンジェンシー理綸は、個々の企業ならではの状況に最も適した— つまりアラインしている— 方法がその企業にとってての経営のベストプラクティスと考える。
それぞれの企業の状況は異なっており、何がベストなのかは、具体的な要件と適用される状況によって決まるのだ。つまり、成功のための戦略や組織化する方法には、標準的なレシピや取扱説明書、効率的な近道は存在しないのである。
リーダーは、膨大な数の選択肢から、手に入る最良の情報を駆使し、選択を誤った場合に起こりうる結果を認識したうえで、各自の状況に合った方法を慎重に選ばなければならない。
こんな危機だからこそ機会があると実感し、もっと根本的な何かを求める人もいた。まさに有名な言葉のとおり、「絶好の危機をムダにしてはならない」のである。
アラインには適応度〔生物がどれだけ多く子孫を疫せるかの尺度〕と同様の意味があり、ほかのすべての条件が同じなら、どんな環境においても生存の可能性が最も高いのは適応度が最も高い者(最適者) である。
第1章 戦略的アラインの概要
業績低迷の理由すべてが社内にあるという現実を直視するのは、確かに辛いことである。無論、 外部環境は変化しているが、 それは競合企業を含め誰にとっても同じ条件である。会社の足を引っ張っていたのは、ほかならぬその会社自身だったのだ。
この本を最大限有効に活用するために、私たちは標準的な意味を超えて広い範囲で「アライン」についての理解を一致させることが不可欠だ。つまり「アライン」の概念は、本書「企業(事業体) 」と呼ぶ「事業組織」をどう定義するかの核心に関わっているのだ。以下に示す4つの重要な前提が示唆されている。
1 すべての企業にとって何よりもまず肝心なのは共通の目的的意識であり、 それは全体の目標またはパーパス(この文脈ではこれらの言葉は同じ意味で使われる) として明記される。
2 企業に雇用される人々(請負業者およびパートナーの請負業者を含む) は、その目的を実現させるための手段であるため、 指示されたことを実行できるだけの能力を備えていなければならない。
3 国共通のパーパスを果たすには、右記の人々がまとまり、 うまく力を合わせて個々の努力の総和以上に大きな価値を生み出す必要がある。
4 企業パーパ スのもとで1つになればなるほど—アラインすればするほど— 人びとが熱心に働き、 意欲とロイヤルティを証明し、戦略上望ましいとみなされる行動をとる可能性が高い。
ほぼ間違いなく、すべてのリーダーシップ・チームに課された最大の責任は、 企業をアラインさせて可能な限り業績を向上させ、その後も移り変わりの激しい小業環境のもとでパーパスに適応した行動をとりつづけるために、必要に応じてリアラインすることである。アラインとリアラインは戦略上重要な課題だ。これは、この章の焦点である戦略的アラインと戦略的リアラインの本質である。
一見したところでは、マクドナルドとアームはどちらも非常に大きな成功を成し遂げた企業でありながら、共通点はほとんどないように思える。だが、そう結論づけるのは間違いというものだ。というのも、両社の或功要因は同じ—アラインの知さ— なのだ。どちらの場合も、 会社を導いているのは明確な.長期目標で、それが社内外で正しく理解され、尊重されている。
営利目的か政府機関か非営利団体かを問わず、戦略面で高度なアラインを実現している事業体は、以下の点で優れている。
・パ— パスがはっきりしている— 企業のアラインを支える価値観と優先事項が明確に定められている
・顧客の立場で考えられるー変化する噸客の好みとニーズに気を配る
・差別化されている— ほかの事業体が模倣できない際立った能力がある
・焦点が定まっている— 戦略の方向性が十分に理解され、「『有効』と思われる戦略」のイメージがある
・生産的である— 業界平均を超えるアウトプット、 効率的なインプットがある
・回復力があるーどんな混乱にも耐える力があり、 変化に対応する用意がある
・魅力がある— 企業の人々の高いパフォーマンス、コミットメント、 ロイヤルティを引き出すことができる
すべての企業内バリューチェーンを構成する普遍的なつながりを順番に説明していこう。
1 企業パ— パスー企業パーパスとは企業の不変の存在意義である 。企業が存在し、好不調の波はありながらも存在しつづけている理想的な理由と言ってもよい。
