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誘拐小説の中でも天下一品の作品、30年後当時担当記者だった門田のしつこいぐらいの調査は圧巻の
一言に尽きます。そして内藤亮の切なくて悲しいシーンでは震えてしまいました。読み出した止まらない感動作をあなたもぜひ読んでみてください。
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平成3年。
神奈川県厚木市に住む立花敦之という小学六年生の児童が二人組の男に誘拐されます。
神奈川県警に総合指揮本部LIがたてられます。
身代金は二千万円。しかし父の立花博之は700万円しか用意できないと言います。
そうしているうちに、もう一件誘拐事件が神奈川県横浜市で発生します。木島茂の孫の内藤亮4歳が誘拐され身代金は一億円です。
亮の母親の内藤瞳はネグレクトで育児をしていませんでした。
県警の責任者は中澤洋一ですが、内藤亮の母親の瞳の行方がつかめず内藤亮の顔写真が一枚もないのです。
祖父の木島茂が一億円を持って横浜中を犯人に言われるがままに走り廻されます。
県警はこれを二児同時誘拐として県警の捜査能力そのものを低下させ混乱に乗じて身代金を奪おうとしているとします。
しかし、数日後立花敦之のほうは倉庫内で無事保護されます。
そして木島茂が慌てて置いてきた一億円入りのバックは善意の第三者によって警察に届けられます。
二児同時誘拐事件は終わったのです。
そして内藤亮だけが帰ってきませんでしたが、平成6年、七歳の亮が木島家のインターホンを鳴らしたのです。
内藤亮は三年間の間誰かの手によってきちんと生活していました。
木島茂の妻で亮の祖母の塔子は亮がきちんとしつけられているのに気づき「やっぱり生みの親より、育ての親だね」と言います。
そして令和3年に話は移ります。
元刑事の中澤の通夜に弔問したマスコミの門田次郎は二児誘拐事件の被害者内藤亮が如月脩という人気画家になっているのを知ります。
そして『わかば画廊』に勤める土屋里穂もまた内藤亮を探していました。里穂は亮の高校の同級生でした。
二児同時誘拐事件の被害者、内藤亮は四歳から七歳の間誰の手によって育てられたのか…。
そして亮は、今どこにいるのか…。
以下ネタバレ含む感想です。これから読まれる方はお気をつけください。
亮を三年間育てた育ての親は、一体どんな人間だったのだろうかと思いましたが。亮の育ての親との関係には泣かされました。親子以上に(血がつながっていない分)本当の親子でした。
そしてまた、ラストシーンに登場するとあるものにも泣かされます。
亮と里穂もまた幸せになってほしいと思いました。
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横浜で起こった同時幼児誘拐事件。1人はすぐに見つかり、もう1人は3年後に祖父母の元へ帰って来る。
何故彼は返されたのか、それまで誰とどこにいたのか。定年間際の記者が追いかけ、その真相を明らかにする。
誘拐、虐待、画家と画廊、色んな要素が絡み合って面白く書かれていると思う。
画廊の女性目線の話は、知らない世界だけに興味深かった。
画家というのは、作品を世に出すだけではやっていけない職業なのか…
どの世界にも裏の事情があるにせよ、なんだか切なくもなった。
それと、虐待。
これもこの題材の時にはいつも思うけど、何故我が子を痛めつける事が出来るのか、胸が苦しくなる。
虐待された子がこの先の人生でどれだけの負荷を背負うか、想像しただけで辛い。
日本の性教育、もっと真剣に考えたらどうだろうと思わざるを得ない。
記者と刑事の関係性にも深い絆があるのだろうなと、それはそれで縦の繋がりを超えた人間と人間の繋がりなのだろうと、想像を膨らませた。
記者にとってはあの刑事は恩師のような存在でもあったのだろうなと。
複雑な人間模様の中での犯罪の話は、なぜか心に響くものだった。
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今日購入して、半日で読み切りました。
塩田武士さんは、罪の声が私的にかなりの名著でしたが、こちらも読む手を止めることが出来ませんでした。
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小説のまだ冒頭であるにも関わらず事件の内容が簡潔に正確に伝わってくることに感動した。
短い文章の中に情報がぎっしり詰まっているのに読みやすく分かりやすい。
作者、そして主人公の両者から新聞記者という職業に愛情を持ち、追う取材対象者の人生に敬意を払う紳士でプロフェッショナルな心が感じられた。
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子供の誘拐の犯罪ものかと読み進めると、どんどん予想外の展開に。どうかどうかハッピーエンドでと願いながら読んだ。写実や画壇などなかなか興味深い話しもあり、とにかく素晴らしかった。
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めちゃくちゃ面白かった!!