2 事業戦略ー企業の事業戦略とは、優位性を求めて競争する市場でパーパスを達成するための手段である。事業戦略には基本的に以下を含めなければならない。第1に、製品やサービスなど、企業が市場に何を提供するかの選択。第2に、顧客やステークホルダーのニーズをくみ取り、 競争力を獲得するための理想的な戦略的アプローチ。第3に、 市場シェアかリソースか、競争の対象が何であれ、競合企業が最善の努力を払ってもかなわないレベルの差別化を図るための方法
3 組織ケイパビリティー組織ケイパビリティとは、選んだが業戦略を実行に移す能力、コンピテンシー、カ最を指すく同占。最も基本的なレベルで言えば、能力のある企業は一般的または業界特有のノウハウ、すなわち事業を日々展開していくのに必要な機能的知識を持っている。
4 組織ア—キテクチャ— 組織ケイパビリティには企業の機能、 つまり企業をそのようにつくった理由が反映されているとするなら、組織アーキテクチャーは実際の企業の形式(形態) だ。形式は機能によって決まり、組織アーキテクチャーは組織の核となる構成要素ー組織の文化、核となる組織構造、核となる業務プロセス、核となる人材— の組み合わせである 。構造が適切ならば、それらの要素は戦略上重要な組織ケイパビリティの向上に貢献する。
5 経営管理システム 経営管理システムは、企業のリソースを活用して望みどおりの成果を達成するのに役立つ方針、手順、慣行である。大半の企業では、人小、叼務、業務オペレ— ション、IT、不動産などの専門分野別に経淨皆理システムがある。組織アーキテクチャ—と同じで、経営管理システムも企業の戦略上の要件を念頭に入れて設計しなくてはいけない。
アラインは裹表のあるコインだ。だが、確かに業績に直結するものの、その逆、つまりミスアラインが必ずしも業績の悪化を引き起こすとは限らない。アラインがうまくいかないときに生じるのは、不必要なリスクのほかに、機能不全、ムダな努力、 思慮に欠ける行動、偏ったリソース配分といった、価値を破壊する企業行動なのだ。
成長によって複雑化が進むと、企業リーダーには、明白な解決策も容易な解決策も見つからない、いわゆる「厄介な問題」までもが突きつけられる。それらは、 報道が不完全だったり、矛盾していたり、意見が対立したり、 ほかの問題と複雑にからみ合い解決が難しい。最も優秀なリーダーシップ・チームでさえ、油断していると現代の組織運営が抱える複雑さに足をすくわれかねない。
アラインの観点から見ると、絶え間ない変化は2 つの難題を突きつける。まず、企業パーパスはほぼ変わらなくても、事業環境の変化に足並みをそろえるために、戦略と紐織構造は変えなければならない 。常に変化が起きている状況で企業内バリューチェーンのすべての要素をアラインするのは、 とうてい手に負えないモグラたたきをしているようなものだ。
次に、リーダーが意図的に別の方向に舵を切らない限り、企業はいつまでも同じ道を進もうとする。こうした現象は専門用語で「経路依存性」と呼ばれ、もはや意味をなさなくなっても既存の習慣や慣行に固執する原因となる。
将来成功するチャンスをつかむには、当然ながら現在の企業とそのリーダーは戦略的リアラインー変化する環境にうまく適応するために企業を再構築すること— を図る能力がなければならない。
以下にこの章の重要ポイントをまとめておこう。
1 アラインはあらゆる企業の業績にとって不可欠であり、戦略上の重要事項として扱われなければならない。
2 すべての企業は共通の要素で構成されるバリューチェーンである。そのうちの最も脆弱な要素が企業の強さを決定づける 。
3 アラインは業績に直結し、ミスアラインは企業運営のあらゆる側而において不必要なリスクを招く。
4 アラインが実現できるかどうかは、企業内バリューチェーンのすべての要素におけるリ—ダーの選択の質にかかっている。ある企業に有効な戦略と組織設計が、別の企業にも奏功するとは限らない。
5 最後に、今日の流動的な事業環境では変化とディスラブションがいつ起きてもおかしくないことを考えれば、巧みなアラインを実現している企業であろうと、今後長期的に見てアラインがうまくいかなくなる、あるいはまったく機能しなくなる可能性はある。リアラインはそんなときの打開策だ。
戦略的アラインは、極めて健全で最高の業績を上げることができる企業の最適な均衡状態と考えていいだろう。対して戦略的リアラインは、 企業がアラインを強化する、あるいは事業環境が変化しても目的に適合しつづけられるように企業を変革するプロセスだ。
言い換えるなら、戦略的アラインは、 現状をよりょくするために何を実行すべきかということであり、一方、戦略的リアラインは現状をよりよくするためにいかに実行すべきかという方法である。
第2章 戦略的リアライン
この章の目的は企業のリーダーに、リアラインについての考え方を以につけるための判断材料や実践的なツールキットを示すことである。主要な検討事項は以下のとおりだ。
・事業環境の変化を引き起こす複数の要因
・環境の変化と混乱がもたらす影響の複数レベルの分類
・混乱を乗り切り業績を上げるために重要かつ喫緊とみなされることに從い、 戦略的リアラインのさまざまなアプローチを特定するためのフレームワーク
・リーダーが事業戦略、 組織ケイパビリティ組織アーキテクチャーをアライン/リアラインするのに採り入れるさまざまな戦略的アプローチを理解するのに役立つ、 カギとなる新たな枠組み— 「戦略的リアラインフレームワーク」— の導入
・そして最後に、リーダーがアラインを実現した未来の企業のビジョンを打ち立て、変化を触発し、変化の結果を「ニューノーマル」としてしっかりと定着させるための機会
偉大なるハーバード・ビジネススクール教授の故クレイ・クリステンセンとその同僚は、現状を維持する新しいテクノロジーと現状を破壊する新しいテクノロジーとを区別した。これを受け、事業環境とそこで事業活動を行う企業に変化をもたらす多様な要因がどこまで影響を��ぼすのか、考えてみるのに役に立つ。
1 局所的リアライン:相対的にみて影響は小さいが緊急性が高い混乱には、局所的な戦略的リアラインのアプローチが求められる。それには企業全体ではなく、事業部門や市場へのアプローチ、戦略上の優先事項など、企業の一部の要素に的を絞った改革が必要になる。
2 漸進的リアライン:企業に及ぼされる影鞭が相対的に小さく緊急性も低い混乱の場合、戦略的リアラインを実行するには漸進的なアプローチが必要になる。漸進的リアラインとは、短期的には既存の事業・組織モデルを継続的に改善し、長期的には改革を徐々に進めて組織の新たな均衡状態を確立することだ。
3 革新的リアライン:短期間のうちに大きな影響を及ぼす混乱の中で企業が生き残るには、革新的アプローチで戦略的リアラインに取り組まなければならない。
4 構想主導型リアライン「影響は大きいが発生までの時間が長い混乱には、構想主導型のアプローチによる戦略的リアラインが必要だ。影響が大きいと分類されるのは、企業全体、つまり企業内バリューチェーンのすべての要素を変革することが求められる可能性があるからである。
官僚主義とは異なり、「ポスト官僚主義的組織」のほか、 さまざまな名前のっけられた組織はネットワークと階層によらない組織構造を重視する。したがって、 そうした組織には以下の特徴がある。
・ネットワーク構造が垂直ではなく水平的に統合されている
・スタッフと顧客を非人問的ではなく人間的に扱う
・知識を集中させず分散化している
・情報共有が図られ、透明性が維持され、コンパートメント化していない
・スタッフは管理されず、 権限が付与・委任される
・規則の施行ではなく共通の価値観によりエンゲージメントを確保する
・効率より柔軟性が評価される
・アウトプツトだけでなくインプットを重視する
・リソースと専門知識を外部委託する
SAF(ストラテジック・アライアンス・フレームワーク)は企業内バリューチェーンの動的な要素すべてを結びつけるゴールデン・スレッド〔訳組織の目標や価値観がどう連携しているかを説明する、 戦略やビジョンの理解に役立つシンプルな枠組み〕である。これを活用すれば、企業のリーダーは長期的な目的を達成するために企業の事業戦略、組織ケイパビリティ、組織アーキテクチャー、経営管理システムを戦略的にアラインまたはリアラインする方法を理解することができる。
SFAでは、現在および将来の事業環境において、戦略的に価値のある組織ケイパビリティとしての組織の連携性と俊敏性の重要性が増していると考えている。
SFAは2つの組織ケイパビリティの軸で構成されている。各節域はその両極に相反する価値観を持つ連続体で、その間には複数のポイントがある。1つの軸は組纖の安定性と俊敏性の対比で、もう1 つの軸は組織の自律性と連携性の対比だ。これら2つの軸を組み合わせて完成するのが、補完的な価値観が事業戦略、 組織ケイパビリティ、組織アーキテクチャー、および経営管理システムの特徴的な-アラインされた-アプローチを示すマトリクス表だ。これらは戦略的アプロ — チと呼ばれ、どうすれば企業���戦略を立ててまとまり、アラインを図って競争に打ち勝つことができるかを明らかにする。