まごうことなき★5作品!
最初、なんか64みたいやな
と思いながら、速攻で没入
若干、ご都合主義なところも有りつつも
グイグイ謎が繋がっていくところが気持ちいい!
後半は、
角田光代先生の映画化もされた某小説
(ネタバレになるのでタイトル伏せます)
のパクりっぽかったが、
涙する
これで泣かない人いるの
というくらい
ピュアな恋愛要素もあったり盛りだくさん
これは誰の物語なんだろう!?
全ての人に物語があって共感してしまう
ガンプラのところも良かったな〜
松本清張のくだりとかも、どこまで計算しながら
書いてるんだろう
「中澤さんはまだまだ君に言ってないことがあるよ」
とか
人とのつながり
信頼関係にも感じるところがあった
どこを取っても面白い
脇役にでさえ共感してしまう
スゴい小説であった!
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『罪の声』も、それはそれは、凄かったけど。
何よりも「史実」という強固な裏打ちというか、真にせまる凄みや迫力があったけれど。
この作家に「誘拐」を描かせたら、ちょっと天下一品なのではないだろうか。
物語で描かれる「誘拐」には、ドラマがある。物語がドラマそのものを指していることが多いのだから、当たり前と言ってしまえばその通りだ。
横山秀夫『64』しかり、誘拐という犯罪の特性上、時間との勝負、被害者の主に家族の心模様、そして警察の組織的な捜査の描写によって、おのずと厚みが出る。そして、事件そのものがどんな結末になっても、読む者の心に強く影を残す。
本書は、前代未聞の「二児同時誘拐」が発生し、片方の児童は時を置かず無事保護され、もう一人はなんと3年の時が経ち、自力で保護者の元へ帰ってきたところで事件には幕が降りる。
とはいえ、それはほんの外枠の話だ。この物語の骨格は、「空白の3年間」に何があったのかを、事件発生当時は新米だった定年間際の新聞記者が、再度調べ直す過程で徐々に明らかになっていくところにある。
私は絵画に明るくないので、この物語のもうひとつの大きな要素である、写実画や日本画壇の事情はまったく知らない状態で読んだ。それでもなお、本書を通して、芸術家の孤独や苦悩、表現の奥深さのほんの一端には触れることができたのではないかと思う。
そして、「3年間」という時間の重みや濃密さ、『存在のすべてを』というタイトルの意味や鮮やかな終わり方にため息が出た。しばらく余韻が続きそうだ。
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読み始め、誘拐事件を追うドキュメンタリー風の作品かと思っていたら、徐々に雰囲気が変化していく。
後半からは、タイトルの意味合いが深く伝わってくる。
最後は胸が詰まり涙が流れてきました。
とてもグッとくる良い作品でした。
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表紙の写実絵画「THE-9」とタイトルに惹かれてサイン本を衝動買いしたのですが、塩田さんの作品はこちらが初でした。
この作品の始まりとなる「二児同時誘拐」は、実際に塩田さんが警察関係者に取材して「確かにそれは困る」と言われたとのことで、読者としても冒頭からの緊迫感は忘れられません。
その後、作中で言及されていく「存在」については、各登場人物の人生・物語毎に考えさせられ、涙しました。
相変わらず今の自分に都合良く解釈した感想なのですが、自分で体験して物事を知り、語ることができる人でいたい、そのような人を大切にしたい、そのことの大切さを子供に伝えていきたいと感じました。
便利な世の中になり、更にコロナを経て体感していたことを、この作品で改めて感じました。
そして、ホキ美術館に行って、生の写実絵画を見たいです。
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空白に描き出されていく事実は
想いが何層にも重なり合って真実を切なく彩る。
そこにある現実を
偽りのない真実を
その存在のすべてを描き切った
胸に迫る社会派ミステリ。
ページを重ねるほどに
塗り重ねた年月が色を変えていき
心眼が切り開く未来が光彩を放ち
心が満ちるようでした。
『罪の声』を読んだ時は衝撃的で
今でも心に残っているけれど
この作品は、胸の奥深く静かなところで
ずっと記憶に熱く焼きついていくだろうと思います。
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面白かった!