2つの軸の組み合わせによって多様な戦略的アプローチが生まれるが、そのどれもが、企業が組織.され戦略を立てて競争力を獲得するための特徴的な方法である。そうしたアプローチとは以下の4 つだ。
・エフィシェンシー・マキシマイザ—(効率の徹底追求)
・エンタープライジング・レスポンダ—(大胆進取な環境対応)
・ポートフォリオ・インテグレ— 夕ー(企業ポートフォリオの統合)
・ネットワ— ク・エクスプロイタ—(ネットワークの最大活用)
プラスの変化を主導するのが有能なりーダーの中心的な役割であることに変わりはない。戦略的リアラインに関連して、マックス, ランズバーグがその影響力のある著書の中で、広施なリーダーシップの役割の3 要素-ビジョン、インスピレーション、勢い-を使ってそうしたりーダーシップの機会をわかりやすく説明している。
第3章 企業パ—パス
企業パ— パスは企業内バリューチェーンの最初の要素であり、ほかのすべての要素は永続的な目標を実現させるための手段なのだ。危機が起こったときほど、企業パーパスの重要性が注目される機会はない。
企業パーパスは、ゴール、ビジョン・ステートメント、戦略目標、価値観、 施策すべてをその実現を目指してアラインさせるべき終着点以外の何ものでもない。企業パーパスを変更することは、古い企業を象徴するもの( ロゴやブランドなど)が残っているかどうかに関係なく、まったく新しい企業として出発することを意味する。
リーダーの課題はまず短期、中期、長期間に永続的なパーパスの実現を支える企業の事業戦略を策定する(そして必要に応じて策定し直す)ことだ。次に、 選んだ戦略を首尾よく実行するのに求められる組織ケイパビリティを決定しなければならない。
それから、リーダーは必要な組織ケイパビリティの発展を最も促すには、組織をどんな構造、文化、 プロセス、人材で構成すればよいかーどんな組織アーキテクチャ—にすればよいか! を判断しなければならない。そして最後に、望ましい成果を達成・維持するための機能別の経営管理システムを選ぶ。もちろん、混乱を乘り切って変化する爭業環境において業績を向上(または維持) させるには、とのようにして企業内バリューチェーンのすべての要素をリアラインすべきかも考えなければならない
自分本位な企業は成長しないのである。企業として何をとういう理由で行うか、それが重要な理由は何かを常に見直して、できる限りすべてのステークホルダーにとって意味のあるパーパスを設定するのは、 企業リーダーの責任だ。オックスフォード大学のアンドリュー・ホワイト博士は次のように述べている。
このプロセスによって得られるのは、練りあげられたパーパスの表明ではなく、目先の顧客ニーズや投資家の短期的な要求よりも重要な務めを果たすという意志を秘めた、パ—パースの深い理解に基づく重要な判断である
第4章 事業戦略
事業戦略の策定には、 目的を果たすために市場に何を提供すべきか、 顧客を勝ち取り競合企業を出し抜こうと目論む市場で、 どんな手段を駆使して戦うべきかについての難しい選択が伴う。そうしたことをふまえた結果選ばれたもの
を、 本書では「市場提供価値」(組織が市場に提供する製品, サービス)および「戦略的アプローチ」 (市場競争力を得るための方法)と呼ぶことにする。
事業戦略を立案するとき、リーダーにとって非常に難しいのは、戦略的アプローチ、すなわちどのような方法で製品・サービスを顧客の嗜好に合わせ、競合企業の戦略との差別化を図るかの選択だ。SFAは、企業リーグ— が利用可能なさまざまな戦略的アプローチを知り、企業パーパスに合致したものを選ぶ助けになる。
エフィシェンシー・マキシマイザ—:
「エフィシェンシー・マキシマイザー」はおそらく、マネジメントの理論や実践のアプローチとしていちばんなじみがあるだろう。エフィシエンシー・マキシマイザーは組織の安定性と自律性を生かして既知の市場機会を効率的に活用し、規模の経済の最大化により黒字を生み出す。
エンタープライジング・レスホンダー;
2つ目のアプローチ、 エンタープライジング・レスポンダーは紐織の俊敏性と自律性を活用し、市場と顧客のニーズに柔軟かつ革新的なやり方で対応する。競争優位を獲得する一つの方法は、コモディティ化や縮小(つまり「利益率が圧迫される」) の恐れがある市場で身動きがとれなくなるのを避けるため、標準的でない製品やサービスを提供することだ。エンタープライジング・レスポンダーの事業戦略は( エフィシェンシー・マキシマイザーの精神主導型とは対照的に) 顧客主導型と言っていいだろう。この場食 個々の市場セグメントや顧客のニーズの変化に競合企業よりも的確に対応することが成功をもたらす。
ポートフォリオ・インテグレー夕ー:
3つ目の戦略的アプローチ、ポートフォリオ・インテグレーターは組織の連携性と安定性を利用して異なる事業部門、地域、チーム、およびテクノロジー間のシナジーを技大化する。縦割り式で「サイロ化」したエフィシェンシー・マキシマイザーや、 俊敏だが自律して業務を行うエンタープライジング・レスポンダーとは異なり、 ポートフォリオ- インテグレーター は異なる事業部門、機能、地域の価値あるつながりを活用して成功を得る。
4 ネツトワ—ク・エクスプロイター:
4つ目の戦略的アプローチはネットワーク・エクスプロイターだ。このアプロ ーチは組織の連携性と俊敏性を生かして組織内外に広がるネットワークの能力を活用する。それにより顧客に豊富な選択肢(種類) や気の利いたバンドリング(異なる製品・サービスが生み出す価値あるシナジー)
を提供し、即時性(価値ある製品・サービスをタイムリーに提供する) 、 パーソナライゼーションを実現できる可能性がある。
第5章 組織ケイパビリティ
組織ケイパビリティとは、企業が事業環境において成功を果たすために求められるコンピテンシー、能力、活力を意味する。組織ケイパビリティは、単に企業を機能させる基本的なカ以上のものであり、企業が選んだ事業戦略の実行を支え、競争優位をもたらす役割がある
エフィシェンシー・マキシマイザ—:
繰り返しになるが、エフィシェンシー・マキシマイザーは既知の市場機会を生かし���規模の経済を最大化することで成功を達成する。そのためには、生産コストを最大限抑え、できるだけ多くの製品・サービスを販売する必要がある。
エンタープライジング・レスホンダー:
エンタ—プライジング・レスポンダ— は、 市場や顧客の好みの変化に柔軟かつイノベーテイブに対応することで成功する。市場提供価値は多くの場合、 高度にカスタマイズされたサ—ビスとして、あるいはこれから新たに生まれるニーズにぴったり合った新製品, サービスとしていち早く市場に提供される。
エンタ—プライジング・レスポンダ— は顧客対応への俊敏性に際立って優れていなければならない。そのためには、組織の高い俊敏性と補完的なケイパビリティである高い自律性を構築する必要がある。俊敏性の高い組織は、製品・サービスを個々の市場や顧客が持つ独特の好みにぴったり合うように構成, 再構成することができる。
ポートフォリオ・インテグレー夕ー:
ネツトワ—ク・エクスプロイタ— は、極めて能力の高い内部チームと外部のパ—トナー、サプライヤーの多様なネットワークを活用して成功を手に入れる。そして、このネットワークを利用して製品, サービスの選択肢を増やし、パーソナライゼーションを強化する。
ネットワーク・エクスプロイターは、ネツトワ—ク活用力に際立って優れていなければならない。そのためには、組織の高い連携性と補完的なケイパビリティである高い俊敏性を構築する必要がある。
第6章 組織アーキテクチャー
組織アーキテクチャーは、あらゆる企業の原動力であり、いくつかの重要な点において企業の能力を極めて高く効率的にする源泉である 。何よりすべての企業は、 異なるクイプの「資本」の形をした同じ本質の組織的要素で構成されており、それらすべてがうまく機能する必要がある。
資本には以下が含まれ、 これらによって企業の組織としての「形態」が決まる。
・企業の人々が持つすべてのスキル、行動、知識(人材または人的資木)
・公式、 非公式を問わず人々がつながり、協力するネットワークと人間関係の価値(社会資本)
・形式化された構造、システム、 プロセス、 組織文化(組織資本)
・不動産、機械、設備などのブル知的資産(物的資本)
・情報または生産に関連するテクノロジーの価値(技術資本)
1 核となる人材は、企業が業務を行い競合と差別化するために活用できる、(従業員、契約業者、パートナーなどの)人的資本として理想的な特性を持つ人材だ。核となる人材の特性には、個人とグループ両方の戦略上価値のあるコンピテンシー、行動、知識、努力が含まれる