ですが、2児同時誘拐の裏に
どんな背景があるのか期待し過ぎた分、
自分には少し物足りなく感じました。
写実画というのが一つキーになっていて
だからこそ真実に近づけたのかなと、、
亮くんと家族との別れのシーンは切なくなりました。
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・写実は目の前の、そこに存在しているものの、ありのままを描く。それは写真ではない。キャンバスの中のものはすべて等価値。
・最後の80ページのためにその前の400ページがある。事件と27年の年月の積み重ねを丁寧に話すのは、この3年のため。
・貴彦のその後がどうなってたかも含め、再読必須(2023/11/25読了)
・立花敦之 誘拐
・ 博之 父
・ 明美 母
・内藤亮 誘拐、如月脩
・ 瞳 母
・吉田悟 瞳の同棲人
・木島茂 祖父、海陽食品社長
・ 塔子 祖母
・三村智也 神奈川県警管理官
・大野 捜査一課長
・中澤洋一
・先崎隆明
・富岡
・真木慎一 警察庁一課長
・門田次郎 大日記者
・下田悦子 大日庶務
・藤島光一
・尾崎康夫 サラ金、吉田悟知人
・野本雅彦 社債事件
・ 貴彦 弟、画家
・ 優美 貴彦妻
・土屋里穂 画商
・ 啓介 父
・三浦奈美 後輩
・磯山恵子 記者、証言者
・岸朔之介 六花
・ 優作 息子
・西尾義明 元福栄社員、証言者
・又吉圭 画家
・黒木充 社債事件
・戸辺敦子 証言者
・橋本孝子 英語塾講師
・中田剛志 里穂ストーカー
・酒井龍男 小樽北星物流社長、絵画コレクター、レインボー土地所有者
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これは塩田さん渾身の1冊だなと、冒頭から鳥肌が立った。
物語は初手からフルスロットル!
横浜で起きた二児同時誘拐事件。
誘拐犯と警察の緊迫した駆け引きに痺れつつ、事件はまさかの思わぬ展開へ…
その後時効を迎えてしまったこの事件の真実を突き止めるため、その事件の担当だった刑事さんと懇意だった新聞記者が事件を振り返って行くのだけれども…
陳腐で内容の無いニュースや情報が溢れる時代に本当に存在した事実は何なのか、上辺だけを撫でて分かった気になっていないか。
誘拐と言う凶悪犯罪。
でもその裏にある人間の物語が1つずつ見えてきて、それぞれの物語が全て繋がった時、泣かずにはいられなかった。
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点と点が結びつき線となる。その線が描くのは人間の罪と悲しみ。
塩田武士、渾身の一冊。慟哭は最後に訪れる。
久しぶりの塩田小説にしびれました。
芸術と犯罪。その線と線を結ぶ人間模様は塩田さんにしか描けない世界。
深みとすごみを増した筆にほれぼれしました。