2 核となる組織構造とは、企業の核となる人材が最高の仕事をすることを可能にする理想的な組織構造を指す。最高の仕事を実現させるのは、例えば効率的な協調や自発的な協力ができる組織である。
3 核となる組織文化は、 企業の核となる人材(およびそれ以外の人々)がそれぞれの役割を果たすときにどう行動するかに影響を及ぼす、戦略上望ましい価値観、信念、 行動である。
組織構造とは違い、組織文化はつかみところがない。とはいえ、共冇される価値観(例えばバリュー, ステートメント)���して明示することはできるし、リアラインするのは難しいが人々の行動に強い影馨を与える基本的前提に、それとなく盛り込んでもよい。
4 核となる業務プロセスは、企業の核となる人材がそれぞれの職務を果たすために不可欠な所定のプロセス、活動、タスク、施策、ワークフローである金2> 。公式な目的、業務期間、ワークフローと標準、社会的な決まりごと、習慣、慣行などが含まれる。それらの特性によって、個人とグループが協力し最大限効率的に企業パーバスを遂行する方法の狙い、優先車項、強度が決定する。
第7章 経営管理システム
経営管理システムは企業内バリューチェーンの最後の要素であり、 事業戦略を実行に移すためには極めて重要な要素でもある。経営管理システムとは、企業が紐織アーキテクチャ—の核となる構成要素ー核となる人材、組織構造、組織文化、業務ブロセスーを管理するのに用いる機能的な方針、手順、慣行、および活動を意味する 。
具体的にそれは企業のリーダーが自らの会社を戦略的に経営し、選択した市場で競争に勝てるだけの業績を上げるための方法である。
ピープルマネジメントシステムとは、企業が従業員を募集・選考し、能力開発を行い、登用し、成果管理をし、机刷を払う仕組みである。いかに示すように、正しく設計すれば、ピープルマネジメントシステムは従業員の中に独特の価値観、信念、行動を育み、特有の組織文化を生み出すことができる。
1 募集と選考:戦略上望ましい価値観、 信念、行動に近い性質を持つ従署貝を選ふ( 雇用、選考委貝会、 優秀な人材の獲得) 。
2 イグジット:期待される基準に迷しない従業員を整理する(組織再編、余剰人員の解雇)。
3 能力開発:戦略上の優先事項に合わせて従業員教育を実施し、それに恭づいて彼らの技術的、行動的コンピテンシーを伸ばす(トレーニング・ブログラム、 リーダーシップ能力開発、幹部教育、 一時的配直換え、OJTトレーニング)
4 承継:リーダーとしての潜在能力をうかがわせ、組織文化の缺成につながる価値観の手本になる従業貝を抜擢する( 垂直的な昇進、 水平的な移動)
5 成果管理:必要な基準の確立、従業員の取り組みに関する指針の明確化、 望ましい行動の強化を促すような方法で目標を設定し、 従業員の成果を評価する(360度評価、 功績表彰制度)
6報酬:望ましい行動をとり、 最も重要な目標に向けて努力するよう従業員の労働意欲を高める(短期/長期的なインセンティブ・プログラム、 能力給、 バトルフィールド・ボーナスと呼ばれる金銭的報酬、 ストックオプション)
高い業績を上げて競争に打ち勝つために、あなたの会社の経営管理システムはどんな形態をとるのが理想的だろうか? そう、 いい加減うんざりしているとは思うが、 答えは状況によって異なる! だ。企業内バリューチェーンの技後の要素におけるリーダーシップの課題はまず、企業の核となる組織の構成要素を活用して最大限の戦略的価値を得るのに、最も役に立つ経営管理システムの形態を選ぶことだ
情報が増えるほど、 学者や企業のマネージャーはそれを理解するため専門的な知識を身につけなければならない。専門的とはつまり高度な知識なわけだが、 ��の結果必然的に組織には隔絶が生じる。そして隔絶は、断片化された分野、機能、グループ、 個人間に誤解や対立(つまりミスアライン)が生まれるリスクを高める。
企業の設計・管理のアプローチはますますニッチになり、相互の関連性をなくしつつあるのだ。このような断片化は情報時代である現代の特徴であり、社会のさまざまな側面に影響を及ぼしている。
しかし、ビジネスや経営管理における戦略的アラインの視点は、学者や企業リーダーに、対極にある資質を求めている。何といっても、どんな企業も相互に依存する要素からなるバリューチェーンであり、企業内バリューチェーンの強さは、最も脆弱な要素に依存する。
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